NISSAN ELGRAND 350 HIGHWAY STAR PREMIUM 後編
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Dレンジに入れてクリープで少し前進しながら枠内から出て、駐車場内を移動するためにチョッと右足を踏んだ瞬間にピョンと飛び出して、オッと危ない。軽いアクセルペダルとオーバーなレスポンスから、 チョッと危険な程にパワーがある・・・・・という気持ちをユーザーに与えるというセコい作戦が見え見えだが、まあいいか。国道に出て、流れに乗る程度なら3.7リッターエンジンの発揮する強大なトルクにより充分過ぎる加速が得られる。
50km/h程度の巡航では、回転計の指針はアイドリングに毛の生えた1,200rpm辺りを指しているが、少し右足を踏んだだけで回転計の針はピョンと2,000rpm前後に跳ね上がる。 エルグランドのミッションは2.5も3.5も全てCVTだが、何も考えなければトルコンATとの違いは判らない程で、この面ではCVTの進歩を感じる。 今度は1,200rpm巡航からフルスロットルを与えてみると、一瞬のタイムラグの後に3,000rpm程度での加速を始める。ところが、この時の加速感はどうもイマイチで、3. 5リッターエンジンから想像するような上体がバックレストに食い込むくらいの加速を期待すると、ちょっと違う。 しかし、考えてみれば3.7リッターの280psとはいっても、車輌重量は2020kgもあり、パワーウェイトレシオでは7 .2kg/psとなってしまい、これはスカイライン250GT(225ps、1580kg)とほぼ同等であり、そう思えばフルロットルでの加速性能は妥当なのが判る。やはり、クルマは軽いのが一番 だ。

ボンネット内の写真撮影をする為に室内のリリースレバーを引き、ボンネットの隙間からロックを解除して、ボンネット自体を持ち上げると、何故かヤケに重い?あれっ、もしかして??そう、エルグランドのボンネットにはダンバーは付いておらず、コンパクトカー並に 細くてチャチなステーを立てるのだった。それにしても、車輌価格で500万円を超えるクルマで、ステーは無いだろう?
 

先代までのエルグランドはFR方式という国産ミニバンには珍しい駆動方式により、外観からすれば意外なほどに素直なハンドリングを持っていた。そして今回のFFとなってしまった新型はといえば、一言で言えばやっぱりFFであることは隠せない。 それでも、中心付近のステアリングレスポンスは決して良くないが、背の高いミニバンとしては特に悪いとは言えない程度だ。操舵力は意外と重めで、センタリングは強いから直進性という面では良い方向に行っている。コーナーリング特性はハッキリとアンダーステアが感じられるが、コーナーの入り口で減速しながらトルクを掛けずに曲がっていけば、 まあまあの速度で綺麗に曲がれるが、オーバースピード気味でコーナーに入ったり、コーナーリング中にトルクを掛けたりすると、たちどころにアンダーステアの洗礼を受けてしまう。 まあ、これも背の高いフルサイズミニバンということを考えれば、充分なコーナーリング性能だが、面白さなんかを期待したらばガッカリすることになる。

乗り心地は重厚で突き上げも少なく、しかもサスペンションのセッティングは硬めでしなやかという、中々のモノだった。路面の凹凸も軽くいなすし、マンホール 等の段差を踏んでも突き上げは少なく、しかも大柄なボディにも拘らず、ボディがボヨンと振動したりする事も無いから、結構ボディ剛性も高いのだろう。実際、この乗り心地の良さと少ないロールの両立は国産ミニバンとしてはトップクラスではないか。

  

ライバルのアルファードがフロントに1ポットキャリパーを使用しているのに対して、エルグランドは2ポットキャリパーを採用している。それだけが理由とはいえないが、エクストレイルのブレーキは軽すぎず 重すぎず、適度な踏力で効きも良いし、強い減速でもストロークも短く剛性感もある。試乗中の一般市道で後ろにクルマがいなくなった時に、フルブレーキ(ABS作動直前くらい)を踏んでみたが、背の高い割にはクルマの挙動は安定していて、ノーズダイブも少なかった。

そしてナビ装着車には後退(車庫入れ)時にトップビューが表示されるアラウンドビューモニターという機能があった(写真右上)。これなら、このデカいクルマを誰でもピタリと駐車できるだろう(たぶん)。

今回試乗したエルグランド350と同等の国産3.5ℓ級フルサイズミニバンといえばトヨタアルファードとホンダエリシオンとなる。 そこで、同じエルグランドでも2.5ℓモデルの最廉価版を加えた4車種の比較を下表にて行ってみた。
 
    @ A B C
      NISSAN
ELGRAND
NISSAN
ELGRAND
TOYOTA
ALPHARD
HONDA
ELYSION
      250G 350 Highway
Star Premium
350G
L Package
3.5 Prestage
SZ
 

車両型式

  BDA-TE52 DBA-PE52 DBA-GGH20W DBA-RR5

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.915 4.850 4.920

全幅(m)

1.850 1.830 1.845

全高(m)

1.805 1.815 1.890 1.790

ホイールベース(m)

3.000 2.950 2.900

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.4 5.7 5.7 5.8

車両重量(kg)

  1,900 2,020 2,030 1,980

乗車定員(

  8 7

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  QR25DE VQ35DE 2GR-FE J35A
 

エンジン方式

  I4 DOHC V6 DOHC V6 SOHC

総排気量(cm3)

2,488 3,498 3,456 3,471
 

最高出力(ps/rpm)

170/5,600 280/6,400 280/6,200 300/6,200

最大トルク(kg-m/rpm)

25.0/3,900 35.1/4,400 35.1/4,700 36.0/5,000

トランスミッション

CVT 6AT 5AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

11.6 9.4 9.2 8.5
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

11.2 7.2 7.3 6.6

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィッシュボーン

マルチリンク マルチリンク トーションビーム ダブルウィッシュボーン

タイヤ寸法

  215/65R16 228/55R18 215/60R17 225/50R18

ブレーキ方式

前/後

Vディスク/Vディスク Vディスク/ディスク

価格

車両価格

307.7万円 435.8万円 450.0万円 461.0万円

備考

  4WD:442.0万円 4WD:468.9万円  

こうして比べてみると、国産3.5リッターミニバン3車種の数字上の比較では実によく似ている。どれもが280〜300ps、35kgm級の性能であり、重量も2トン前後。まあ、強いて言えば500万円近いクルマなのにリアサスにトーションビームを採用しているアルファードが光っている!が。そして、価格はこれまた上級仕様が450万円級で、これにナビやら何やらのオプションを満載すれば、今回の試乗車のように550万円クラスとなってしまう。
アルファードの簡易試乗記でも触れたが、この手の国産フルサイズミニバンは今回取り上げた3.5リッター版が売れ筋で、2.5リッターの廉価版は売れないそうだ。まあ、車重が2トンもあれば、3.5リッターでも大した動力性能では無いから、2.5ではパワー不足というのもあるかもしれない。しかし、それ以上にこれらのユーザー層 が結構裕福な階層でもあることも原因のようだ。
こういう事実も含めて、特別編ではミニバンについて考えてみる。例によって、独断と偏見の毒舌となるから、この先は、これらの内容に理解を示してくれる常連さんのみとし、一般の読者向けはこれにて終了とする。

注記:この試乗記は2010年9月現在の内容です。

上記の内容を理解したうえで。

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