718 ボクスターはエンジンを除けば基本的に 981 からのキャリーオーバーであり、日本での認証型式をみると ABA-982xx だからこれは 981 の改良型という事が解る。
実際に 718 のエクステリアは一見したところ 981 と大きく変わるところはない。
それでは一番の違いはといえば勿論エンジンであり、同じく水平対向とは言うものの6気筒自然吸気から4気筒ターボへと、いわゆるダウンサイジング化が実施された。
ターボ化によりエンジン性能は特にトルクが増大し、しかも低回転側から大トルクを得られるのはカレラ (991 Phase2) と同じだから、もうスペックを見ただけで 718 のトルクフルなフィーリングが想像出来きる。実際メーカー発表の 0 - 100km/h 加速がスタンダードのボクスター (PDK) でも5秒を切って4秒台で、ボクスターS に至っては 4.4 秒というから、これはチョッと前 (要するに昨年) のカレラS並であり、もうボクスターが遅いなんて言わせねぇぞ、という感じだ。言いかえれば、ボクスターをそんなに速くしてどうするんだい、という気持ちもあるが‥‥。
また 718ケイマンの価格を見ると‥‥なっ、何とボクスターより安い設定になっている! ケイマンの場合、従来はオープンのボクスターよりも数十万円高いという殆ど七不思議のような価格設定だったが、今回は逆にボクスターがケイマンよりも40万円ばかり高い設定になっている。まあ、世間の常識ではこれが正常なのだが‥‥。それにしてもいつの間にやら?? ということで、過去に遡って両車の価格を比較してみたのが下の表だ。
コレを見ると2014年までは従来通りケイマンが高い設定だったから、これは多分 718 からこうなったのだろうと考えたのだが、981 の2015年の価格表では上のスペック一覧の備考欄の示したように、ケイマンとボクスターの価格はほぼ同じ、要するに 981 の最終モデルからボクスターを値上げしたのだった。ボクスターは発売以来政略的に安い (安すぎるくらいの) 価格設定をしていたが、今後はもうやらないという事だろうか。重症のクルマ好きのために普通のサラリーマンでもポルシェが買える、というボクスターのポリシーは崩れつつあるのか?
以上2016年71月29日掲載分
それでは 718 ボクスターのエクステリアから見る事にする。
フロントについてはアンダーグリルというかバンパーのエアインテークが、よくよく見ると多少の形状変更が行われている。
リアについてはトランクリッドの切れ目に接するボディ側が横長のブラックアウトされたラインというように大きく変わっているし、そのライン上に "PORSHE" のロゴも移動している。
サイドに走るリアのエアインテークに繋がるラインは以前と変わらないようだ。このラインは正にスーパーカールックで、むしろ 911 より速そうにすら見えるくらいだ。
リアフェンダーのタイヤハウス付近には妙な縁取りがあるが、これこそ 718 の全幅がスペック上では 25㎜ (1,800 → 1,825 ㎜) 広くなった原因となっている 。理由は言うまでもなく日本の法規を満足するためで、勿論欧州ではこんな馬鹿な事はせずに合法となっている。こういう現実を見ると問題だらけの TPP でも使い方によっては、日本の(官僚なんていうハイレベルではなく) 馬鹿小役人に圧力を掛けるという利点もあるかもしれない‥‥とか言って、米国1% に媚びを売ってみる。
それにしても、タイヤが多少出っ張るよりもこんな突起がある方が危険だと思うのだが。
718 ボクスター S の標準タイヤは 981 と同じ Fr: 235/40ZR19 Rr: 265/40ZR19 で、911 と比べればワンサイズ以上小さいが、いやいや、世間の常識からすれば充分に太いから、タイヤ交換では結構な散財となりそうだ。
ボクスターSのブレーキは前後とも赤い塗装に白い ”PORSCHE” のロゴの付いた4ポットオポーズドキャリパーとドリルドローターというのがお約束だから、その面では当然変わらないが、良く見るとフロントキャリパーが大型化されている。
ポルシェの場合、減速度は加速度の2倍以上という社内の ”掟” があるようだから、718 ボクスターSのように 0 - 100km/h が 4.4秒というチョイと前の 911 並となったから、ブレーキも 911 並に増大されたのだろう。
V
ドアを開けて最初に目に付く室内を見渡すと‥‥と言いたいどころだが、ここは一つ定番を覆して先にドアヒンジを見る事にしよう。写真下のようにボディ側ヒンジは溶接 (左側) 、それも全周溶接されている。実は念の為に指で触って確認したが、明らかに溶接のビードが全周に渡って確認できた。
ただしヒンジ自体は最近の BMW とも同様で以前に比べて小型化、というかシンプルになっていて、しかもドア側はボルト1本で取り付けている。実は自動車は他の商品に比べると高張力ボルト、いわゆるハイテンボルトの使用が多くて、これで大丈夫なのかと心配になるくらいに細いボルトを使っていたりするが実際の強度は充分にあり、しかも締め付けトルクはものすごく大きいから、ドアの固定に一本のボルトで充分となる。それ故、この部分を外そうとすると特殊なレンチが無いととてもではないが外れない筈だ。
以上2016年8月1日掲載分
今回はドアを開けてインテリアを見渡すところから始めるが、予想通りで 981 との大きな違いは思い当たらない。
それでも細かいところでは、”Boxster S” のロゴが付いたプレート形状が変更 (大きく) なっている。
ドアインナートリムも 981 と変っていない。
しかし、フロントダッシュボード周りを見ると、何となく違うような気がする。でも普通は MC でダッシュボードを変えることな無いだろう?
ところが、何とエアコンのエアアウトレット形状が角形から丸形に変更となり、天板センターに飛び出していたストップウオッチが少し低い位置となっている。要するにダッシュボード (の金型) を一新したのだった。718 は事実上の 981 Phase 2 であり、その割にはダッシュボードの型を一新するという大掛かりが変更を実施している。これって、MC では無くて 718 というモデルへのフルチェンジなんだぞぉ~、というメッセージかぁ?
センタークラスターを見れば、991 (カレラ) と同様で今回からナビやオーディオが従来の (クラリオン製) 市販品のオーディオ一体型ナビのポン付けから、専用のシステムへと変更になった。これは以前から指摘していた事だが、恐らく世間の批判も多かったのだろう。やっとの事で欧米向けと同じ仕様になった事になる。
上記の理由で今回からはセンタークラスター上にオーディオおよびナビ等のコントロールパネルも付いている。
以上2016年8月3日掲載分
走行関連の装置といえば先ずは AT セレクターだが、これはコンソール上の同じ位置に同じ形で変更は無い。 しかしコンソール上を良く見ると、 981 では車名のロゴ (この場合は ”Boxster S") がある場所にはハザードとドアロックスイッチ。因みに車名のロゴは写真では見辛いが ATセレクターの枠の部分移動して、それも ”718” となっている。
更にコンソール上で手前のスイッチ群をみると何やら 718の方がスイッチ自体が少ない感じがする。一体何が無くなったのかと思ったらば、走行モードの切り替えスイッチが無くなっている。実はこれ、既に 991 Phase2 試乗記をご覧になった方はピンとくるだろうが、ボクスターも今回から走行モード切り替えスイッチはコンソールから引っ越しをしていた。
そお走行モード切り替えスイッチは 991 と同様にステアリングコラムから出た回転式スイッチを使用する。
メーターの配置はお馴染の3連で、911 の5連と差を付けているのも何時ものとおりで、981 (写真左下) からの変更も無いようだ。
ところでポルシェの場合はセンターの回転計が ”S” の場合はシルバーというのがこれまたお約束だったのだが、そのシルバーも以前は白に近い明るい色だったが、モデルチェンジの度に暗い色になってきて、718 では気のせいが左右のメーターより極僅かに明るいという程度に見える。
ステアリングホイールは特にスポーク形状が大幅変更となっているが、これも 911 (991) と全く同様だ。
ペダルについても踏面の材質が全く変わっている。なおこの部分も写真下の 718 のペダルは 991 Phase2と全く同じものと思われる。
以上2016年8月4日掲載分
⇒ Porsche 718 Boxster 試乗記 (2016/12)