VW POLO 1.4 Comfortline
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VWでは最小モデル となるBセグメントのポロがFMCされた。とりあえず最初は1.4Comfortlineのみのシングルグレードで発売され、価格は203万円。 フロントスタイルはゴルフYにソックリで、VWに明るいユーザーは別として、一般にはチョッと見ただけでは判別が出来ないくらいだ。外形寸法では先代に比べて長さで+80mm、幅で+20mm、高さは−5mmで特に幅が広く、高さが低くなった事から、先代のような見た目の腰高感は薄れている。


グレーの室内は当然質素でドアの内張りなどもプラスチック丸出しの部分もある。それでも、ダッシュボードはソフトパッドになっているのは流石だ。シートも見た目は如何にも欧州車的で座り心地自体も悪くないのだが座面が短く、しかも先端は更に幅が狭いので、 太ももをサポートしない国産車的なドライビングポジションになりやすい。 それでも前後/上下に調節範囲の広いステアリングを調整すれば、何とか満足できるポジションを得られるが、それでも何となく膝は浮いている。ポジションも決まり 、ふと周りを見回すと室内の幅の狭さをに気が付く。しかし、実際の車幅は1685mmとぼ5ナンバーサイズ一杯だから、先々代レガシィより10mm狭いだけなのだが なぜか狭い。良く見ると分厚いドアのお陰で室内幅が狭い事に気が付いた。 Cセグメントのコンパクトカーでこんなに厚いドアが必要なのか?という疑問もあるし、安全上でこれほどまでにドアの厚みを必要とするならば、国産コンパクトカーは危険な乗り物ということになるが、はて?





セレクターをDレンジに入れてブレーキペダルを放すと僅かなクリープがあり、アクセルを踏むと極自然に前進する。 何も知らなければこのクルマがDSG(DCTタイプ)だとは気が付かないくらいに自然でトルコンATに近いフィーリングを持っている。発進加速自体は、まあそれなりだが、普通のドライバーが普通に走る 分には大きな問題は無い程度の加速はする。 感覚的にはゴルフ1.4TSIコンフォートライン(要するにゴルフYの廉価版)と同等だし、BMW116iと比べれば勝るとも劣らないという表現が出来る。

前車が左折などで減速したために20〜30km/h程度まで速度が落ちて再び加速しようとアクセル をフルに踏み込むと、多少遅れてからエンジン回転がモア〜っと上ってシフトダウンされる。 まあ、この辺は燃費の関係もあるのだろうが所詮は実用車、それもBセグメントのコンパクトカーとしての一面を見せる。幾ら欧州車、それもドイツ車、そしてVWと言えどもコンパクトな大衆車である事は変わりないから、それ程多くを期待してはいけない。

今度はセレクターを更に手前に引いて”S”モードで走ってみる。 この時正面のメーターパネル内のディスプレイにはDではなくSが表示される。なおポロの場合、オートマ(DおよびS)モードでも今現在のギア位置を常に表示する (左写真)から、国産車のように一体今何速で走っているのかが判らないのとは違い、走っていて安心感がある(まあ、そんなことは如何でも良いと言うドライバーも多いだろうが)。
このSモードでは巡航中でも2,500〜3,000rpmくらいに回転数を上げるように低いギアを選択する。それでも、キックダウンによるシフトダウンは決して素早くはない。ただし、最近のクルマだからシフトレスポンスは学習機能がついていることは充分考えられるので、いつもアクセルをガンガンと踏んでいると、やがては迅速なレスポンスのモードに落ち着く事も有り得る。こういう面が最近の電子制御の嫌らしいところで、本当の評価は少なくとも1週間以上乗らないと出来ないのが実情だが、それでも基本的にトロい実用車がユーザーの使用方法を学習したとしても、ポロのコンフォートモデルがGTIのようになるわけではない。 

Sモードで走行したときの顕著な違いは加速よりも減速時に見られた。走行中に前方の信号が赤に 代わったのを発見して手前から少し減速すると、それに連れて短いエンジンのブリッピング音が聞こえ、律儀にもシフトダウンをしているのだと判る。Sモードにすると減速時にシフトダウンするのはランエボXのような過激なクルマではよくある制御だが、ポロのベースモデルでもこんな制御になっている。例えばBMW3シリーズのようなトルコンATの場合はSモードで減速してもシフトダウウンは起こらないのだから、ポロの場合はDGSだからなのだろうか?

1年ほど前に試乗した先代ポロ(1.4コンフォートライン)はVWというブランドから 、ゴルフと同様に大きさや形状から想像するのとは全く違った安定感を期待したのだが、何故か腰高の不安定感が感じられてガッカリした。しかし、今回の新型はこの点では見事に改善されていた。 安定化の代償は硬い乗り心地だが、それでも決し不快ではないし、ボディがシッカリしているので振動も一発で押さえ込む典型的な出来の良い欧州車という感じだ。先代ではVWらしからぬ不安定な挙動に乗った途端にがっかりしたが、新型はVWのブランドから想像するとおりになった。 ステアリングは低速では極々軽いので徐行しながら交差点を左折する場合などは片手でクルクルと回るが、速度が上がって巡航状態になれば適度な操舵力となり、決して軽すぎることは 無くなる。セルフセンタリング性も適度で、むしろゴルフGTIよりもFFっぽさが少ないとも感じるくらいだ。 今回はワインディング路を試すようなコースは走っていないが、ポロのように街乗り主体のコンパクトカーとしては充分に素直な特性だった。それと共にフロントに自然吸気の1.4ℓという軽いエンジンを積んでいることからも、操舵時の反応も中々軽快だ。

ブレーキも1,080kgの軽量ボディに4輪ディスクを奢っていることもありフィーリングも良く、勿論軽い踏力でグイグイと効くから、殆どの状況では爪先でチョンと踏めば事が足りる。 試乗が終わってから念のためにキャリパーを確認しようとホイールを覗いてみたらば・・・・・・見えない!そう、このクルはいわゆる鉄っチンホイールにキャップ付きだった。
 

ポロのライバルを比較するに当たって、実は昨年アップした先代ポロ1.4の試乗記ではヴィッツ、マーチ、フィットとの比較をしたのだが、考えてみればこれら国産コンパクトカーを買うユーザーが50万円以上 (グレードによっては100万円近く!)高いポロを比較検討するだろうか、という疑問もあって、今回は輸入車同士で比較をすることにした。
 
    Volkswagen MINI PEUGEOT FIAT RENAULT
      POLO 1.4
Comforline
ONE 207
Style1.6
Grande Punto LUTECIA 1.6
eLe 3Door
 

車両型式

  6RCGG ME14 A75F01 199142 RK4M

寸法重量乗車定員

全長(m)

3.995 3.700 14.045 4.050 3.990

全幅(m)

1.685 1.685 1.750 1.685 1.720

全高(m)

1.475 1.430 1.470 1.495 1.485

ホイールベース(m)

2.470 2.465 2.540 2.510 2,575

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  4.9 5.1 5.4 - 5.1

車両重量(kg)

  1,080 1,130 1,210 1,140 1,180

乗車定員(

  5 4 5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  CGG N12B14A - 350A1 K4M

エンジン種類

  I4 DOHC

総排気量(cm3)

1,380 1,396 1,598 1,368 1,598
 

最高出力(ps/rpm)

85/5,000 95/6,000 120/6,000 77/6,000 112/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

13.5/3,800 14.3/4,000 16.3/4,250 11.7/3,000 15.4/4,250

トランスミッション

7DSG 6AT 4AT 5セミAT 4AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

17.0 14.2 11.2 - 11.6
 

パワーウェイトレシオ (kg/ps)

12.7 11.9 10.1 14.8 10.5

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット  ←

トレーリングアーム マルチリンク トーションビーム トレーリングアーム

タイヤ寸法

前/後 85/65R15 75/65R15 185/65R15 175/65R15 185/60R15

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/ディスク ディスク/ディスク Vディスク/ディスク Vディスク/ドラム ディスク/ディスク

価格

車両価格

203.0万円 235.0万円 199.80万円 196.0万円 222.0万円

備考

        5Doorは
232万円

Bセグメント輸入車で最も売れているのはMINIで2009年では月平均約1,000台の新規登録がある。昨年のポロの実績が約800台/月 (今年前半はモデル末期のため比較しない)だからMINIの強さが判るだろう。MINIの場合はベースモデルの”ONE”でもポロ1.4より30万円も高い設定だし、内外装をみてもMINIは趣味性を強調したいわばプレミアムカー的要素があり、ポロの実用車として徹底した成り立ちとは全く異なる種類のクルマだ から比較にはらない。 それでも、どちらも欧州車ということでファッションやブランドでクルマを選ぶユーザーの場合は、結構競合したりするかもしれないが・・・・・。
次はプジョー207で09年は約200台/月程度の登録がある。プジョーの場合は日本では決してメジャーではないが確実なプジョーファンがいて、その如何にもフランス的なオシャレなセンスを好むユーザーが確実に存在する。特に女性ユーザーも多いようで、友人の奥さんにもプジョーファンがいて、自分の車は必ずプジョーで205→206→207という具合に買い替えている。そして、フィアットグランデプントとルノールーシアは、09年の登録実績はそれぞれ約20台/月と約10台/月で、確かに100万円チョイで性能も信頼性も世界でトップの 日本車の製造国で、中途半端な輸入車に50〜100万円のエキストラコストを払うユーザーは、殆どいないのも当然ではある。

このクラスには他にヒュンダイTBなんていうのもあるが、このモデルは既に韓国では生産中止となっていて次期モデルのi20に置き換わっている。従って、国内のカタログに残っているTBは単たる売れ残りということだろう。ヒュンダイの2009年9月の登録台数は11台で、これは勿論全モデルの合計台数だ。こんな状況では新型どころかヒュンダイ自体の日本市場からの撤退も有り得る だろう。

先代で気になった腰高感による不安定さも解消され 、理想のBセグコンパクトカーに近づいたポロは、今後本命と言われる1.2ℓターボが追加され、価格的には今回の1.4よりは高くなるようだ。そして我々クルマ好きには大いに興味が持てるGTIも、近い将来は設定されるのも間違いないだろう。プジョー207GTとGTiの輸入が途絶えるなどコンパクトハッチ市場が益々縮小している今現在、ポロGTIに対する期待感は大きい。

注記:この試乗記は2009年10月現在の内容です。