VW Golf TSI Trendline (1.2T) 後編

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実際にシートに座ってみると低価格とはいえ充分に座り心地の良さを感じるのは流石にVWで、昔から国産車が大きく差をつけられているシートだけあって、同じCセグメントのカローラとは大違いだ。と、こんなことを書くと
B_Otaku はドイツ車偏向だと言いたい輩もいるかもしれないが、このシートだけは個人の好み云々といっても欧州車が圧倒的に優れているのを否定できないだろう。これは長年の椅子の生活している文化と、つい最近までは畳の上に正座していた文化の違いだから、当然といえば当然なのだ。



この出来の良いシートに座って正面を見据えると、メーター類は1.4Tと全く同一で、黒地に白い文字や目盛は実に見易い。そしてディスプレイも黒地に白で、ポルシェを初めとしてドイツ車では良く使われている。と ころで、VWといえば少し前までは鮮やかなブルーの照明が特徴的だったが、最近は止め てしまった。その理由というのはブルーは人間の視覚が関知するときに 、微妙に遅れが出ることが判明したためで、今後は使わないとのことだ。それじゃあ、ブルーの自光式メーターが得意中の得である国産車は、視覚視認が遅れまくり?? 



低速時に少しアクセルを踏むと結構なトルク感で、おっ、これはイケる・・・・と感じる。その後国道の60km/h程度の巡航では、回転計の針は1,300rpm程度まで下がってい て、この時のDSGのギア位置は7速まで上がっている。 この程度の速度で巡航中なら急遽加速が必要となる場合は無さそうなので大きな不満もない。今度は途中から幅員8m程度の一般道に入る。 ここでは、状況により速度が20km/h程まで落ちてしまい、そこから50km/h程度まで再加速する場面がある。
20km/hまで速度が落ちた場合のDSGは3速1,200rpm程度で、そこからアクセルを踏んでも殆どレスポンスはないし、シフトダウンも起こらない。そこで苛々しながら、ついつい2/3程度までアクセルを踏んでしまうと、少し (いや大分)遅れて突然加速が始まる。 2速にシフトダウンされたとするとエンジンの回転数は1,700rpmくらいになる。この1.2ターボのトルク特性をみると、1,500rpm以下では殆どトルクが 出ないが、1,550rpmからは突然立ち上がって最大トルクとなり、そのまま4,000rpmまではフラットで、それ以上はまた大きく減衰する。すなわち、殆どトルクの出ない1,200rpmから ではキックダウンの反応が遅くて、大分遅れて3→2速へのシフトダウンが行われ、この時の回転数1,700rpmでは行き成り最大トルクとなってしまうために、クルマは 突然ビョンっと飛び出すことになる。


VWのDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)であるDSGは、流石に経験が長いだけあって殆ど違和感を感じないし、何も知らなければトルコン式のATではないことに気が付かないだろう。それでも場合によっては、 カツンっという多少のショックを感じる場面もある。 これはDSGが原因というよりもシフトダウンの制御ロジック上で、悪条件が重なると発生するようだ。
このクルマは低燃費を達成するためだろうか、一般道では発進後にあっという間に6〜7速までシフトアップしてしまう。巡航時の回転数は極力1,500rpm以下にするのだろうが、これだと3〜5速は殆ど出番が無くなってしまう。これが高速道路ならば話は変わってくるだろうが、日本の一般道を走る限りでは7速DSGは無用の長物・・・とは言わないが、実に勿体無い。それでも、40〜50 km/hでの流れに身を任せて、チンタラと巡航している分には大きな不満は無いが、一度速度が落ちたときに、焦らず、騒がずユックリと加速するオバちゃん的運転を身につけ る必要があるかもしれない。
 
まあ、この手のクルマでは普通はコーナーを攻めるなんていう乗り方はしないだろうから、今回は極々穏やかに、それでいてチョッと速めくらいのコーナーリングを試してみたが、1.2Tの操舵性はゴルフらしく安定した弱アンダーで例によってFF実用車の見本みたいな特性だった。乗り心地も硬目だが決して悪くないし、 この点ではスポーティに足を固めたGTIより明らかに心地良い。

ブレーキも今更何も言う事が無いくらいに小型車としては十分で、BMWのように軽すぎず、それでいて普通の体力のドライバーならば充分に軽いと思う程度の踏力で減速する。恐らくブレーキは1.4Tと全く同じではないかと想像するが、何しろブレーキローターとキャリパーは鉄っちんホイール で、小さな隙間からチラッと覗けるという状態だから、ホイールを外さない限りは全貌を見ることが出来ない。 同じチラリズムでもキャリパーじゃあ、セクシーでも何でもない。したがって、ブレーキパッドの磨耗のチェックはやり辛い事になる。
 

ゴルフのバリエーションは確実に増えて、別格のRを除けば下記の4種類が現在販売されている。先代のゴルフXは販売の半分以上がGTIという驚くべき結果だったが、今回のYはそうでも無いらしく、一番の売れ筋は1.4ℓシングルチャージのTSコンフォートラインだそうだ。
 
    Volkswagen Volkswagen Volkswagen Volkswagen Volkswagen
      Golf TSI
Trendline
Golf TSI
Comfortline
Golf TSI
Highline
Golf GTI Polo TSI
Comfortline
 

車両型式

  1KCBZ 1KCAX 1KCAV 1KCCZ 6RCBZ

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.210 3.995

全幅(m)

1,790 1.685

全高(m)

1,485 1.460 1.475

ホイールベース(m)

2.575 2,470

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.0 4.9

車両重量(kg)

  1,270 1,290 1,340 1,400 1,100

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  CBZ CAX CAV CCZ CBZ

エンジン種類

  I4 SOHC
Turbo
I4 DOHC
Turbo
I4 DOHC
Turbo+S.C.
I4 DOHC
Turbo
I4 DOHC
Turbo

総排気量(cm3)

1,197 1,389 1,984 1,197
 

最高出力(ps/rpm)

105/5,000 122/5,000 160/5,800 211/6,200 105/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

17.8/1,500
-4,100
20.4/1,500
-4,000
20.5/1,500
-4,500
28.6/5,200 17.8/1,500
-4,100

トランスミッション

  7DSG 6DSG 7DSG
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

17.0 16.4 16.2 13.0 20.0
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

12.1 10.6 8.4 6.6 10.5

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

リンク トレーリングアーム

タイヤ寸法

  195/65R15 205/55R16 225/45R17 185/65R15

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/ディスク

価格

車両価格

257.0万円 278.0万円 312.0万円 366.0万円 213.0万円

備考

        Highline
242万円

しかし、装備品の差を比べてもザッと15万円以上もあり、更にエンジンもトロいとなっては、21万円安いとはいえ、一体何のメリットがあるのかと思ったら、実は・・・・・・・何とGolf TSI Trendlineは今ならエコカー減税と買い替え補助金の対象となり、最大383,700円も得するのだった。
そうかぁ、やっぱり表面的な比較では判らないものだ、と思ったのだ。ところが、よくよく調べればTSI Comfortlineも同様にエコカー減税も買い替え補助金も対象となるのだった。 あれゃ、そうなると、やっぱりTSI トレンドラインを買うならば、あと21万円也を追加してコンフォートラインを買うのが正解ではなかろうか。実際に多くのユーザーが乗り比べた結果にコンフォートラインを選ぶそうだ。

ちょうど今、ポロがマイナーチェンジされてエンジンが1.4から、この1.2ℓターボ に改装された。上記の一覧表を見てのとおり、ボディ重量の違いから、パワーウェイトレシオは1.4ターボのゴルフTSIコンフォートラインと同等で、価格は200万円代前半だから、結構な人気になるかもしれない。 やっぱり、1.2ターボはポロ用と思った方が良いだろう。

注記:この試乗記は2010年5月現在の内容です。