日産 ジューク 後編


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走行モードをノーマルにして走り出し、駐車場内を30m程徐行した第一印象は、適度にトルク感もあるし悪くない。駐車場の出口で国道の流れの切れ目を待つ間のアイドリングは最近の国産車らしく充分に静かだから、特に気にしない限りは これまた全く不満はない。 やっとクルマの流れが切れたのを確認して左車線に入るが直ぐに信号待ちに引っかかり前車の後ろに停止する。前方の信号が青になり、例によってゆっくりとした加速で流れの速度が上がっていくから、こちらもそれに追従する。この程度の加速ならジュークの1.5ℓエンジンでも全く不満はない。 50〜60km/h程度の流れに乗っている時の回転数は1,200〜1,500rpmくらいだが、スロットルを踏むと少し遅れて2,000rpmくらいまで上がる。更に踏み込むと今度は4,000rpmくらいまで回転が上がるからCVTとしてはフィーリングの良い部類といえる。 すこし前のCVTはスロットルを踏んでも回転は上がらず速度だけが上がっていくという、なんとも異様だし苛々する挙動だったが、最新のクルマであるジュークはその点大いに改善されていて、これならCVT も悪くはない。

今度は 走行モードをエコにしてみる。最近発売される新型車の多くが、エコ、ノーマル、スポーツという3段階のモードを持っていて、その殆どの場合エコモードはレスポンスが遅すぎて使い物にならなかった 。ジュークも全く同様で、巡航時の回転数は1100rpmくらいで、スロットルを踏んでも殆ど反応は 無く、やや暫くしてからモアーっと回転が上がり始めるが、加速は極めて緩慢で、状況によっては寧ろ危険なくらいだ。 やはり最近のエコモードというのはクリーン減税に適合させるのが目的で、実用性な無いと割り切るしかない。

予想通り使い物にならないエコモードを早々に諦めて、今度はスポーツモードに切り替えてみる。スポーツモードでの巡航では、回転計の針は常に2000rpm付近を指していて、ここから踏み込むと即座に4000rpmくらいに上がり、結構機敏に加速を始める。 この程度のレスポンスがあれば、通常の走行では全く不満はでない。そこで気を良くして、今度は信号待ちからのフルスロットル加速を試してみる。結果は、やはり1.5ℓ成りで決して速くはなく、まあこんな物だろうという程度だった。この点では今年の末に追加設定される1.6ターボモデルに期待するしかないだろう。

ジュークのステアリングは低速ではかなり軽いが、40km/h以上では適度の重さとなるし、中心付近のレスポンスも適度に良く、実用車としては充分に合格点が与えられる。 サルーンに比べて高目の視点からは見通しが良く、ボンネットもハッキリと認識できるし、一時代前のSUV、というかオフロード車のようにマルでトラックの運転席のごとく高い視線でもないから、乗用車からの乗換えでも違和感はない。 まあ、これは最近のSUVに共通なものでもあるが。
ジュークの乗り心地は硬めで良く言えば欧州車的だ。したがって、路面の凹凸は確実に拾うし突起などに乗り上げればガンっと一発ショックを食らうが、ダンパーがシッカリ効いているのと同時に、恐らく車体の剛性も高いのだろう と思うが、振動が一発で止まるのも欧州車的だ。ジュークのこの欧州フィーリングは何処から来るのかと考えてみたらば、ジュークの主戦場は欧州だし、本来は英国生産が主だから当然 だった。

コーナーリング特性は本気で試すだけの時間も場所もなかったが、途中何箇所かのコーナーを通過した状況では、一般的な国産車の水準からすれば充分に安定しているし大きなアンダーステアも感じなかった。 しかも、高い車高の割りには大きなロールも少なく、硬いサスが良い方に効いているのだろう。安定したコーナーリングにしても、硬いながらも不快感のない乗り心地 にしても、これは同じ日産のデュアリスよりも明らかに勝っていたのは、単に経験を積んだからだろうか。



最近の国産車は欧州車のように軽い踏力でガツンっと効くブレーキが主流になっているが、ジュークのブレーキはこれらに対して多少踏力が重くなっている。好みの問題もあるが、個人的にはこのくらいの方がコントロールし易いくて好ましいが、BMWのようなフィーリングを好むユーザーからすると効きが良くないと感じるかもしれない。 ジュークのブレーキで評価できるのは、多少踏力が重目といっても、踏めば踏んだだけの制動力を得られるということで、これは悪くない。以前の日本車は重いだけではなく 、ある一定の減速度を超えると踏んでも全く効きが上がらないという不安なブレーキが多かったが、ジュークのブレーキは、その点では大きな進歩がある。 ただし、上左の写真のようにリアはドラムブレーキが装着されている。ドラムの最大の欠点は・・・・見栄えが悪い事!

兄貴分のデュアリス(キャッシュカイ)の先月(10年5月)の欧州での販売台数は2万台強というから、立派なベストセラーカーといえる。下の表で見ると、やはりデュアリスはジュークよりも一回り以上大きいし、車重は何と300kg近くも重い。ジュークの軽快な走りは 車重の軽いことが大いに寄与していたようだ。
そのジュークのライバルを探してみたら、意外に少ないことに気が付く。車格(スペック)的にも価格的にも一番近いのはスズキSX4だろうか。そしてモデルチェンジしたばかりのRVRはといえば、クラス としてはデュアリスに近いが、その割には価格はジュークに近いという大判振る舞いで、価格勝負で売るしかない三菱の現状を表しているようだ。そして海外ではクロスポロを 挙げたいが、ベースのポロがFMCされたことで現在国内販売は終了してしまった。ただし、欧州では丁度新型クロスポロが発売されたところなので、ジュークの欧州でのライバルは、この新型クロスポロとなるのだろうか?
 
    NISSAN NISSAN Suzuki Mitsubishi Voklswagen
      JUKE 15RX DUALIS 20G SX4 1.5XG RVR 1.8E *CrossPolo
 

車両型式

  YF15 KJ10 YA-11S GA3W 9NBTS

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.135 4.315 4.135 4.295 3.920

全幅(m)

1,765 1,780 1.755 1.770 1.670

全高(m)

1,565 1.615 1.605 1.615 1.535

ホイールベース(m)

2.530 2,630 2.500 2.670 2,470

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.3 5.3 5.3

車両重量(kg)

  1,170 1,460 1,190 1,350 1,180

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  HR15DE MR20DE M15A 4B10 BTS

エンジン種類

  I4 DOHC

総排気量(cm3)

1,498 1,997 1,490 1,798 1,597
 

最高出力(ps/rpm)

114/6,000 137/5,200 111/6,000 139/6,000 105/5,600

最大トルク(kg・m/rpm)

15.3/4,000 20.4/4,400 14.8/4,400 17.5/4,200 15.1/4,500

トランスミッション

  CVT 4AT CVT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  19.0 14.2 16.4 15.2 14.4
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

10.3 10.7 10.7 9.7 11.2

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

トーションビーム マルチリンク トーションビーム マルチリンク トレーリングアーム

タイヤ寸法

前/後 205/60R16 215/60R17 205/60R16 215/65R16 215/40R17

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/ドラム Vディスク/ディスク Vディスク/ドラム Vディスク/ディスク

価格

車両価格

179.0万円 229.4万円 165.9万円 178.5万円 (245.0万円)

備考

15RS
169.1万円
      *販売終了

先進的なスタイルと内装、そして欧州車的な乗り味というようにジュークはなかなか出来の良いクルだった。 価格も170万円(15RS)と軽のターボ(キックスRS 4WD:160万円)と大きく変わらないという、買い得感もある。欲を言えばもう少しパワーが欲しいが、それに関しては年末に追加発売される1.6ℓターボに期待しよう。 そして出来ればMTなどをラインナップしてくれれば、マニアは泣いて喜ぶだろうが、需要を考えれば無理な要求かもしれない。

注記:この試乗記は2010年6月現在の内容です。