SUZUKI KIZASHI 4WD
※検索エンジン経由でノーフレームの場合はここをクリックしてください。



スズキといえば軽自動車専門メーカーというイメージが浮かぶだろう。10年ほど前のスズキの軽といえば安かろう悪かろうの典型で、安全装備も他社に比べれば大幅に遅れをとっていた。しかし、その後は徐々にレベルアップされて、新型ワゴンRなどは実にレベルの高いクルマになっていて、 これなら普通車登録のコンパクトカー顔負けだとも思ったが、価格を聞けばコンパクトカーよりも高かったりする!そして、軽以外では以前から作っていて米国でも人気のあったエスクードや 欧州でも売っているコンパクトカーのスイフトなどがあるが、今回は遂に正統派Dセグメントセダンのキザシを発売した。 Dセグメントといえば世界的にはプレミアムブランドのBMW3シリーズやメルセデスCクラス、そしてアウディA4やレクサスIS、大衆ブランドでも各社入り乱れての最激戦区で、スズキの新規参入は相当の覚悟の結果にちがいない。



多くの人たちがキザシのスタイルを褒めているが、確かに上手いデザインでライバル他社に対して大きな強みになることは間違いない。ドアを開けて内装を見ると、標準で座面に通機孔の開いたレザーシートが装着されており、ダッシュボード他の内装もソフトパッドで、ドアの内張りにはステッチさえ入っている。 BMW3シリーズのハイラインパッケージと同等とは言わないまでも充分な高級感があり、スズキのクルマとしは他に類を見ないものだ。





レザーシートに座ってみると、座面の長さもまあまあで太股までシッカリサポートするし、これまたスズキのシートとしては最高の出来で、レクサスISのレザーシートと比べても決して劣らない。 このシートはドライバー側なら座面右側面のスイッチで調整するが、その配置も動作も世界共通とも言える方式だし、シート位置のメモリーもあるから、これこそBMW3シリーズ (の上級モデル!)から乗り換えても全く違和感は無い。シート位置を合わせながら、今度はステアリングホイールの位置を調整する。流石にこれは手動式で、ステアリングコラム底面のレバーを解除して上下・前後に動かしてからレバーをロックするのもオーソドックスだ。 シートやステアリングの調整範囲も充分だから、ドライバーは自分にベストのポジションを取れる。そんなの当たり前だろう、と言われそうだが、これが出来ない国産車が何と多い事か。最近は以前より減ったが、それでも寝ッ転がって片手でステアリングを操作する、農○オヤジスタイルしか 執れないようなクルマがマダマダ存在している。



ドライビングポジションも決まったところでエンジンを始動するが、当然ながらインテリジェントキーを所持してスタート/ストップボタンを押す方法 となっている。アイドリングの振動は今時のクルマとしては多めで、ボディ全体とステアリングホイールの両方を伝わってくる。 まあ、これもスポーティといえば言えないこともないが、高級感という面ではマイナスとなる。そして正面のメーターに目をやると、外周に白を使ったデザインは個性はあるが、個人的にはどうも好きになれない。ここで気が付くのは 右側にある速度計のフルスケールが240km/hまであることで、見かけという面では欧州車っぽくて良い雰囲気だ。 この点ではレクサス各車や二ッサンGT−Rのように180km/hのメーターに白ける事は無い。

キザシのミッションはCVTで、コンソールから生えたセレクターはP→R→N→Dで、Dから右に倒してマニュアルモードとなり、押してダウン、引いてアップというBMWタイプというかレーシングタイプのパターンを使用している。Mモード時のアップ・ダウンを別にすれば、Dまでのパターンは標準的なディプトロタイプだから、最近のこのクラスのクルマに乗っていれば何の違和感も無いが、13年超の買替え促進減税を狙っているようなオーナーだと、T型のレバーではないしDの手前に2→Lとなっていないなどで、面食らうかもしれない。

オーソドックスなセンターコンソール後方のレバーでパーキングブレーキを解除してから、軽くアクセルを踏むとクルマは極自然に発進した。脇道から本道に出るために一時停止の後、クルマが来ないのを確認後に左にフルステアを切って表通りに 出る。10m程で左に駐車車両があったために一度停止して、対向車がいなくなった事を確認後に右足にチョッと力を入れすぎたらクルマはびょん!と飛び出しそうになった。勿論、ソーッと踏めば静かに発進は可能だが、最初の右折時はフルステアによる走行抵抗から多少アクセルを踏みぎみでも素直に発進したが、その後の直進時で同じ 感覚で踏んだために飛び出しぎみとなったようだ。 まあ、この件は贔屓目に解釈してレスポンスが良いといことにしよう。段差を斜めに降りた挙動も絶妙な揺れとダンピングに関心する・・・・・訳でもない。

キザシのミッションはCVTだが、最近のCVTらしく違和感がなく、1,500rpm程度での巡航からアクセルとグンっと踏んでみると回転 計の指針は素早く2,500rpm程度まで上がり、丁度トルコンATでキックダウンしたような挙動を示した。車両重量1,560kgに2.4ℓ 188psだからパワーウェイトレシオは8.3kg/psとなり、決してハイパフォーマンスという値ではないが、 実際に乗ったフィーリングは結構加速の良い元気なクルマという印象があり、スペック的に似ているレガシィB4 2.5i4WDよりも何故か活発に感じる。コンソール上のセレクターをDから右に倒すとマニュアルモードとなり、引くとアップ、押すとダウンというBMWなどと共通のパターンとなっいる。このマニュアルモードでのレスポンスは極め良く、短いタイムラグでスムースに変速する。 例えば、4速で約2,000rpmでの巡航時にレバーを一段押してみると、即座に3速に入り約3,200rpmで巡航を始めたので、もう一段押してみると素直に約4,500rpm以上まで回転が上がった。



実は後でよく考えたらばキザシには標準でステアリングにバドルスイッチが装備されていた。フロア上のレバーで試した時のレスポンスの良さから、パドルスイッチを使ってのワインディング路の走行は、結構楽しいだろう と想像できる。
キザシの各種試乗レポートなどで操舵感の不自然さを指摘する人もいるが、今回乗った4WDモデルに関しては特に大きな違和感は感じなかった。中心付近の不感帯や操舵力も適度だし、このクラスのセダンとしては適度にクイックで大きな不満はない。 乗り心地は基本的に硬くて欧州車的であるが、スプラッシュのように硬すぎるというこもなく、出来の良いDクラスの標準的なものだ。そして加速時のエンジン音は決して静かではなく、よく言えば力強いが人によっては煩いと感じる程度の音量だ。 硬い足と力強いエンジン音は、このクルマがスポーツセダンを狙っているのだろう事は間違い無く、標準で235/45R18というタイヤを装備することでも、それは伺える。
 

キザシの出来自体は悪くないとは言っても、キザシで無ければならない理由もない。このクラスは内外を問わずに出来の良い車が多く最も激戦区で、しかも日本ではセダン自体の需要が少ないから、 キザシの販売は苦戦するだろう。価格も2WDで約280万円というのは アテンザ25EXやレガシィB4 25iに比べると割高に感じる。 まあ、キザシの場合はレザーシートを始めとして高級装備が標準で満載されているから価格的には不利になるが、それならば装備は最小限にして250万円 以下、出来れば230万くらいに価格設定すれば少しは売れるかもしれないが、それでも数は見込めないとなれば、今のままでワングレード&受注生産でも良いのかもしれない。
 
    SUZUKI HONDA MAZDA SUBARU VOLKSWAGEN
      KIZASHI 2.4 ACCORD 24E ATENZA 25EX LEGACY B4 25i
L Package 4WD
PASSAT TSI
COMFORTLINE
 

車両型式

  RE91S CU2 GH5FP BM9 3CBZB

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.650 4.730 4.735 4.730 4.785

全幅(m)

1,820 1,840 1.795 1.780 1.820

全高(m)

1,480 1.440 1.440 1.505 1.490

ホイールベース(m)

2.700 2,705 2.725 2.750 2,710

駆動方式

FF AWD
 

最小回転半径(m)

  5.2 5.5 5.4 5.5 5.3

車両重量(kg)

  1,490 1,500 1,420 1,460 1,440

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  J24B K24A L5-VE EJ25 BZB

エンジン種類

  I4 DOHC F4 SOHC I4 DOHC
TURBO

総排気量(cm3)

2,393 2,354 2,495 2,457 1,798

最高出力(ps/rpm)

188/6,500 206/7,000 170/6,000 170/5,600 160/6,200

最大トルク(kg・m/rpm)

23.5/4,000 23.7/4,300 23.0/4,000 23.4/4,000 25.5/4,200

トランスミッション

  CVT 5AT CVT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

12.4 11.8 12.8 14.0 10.8

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

7.9 7.3 8.4 8.6 9.0

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィシュボーン ストラット

マルチリンク ダブルウィシュボーン マルチリンク ダブルウィシュボーン 4リンク

タイヤ寸法

前/後 235/45R18 225/50R17 215/50R17 205/60R16 205/60R16

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/ディスク

価格

車両価格

278.8万円 270.0万円 250.0万円 252.0万円 344.0万円

備考

4WD:299.8万円        

既に新聞等で報道されているようにスズキはドイツのVolkswagenと提携する事になった。スズキは日本では単なる軽自動車メーカーと見られているが、世界的には生産台数が年に200万台クラスのメーカーで、取り分けインドでは50%以上のシェアを持っている。とはいってもスズキはあくまでBセグメント以下の小型車を主体とする メーカーだから、今回のキザシは一気にスイフトより2クラス上を狙った事になる。そしてスズキとVWはDセグではキザシとパサート、Bセグではスイフトとポロと それぞれ競合することになるが、将来的に共通部品を使ったりするのかは今後の課題だろう。

既に日記でも紹介したが、今回のキザシ発売を一番喜んでいるのはフラッグシップが出来た販社の社長さんで、実際に今回試乗したディーラーでは社長さん自ら対応してくれて、ハイオーナーカーを販売するという長年の夢がかなったと感慨深げに語っていた。クルマに限らないがフラッグシップを製品にラインナップする事によるイメージアップとブランド価値のアップは、結果的に大いなるプラスになる。そういいう意味では国内販売としてはキザシで商売にはならないのは判っていても発売したスズキの戦略は正しかったと思う。ただし、残念ながら売れ行きは期待できない とは思うが・・・・。

注記:この試乗記は2009年12月現在の内容です。