TOYOTA AURIS 180G 後編
※検索エンジン経由でノーフレームの場合はここをクリックしてください。

 

試乗車のシートは標準のファブリックで見かけは欧州調、座ってみれば以前の国産車に比べれば大いなる進歩であるが、どうも座面がしっくりこないし体が前にズレるような感じがある。これに対してバックレストはマアマア背中全体を支えるので決して悪くないが、座面の不出来のために結局長時間の運転では腰が痛くなるだろう。そしてシート位置を合わせながらステアリングコラム下部のロックを外して、上下調整のためにステアリングホイール全体を上に上げようとしても動かない?更に力を入れたらば奥にズドンと動いた。前後が調整ができるのか?その後上下もコツが判ると動かせるようになったが、何とも渋いとうかフリークッションが絶大というか・・・。待てよ、先日メガウェーブでチョイ乗りしたオーリスRSは上下のみと思っていたが、もしかして力一杯やれば前後も動いたのかもしれない。

エンジンの始動はインテリジェントキーとプッシュボタンで、CVTセレクターはジグザクゲートとMポジションを持つティプロタイプで、10年前ならば高級輸入車にしか付いていなかったものだが、時代は進化したものだ。

走り出した第一印象は、3ヶ月程前に試乗してカローラ系という意識に対しては意外とも言うほどにパワフルだったカローラフィールダー 18Sに近い、。これがカローラアクシオ 15Xとなると途端にカローラ丸出しの非力さになる訳で、たった0.3Lでこれ程までに違うのか? そのフィールダー18Sの車両重量は1,160kgで、今回のオーリス 180Gは1,280kgと100kgも重く、確かにフィールダーの方が更に元気だったような気もするが、あくまで気がする程度だ。

巡航中のエンジンはちょっとした負荷によって回転計がピョンと上がるが、言い換えればCVTの制御はレスポンスが良いということだろうか。路面状況が良く40km/hくらいで殆どアクセルを踏まずに、言ってみれば惰性で走行しているような状況では回転計の針は1,000rpm程度まで下がることがあるが、ちょっと速度が落ちかけたりして微妙にアクセルを踏んで調整した瞬間に1,500rpm程度まで上昇する。そして深く踏み込んでみると3,000rpm程度まで上がるのはフィールダーの時と同様だ。

ここでコンソール手前にある、走行中には実に操作しづらい位置にあるSPORTというスイッチを押すと、メーター内にも「SPORT」という表示が出たが、残念ながら小さくて見辛い。このモードではCVTはより高回転側に制御され、巡航時でも容易に3,000rpmくらいまで上がるし、深く踏み込んだ時は4,000rpmくらいまで上昇する。特に巡航時から加速に移る際などはCVTとしてはレスポンスが良いのでクルマの挙動が活発に感じで、これがカローラらしく無いスポーティーさを感じる事になる。ただし、フルスロットル時にはNORMALでも4,000rpmくらいになるのでSPORTモードの恩恵は大して無いが、これも既にフィールダーやアクシオで経験したのと同様だった。

やがて、片側2車線ではあるが空いた道を走っているとき、左車線には数台のタクシーが止まっていたので右車線を巡航していたら、いきなり左の黄色いタクシーが走りだし、しかもこちらの車線に向かって方向を変えようとしている。慌てて右にステアリングを切り、同時にホーンを鳴らして相手に知らせたが、右車線を確認しないで出てくるという殆どトーシロー並の運転技能に驚く。その先の交差点の信号が赤だったために停車すると、先程の黄色いタクシーが後ろにぴったりとくっついて止まった。これって威嚇している積りなのだろうか。バックミラーを見ると、背中の右半分はシートのバックレストでなくドアに寄りかかって右手のみでステアリングを操作しているらしいのが見える。成る程これじゃあ右車線は確認できないよなぁ。最近は不況で、タクシードライバーにも他業界から質の良い人材が集まり易いと聞いていたが、こんな典型的なチンピラドライバーも未だいるんだ、と関心したりする。

それならと、ここでフル加速テストをしてみることにした。信号が青になったところで、わざとゆっくりと発進してみると、相変わらずピッタリとくっついて、しかも当方の加速が遅いので益々苛ついた顔をしてドアに寄り掛かっている。そこでフルスロットルを踏むと、例によってヴィーンという安っぽい音と共に回転計の指針は4,000rpm辺りを指して加速してゆく。まあ、決して抜群ではないが、並のファミリーカーとしては速い部類だろう。そこでミラーを見ると、後続の黄色いクルマは結構離れていく。次の交差点で右折する予定のために、右車線に入って赤信号で停車する。タクシーは左車線の2台ほど後方で停車し、直進するようだ。そして信号が青になり左の直進車線が動き出して、こちらの横を通過するときに、例のチンピラドライバーはこちらを大きく振り向いて(勿論走行中に)クルマの先端あたりを怪訝な顔で見ていった。あの様子では、前のムカつくハッチバックが、突然ものすごい加速でどんどんと離れていったので、一体あのクルマは何ものなんだという感じだった。と、いうことは、世間一般のファミリーカーの常識から言えば、結構強力な加速だったのかもしれない。といっても相手はプロパンのクラコン(LPG燃料のクラウン・コンフォートで、2L 79psの旧型)だから、あれに勝っても自慢にはならないが。という訳で、カローラとしては随分加速性能が良くて驚いたフィールダー1.8Lと同等な加速をするオーリス 180Gは、やっぱりカローラとしては十分に速いのだった。

オーリスにはマニュアルモードがついていて、しかもステアリングコラムには一丁前にパドルスイッチまで備わっている(写真左の白↓)。実際に使うことは無いだろうが一応操作してみると、レスポンスは並のトルコンATと同じくらいだから、マニュアルとして何とか使いものになる程度だが、まあ意味は無さそうだ。ただし下り坂などでは、左のパドルでダウンシフトさせれば、抑速には使えそうだ。

操舵力は適度でレスポンスも普通のファミリーカーとしては良い方だし、中心付近の不感帯も誰が運転するか判らないファミリー用途のクルマとしは妥当なところだろう。サスペンションは適度に固く、よく言えばスポーティーだし、それで決して不快ではないから、日本車としてはマトモな方だ。試乗したコースにはワインディング路などと言える場所は無いが、それでもちょっとキツ目ののコーナーがあるので、そこで試すことにする。ところが、折角のコーナーまであと100m程度のところで前に遅い車がいて、さらに左折をしている。そのクルマが左折を完了して前が空いたのでコーナーリング速度を少しでも上げるべくフルスロットルを踏んで、やがてコーナーに入ってみると結構余裕で安定した姿勢でクリアできたが、何しろ速度が不足している、と思ってコーナー脱出のときに速度計をみたらば、60km/h弱を指していた。このコーナーを50km/h以上で、この程度の安定性があるということは、トヨタのファミリーカーとしては随分よい部類に入るし、他社のコンパクトカーと比べてもファミリーグレードなら十分に良い方だ。そういえば、オーリスは1.8Lモデルの場合、リアにはマトモなサスを採用しているのだった。

カローラの場合は例えスポーティーを謳うフィールダー180Sでさえ、リアはドラムブレーキであったのに対して、オーリスは後輪にもディスクブレーキを装着している。そのリアのディスクブレーキをホイールから覗いてみると、フロントと比べて大きさは小さいとはいえ、何やらメカメカしいキャリパーが見える。 そしてよ〜く見れば、普通はリアディスクブレーキに付き物のパーキングドラムらしきものが見えないところを見ると、キャリパーにパーキング機構を組み込んだ通称P付きと呼ばれるタイプのようだし、更にリアキャリパーのシリンダーハウジングは色からしてアルミだろう。それに比べてフロントキャリパーはカッコの宜しくないモノが付いているようで、何やら前後でチグハグだが、まあ性能には関係ないので良しとしよう。

という訳で、あくまでもCセグメントの国産ハッチバックとして評価した結果は結構高得点になってしまったが、それでは同じCセグメントのベンチマークであるVWゴルフと比較したらといえば、それはちょっと勝ち目が無いかもしれない。それ程にゴルフというのは同クラスの他社に対して内容が飛び抜けているが、価格も飛び抜けている。オーリスの1.8Lの場合は、今回試乗した180GがCVTであるのに対して、3ペダルの6MTを装着したモデルがRSであり、これには日記で紹介したようにトヨタのメガウェーブで専用コースを試走していて、今回の結果と合わせれば、RSも悪くはないと思っている。また、ホットハッチという程ではないが結構スポーティーだから、クルマ好きが長距離通勤の足につかうには、償却を考えれば選択子のひとつになるかもしれない。年間2万キロくらいの通勤では、5年で10万キロだから、3シリーズなんかだと年間に80万円もの償却となり、いくらクルマ好きとはいえ、チョイと厳しい。そういう意味ではオーリスRSならば半分で済むという訳だが、これで我慢できるかは本人次第。

と、ここで考えてみたらば、スイフトスポーツ(スイスポ)なら更に安いし、スポーティーという意味でも上だから、おすすめはスイスポということになる。あれっ、長々と書いたオーリスは、結局スイスポの引き立て役だったのか??

注記:この試乗記は2012年9月現在の内容です。