ニッサン エクストレエイル 20GT Clean Diesel
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今から30年程前には、国産でもディーゼル乗用車というのは結構売れていたし、各社より発売されていた。特にニッサンの場合は直列6気筒の乗用車用ディーゼルを持っていたことから、セドリック/グロリア(現在のフーガのポジション)という高級乗用車のディーゼルモデルを街中で見ることも多かった。更には20年程前の4WD車ブームでは、パジェロ人気に端を発してオフロード用4WD(多くがディーゼル)車が飛ぶように売れた時代もあった。しかし、ディーゼルエンジン車というのは、重い、遅いとともに、黒い黒煙を撒き散らしながら走る姿が、いかにも環境破壊の象徴のように見えるし、それを利用した東京都の石原知事によるパフォーマンスもあり、ディーゼル乗用車は一気に絶滅してしまった。この、長く途絶えていた国産ディーゼル乗用車として、久々に登場したのがエクストレイル ディーゼル 20GT だ。とにかくニッサンに言わせると日本の排気ガス規制をクリアしたのは世界初だそうだ。価格は2,999,850円と、限りなく300万円に近い。



そこで今回は、このエクストレイルのディーゼルモデルを取り上げ、直後に同じエクストレイルのガソリンモデル20 X 4WD(237万円)にも試乗して、その違いを比較してみた。まずは外観から。 上の写真で左の20X(ガソリン)と右の20GT(ディーゼル)の違いはラジエターグリルのデザインくらいか。
後ろに回ってみても、エンブレムで判る程度で、明らかな違いはないようだ。



次に室内はといえば、これまた殆ど同じ。ただし、ディーゼル版は今のところMTのみの設定だから当然ならが3ペダルとなる。



ディーゼル車のシートは専用のヨーロッパちっくなファブリックで、比較したガソリン車の安っぽいフェイクレザーをサイドに使ったコンビシートよりは余程好ましく感じるが、人によってはレザーの方を高級感があると感じるかもしれない。



シートに座ってメーターを見れば、当然ならがディーゼル車の回転計は4500rpmからレッドゾーンというガソリン車では有り得ない目盛りが付いているが、それ以外は、これまた全く同じだ。

エンジンを掛けようとブレーキを踏んでステアリングコラム右側のスイッチを右に捻ると・・・・ウンともスンとも言わない。そうか、これはMT車だった。そこで、クラッチペダルを踏んで再度スターターを捻ると、最近のクルマとしてはセルモーターの音が長めに聞こえたが、その後にエンジンは目覚めた。アイドリングは以前のディーゼルの常識からは確かに静かだが、よ〜く耳をそばだてると、やはりディーゼル特有の音は多少は聞こえるし、 シートは勿論のことステアリングホイールからも微かではあるが振動が伝わっている。 何度も言うように、このクルマにはMTしか設定がないからクラッチペダルを踏んでシフトレバーを1速に入れ、クラッチをミートしようとして気が付くのは、クラッチペダルの踏力が軽いことだ。この軽いペダルを徐々に戻していくのだが、中々繋がらない。しかも、軽いくせに動きがギクシャクしているから、相当手前まで戻したところでガツンっとカッコ悪いミートをする事になった。だだし、試乗車は走行距離が30kmというマッサラな新車だったから、ペダル 機構の当たりが充分ではなくてギクシャクしたのかもしれない。事実、試乗の後半になったら、大分スムースになってきたようだった。 実際に走り出すと、2Lターボディーゼルのトルクは充分で、ターボラグも気にならないから、踏めば踏むだけ前に進む感じがする。

そして、何より驚くのはチョット引っ張るとレッドゾーンの4500rpmまで何のストレスも無く実にスムースに吹け上がることだ。普通のMT車の感覚だと、ついつい4000rpmくらいまで回ってしまうし、ガソリンエンジンでも4000rpmでこれよりガサツな回り方をするクルマは幾らでもある。 初期の感動も薄れてきたので、今度は冷静に 4速で1200rpm、速度は約40kmからストットルを踏んでみると、加速はするがかなり緩慢だ。高回転のスムースさに感動していたのでディーゼルらしい絶大な低速トルクに不足がある点に気が付かなかった。 後でトルク特性を見てみたら、確かに1200rpmでは最大トルクの半分近くしかないのが判った。
そして、もう一つは各ギアで引っ張った時の伸びが足りないことだ。そこで、4500rpmのレッドゾーンまで引っ張った時の速度を計算してみたのが次の表だ。

こうしてみると確かに伸びが無いわけで、1速では33km/hでレッドゾーンに達してしまう。しかし、表を良く見るとガソリンエンジンの20Xでも、スポーツタイプ のクルマに比べれは延びは無いが、それでもディーゼルよりは遥かにハイギヤードとなっている。いやディーゼルがローギヤード過ぎるのだが。
このような特性だから街中での巡航は
何時も6速を使うかといえばそうでもなく、1500rpmでは50km/hが4速、60km/hが5速となる。

ディーゼル版の20GTに乗った直後に、比較としてガソリン版の20Xに乗ってみた。どちらも4WDで2ℓエンジンを搭載しているが、最新のターボディーゼルと従来からのガソリンNA(自然吸気、ノンターボ)という全く異なるスペックを持つ。20Xの試乗は本来は同じ5MTが良いのだろうが、流石に試乗車は無いので 4ATで我慢することにした。ディーゼル車の直後に乗ったガソリン車の第一印象はトルクの細さだった。まあ、スペックから見ても当然だが、逆に20GTのトルクの太さは絶大で、2ℓガソリン車と比べたら、まるで4ℓ級エンジンを積んでいるかのようだ。
ただし、細いトルクにも関らずノンターボの強みで、レスポンス自体は良いから、これに比べれば20GTは如何にもターボ丸出しに思えてくる。それではフィーリングとしてはどちらが良いかといえば、これは結局好み次第で、まあ、自分で試乗してみて決めることだろう。いや、その前にMT車を買う(買える)状況にあるかを考えねばならないが。

以前エクストレイル25Xに試乗した際に、背の高いSUVとしては車両の安定性が良く、同じニッサンの兄弟SUVで、しかも欧州生まれのデュアリスよりも旋回性で上回るのを感じたが、今回の20GTも中々良く、適度な操舵力とレスポンスのステアリングやシッカリしたサスペンションなど前回以上に良くなっている。初期型は安定性と引き換えに多少硬さを感じたが、今回のモデルは乗り心地もしなやかになっていたようだ。最初に試乗したディーゼル車の場合、ガソリン車よりも130kgも重い車重が原因で、より重厚な乗り心地をもたらしている ようで、実際に乗って見るとガソリン車の乗り心地も悪くないが、重厚という意味ではディーゼル車に多少の分があるようだ。

ガソリン車よりも価格は60万円も高く、しかもMTのみ。まあ、この件については散々言われているだろうから今更という感もあるが、今後AT車の発売は予定されているのだろうか?まさか、MTだけで終わってしまうわけではないだろう。それでもバックオーダーを抱えて、納車待ちのユーザーがいるというのは、単純に生産体制が整っていないのだろう。いや、今現在では数を売る気は無いのかもしれない。 トヨタのハイブリッドに対して日産の目玉はといえば、このクリーンディーゼルに掛けるしかないしかないのだが、その割には真剣さが伝わってこないのは、どうしたものだろうか?

注記:この試乗記は2008年10現在の内容です。