ニッサン ティアナ 250XL
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ティアナが2代目へとFMCした。新型の外観はといえば、先ずフロントは最近のニッサン車に共通のもので、フーガ、スカイライン、シルフィーと同じイメージとなっているから、誰が見てもニッサン車と判る。サイドウィンドウは6ライトで、これは先代ティアナから受け継がれている。寸法的には結構大柄で、対米輸出を主とするライバルのカムリやアテンザと同等だから、日本国内ではチョッと大きめでもある。新型ティアナの第一印象は結構高級そうに見えることで、フーガよりも背が低い(―35mm)分だけスタイルも良い。

   

試乗車は下から2番目のグレードである250XLで価格は275.1万円にオプションのナビ(32.55万円)が付いていたから車両価格は307.65万円と、決して安くは無い。最近の車両価格上昇は原材料高騰の値上げもあるが、ナビを付けるユーザーが増えた為に、約30万円程も価格が上昇してしまうことが原因でもある。270万円のクルマに32万円のナビを付けるとうのは、バランス的には決して良くないと思うのだが。 ただし、ティアナの想定ユーザーがナビなんて付けるのか、という疑問もあるが。

   

新ティアナの内装は質感も高いし独特な雰囲気もあり、ニッサン車の中でも上位になるのは間違いないし、国産車全般で比べても中々良い部類になるだろう。先代はモダンリビングというキャッチと共に日本風の木目(調)を使ったり、大型でバックレスト形状が一風変わったシートを採用したりと、発売当時は結構話題になったが、今回の新型もシートの大きさなどには充分拘っているようだ。 そのシートの座り心地はといえば、これも国産車中ではトップクラスで、決して硬くはないが十分な弾力で体を支えるし形状も良いから、長時間のドライブでも疲れは少ないだろう。ライバルと比べて見ると、言語道断のフニャフニャシートのカムリは言うに及ばず、欧州主力のアテンザにも勝っている。

試乗車の内装色はシルキーエクリュという明るいアイボリー系にダッシュボード下端とコンソールにはブラウンの木目(調)パネルを配していて、明るく高級感がある。内装色にはブラックも設定されていて、汚れという面では有利だろうが、 明るい雰囲気と高級な質感ではアイボリーが勝る。試乗車のシート表皮やドアの内張りに使われいるパールスエードという素材は、一見すると最近流行の裏革風の人工皮革であるアルカンターラ等と見間違える位に良く出来ている。ただし、良く見ると長期間の使用で、表面が禿てきたりするのが心配でもあるが。

    

エンジンを始動すると、アイドリングは回っているのがハッキリ判る程度の音と震度がある。



CVTのセレクターをDに入れて走り出すと、動力性能に不満はないが、同じ2.5ℓで重量級のエルグランドの方が、なぜか遥かにパワフルに感じる。 これはエルグランドの5ATに比べてCVTの特性が加速感が不足しているように感じさせるのだろうか?CVTは踏み込むと即座に回転数が上昇するなど、同じCVTとはいえ、2ℓ級以下のように踏んでも音がうるさくなるだけでエンジンの回転数に殆ど変化が無く速度計の針だけが緩慢に上昇する、ということはない。 したがって、ティアナ250の動力性能はシルフィー2.0に比べれば動力性能で明らかに上回るし、CVTのフィーリングも勝っているのはクラス(価格)の違いを納得するものがある。このクルマの走行中のエンジン音はハイオーナーカーとしては決して静かではないのは、意外に感じる点だ。 静粛性ではトヨタに及ばないのは、技術的なものなのか、ポリシーなのか。人気のBMW等も確かにトヨタほどには静かではないが、あちらは気持ちの良いエンジン音という面では実に上手くチューニングされているのに対して、ティアナを官能的な音と思うユーザーはいないだろう。

 

ステアリングはかなり軽い、といってもマーチ程ではないから、ある面このクラスとしては普通なのかもしれないが、路面状況などは全く伝わってこない。レスポン自体はそれ程悪くないが、楽しさは全く 無いから同じニッサンで価格的に近いFRのスカイラインとは乗り味が全く異なる。そして、旋回性能自体は北米向けFFサルーン(マキシマ)をベースとしている割には悪くないが、 これも決して面白くはないし、当然ながらワインディング路を攻めようとは思わない。その割りには、乗り心地は意外に硬く、路面の凹凸は結構拾う。

250XLに標準装備されるタイヤは前後とも205/65R16と、最近のクルマとしてはハイトが高い。実際に左の写真をみると、なんだかタイヤに対してホイールが小さ過ぎるように感じてしまう。少し前なら65タイヤでも充分にスポーティだったのだが、55クラスが当たり前で、チョッと上級グレードなら50クラスを平気で履いている現状からすると、ちょっとショボイが、このクルマの本来のユーザーからすれば全く問題ないのだろう。 それどころか、「アルミホイールなんて何のために必要なんだ?あんな物はいらないから、その分の値段を安くしろ」・・・・・というユーザーだって居る訳で、そういう 人たちの為には、ティアナの場合は240ELというグレードを246.75万円で用意しているし、マークXにもFパッケージ(247.8万円)というグレードがある。
 
    ティアナ スカイライン マークX カムリ 2.4G アテンザ

250XL 250GT 250G リミテッドエディション 2.5EX

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.850 4.755 4.730 4.815 4.735

全幅(m)

  1.795 1.770 1.775 1.820 1.790

全高(m)

1.475 1.450 1.435 1.470 1.440

ホイールベース(m)

  2.775 2.850 2.850 2.775 2.725

最小回転半径(m)

5.3 5.4 5.2 5.5 5.5

車両重量(kg)

  1,500 1,560 1,510 1,500 1,420

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  VQ25DE VQ25HR 4GR-FSE 2AZ-FE L5-VE

エンジン種類

  V6 DOHC V6 DOHC V6 DOHC 直4 DOHC 直4 DOHC

総排気量(cm3)

2,495 2,495 2,499 2,362 2,488

最高出力(ps/rpm)

  185/6,000 225/6,800 215/6,400 167/6,000 170/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

23.7/4,400 26.8/4,800 26.5/3,800 22.8/4,000 23.0/4,000

トランスミッション

  CVT 5AT 6AT 5AT

駆動方式

  FF FR FF

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブル
ウィシュボーン
ストラット ダブル
ウィシュボーン
  マルチリンク マルチリンク マルチリンク ストラット マルチリンク

タイヤ寸法

205/65R16 225/55R17 215/60R16 215/60R16 215/50R17
  205/65R16 225/55R17 215/60R16 215/60R16 215/50R17

価格

   
 

車両価格

  2,751,000  2,793,000 2,751,000 2,646,000 2,500,000

備考

           

表を良く見ると、同じ日産のV6 2.5ℓでもスカイラインのVQ25HRとティアナのVQ25DEでは最高出力、最大トルク共に大きな差が有る。

実はティアナは日本向けというより、もしろアジア各国向けとして重要な位置にある。その証拠に今回の新型ティアナも日本に先駆けて4月に中国で発表されている。そして、先代ティアナは韓国のルノーサムスンによりSM-7という名称でノックダウンされてい て、韓国では人気の高級車らしい。ライバルはヒュンダイ ジェネシスス※注1と いうことだ。このSM-7の主要コンポーネントはティアナと同じものがニッサンから供給されている。最近は韓国の自動車産業の脅威を訴える記事などを目にするが、主要な部品を日本からの供給に頼っている限りは、日本を追い越す事は不可能だし、コスト的にも太刀打ちできないのは明らかだ。勿論、油断は禁物だが、不必要に神経質になることは無いと思うのだが・・・・。

※注1 ヒュンダイ ジェネシス
ヒュンダイ社が独自に開発した最新鋭のFRセダンで、エンジンはV6 3.3ℓと3.8ℓおよびV8 4.6ℓ。ライバルはレクサスGSやインフィニティMだ(そうだ)。独自開発といっても、トランスミッションはアイシンAW製を購入していたりと、相変わらず主要コンポーントは日本からの購入品となっている。

ティアナの価格はスカイラインと完全に被っている。このHPを見にくるようなクルマ好きからすれば、何でスカイラインがあるのに、わざわざFFでパワーも低いティアナを買うんだろう?と、疑問になるだろうが、世の中には色々な趣味の人たちがいるから、ちゃあんと、それなりの市場があるのだろう。前述したスチールホイールの廉価版モデルだって、スカイラインには設定がな いのは、ユーザー層の違いを物語る証拠でもある。
ティアナのようなクルマを買う感覚が理解できないのとしたら、我々が冷蔵庫(白物家電といわれている)を買い換える時を考えてみればよいだろ。 買い替えのタイミングはといえば、どうも最近は冷えが悪くなったとか、故障して修理をするのも面倒だしとか、修理代を考えたら買い換えたほうが得だとかいうのが理由だと思う。そして、どこのメーカーでも良いから、偶々近所の 家電量販店で買い得価格が付いていて、容量も自宅の状況に適しているものを買ってくるはずだ。クルマの場合も全く同じ買い方をするユーザーが結構いる訳で、そういうユーザーにとっては、前後どちらの車輪を駆動しようが関係なく、むしろ室内が意外にタイトなスカイラインよりも、大らか なティアナの方を選ぶという事になる。
ニッサンが思い浮かべるティアナの想定ユーザーは、退職金が入ったので、今後長く乗れるクルマを買っておこうという団塊世代で、勿論クルマ好きではないが、シルフィーではチョッとチャチだし、高級感も欲しい。しかし、フーガ程の高級さは求めていないというとろこだろうか。そういうユーザーには正にピッタリだ。えっ、それで、オマエはティアナを選ぶか?ですか。それぁ、聞くだけ野暮というものですぜ、旦那!

注記:この試乗記は2008年6月現在の内容です。