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ダイハツタントは07年12月に2代目へとFMCされた軽ハイトワゴンで、大きな特徴は助手席側をBピラーレスとし大きな開口幅を持たせていて、
高級軽自動車として一躍人気の車種となった。
そしてタントは08年の年間売り上げは約16万台に達し、ムーブ(約15万台)を追い抜き、ダイハツのトップ車種となった。ところが、ライバルのスズキは2代目タントに僅かに遅れる08年1月に、タントのライバルであるパレットを発売している。
パレットの08年販売台数は7万台強とタントには遠く及ばないが、それでもパレットの対抗策としてタントをヒンジ式ドアとしたエグゼを新たに発売した。
今回の試乗車はタントエグゼX(2WD)で価格は121万円。外観上では真っ四角のオリジナルタントに対して、エクゼは多少丸みを帯びているし高さも多少は低く見える(実際には
20mm低いだけだが)。
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リアのラッゲージスペースはリアシートを最後端にセットした場合は結構狭い(写真上左)が、最も前進させると軽としては十分なスペースが確保される(写真上右、←→間が移動距離)。
勿論、リアシートを畳めばバンのような使い方ができるのは、この手の軽自動車として今や当然だ。
室内スペースも最近のハイトワゴンタイプの軽としては一般的で、リアスペースなどは下手なコンパクトカーよりも広いくらいだ。
試乗車の内装色はダッシュボードがブラックで、それ以外の部分、すなわちシートと内装が白を基調とした明るい配色だった。アルトもアイボリーの内装のみが設定されていたが、確かに狭い軽自動車の場合、明るい内装としたほうが狭さを感じないのかもしれない。
そして内装はといえば、ライバルのスズキパレット(ニッサンルークス)と比べると気のせいかパレットに分があるようだ。とは言っても悪く言えば所詮は軽ともいえるから、300万円以上のクルマが当たり前の高級志向のユーザーだったら満足できるかは微妙なところだ。
それでも、人間は慣れれば如何にでもなるものだから、普通に毎日使っている分には大きな不満は無いだろうし、少なくとも乗るたびに愕然とするようなことは無い。
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シートもこれまたスズキと同様に、一昔前の軽に比べれば大きな進歩をしているが、幅の狭いのは当然としても、長さも短いから太股を充分にサポートする事は出来ないのはスズキと同様だが、
これまたパレットと同様でハイトワゴンの着座位置が高いために膝から下が垂直となる姿勢のために、意外と疲れが出ない。まあ、それでも長距離はしんどいだろうが・・・・・。
なお、試乗車にはちゃあんとシートリフターが付いていたから、小さい女性やバカデカい男性(まれに女性)でもOKだ。
試乗車にはパレットと同様でオートエアコンがついていたところを見ると、上級の軽自動車は最近の傾向としてオートエアコンが装着されているのが当然のようだ。これじゃぁ、リッターカーの立場が無いではないか!と、思ったら、価格もリッターカーの低グレード車よりも高かったりする。
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エンジンの始動はインテリジェントキーを所持するが、最近流行りのプッシュボタンではなくステアリングコラム右側面のノブを捻ってして行う(写真上左)。
アイドリングは結構な振動を伴い、ステアリングからも床からも、そしてシートのクッションを伝わってブルブルと感じる。この振動の多さは今まで乗ったスズキの軽たちより大きく、廉価車の代表であるアルトにさえも負けている。
ただし、この時点ではコールドスタート直後なのでエンジンが暖まっていない為に振動が大きくて、適温になれば改善されるのかと思い水温計と見ようとしたが付いてなかった。そう言えば軽に限らず最近のクルマには水温計のない場合が多いようだ。確かに無くても不便はないが・・・。
話を戻して、20分ほどの試乗をした後も振動は大して改善されなかったから、このクルマは根本的に振動が多いのだろう。
ATセレクターはステアリングコラムの左から生えているレバーで行うから、最近は珍しくなったがその昔は当たり前のコラムシフトという奴だろう。
このレバーはそれ自体のポジション表示は無いから、ポジションの確認をするのにはメーターパネル右側にある燃料計と共に仕込まれたポジション表示を見るしかない。
表示自体は見やすいから慣れれば何の問題も無いだろう。
駐車場内を移動するために軽いアクセルと僅かに踏むと、クルマは力強く走り出す。このトルク感はNA(自然吸気、ノンターボ)の軽としては驚くべきで、今まで乗ったスズキの軽を完全に上回っている。
今回の試乗は同乗者無しの単独ドライブだったこともあり、パッセンジャー分の60kg程度は有利な筈だから、その点は考慮が必要だ。今回のディーラーも1級国道沿いにあるために駐車場から公道にでたら直ぐにフルスロットルを必要とする。
駐車場の段差を左にフルステアしながら下りる時の挙動はフラつく事はないが、逆に足の硬さを感じる。そしてフルスロットルを踏むと、加速は一瞬遅れてからモア〜っと回転が上がってから加速が始まり、フル加速中はヒューンという音が聞こえるという、CVTのネガティブな面を目一杯感じてしまう。
そして、駐車場での出だしで感じたトルク感の割には中々速度が上がっていかない。要するに、軽いアクセルペダルをチョッと踏んだ時に、ガバっと開くような非線形特性のスロットルだったようだ。
まあ、この手法はトヨタの乗用車では御なじみのものだから、直系のダイハツも同じ制御ロジックを使っていても不思議は無い。
信号待ちで先頭に止まったのをチャンスとばかりに、次の青でフルスロットルを踏んでみる。
エンジンの回転数はモアーっと4,000rpm程度まで上がり一生懸命に加速していく。以前のCVTのように3,500rpm程度で一定回転を保つというよりも、速度と共に多少は回転数が上がってゆく。そこで60km/hになったところでアクセルを緩めると、回転数はスーッと落ちてゆき加速から定速巡航に移る。
走行中に右折の場面で気が付いたのだが、どうも右斜め前方に死角があるようだ。原因は下の写真を見ると判るが、
アルト等に比べてフロントのクオーターウィンドウ(三角窓、⇒部分)がタントエグゼは殆ど役に立っていないのが判る。
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今度はコラムから生えているATセレクターをDの手前のSに入れてみると、巡航時でも1,000rpm程回転が上がり、スロットルを踏み込むとDより速いタイミングで回転数が上がる。途中のワインディング路でSレンジを試してみると、音は煩いが4,000rpmを維持しながらコーナー手前に進入し、入り口で一瞬減速し、コーナーの出口が見えたところでアクセルと徐々に踏み込むと、回転数は5,000rpmまで上がって加速の体制になる。この時の加速感は軽のNAとしては充分過ぎるほどで、盛大なエンジン音と共に右足に追従する感覚は
、こんな実用車にしては意外にも中々スポーティで、車好きのドライバーならついつい熱くなりそうだ。
タントエグゼの乗り心地は良く言えばスポーティーで、硬いがシッカリした乗り味だから、スズキの各車が軽としては乗り心地が良くコンフォートに振っているのとは対照的だ。
この硬い乗り心地のためにコーナーリング時も結構安定しているが、狭い車幅と高い車高はコーナーリング速度を上げると転倒の危険を感じるので、無理は禁物だ。
この辺は、所詮は軽ということになる。
ブレーキの効きは最近の国産車らしく軽い踏力で街乗り程度の速度ならストロークも適度で良く聞く。ただし、相対的に高い車高と狭いトレッドから、強めのブレーキを掛けるとイマイチ不安定なのは軽の宿命だろうか。
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今回の仕様比較では試乗車を中心に同じタントエグゼの上級モデルであるカスタムの、その中でも高価で重いRS 4WDと、エグゼのベースであるタントを、更にライバル社としては当然スズキとなるので似たようなコンセプトのパレットとパレットSW(エグゼカスタム相当)の5車を比較してみる。
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DAIHATSU |
DAIHATSU |
DAIHATSU |
SUZUKI |
SUZUKI |
|
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TANTO EXE X |
TANTO EXE
CUSTOM RS
4WD |
TANTO X |
PALETTE XX |
PALETTE SW
TS 4WD |
|
車両型式 |
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L455S |
L465S |
L375S |
MK21S |
MK21S |
|
寸法・重量・乗車定員 |
|
全長(m) |
|
3.395 |
← |
← |
← |
← |
|
全幅(m) |
|
1.475 |
← |
← |
← |
← |
|
全高(m) |
|
1.730 |
← |
1.750 |
1.735 |
1.745 |
|
ホイールベース(m) |
|
2.490 |
← |
← |
2,400 |
← |
|
駆動方式 |
|
FF |
4WD |
FF |
← |
← |
|
最小回転半径(m) |
|
4.2 |
4.7 |
4.2 |
4.5 |
← |
|
車両重量(kg) |
|
870 |
980 |
920 |
930 |
1010 |
|
乗車定員(名) |
|
4 |
← |
← |
← |
5 |
|
エンジン・トランスミッション |
|
エンジン型式 |
|
KF-VE |
KF-DET |
KF-VE |
K6A |
← |
|
エンジン種類 |
|
I3 DOHC
|
I3 DOHC TURBO
|
I3 DOHC
|
← |
I3 DOHC TURBO
|
|
総排気量量(cm3) |
|
658 |
← |
← |
← |
← |
|
最高出力(ps/rpm) |
|
58/7,200 |
64/6,000 |
58/7,200 |
58/7,200 |
64/6,000 |
|
最大トルク(kg・m/rpm) |
6.6/4,000 |
10.5/3,000 |
6.6/4,000 |
.6/4,000 |
9.7/3,000 |
|
トランスミッション |
|
CVT |
←← |
← |
← |
← |
|
燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行) |
|
21.5 |
19.0 |
21.0 |
21.5 |
19.0 |
|
パワーウェイトレシオ(kg/ps) |
15.00 |
15.3 |
15.9 |
16.0 |
15.8 |
|
サスペンション・タイヤ |
|
サスペンション方式 |
前 |
ストラット |
← |
← |
← |
← |
|
|
後 |
トトーションビーム |
3リンク |
トーションビーム |
トレーリングリンク |
← |
|
タイヤ寸法 |
|
145/80R13 |
165/55R15 |
145/80R13 |
165/55R14 |
165/55R14 |
|
ブレーキ方式 |
前/後 |
ディスク/ドラム |
Vディスク/ドラム |
ディスク/ドラム |
← |
Vディスク/ドラム |
|
装備 (●:標準装備 ○:オプション) |
|
UVカットガラス |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
エアコン |
|
オート |
オート |
マニュアル |
オート |
オート |
|
キーレスエントリー |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
パワーウィンドウ |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
シートリフター |
|
− |
● |
○ |
● |
● |
|
アルミホイール |
|
− |
● |
− |
− |
− |
|
ABS |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
ブレーキアシスト |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
運転席エアバッグ |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
助手席エアバッグ |
|
● |
● |
● |
● |
● |
|
サイドエアバッグ |
|
− |
− |
○ |
● |
− |
|
オーディオ CD |
|
● |
○ |
● |
● |
○ |
|
価格 |
|
車両価格 |
|
121.0万円 |
169.1万円 |
128.0万円 |
127.1万円 |
167.8万円 |
|
備考 |
|
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|
タントエグゼに乗った時は随分背が高くで不安定なスタイルだと思ったが、オリジナルのタントは更に20mmも背高だった。そしてパレット一族はその中間の高さで、まあナンダカンダ言っても背が1.7m以上あるのに幅は1.5m弱しかないし、トレッドなんて1.3m程しかない。そんな形状だから
室内は驚くほどに広いが、重量はベースグレード車でも軽という割には全然軽くない900kg超で、4WDの上級車では1トン級となってしまう。それでもエンジンは660だから、重い4WD車ではターボを付けてもパワーウェイトレシオは見るも悲惨な16kg/psに迫っている。しかも値段は170万円もして更にオーディオレスだからナビでも付ければ200万円コースとなってしまう。
高い、重い、遅い、不安定といえば一体誰が買うんだと考えてしまうが、実際には良く売れている。そんなにメリットがあるのかといえば、何より経費が安い。税金は勿論のこと、保険だって安いから確かに普通車よりは維持費はかからない。そして、全幅の狭さも狭い道では大いなるメリットになるのだが、それでも軽しか通れない道路は滅多にお目にかかれない。東京の一部には確かに極狭い道もあるが、皮肉にも軽自動車規格が変わって大きくなったらば、なんと通れなくなった何ていう笑い話もあるくらいだ。そういえば、近所のオバちゃんが狭い建売
住宅の5ナンバー時代のカーポートに大型ミニバンを実に上手く入れていた。ようするに、腕が良ければ特に軽でなくても何とかなる場合も多いということだ。
昨年のワゴンRを皮切りに、ルークス(パレット)、アルト、そして今回のタントエグゼと最新の軽自動車の試乗を続けた結論は、確かに上級の軽自動車の進歩は著しいが、それでも排気量の小ささと全幅の狭さは、完全には克服できてはいない。それは当然で、軽の性能はもはや限界で、後は規格を変えるしかないだろう。そんな中で、最も軽らしい軽といえば、アルトだった。90万円代で買えるモデルならば、近場の足に限定すれば十分にメリットがあるのではないか。
注記:この試乗記は2009年12月現在の内容です。
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