左の写真は350PREMIUM
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その昔は兄弟車を合わせれば月に2万台以上売れていた大ベストセラーのマークUは、マークXと名前を変えて今やその売り上げは全盛期よりも一桁少ない。まあ、ミニバンブームや軽自動車ブームで今やハイオーナーセダンは風前の灯だから売れないのは仕方ないのかもしれないが、
それでも今回のマークXは最廉価グレードを先代よりも約10万円も値下げして、何とかシェアー拡大をと頑張っている。そのマークXに早速試乗してみたので速報版としてお伝えしよう。
ニューマークXの基本的なスタイルはキープコンセプトで、新型を見た瞬間にマークXであることが判る。先代では不評だったボンネット先端での盛り上がり、通称”デコッパチ”スタイルが廃止されたことで、随分と洗練されたように感じる。やっぱり、デコッパチは失敗だったようだ。
同様に後ろから見た先代の特徴でもあったバンパーに組み込まれた排気管のディフューザーも廃止されて、左右からクロームメッキされた太い(実は見掛けだけのマフラーカッターが付いているのだか)排気管が各1本ずつ覗いている姿は、中々の高性能セダンという雰囲気がある。
外形寸法は先代に比べて全長は同じ、全幅は+20mm、全高は同じだから、僅かに幅が広がった以外は同一寸法だ。全幅の1,795mmというのはマンションなどに多い立体式駐車設備の条件である1,800mm以下という基準にピッタリだ。
ちなみに現行のクラウンロイヤルも1,795mmとマークXと全く同一だから、5ナンバーサイズである1,695mmが標準だった一昔前に比べて、現在では標準が100mm広がったと思えばよい。
トランクは先代に比べて張り出しが減った事からオヤジ向け高級セダンの必須事項であるゴルフバッグ4個搭載が可能になった。
今回の試乗車は250G リラックスセレクション(269万円)というグレードで売れ筋の250G(267.4万円)の助手席にもパワーシートを付けた(標準はドライバーのみ)ことで重量がアップして、
結果的に減税額が増えるという法の盲点を突いたようなグレードだから、暫定の減税が無くなれば意味のないグレードでもある。250GのベースグレードはFパッケージで、これはアルミホイール、インテリジェントキー、キセノンヘッドランプやレザー巻ステアリングなどの装備は省いた事で驚きの238万円というグレードだ。4気筒2ℓ級のファミリーミニバンの
上位グレード並みの価格で、V6のミディアムセダンが買えるというコストパフォーマンス抜群のグレードだ。
先代マークXの内装を始め
て見たときは何となく安っぽさを感じたし、なるほどこれなら当時全面的に改良されたゼロクラウンのユーザーが見
ても100万円以上の価格差を納得させるのに充分な差を感じられた。
そして今回の新型はといえば、先代に比べれば安っぽさは消えていた。特にドアのグリップなんてレザーにステッチまで入っての高級感満点・・・・と感心して、よくよく見たらばレザーは弾性樹脂でステッチも金型で作ったフェイクだった。恐れ入りました。
今回の新型は安っぽさが薄れているのは嬉しいが、それでもクラウンには敵わないようにちゃあんと考えているのもトヨタらしい。
シートは座面の織物が幾何学模様という、少し前のメルセデスCクラス(の低グレードモデル)などを彷彿させる。サイドのファブリックは日本的ケバケバと欧州的な荒い織目の中間くらいだ。
ところが、上級モデルの場合は例の毛足の長い化繊モケットとなるようで、まああれが高級と信じているユーザーの好みに合わせているのだろう。座ってみると以前の国産車のフワフワよりは大分
マシになって
はいるが、例えばVWゴルフなんかと比べるとマダマダという感じだ。それでも1時間くらいなら何とか連続して座っていられそうだ。
例によって下品に派手な色鮮やかな自光式メーターを睨みながら、コンソール上のセレクターレバーを手前に引くが動かない!実は標示は今流行の一直線だが動作はジグザクゲートのようで、右に左に動かしながら
でないとセレクト出来ない。パーキングブレーキは勿論足踏み式の0N/OFF繰り返しのタイプだから、
取り合えず踏んでみてペダルが更に奥まで行くようならONになったので、もう一度踏んでみればOFFとなる。そして、最初に踏んだら殆どストロークしないで、手前に戻ったらば最初から
ONだったのを解除したことになる。勿論メーター内の小さくてセコイ標示を確認してもよいが・・・・・・。
ブレーキペダルから足を離すと極自然なクリープと共にクルマは前進し、公道の前で一旦停止してから本線にクルマが来ないのを確認してから少しアクセルと踏み込むとスムースに発進した。この時左にステアリングを切りながら駐車場の僅かな段差を下りる時の挙動もフワフワ揺れることも無く極自然だった。しかし、スムースではあるが、その挙動は走り締めた瞬間に”おっ”、これは良いと直感する程ではないし、段差を斜めに降りた挙動も絶妙な揺れとダンピングに関心する・・・・・訳でもない。
V6 2.5ℓエンジンは巡航時では極めて静かで流石はトヨタ
車と感心する。そこでアクセルペダルを強く踏み込んで見ると、充分に素早いレスポンスでシフトダウンが行なわれて、これまた充分な加速で速度を上げていく。極普通のドライバーからすれば、この加速性能なら全く何の不満も起きないだろう。フル加速時での音は決して質の良いものではないし音量もある程度は室内に侵入してくるが、これまた不快というわけではないし、フル加速状態には当たり前という音がする。先代と同一エンジンながらレギュラーガソリン化によって最高出力で
は−12ps、最大トルクで−1.7kg・mの性能低下は、実際に運転している限りでは殆ど感じない。元々”トヨタ馬力”などと陰口を叩かれたハッタリ気味の過大表示から、まともな表記になったと思えば寧ろ好ましい傾向でもある。
トヨタの看板車種だけあって傘下のアイシン製6ATも相変わらす安定した性能で、BMWで御なじみのZF社製程のダイレクト感はないが、決して悪いフィーリングではない。何しろ世界的に評価が高く、ボルボV70を初めとして多くの海外メーカーが採用しているだけあってレスポンスも充分速いし、つながりもスムースだ。
こういうハイレベルの部品メーカーを傘下に持つ事がトヨタの強みでもある。
何度も言っているようにクルマというのはカーメーカーが幾ら頑張っても優秀な部品メーカーが身近にないと良い車はできない。ポルシェの乗り味が抜群なのもマニアが涎をたらすような有名ブランドの部品を当然のように使っているからだ。
そういう意味では最近の日本は世界的に見ても結構レベルの高い部品メーカーが揃ってきた。報道で度々、ヒュンダイなどの韓国車の躍進と共に日本の自動車産業の将来を危ぶむ声もあるが、今の韓国にはマトモな部品メーカーは存在しない。それより危険なのは中国だろう。あの躍進は凄まじいし、何より日本の部品メーカーをリストラされたベテラン技術者を驚くべき高待遇で迎えているという噂も聞く。
動力性能はこの手のクルマのユーザーには充分過ぎるのは判ったが、それでは操舵性はどうかといえば、これも普通に走るには充分すぎるくらいに適度にクイックで適度にトロクで、並みのドライバーでも実に扱いやすい。
そして一般道の多少きつめのコーナーに常識的な速度より少し速いくらいで突入しても、多少のアンダーは感じるものの、実に素直に何もなかったようにクリアできる。伊達に後輪を駆動している訳ではないようだ。MarkXにはスポーツグレードの”S”があるから、それなら更にスポーティーになるだろう。
何しろ250Gに標準のタイヤは60扁平で、最近の感覚ではやけにタイヤのハイトが高く感じてしまう。
そして、乗り心地は意外にも硬めで、それも出来の良い欧州車のように一発バシッときてもピタッと納まったり、硬い中にもしなやかさがあるという物ではなくて、イマイチ安っぽい硬さだ。とは言っても、250GというのはマークXでは廉価版だし、そのベースグレードのFパッケージは何と238万円で買えることを考えれば、文句を言う筋合いでも無さそうだが。
走る、曲がるは及第点、どころが普通のドライバーには(価格を考えれば)充分過ぎる程の出来であった新型マークXだが、それでは止まる性能はどうだろうか。
実は今回の動力性能と操舵性能を先代と比べてみればびっくりする程の違いは無いというのが本音で、要するにマークXは先代から充分な性能を持っていた訳で、今回はどちらかと言えば使いやすさとか質感の改良が趣旨のうようだ。
しかし、先代よりも大いに進歩したのがブレーキ性能だった。
何しろ5年前に発売と共に試乗した先代マークXのブレーキは遊びのストロークが長く、しかも効き始めもグニャッとしたフィーリングで、おまけに踏力も大きいという少し前までの駄目な国産車の典型例だった。
これに対して今回の新型は遊びストロークも適度に短いし、効き始めると充分な剛性感があり踏力も適度だった。ただし、最近では国産車でもフィーリングを真似ているBMW的な喰いつくような効きではないが、決して悪くは無い。
この進歩を考えれば、国産車のブレーキが国際基準に達したのはホンのここ数年ということが判る。
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|
|
TOYOTA |
TOYOTA |
NISSAN |
Mercedes
Benz |
Mercedes
Benz |
|
|
|
MarkX 250G
リラックスセレクション |
(旧)MarkX
250G |
Skyline
250GT |
C250 CGI |
E250 CGI |
|
車両型式 |
|
GRX130 |
GRX120 |
V36 |
204047 |
212047 |
|
寸法・重量・乗車定員 |
|
全長(m) |
|
4.730 |
4.730 |
4.755 |
4.585 |
4.870 |
|
全幅(m) |
|
1,795 |
1,775 |
1.770 |
1.770 |
1.855 |
|
全高(m) |
|
1,435 |
1.435 |
1.450 |
1.445 |
1.470 |
|
ホイールベース(m) |
|
2.850 |
2,850 |
2.850 |
2.760 |
2,875 |
|
駆動方式 |
|
FR |
← |
← |
← |
← |
|
最小回転半径(m) |
|
5.2 |
← |
← |
5.1 |
5.3 |
|
車両重量(kg) |
|
1,520 |
1,510 |
1,570 |
1,550 |
1,680 |
|
乗車定員(名) |
|
5 |
← |
← |
← |
← |
|
エンジン・トランスミッション |
|
エンジン型式 |
|
4GRFSE |
← |
VQ25HR |
271 |
← |
|
エンジン種類 |
|
V6 DOHC |
← |
← |
I4 DOHC TURBO |
← |
|
総排気量(cm3) |
|
2,499 |
← |
2,495 |
1,795 |
← |
|
最高出力(ps/rpm) |
|
203/6,400 |
215/6,400 |
225/6,800 |
204/5,500 |
← |
|
最大トルク(kg・m/rpm) |
24.8/4,800 |
26.5/3,800 |
26.9/4,800 |
31.6/4,300 |
← |
|
トランスミッション |
|
6AT |
← |
← |
5AT |
← |
|
燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行) |
|
12.4 |
12.6 |
11.2 |
11.2 |
11.4 |
|
パワーウェイトレシオ(kg/ps) |
7.5 |
7.0 |
7.0 |
7.6 |
8.2 |
|
サスペンション・タイヤ |
|
サスペンション方式 |
前 |
ダブルウィシュボーン |
← |
← |
3リンク |
← |
|
|
後 |
マルチリンク |
← |
← |
マルチリンク |
← |
|
タイヤ寸法 |
前/後 |
215/60R16 |
← |
225/50R17 |
225/45R16 |
225/45R17 |
|
ブレーキ方式 |
前/後 |
Vディスク/ディスク |
← |
ディスク/Vディスク |
ディスク/ディスク |
← |
|
価格 |
|
車両価格 |
|
269.0万円 |
275.1万円 |
289.8万円 |
567.0万円 |
634.0万円 |
|
備考 |
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MarkXのライバルといえばスカイラインが思い浮かぶ。上の表を見れば判るように外形寸法、ホイールベース、エンジンスペックなど、ほぼ同一のスペックを持っている。しかし、マークXは国内専用モデルであるのに
対して、スカイラインは北米のインフィニティブランドでG37として売られているモデルに2.5ℓを追加して国内用としたものだ。このマークXやスカイラインをメルセデスのC(Dセグメント)とE(Eセグメント)と比べてみると、国産勢の寸法は特にホイールベースを含み長さ方向でDセグメントとEセグメントに中間を狙っている事が判る。インフィニティGが北米で成功している理由に、Dセグメントとしては大きい寸法のメリットが原因となっているようだ。これは日本でも同様で、スカイラインやマークXはCクラスや3シリーズに比べてリアの足元スペースが広いので、4人乗車での長距離移動で欧州勢に
勝っている。それに見た目もCや3よりもEや5に近いから、知らない人にはマークXは結構な高級車に見える。
ところで今米国で大きな問題になっているトヨタ(レクサス)車のアクセルがマットに引っかかって暴走する問題だが、マークXはといえば写真のようにオルガンペダルだから引っかかりようが無い。流石はマークX!必要なことは手を抜いていない。そしてマークXとプラットフォームを共有したプレミアムブランドのレクサスISはといえば、あれっ?何で?
スカイラインも勿論、国産セダンとしてはトップクラスの出来だが、こうして比べると価格的にはマークXの敵ではなく、今回試乗したマークX250G相当のスカイライン250GTでは20万円もの差があるし、マークXには更に廉価版のFパッケージ(238万円)がある。アルミホイールなんて何のために必要なんだ?キセノンライトなんて雨の日は逆に見づらいし、インテリジェントキーなんて邪魔臭いものよりもキーを差し込んで回して始動するのが本来だろう!という頑固オヤジには正にピッタリなのがFパッケージだ。ブレイド2.4G(256.2万円)やイプサム240S(245.7万円)などの4気筒2.4ℓ FFのガラクタを買う予算があれば、V6でFRの高級乗用車が買えてしまうという、何とも買い得車種なのに、なんで爆発的に売れないのだろうか?
・・・・・って、今更時代が違うでしょうに、と言われそうだが、出来は違っても似たようなコンセプトの本家であるメルセデスEクラスやBMW5シリーズを時代遅れという人は少ない。それどころか憧れのクルマだったりする。
日本で駄目なら中国を初めとするアジア地域ならどうかと調べてみたら、な〜んと2005年から中国で現地生産されていたようで、車名はReiz(鋭志)
というそうだ。なるほど、少なくともアジア圏だったら憧れの高級車となるだろう。もう、こうなったら北米で売っちゃえばどうかな?トヨタブランドで格安に売ったら売れないだろうか?マークXなら床のマットがずっこけてもアクセル全開の暴走状態にはならないし・・・って、また言ってやがる。しつこいぞ、との声が聞こえるので、これにて終了!
注記:この試乗記は2009年11月現在の内容です。
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