このところ試乗記で SUV を取り上げることが多くなったが、現在流行っている SUV、取り分け高級クラスの SUV のルーツといえばハリアーである。そのハリアーは米国ではレクサス RX として販売されていたが、日本でのレクサスブランドの販賣が始まったのを機に今では米国同様に RX と名を変えている。それではハリアーはといえば長らく旧モデルを継続生産していたが、2013年に全く新しいモデルとして発売されたのが現行の ZSU60W でベースは輸出向けの RAV-4 ロングボディであり、今回からはレクサス RX とは一切関係のないクルマとなった。
その現行ハリアーのパワートレインには 2.0L 151ps 193N-m 自然吸気 (NA) ガソリンエンジンと2.5L 152ps 210N-m のガソリンエンジンに143ps の電気モーターを組み合わせたハイブリッドがあり、さらにハイブリッドにはリア用として88ps と追加した 4WD モデルもある。
下の表のハリアーは2.0L NA のモデルだが、パワーやサイズ、そして価格などから今やレクサス RX よりも下のカテゴリーであり、言い換えれば国内でも売れ筋のミドルサイス SUV で、ライバルも各車出揃っている。そして現行ハリアーはレクサス車の中ではサイズ的にはむしろ NX に近いが、とはいえパワーや内装などは明らかに NX が上であり、その分値段は5割増しとなっている。
今回写真で紹介するのは 2.0L ガソリンのモデルで、PREMIUN "Style VALUE" 4WD というグレードのために価格は343.1万円であり、2WDのベースグレードの279.8万円に比べれば決して安くない。
さて今回は本命の前に TOYOTA GAZOO RASING によりスポーツパーツを標準で装備した G's HARRIER というモデルを話しの種に紹介する。
エクステリアではフロントのマスクが派手なデザインになるが、チョイとケバ過ぎの気もする。
なおインテリアもレーシングモデルみたいたフルバケットシートなどのスポーツアイテムが装備さているが、この G's HARRIER の価格は2.0L 2WD が329.1万円、4WD は348.5万円 と安くは無い。まあ気に入れば止めはしないが‥‥。
以上2016年3月7日掲載分
今回からは本題の 2.0L PREMIUN "Style VALUE" 4WD について内外装を見て行く事にする。
現行ハリアーのベースは欧州向けのロングホイールベース RAV4 で、それはどんなものかというと写真左下の示したように写真右下の国内向けRAV4 よりも確かに長い、というかリアドアは明らかに大きいからBピラーとCピラーの距離、すなわちリアドアが伸ばされているように見える。
それにしてもロングとはいえ RAV4 を元に如何にもハリアーというスタイルを作ってしまうのも技術力の証ということだ。
サイドビューも RAV4 とは全くイメージが違い、如何にもミドルサイス SUV という雰囲気がする。因みにレクサス NX と比べると全長は90㎜ 長く、ホイールベースは同一で全高は 45㎜ 高いからハリアーの方が僅かに大きく感じる。これによりその昔はレクサス RX の日本版であったハリアーの子孫として、 RX の子分である NX よりも大きく感じさせ、ユーザーには今でも RX に近い立場であるかの如く感じさせる、というのは考えすぎだろうか?
フロントグリルは旧ハリアーの面影を残してはいるがより立派になっていてランクルプラドを少し大人しくしたような感じで、RAV4 とは大いに差を付けている。
要するに其々が車格として RAV4 < ハリアー < プラド という序列を強調するかのようにデザインされている。
ヘットライトはロービームが LED タイプであり、クリアランスランプとフォグランプもLED となっている。それではハイビームはといえば、さて、カタログには何とも表記が無いからハロゲンだろう。
リアのコンビネーション (テール&ストップ) ランプも LED タイプなのは今の時代当然で、フィラメントバルブを使っている方が珍しいが‥‥。
リアデザインは特に大きな特徴も無いが、強いて言えばリアウィンドウの下端はウエストラインギリギリまで下げて面積を増やしていることで、これは結構後ろ姿が軽快に見えるている。
以上2016年3月4日掲載分
ボンネットカバーを開けて恐る恐る手を離してみるとカバーはそのままの位置で、やれやれ、ちゃあんとダンパーが付いていた。
エンジンはフロントオーバーハングにぶら下がっているし、その形状からして横置きだろう。要するにデカい割には典型的な FWD 車だが、まあ元々ハリアーというかレクサス RX はカムリをベースにオフロード風味を加えたクルマだった訳だから、今さに驚くことも無い。
ボンネットカバーの裏側にはきちんと吸音材だか保温材だか、まあその手のモノが貼ってある。
ハイブリッドではなく普通のガソリン車だから、ブレーキシリンダーもごく普通にマスターバックのついたバキュームサーボ方式だ。
それにてもエンジンカバーはプラスチッキーでコストダウンが見え見えだが、勿論性能には関係無い。
タイヤサイズは写真の ”PREMIUM” では 235/55R18タイヤ が標準だが、それ以下の ”ELEGANCE” と ”GRAND” では 225/65R17タイヤとなり、しかもガソリエンジンの ”GRAND” はスチールホイールに樹脂製フルキャップという、要するに今時珍し鉄チンホイールというヤツだ。なお、ガソリンエンジン 2WD の場合 ”PREMIUM”、 ”ELEGANCE”、 ”GRAND” の車両価格はそれぞれ 313.7万円、288.0万円、279.8万円となる。
ハリアーは RX と共通だった頃はフロントに2ピストンのキャリパーを使用していたが、今のハリアーは事実上 RAV4 だからシングルピストンとなっていることで、ハリアーと名乗ってはいるが以前とは生まれ (出自) が違うことがハッキリ判る。
現在のハリアーは国内専用車の為に特にグローバル基準でなくとも良いわけだが、クラウンなどとはユーザーの年齢層が違うのだろうか、旧来のトヨタ演歌調ということはなく、最近の標準的なものとなっている。
シート調整は ”GRAND” が手動式でそれ以上のグレードでは運転席のみ電動式となる。
シート表皮は ”GRAND” がファブリックでそれ以上のグレードではファブリックと合成皮革のコンビとなる。
なお本革シートは約24万円でオプション設定されている。
以上2016年3月10日掲載分
ドアのインナートリムは今回の車両が上級グレードであった事もあり、アームレストより上は全てレザーで覆われたパッドになっているし、ステッチもハッキリと確認できる。
念の為に拡大してみると間違いなく本物のステッチで、金型で作ったフェイクでは無さそうだ。ドアノブは勿論クロームメッキが施され、パワーウィンドウのスイッチはピアノブラックのベース上に配置されている。
ダッシュボードは SUV ということもあってサルーンに比べると高さ方向に広いのは当然としても、センタークラスターの幅も広くとってあるから、中々立派には見える。
写真のクルマはライン装着のオーディオ&ナビが装着されていたので、専用のスイッチ類も並んでいて後付のオーディオ一体ナビよりは使い易そうだが、最先端の統合制御という訳ではない。
オーディオ&ナビの下にはエアコンの操作パネルとモード切替スイッチなどが並ぶ。
メーター類は自光式と思われ、電源がオフだと殆ど見えない。ステアリングホイールは高級そうなレザー&ウッドでスポークにもスイッチ類が配置されているが、ちょっと古いトヨタの高級車風のセンスに満ちている。
センターコンソールは AT セレクター以外には何も無い。その AT セレクターはこれまたトヨタ車としてはチョイと時代遅れのジグザグゲートとなっている。
オーバーヘッドコンソールには最近のクルマとしては多めのスイッチ類が並んでいるが、これはサンルーフなどが装着されているためだ。そしてセンターコンソール後端には定番のリア用エアアウトレットがある。
以上現行ハリアーを見てきたが、展示車がかなり高級なグレードだったこともあり、内装などは決して惨めになることは無いが、如何せんセンスが古いというか開発費の元を採った技術でデッチ上げたというか、まあ以前の事実上レクサス RX だった時代からすれば明らかに安物路線となっている。
現行ハリアーの価格帯は下は280万円から上は500万円近いものもあるが、主流は300万円前半だろう。今の時代に300万円というのは決して安い買い物ではないが、しかしこれはというモノは買えない金額でもあり、言ってみれば中途半端な価格でもある。それでも、最近の試乗記で扱ったレヴォーグにしてもこの価格帯だったし、ハリアー以外の SUV にしてもやはり同価格帯だから、普通のファミリーがちょっと予算を頑張ったという意味では売れ筋なのだろう。
以上2016年3月13日掲載分
⇒ TOYOTA Harrier Hybrid 簡易試乗記 (2016/3)