VW POLO 1.4 Comfortline

     

最近つくづく感じるのは、日本では3ナンバーサイズは大きすぎるということだ。それは、オマエの運転が下手だからだ、なんて言いたい輩もいるかもしれないが、最近整備された新興都市ならいざ知らず、昔からの町並みや地方の田舎道など、基本的に5ナンバーサイズで道路が設計されているのだから、 全幅1800mm級のクルマでは多少無理がある。そこで、輸入車で5ナンバーサイズ、しかも定評あるメーカーのメジャーなクルマはと探してみれば、そうそう、VW POLOがある。実は基本的に走るのが好きな B_Otakuとしては、POLOだったらGTIこそが理想のクルマ・・・・・・ の可能性もあるので、是非乗ってみたいのだが、残念ながら試乗車を確保するのは至難の業だ。そこで、取り合えずPOLOの中では一番売れ筋の1.4Comfortlineに試乗してみた。POLOのラインナップは1.4がベースモデルであるTrendline(169万円)と装備を充実させた Comfortline (199万円)の2モデル、1.6がSportline(222万円)、そして旧ゴルフGTIと同じ1.8ターボを搭載したGTI(2ドア:234万円、4ドア:255万円)の5種類となる。

国産車と欧州車を比較する場合、常に話題になるのがスペックで同等なのに欧州車の価格は何であんなに高いのかとか、あんなボッタクリはけしからん!日本人を舐めている。さらには、そんな値段でも喜んで買う奴らが悪い・・・・・という例の話。 まあ、この話の結論は出るわけがないのだが、それでもスペックを否定する訳にもいかないので、ポロと国産車の関係を予習してみよう。

    VW POLO TOYOTA Vitz NISSAN MARCH HONDA FIT

1.4 Comfortline 1.5U 15G 1.5RS

寸法重量乗車定員

全長(m)

3.915 3.785 3.275 3.920

全幅(m)

  1.665 1.695 1.660 1.695

全高(m)

1.480 1.520 1.525 1.525

ホイールベース(m)

2.470 2.460 2.430 2.500

最小回転半径(m)

4.9 5.5 4.4 4.9

車両重量(kg)

1,140 1,070 990 1,080

乗車定員(

  5 5 5 5

エンジン・トランスミッション

 

エンジン形式

直4 DOHC 直4 DOHC 直4 DOHC 直4 DOHC

総排気量(cm3)

1,389 1,496 1,489 1,496

最高出力(ps/rpm)

80/5,000 110/6,000 109/6,000 120/6,600

最大トルク(kg・m/rpm)

13.5/3,800 14.4/4,400 15.1/4,400 14.8/4,800

燃料消費率(km/L)※

13.2 18.6 19.8 19.6

トランスミッション

6AT CVT CVT CVT

駆動方式> 駆動方式

FF FF FF FF

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ストラット ストラット ストラット

トーションビーム トーションビーム トーションビーム 車軸式

ブレーキ

ベンチレーテッドディスク ベンチレーテッドディスク ベンチレーテッドディスク ベンチレーテッドディスク

ディスク ドラム ドラム ドラム

タイヤ寸法

185/60R14 185/60R15 165/70R14 165/65R15

価格・その他

   

車両価格

1,990,000  1,470,000 1,457,000 1,575,000

サイドエアバック

横滑り防止装置

※燃料消費率は10/15モードによる ●:標準装備 ○:オプション

エンジンは国産勢が1.5ℓであるのに対してポロは1.4ℓと多少のハンディがあるため、排気量で決まる最大トルクは勿論のこと、最高出力でも発生回転数が1000rpm程低いことも重なって、国産勢の109〜120psに対してポロは80psとなり、 数字の上では何とも情けない。しかも車両重量ではポロが最も重いから、この数値からだとポロの動力性能は悲劇的でもある。更には燃料消費率でも大きく差をつけられている。 でも、欧州車の良いところは安全装備が勝っている事じゃないか、って・・・・・・成るほど。そこで調べて見たらば、流石にポロの場合は小さいながらもサイドエアバックや横滑り防止装置が標準だ。 こういうところが、違うんだね。それで、国産車はといえばヴィッツ何て・・・・・あれっ、全部標準装備じゃないか。う〜ん、世界一のカーメーカーのトヨタ様を甘くみてはいけないよ。 これを見た国産車派は、ポロなんて高い、重い、パワー無い、燃費悪いの最悪クルマに思えるだろう。確かに、これじゃあチンケな国産車なんてバカに出来ないかもしれないなぁ。 さて、実際はどうなのかは、これからの試乗の結果にご期待願おう。



外観は確かに小さい。国産のコンパクトよりも小さいくらいだが、最近立派になってしまったとはいえ軽自動車程には小さくない。いってみれば初期のゴルフのサイズだから、VW=大衆車という感覚にピッタリする。
今度は後ろに回ってリアハッチを開けてみると、幅方向は狭いものの奥行きに関しては国産の同クラスに比べると驚く程に奥行きも深いラッゲージルームがある。

ドアを開けてみれば流石に室内全体がチープな雰囲気で満たされている。 近頃何やら豪華になってしまった他のVW、例えばゴルフなどと比べると、POLOの内装は良く言えば昔の質素なVW的といえるが、多くの国産車オーナーは200万円も出して、こんなにチャチいんか!と怒るに違いない。あっ、やっぱり、これも初期のゴルフにソックリだ。
リアのスペースは外観からは信じられないほどに充分で、前後に175cm級のドライバーと乗員が乗っても、後席の膝がフロントのバックレストに当たる事もない。

ポロのシートはグレードによって異なり、1.6 Sportline ならば結構サポートの良さそうなシートが標準装着されているようだが、1.4の場合は見るからにチャチなシートが標準となる。

シートに座ってみると、いつものVWでお馴染みのカチッと硬い座面ではなく、日本車っぽいグニャっとした感覚を感じるし、何より座面の前後方向が短く、太股のサポートもイマイチだ。VWのシートといえば、レカロ系列からのOEM供給を受けていることから、一般に出来の良い欧州車の中でも最も欧州っぽい筈なのだが、 このシートに限ってはチョッと違う。それでも、シートの上下調整(座面が水平に上下するので、国産車のように座面の前端のみの上下で、下げると前にずり落ちそうになることはない)は出来るし、バックレストはダイアル式で無段階の調整が可能かだら、 これまた国産車のようにラッチが荒すぎて丁度良いところに調整できなかったり、一番立ててもまだ寝すぎている、などということはない。

最近の国産車では所持するだけでスタートボタンを押せば始動できるインテリジェントキーが軽自動車でさえ採用されているが、 ポロはオーソドックスというか、コンベンショナルというか(時代遅れなんて言っちゃあ、いかんよ)、キーを穴に差し込んで捻るタイプが使用されている。ブレーキペダルを踏んでエンジンを始動すると、驚くのは何やらアイドリング音が殆ど聞こえないほどに静かなことだ。

走り出すとやはり1.4Lなりの加速感で、言ってみればマーチやノートの1.5Lと同等程度だ。ただし、国産車の多くが採用している非線形のスロットル特性で、チョット踏むとガバッとトルクが出るような小細工はしていないから、人によっては国産よりも非力に感じるかもしれない。 それにアイドリング時に静かなことに感心したエンジン音も、加速をすればそれなりとなる。4車線の国道で信号待ちの先頭になったこともあり、例によってフルスロットルでのスタートを試みると、確かに遅いが、このクラスとしては異例の6速ATはきめ細かくシフトアップしていくから、 遅いなりにも確実に速度が上がっているのは、CVTや4速ATが多い国産のこのクラスに対して上質なフィーリングではあるが、だからといって国産より明らかに勝っているともいえない程度だ。
国道の直線を走っていて感じたのは、VWというイメージからは意外に操舵力が軽く、ゴルフに代表されるVWの安定感をイメージすると、ちょっとばかりイマイチだった。だからコレデモか、とどっしりと構えて無類の直進性を期待すると落胆するかもしれない。 更に高い視点と狭い車幅は、ステアリングの操作とともにロールを感じるのもVWらしくない。上級グレードの1.6 Sportline ならば、スポーツサスが装着されるようだから、VWらしさを求めるならこちらを選ぶべきかもしれない。 そして、このイマイチ不安定な代償として、VWとしては結構乗り心地が良いのも意外に感じるだろう。

今度は4車線の一級国道バイパスから、2車線の地方道に入ってみる。2車線といっても片側の道幅は大型トラックがギリギリで走れる程度の幅だから、せいぜい3m程だ。こういう道になると、全幅1665mmのポロの利点が一気に際立ってくる。これで1.8ターボを積んだGTIだったら、狭いワインディング路は最強に違いない。

さて、以上がVW POLO 1.4 Comfortline にチョい乗りした感想だ。これから先は例によって結論編となる。当然ながら、”貧乏人”などという単語が飛び交うから、そういうのに不快感を感じる読者は これにて退場願おう。 この先は、B_Otaku流のオチを楽しみに待っていてくれた、知的センスのある読者専用としよう。

試乗が終わってからブレーキキャリパーを見ようとホイールを覗いたが、何も見えない。そうだった、1.4の標準は鉄っちんホイールにキャップだったのだ。 それにしてもBセグメントで199万円も出すのに、そりゃあ無いだろ・・・と嘆き無くなる。いやいや、アルミホイールなんて何の意味も無い。アルミ⇒ワイドタイヤ⇒ヤンキー車、なんて思っている元吹奏楽クラブ員の中産階級出身サラリーマンからみれば、太いタイヤを見ただけで、中学時代の虐めを思い出して身の毛がよだつから、むしろ鉄っちんは歓迎だったるする。 ふーん、中産階級の吹奏楽がそんなに苛められたんだったら、上流階級のヴァイオリンお坊ちゃまはどうなるんだ、といえば、心配は無用。彼等は小学校から”初等科”とか”幼稚舎”に入学するから、下流階級は元より、中流を含めた庶民とは交流や接点がなく、虐めにも遭わないことになる。 (まあ、それでも金持ち同士の別の苛めはあるらしいが)

それにしても何とも期待外れの結果となってしまった。しかし、このクルマは偉い自動車評論家の先生方が絶賛したクルマだから、自分のような素人がイマイチに感じるというのは、何かおかしい筈だ。クルマが本調子でなかったのか、自分の能力ではこの良さが理解できないのか。 たしかに、中学時代に友達にするのなら、バイクの無免とかやる奴の方が面白いし、ましてや吹奏楽部員なんて口もききたくなかった (といっても、悪い仲間とカツアゲやったことは無いので念のため)が、フィットやデミオの方が安定した走りをしたなんて感じるのは、ちとマズイぞ。。♪なんでだろ〜ぉ、なんでだろ〜♪

と、いうわけで、ポロといえば発売当時の記事で、うるさ型の自動車評論家が挙って絶賛したものだったが、今回乗った限りでは200万円という価格を考えると、チョット首を傾げたくもなる結果だった。これが1.6スポーツラインだったら、結果は違っていたかもしれないが、それにしても文句なしの五つ星を与える程に良いというのも解せないものがある。 まあ、これは1.6やGTIに乗ってから結論を出すべきとして、とりあえずペンディングとしておこう。

それにしてもBセグメントのホットハッチ探しの道は遠いようだが、試乗したときには期待程でもない、と感じたにも関らず今のところでは結局 ”MINI COOPER Sが一番” との結果になってしまった。実をいうとCOOPER Sに試乗した直後にプジョー207GTにも乗ったのだが、正直言って結果をそのまま書いたらば、 世の中のブルーライオンファンの恨みを買ってしまうことは間違いないとの判断から、試乗記の発表はしていないのが真実だ。それで、207GTの何が悪かったかといえば、左にブレーキのマスターシリンダを置いたままの右ハンドル化による、最悪のブレーキフィリングと、 位置が手前すぎて、しかも最悪のシフトフィーリング。更には左足を置くところがない3ペダルの配置(セールスマンは左足はクラッチペダルに載せっ放しを薦めていたが)など、スポーツドライブをする上で最も必要なMTの操作感やブレーキやペダル配置が全くダメという最悪な結果だった。 だから、とても世の中に公表はできなかった訳だ。あっ、もしかして、言っちゃったんか?
結局は、多少デカくて、結構高価ではあるが、現代のホットハッチならVW ゴルフGTIを買うのが確実なようだ。聞くところによれば、日本で販売されているゴルフの1/3以上はGTIだとか。確かに皆さん良くご存知のようで・・・・。

注記:この試乗記は2008年9月現在の内容です。