TOYOTA TANK G-T (ターボ) 後編
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今回の試乗は例によってお台場にあるトヨタの MEGAWEB でのチョイ乗りだから、まあ簡単なフィーリングを試す程度だが、それでも適正な動力性能の有無や安定性が実用上問題無いか、くらいは判断できる。そして試乗した車種はタンク G-T (180.4万円) でこれはターボ過給により 98ps 140N-m という性能だから、自然吸気ならば 1.4L 相当となる。 シートに座ってシートベルトを締めて、さてエンジンの始動はと言えばダッシュボード右端のスイッチの並んだパネルの右上に、誰が見てもスタートボタンというオーソドックスなスイッチがある。このボタンを押してエンジンを始動すると、3気筒というイメージ程には振動等は感じられないが、まあ最近の3気筒はどれもこの程度の静粛性は持っているから驚く事でも無い。 このクルマもいわゆるインパネシフトだからダッシュボードにぶら下がったパネル (センタークラスターと呼ぶにはチョイとショボい) の右側にある AT セレクターを右の解除ボタンを押しながらガチャガチャとDまで引いてくる。なおDレンジから横に押してマニュアルモードというティプトロスタイルでは無くDより手前にS、さらに引くとBと表示されている。これって、Sはスポーツだろうか。そしてBはブレーキ、すなわちエンジンブレーキを効かせる降坂用だろう。 パーキングブレーキが足踏み式となっているのは、ウォークスルーの実現にはレバーを使うことが出来ない事が理由であり、そういう点では他社も全てこのタイプとなっている。えっ?ダッシュボードにレバー式の電動スイッチを付ければ成り立つ、って? いやまあ、そうなんですが‥‥180万円という事をお忘れ無く。 出発 OK の合図を受けて、ゆっくりと発進して直進になったところで 2/3 程度スロットルを踏んでみると、想像よりは結構なトルク感で加速していく。このコースの制限速度である 40km/h まで加速するのも決して苦にはならない。と、妙な事を言うようだが、このコースではクルマによっては40km/h に達する前に直線路が終わってしまう事もあるからで、その点では試乗車は 1.0L とはいえターボモデルだけの事はある。しかし、ここで思い出したのはフォードフィエスタは同じく3気筒 1.0L ターボだったが、そのスペックの割には驚くほどに活発な走りだった事で、その面ではこのタンクよりも一枚上手だという感じだ。もしかしてフィエスタは過給圧が高くでタンクとは性能が大きく違うのかとも思ったので調べてみると、最高出力は 100ps/6,000rpm 最大トルクは 170N-m / 4,000rpm であり、これは 98ps/6,000rpm, 140N-m/4,000rpm のタンクと比べてパワーでは同等だがトルクが 20% 程勝っていた。なお車両重量はタンクの1,100kg とフィエスタの 1,160kg という具合にむしろフィスタの方が多少不利なくらいだ。それで結論はと言えば、一つはトルクの違いだろうという事と、もう一つフィエスタのミッションは6速 DCT で、やはり CVT では歯が立たないのかもしれないということだ。 それでは操舵性はどうだろうか。先ずステアリングの操舵力は当然ながら適度に軽く、中心付近の不感帯も適度だし、勿論ステアリング系の剛性不足でグニャグニャと捩れて反応が遅れるなどという、一昔前のカローラのような事も無く、実用車としては特に不満は無い。それでは旋回時の挙動はと言えば、このコースのハイライト (!) でもあるシケインのスラローム走行では、多少のアンダーステアは有るもののそれ程でも無く、なによりこのスタイルから想像するよりも大幅にロールが少ないし、サスペンションも良く粘っている感じだ。 試乗した G-T には 165/65R14 タイヤ & 14x5J スチールホイールに樹脂キャップという見るからに安っぽいものが標準となっている。それが良い方に作用したかもしれないのは意外にも乗り心地が良かった事で、固めながらも決してガツガツと突き上げも無いし、まあ合格としよう。 それに樹脂製のホイールキャップも少し離れて見ればアルミホイールに見える。そうは言っても近くで見ればホイールの隙間と思ったら黒い鉄っちんホイールが見えて興醒めとかいう事もあるが、世の中の多くのユーザー、特にこのクラスのユーザーにはアルミホイールなんてどうでも良い事に違いない。 ということで試乗車のホイールの隙間からはブレーキユニットは見えないのだが、アルミホイールが標準のカスタムのブレーキを覗いてみると、フロントは軽自動車等と同じくフレームがチョイとセコいキャリパーのディスクブレーキだが、リアはコレで大丈夫なんだろうかと言いたくなるような小径のドラムブレーキが付いている。ブレーキの効きについては最近の国産車らしく普通に走る分には全く問題はないから、あんなリアブレーキでも十分なのだろう。 このサイトの趣旨にはマルでそぐわない軽自動車の兄貴みたいなタンクを何故に発表直後に優先的に扱うのかと言えば、このクルマは近い将来の日本の自動車に大きな影響を与えるかも知れないからだ。何しろ街を走る10台に3台以上は軽自動車で、100世帯に54.3台の普及だというから驚く。しかし軽自動車が売れる大きな理由は大幅な優遇税制であり、その制度が無くなれば軽自動車のメリットも殆ど無くなるであろうことも容易に想像が出来る。 更には軽自動車のデメリットとして以前から指摘されているように、規制による小さ過ぎるエンジンや狭過ぎる車幅による走行安全性や衝突安全性の低下にも不安が残っている。そこで、今回のタンクだが、言ってみれば軽自動車の親方であり、ポスト軽自動車を考える上での叩き台にも成りそうだ。 そういう事もあり、今回はタンク G-T というターボとしては一番買い得な 180.4万円という車種を取り上げたが、しかしこれはポスト軽自動車としてはチョイと高すぎる。となると自然吸気 (NA) モデルに目が移るが、一番安いXグレード (146.3万円〜) はどうなんだということになる。ただしXは特に内装や装備が結構チャチいからあと16万円追加してG グレード (162万円) くらいが売れ筋だろうか。いずれにしても NA の場合は果たして十分な動力性能が得られるのか、という疑問が湧くだろう。そこで続編として NA モデルの簡易試乗記も合わせて読むことで、最終的な結論に向かうように考えてみた。 注記:この試乗記は2016年11月現在の内容です。
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