HONDA N BOX Custom G (2WD) 後編
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ドアを開けると既にメーターの外周がうっすらと青く光っているが、これはドアを開けてからある程度の間だけ室内灯とともに点灯する。ブレーキペダルを踏みながらセンタークラスター上の赤いスタートボタンを押すとエンジンは目覚めて、メーター全体も僅かに明るくなる。センタークラスターの上部から生える、いわゆるインパネシフトタイプのATセレクターは直線でP→R→N→Dとその下に降坂用のLというパターンで、早速Dをセレクトする。なお、マニュアルモードは無いので、Dから横に引いて切り変えるようにはなって はいない。パーキングブレーキはプッシュ/プッシュタイプのために、左足でペダルを踏んで解除する ・・・・・積りが逆にメーター内に赤いブレーキのマークが表示されて、今までオフだったのをオンにしてしまった事を知り、再度ペダルを踏む。

 

ユックリと駐車場から狭い裏道を20mばかり抜けるのだが、この時30km/h程度で前進していても、意外にエンジン音は耳に入るが、スロットルレスポンスは中々良くて、贔屓目に言えばスポーティなフィーリングだ。一時停止から左にフルステアで公道に出て、そこから2/3スロットル程度を踏んでみると、最 新鋭の軽だけって660ccとしては充分過ぎる加速感で速度を上げていく。ここでメーター内にグリーンのマークが点灯しているのを確認できたのだが、これはいわゆるエコモード のマークだった。そこで、インパネ最右端 のステアリングホイールに隠れた場所にあるグリーンの丸い押しボタンを押すと、マークは消灯したことでノーマルモードとなったことを確認する。 ここで、もう一度2/3スロットルを踏むと、レスポオンスも加速もワンランク向上した。ただし、エコモード自体が最近よく遭遇するトロ過ぎて使う気がしなくなるようなものではなく、欲をいえばもう少しという設定なので、これをオフにすると確かに機敏にはなるが、その差はそれ程多くは無い。

もう一度エコモードをオンにして、そこから決して広くはない地方道を進むと、40〜50km/hの巡航では回転計の針は2,000rpm程を指している。最近の普通車の場合は、燃費向上のためにECOモードだと1,200rpm前後の低回転で巡航するが、流石に660ccでは2,000rpmの巡航が一番低回転側を使用している状態だ。ここで 再度エコモードをオフにすると、回転計の針は2,500〜3,000rpm位を常用していて、そこからスロットルをガンッと踏み込んでみると、一瞬の後に回転計のはりがグオンッと5,000rpmくらいまで上昇する。N BOXのミッションはCVTを採用しているが、何も 言われなければトルコンATがシフトダウンしたと思ってしまうような動作で、これならCVT嫌いでも許容できそうだ。この時のエンジン音は流石に3気筒らしいノイズがチョイと気になる程度にハッキリと聞こえるが、これをホンダらしくスポーティーだといえば言えないことも無いし、ホンダらしく更に回転計の針は上昇していく。この時の加速感はマーチ辺りと良いとこ勝負で、ノンターボの軽としては最も強力な部類であり、 ここでもエンジン屋であるホンダの面目は見事に保たれた。

試乗車にはアイドリングストップが装着されていて、エコモードの時に条件が揃えば作動するということなので、早速チャレンジしてみた(という程のことではないが)。信号待ちで停止してみると、エンジンがストンっと止まったが、この時今まで回っていた3気筒エンジンの振動がそれなりにあったのが判る。そして信号は青になってから、ワザと素早くブレーキからアクセルへ踏み代えてみたが、上手い具合に一瞬で始動した。

ところで、運転中にふと助手席側のAピラーを見ると何やらミラーらしきものがある。実はサイドミラーの前面にもミラーを付けて、この画像を室内のミラーで見ることで、フェンダーの左下にある死角を確認できるというアイデア賞ものの方式となっている。ただし、特許は取っていないので他社も真似をするだろう、とのことだった (写真左下)。

 

ステアリングもホンダのイメージにピッタリで、よく言えばクイックでスポーティーだが、グイグイとステアリングを操作をすればクルマはチョロチョロと下品な走りをすることになるし、乗り心地も当然ながら固くで走行中に多少ゴツゴツ感を感じる。このステアリングとサスの組み合わせだから一般道を巡航中でも決して安定性があるとは言えないが、まあ不安定という程ではない。そしていよいよコーナーが近づいたので、そのままの速度で進入してみたが、固い足のメリットか、この程度ならば充分に余裕でクリアした。ロールの少なさはメリットだが、旋回中に如何にも足が短い(サスのストロークが短い)感じはハッキリと伝わってくるから、無理な速度でのコーナーリングは危険を伴うかもしれない。

ブレーキペダルを踏むと最初からある程度重くて、ハッキリした遊びストロークを感じない、よく言えば少し前のメルセデス的で剛性感がある。軽のブレーキはフニャフニャでグニューっとペダルが奥まで入ってしまうような特性も多いが、N BOXのブレーキフィーリングは異例にショートストロークで、これまたスポーティーだった。と思って、試乗後にアルミホイールの隙間から覗くブレーキを見たらば、リアは無骨で情けないくらいに径の小さなドラムが見えた。そう、軽自動車のリアブレーキは今現在では全てドラムだったのだ。ドラムブレーキというのは剛性という面ではディスクブレーキよりも勝るのが一般的だから、この場合はドラムのメリットを上手く使っていることになる。そして肝心の効きはといえば、軽すぎる傾向のある最近のクルマのなかで、軽自動車としては適度な踏力で良く効くから、少なくとも街乗りには充分だ。

今回の試乗車はスポーティーな外装のカスタムだったから、もしかしてサスやステアリングの設定がスポーティーに振られているのかと思ったが、ベースモデルでもこの点は同じだそうだ。コンセプトとしてはパレットSWやダイハツタントエグゼなどと同じだが、ホンダらしくスポーティーな味付けに振っているから、アンちゃん達には好評だろうし、これこそホンダらしいが、どう考えても運転のスキルが高そうではないオバちゃんやおネエちゃんにはスズキの安定感 の方が向いているようにも思う。ただし、実際にはホンダ党とスズキ党という程ではなくとも、偶々ホンダのディーラーを知っていたとか、スズキのディーラーが近くにある、という程度で、試乗もしないで購入する例が多いのではないか。

さて結論として、個人的な好みではどちらを選ぶかといわれれば、安定性としなやかさで勝るパレットSW(ルークスハイウェースター)を選ぶだろう。まあ、これは好みの問題 だから人それぞれだし、このクラスでは安定性とスポーティさの両立は難しく、どちらかを選ぶしか無いのかもしれない。価格的には今回試乗したN BOX カスタム G(FF)でも144万円と軽としては結構高価だ。あれっ、まてよ。これってあと24万円出せばスイフト スポーツ(MT)が買えてしまうではないか!?

最後に関連する(簡易)試乗記のリンクを貼っておくので参考にしていただきたい。


ニッサン ルークス
ハイウェイスター

ダイハツ タントエグゼ

スズキ ワゴンR FX

スズキスイフト
スポーツ (MT)

注記:この試乗記は2012年4月現在の内容です。