トヨタ ウィッシュ 20G 試乗編
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既に警告したように、この試乗編はウィッシュのオーナーや予備軍、そして国産車と輸入車は今や内容的には同じであり、輸入車はボッタクっているだけ、と思っているユーザーはこれ以降の文章を読むと間違いなく腹を立てるので、お帰りください。

それでは、試乗編の始まりはじまり。

セレクターをDに入れて足踏み(プッシュ/プッシュ)式のパーキングペダルを踏むと、ペダルが上に上がった事でパーキングブレーキが解除されて事が判る(勿論、正面の計器盤中の赤いインジケーターが消えるのを確認しても良い)。右足をブレーキペダルからアクセルペダルに移して軽く踏むと、車はスムースにユックリと発進する。 ところがチョッと多めに踏むと、コツンというショックを感じてから加速(飛び出す)をする。それでも、ハーフスロットルでは結構レスポンスよく適度の加速をする。今度は信号待ちからの発進でフルスロットルを踏んでみると、静かだったエンジンは途端にガーっという下品な音と共に大した加速はしない。 まあ、それでも2リッターエンジンを搭載しているから、1.5リッタークラスよりは幾分マシな加速をする。このサイトの読者の多くに説明するならば、BMW320iツーリング(直噴以前の156ps)と同等くらいといえばイメージは掴めるだろうか。

 

動力性能的にはマアマアこんなものかという程度だったが、さて、操舵性はどうだろうか。ウィッシュのステアリングは停車中(勿論エンジンはアイドリング状態)では結構重くて中立位置から軽く動かそうとしてもフラフラ・グニャグニャと回ってしまう事はないから、意外と剛性感はある。ところが、走り出すと操舵力は軽くなるが、40km/h程度で巡航中に外周上で5cmくらい動かすと、その瞬間は殆ど反応しないが、やや遅れて少し進路が変わる。この操舵レスポンスの悪さは、10年前からすると大いなる進歩を遂げている多くの一般的な国産車の中にあって、なかなか珍しい存在といえるくらいに出来が悪い。

このように不正確なステアリング系に加えてサスペンションにも問題があるのだろうか、走行安定性は良くないから都内の幹線道路(4車線以上)で法定速度(60km/h)や制限速度(50km/h)での巡航速度が怖く感じてしまう。実はこの試乗の一 週間ほど前に、私用でほぼ同一仕様のウィッシュの助手席に乗って都心を移動したのだが、ステアリングを握っていなくても何やら不安な挙動を感じられ、その割には周りのクルマから離れると追いつけない状況が不思議だった。例えば前車の左折などで先行車輌との距離が大きく離れて、それに追いつこうと加速をするが、あるところで結構恐怖を感じ、その割にはなかなか前車に追いつけない。不審に思って速度計を覗き込むと、その指針は60km/hを指していた。要するにウィッシュは60km/h巡航だと、既に不安のある速度なのだ。
今回の試乗でも1週間前に助手席で感じたのと全く同様で、しかも弱い雨で路面は薄っすらと濡れていたから余計不安だった。試乗中に、これまた4車線道路で多少上り坂の左カーブが見えてきた。よく出来た車ならばそのまま50km/h進入しても問題無くクリアできそうなRだったが念のために40km/h程度に減速してカーブに進入するが、ヤバイっ!これでもオーバースピード気味だっ。という状況で結構冷や汗モノだった。結局道幅の広さと交通量の少なさに助けられてセンターラインギリギリまで膨らむ程度で減速したが、それにしても今時大きなアンダーステアと中途半端に固めたストロークしない足で、ちょっと無理すれば転倒も有り得るといってもオーバーではなさそうだ。

 

試乗した日の夜、実は事情により走行4万キロのマーチを雨のなか、幹線道路を主に1時間ほど運転したのだが、数時間前に試乗したウィッシュに比べれば、中古マーチのほうが余程安定してい て、はるかに安心感があった。

試乗した2.0Gは多少スポーティーな味付けなのだろうか、サスは基本的に硬くロール自体は少ないが、前述したようにこれが返って低速でも転倒の危機を感じるようなフィーリングになってしまっているのではないか。それでも道が良ければ多少はゴツゴツ感はある物の決して悪い乗り心地で無い が、チョッと大きな入力、すなわち路面の段差や補修の後などがあると、ガツンっというショックがあり、ダンパーも上等なものは付いて無さそ なのが感じられてしまう。

試乗車のブレーキは低速ではチョッと踏んだ、いやペダルに触れただけでガツンっと効くが、それではと爪先で微かに触れるような操作をすれば問題なくコントロールできるかといえば、そうでもない。何だかオン/オフスイッチ的で、これまた感心しないが、普通に乗っている場合には危険という程でもない。それでは、40km/h程度からの急減速はどうかといえば、 試乗コースは意外と道が空いているし道幅も充分あったのだが、このクルマで急ブレーキを試してみる勇気は無かった。従って、その時の挙動は判らない。
 

ウィッシュのライバルといえば先ずはホンダ ストリームで、この手のコンセプトでは本家だし、例のパクリ疑惑という事もあって何はともあれストリームということになる。あるアマチュアのクルマ関連サイトにウィッシュのようなパクリは許される事でない、というようなコラムがあったが、そこに書き込まれたコメントに「クルマの開発を舐めてるんですか」という書き込みがあった。ふ〜む、ストリームが発売されてから、それを見て 短期期間にそっくりな車を開発するなんてことが出来るくらいにクルマの開発は甘くない、という専門家の忠告か?
いや、まてよ。先ずはここをクリックして欲しい。そして、2ページの実績というところを見ると、「bB:13ヶ月で開発(既存PFを流用) 新カローラ:18ヶ月で開発」と書いてあるのが判るだろう。実はこ れは当時の車業界では有名な話で、業界関係者なら知らない筈は無いという内容らしい。そこでストリームとウィッシュの発売時期を調べてみたらば、初代ストリームは2000年10月の発売で初代ウィッシュは2003年1月だった。すなわち、その差は2年3ヶ月、言い換えれば27ヶ月もあった訳で、PF流用ならbBの実績から13ヶ月で開発できるのだから、27ヶ月もあったならば余裕のヨッちゃん、てな訳だ。それにしても、ネットの世界には似非専門家が多いから注意が必要だ。たぶん、新型車種の開発には数年必要という二昔前の話を聞き かじって言っているのだろう。恥ずかし〜い!

さて、他に国産で似たようなコンセプトといえばちょっとサイズは大きいがスバルエクシーガも7人乗りワゴンということで、比較の対象とした。ストリームには残念ながら 試乗経験が無いが、エクシードは簡易試乗記で取り上げている。それで、ウィッシュと比べてどうかと言えば、試乗した車種が2.0GTだったこともあり、月とスッポン状態だ。一覧表ではウィッシュ20Gと同等価格の2.0i−Sとしたが、どう考えてもウィッシュよりはクルマとして上なのは間違いない。
そして4番目はトヨタ マークX 240G Xパッケージというウィッシュと比べるなんて何を考えているんだとお叱りを受けそうな車種だ。なにしろ、V6 2.5リッターのFRセダンだからクラスは2つぐらい上だろうか。しか〜し、値段を見て欲しい。ウィッシュの226万円に対して、マークXは238万円だからその差は何と12万円!どちらかを選べとい われれば・・・・まあ、これ以上は言いませんが。
そして最後のVW ポロは価格的に近いから、予算的には完全に被るが、これまた全くコンセプトが違う。まあ、どれを選ぶかはユーザーの考え次第なので、特に何も言わないが・・・・。
 
    TOYOTA HONDA SUBARU TOYOTA Voklswagen
      WISH 20G STREAM
2.0RSZ
EXIGA
2.0i-S
MarkX 250G
X Package
Polo TSI
Comfortline
 

車両型式

  DBA-ZGE21G DBA-RN8 DBA-YA4 DBA-GRX130 DBA-6RCBZ

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.590 4.570 4.740 4.730 3.995

全幅(m)

1,695 1,695 1.775 1.795 1.685

全高(m)

1,590 1.545 1.660 1.435 1.475

ホイールベース(m)

2.750 2,740 2.750 2.850 2,470

駆動方式

FF FR FF
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.5 5.5 5.2 4.9

車両重量(kg)

  1,380 1,420 1,520 1,510 1,100

乗車定員(

  7 5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  3ZR-FAE R20A EJ20 4GR-FSE CBZ

エンジン種類

  I4 DOHC H4 DOHC V6 DOHC I4 DOHC
Turbo

総排気量(cm3)

1,986 1,997 1,994 2,499 1,197
 

最高出力(ps/rpm)

158/6,200 150/6,200 150/6,000 203/6,400 105/5,600

最大トルク(kg・m/rpm)

20.0/4,400 19.4/4,200 19.5/3,200 24.8/4,800 17.8/4,100

トランスミッション

  CVT 6AT 7DSG
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

15.2 14.6 14.0 13.0 20.0
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

8.7 9.5 10.1 7.4 10.5

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブル
ウィシュボーン
ストラット

トーションビーム ダブル
ウィシュボーン
マルチリンク トレーリングアーム

タイヤ寸法

  195/65R15 205/55R17 215/50R17 215/60R16 185/60R15

ブレーキ方式

前/後

Vディスク/ディスク

価格

車両価格

226.0万円 230.0万円 222.6万円 238.0万円 213.0万円

備考

        Highline
242万円

最近は国産車の出来も良くなってしまい、ボロクソ言える駄目グルマがなかなか無い状態で欲求不満気味だったが、今回は久々の貶し放題が出来たので、あーすっきりした。
と、くだらない事ばかり言っていてもアホだと思われるのでマジな結論を言えば、トヨタがこんなクルマを出すのも一番の原因は未だにレベルの低いユーザーが結構いて、そのユーザー達が求めているから確信犯でこんなクルマを作るのだと思う。クラウンだってゼロクラウンとして大いなる進歩、というか欧州車的なテイストにしたらユーザーからの評判が悪くて、結局次回のモデルチェンジでフワフワサス に戻す羽目になってしまった、という事実が判りやすい例だろう。ただし、今回のウィッシュ20Gだって、スペックだけをみれば、全高が高い以外はBMW320iツーリングと似たようなものだし、しかも7人乗れるという、正に理想のクルマと思って飛びつくユーザーがいても不思議は無い。

駄目なクルマは駄目なユーザーが欲しているから、そして駄目な政治家は駄目な国民が選ぶから存在する。今回の参議院選挙の結果の捻れ国会で、格差社会は益々助長される可能性が高そうだ。そして益々、低収入化する非正社員組からすれば、ウィッシュなんていうのは無理に無理を重ねたローンでやっと手に入れた憧れのクルマ。それをボロクソ言うなんてトンでもねぇ奴だという気持ちも、判る、ワカル。

注記:この試乗記は2010年7月現在の内容です。