レガシィ ツーリングワゴン 2.5i Lパッケージ
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国産ワゴンの代名詞であるレガシィがFMCされた。そこで早速試乗したのが2.5iというSOHC自然吸気エンジン搭載のモデルで、他に同じく2.5だが DOHCターボモデルであるGTがラインナップされている。そう、今回からエンジンは全て2.5ℓとなった のだ。

フロントのスタイルは従来のレガシィの面影は殆どないが、エクシーガとの共通点は 多いから、これが最近のスバルのデザインコンセプトなのだろうか。

レガシィは先々代(BH)まで5ナンバーサイズを頑なに通してきた。先代(BP)からは1,730mmと僅かに5ナンバー枠をはみ出してしまったが、今回の新型(BR)は1,780という全幅で、これはもう完全な3ナンバーボディとなってしまった。大型化のメリットは乗った瞬間に体感できる程に広い室内で、リアラッゲージスペースもワゴンとして充分な広さをもっていた。

スバルのシートといえば少し前までは駄目な代表のように言われていたが、インプレッサなどの最近の新型車では随分改良されていた。そして今回のレガシィはとえば、国産車としては充分に良い部類に入る出来となった。今回試乗したのは 自然吸気としては上級モデルのLパッケージだったことから、 シート調整はフルパワーとなっていた。座り心地は最近流行の低反発ウレタンを使ったもので、表面は柔らかめだが体が沈んだりする事もなく、表皮のファブリック も体を適度に支えてくれる。2代前のBHのように、10分も走れば腰が痛くなるようなシートからは隔世の感がある。

内装については従来のスバルに比べれば、やっと他車のレベル に追いついた。そしてダッシュボードも指で押してみればちゃあんと凹むから、これは真面目にソフトパットとなっている。試乗車はLパッケージといういわば豪華仕様だから、室内は木目(風)パネル を採用しているいが、このパネルが実にプラスチッキーで偽物感満載だった。まあ、嘘をつけない人が無理して嘘を言うみたいで、直ぐにバレてしまうのも愛嬌か? 今回の試乗車にはオプションのマッキントッシュ製のオーディオが装着されていた。マッキンと言ってもアップルのパソコンとは全く別会社で、数十年前からオーディオマニアの憧れだったブランドだが、本物のマッキンはアンプ一台が軽自動車1台分くらいは当たり前の高級品だが、カーオーディ オは噂によれば日本製だとか。こういうのを採用するのも質実剛健なスバルとしては、どうなんだろうか。 レクサスのマークレビンソンと同じ発想じゃあないか。

2. 5iのエンジンはお馴染みの水平対向4気筒だが、排気量はグレード名のとおりで2.5ℓ、最大出力は170ps/5,600rpm、最大トルクは23.4kg・m/4,000rpmと なり先代の2.0iに対してパワーで30ps、トルクで4.4kg・mアップしている。
走り出した瞬間に先代よりもトルクがある事と静かな事を感じる。

最近はスバルのみならず多くの国産車でエンジン特性を切り替えるモードスイッチを採用している。新レガシィもSi−DRIVEと呼ぶモード切替があるので、先ずは一番大人しい”I”を試してみると、案の定トロくて使い物にならない。そこで”S”に切り替えると、まあこれなら何とかなる。そして”S#”にすると充分なレスポンスとなるが、チョッとわざとらしい。レガシィのNA(自然吸気)モデルの場合は先代BPの2.0iでは、その加速性能は我慢 のできる限界付近、くらいに遅かった。そして新型では2.5ℓとなったことで先代に比べれば少しは活気のある加速を見せてくれる。しかし、これはあくまで実用的な性能で、マニアが期待する気持ちの良い加速感は期待できない。例として同じ2.5ℓNAのBMW325iツーリングとはフィーリングで負けるのは当然ながら、動力性能自体でも勝負にならない。まあ、そんなユーザーには ターボ過給のGT を撰べば良いだけだが。それに上級モデルのLパッケージでも268万円のレガシィツーリングワゴンと、ベースグレードでも555万円のBMW325iツーリングを比較するバカが居るか!と怒られそうだが、この2車が内容的に同等だと思っている輩も居るものでして・・・・。

ミッションはCVTを搭載しているが大人しく運転している限りではトルコンATに比べて大きな違和感は無い。ところが、フルスロットルを踏むと少し回転が上がった状態からはほぼ一定回転でガァガァと唸るエンジンと共に、大した加速はしなかった。このCVTはステアリング裏側にあるパドルスイッチでマニュアル操作が可能となる。そこで早速試した限りでは、変速のレスポンスは決して良くなかった。まあトロ くて苛立つほどではないが。いや、少し苛立つか。マニュアルモードの大きなメリットは先程述べた加速時にエンジン回転数が一定というCVTの違和感がなくなり、普通にエンジン回転が上昇しながら加速する点にある。そして、2速でフルスロットルを踏んでみたら・・・・・・やっぱりトロかった。2.5ℓエンジンといえば、一昔前なら結構な大パワーだったのだが。

短い試乗コースには幸いにもワインディングロード と言えそうな場所があった。こんな場所でのレガシィは終始安定した挙動を示し、4WD独特のアンダーステア特性なども殆ど感じることもなく、中々の旋回性能を見せてくれた。
試乗車はLパッケージというコンフォートモデルだから装着されているタイヤも205/60R16という大人しいサイズだし、サスの設定も柔らかめで乗り心地も良い。勿論柔らかいといっても安定性は充分にあり、しなやかさと両立している辺りは先代譲りだし、インプレッサ等も標準モデルの乗り心地は抜群だったから、これはスバルのサスペンション技術が立派なのだろう。
ブレーキは当然ながら鋳鉄のフローティングキャリパーではあるが、レガシィは伝統的にブレーキ容量が大きく、このクラスでもフロントには2ピストンを 採用しているから、充分な効きを提供する。
 

新型レガシィは1800mmに届きそうな全幅や4気筒2.5ℓエンジンなど、どう見てもターゲットは北米であろうことは明白だ。 となれば、同じようなコンセプトの国産ワゴンとして脳裏に浮かぶのはマツダアテンザとホンダアコードとなる。そこでこれらに加えて、脳内オーナーからみれば同じ2.5ℓ級ワゴンのBMW325iツーリングを加えてのスペック比較をしてみる。
 
    SUBARU
 LEGACY
Touring wagon
MAZDA ATENZA
Sport Wagon
HONDA ACORD
Tourer
BMW325i
Touring

2.5i L Package 25C 4WD 24TL Hi-line Package

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.775 4.765 4.750 4.535

全幅(m)

1.780 1.795 1.814 1.800

全高(m)

1.535 1.460 1.470 1.450

ホイールベース(m)

  2.750 2.725 2.705 2.760

最小回転半径(m)

5.5 5.4 5.5 5.3

車両重量(kg)

  1,500 1,560 1,580 1,580

乗車定員(

  5 5 5 5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  水4 SOHC 4 DOHC 直4 DOHC 直6 DOHC

総排気量(cm3)

2,457 2,488 2,354 2,496

最高出力(ps/rpm)

  170/5,600 166/6,000 206/7,000 218/6,500

最大トルク(kg・m/rpm)

23.4/4,000 22.9/4,000 23.7/4,300 25.5/4,000

トランスミッション

  CVT 6AT 5AT 6AT

駆動方式

  4WD 4WD FWD RWD
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  14.0 10.4 11.4 9.9

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン ストラット
  ダブルウィッシュボーン マルチリンク ダブルウィッシュボーン 5リンク

タイヤ寸法

  205/60R16 195/65R16 225/50R17 225/60R16

ブレーキ

前/後 V-Disc/Disc V-Disc/Disc V-Disc/Disc V-Disc/V-Disc

価格

   
 

車両価格

  2,678,000 2,460,000 3,150,000 5,840,000
 

備考

こうして見ると国産3車のスペックは結構似ているが、唯一アコードのエンジンは同じ4気筒ながらパワーでは他車を圧倒している。そしてレガシィとアテンザは4WDをラインナップしているが、アコードはFFのみである。さらにはアコードは価格的に他2車よりも数十万円も高い。
そして、オマケの325iは流石の直6でエンジンのホンダといわれるアコードより多少排気量が多いとはいえ、堂々のパワーとトルクを誇っている。まあ、それ以外でも内容的に実車を比べれば325iの良さは際立っているのだが、国産車に比べて2倍という価格は、やっぱり高すぎではある 。それでも予算があれば是非買いたいクルマであることは間違いない(勿論、大恐慌真っ只中の今ならタップリと値切って)。

寸法もエンジンも大きくなった新型レガシィは、一般的に見れば進歩した事は間違いない。しかし、レガシィといえば他車が軒並み全幅1,700mmを超えるのを尻目に、頑なに5ナンバーを守ってきて、遂に先代では多少オーバーしてしまったが、それでも極僅かだった 。ところが、今回は1800mmにあと20mmという幅になってしまった。そして何より先代では設定されていたNAモデルのMTもなくなり、さらにはNAモデルはSOHCのみだから、ターボ嫌いのマニア 向けNA+DOHC+MTという車種はなくなってしまったことになる。一番マニアックな車種が整理されるのは要するに売れないからだが、そういう車種をラインナップしてこそスバルらしさだったのだが。
悪く言えばトヨタ化した、いやカムリ化した新型レガシィの売れ行きは果たしてどうなるのだろうか?

注記:この試乗記は2009年6月現在の内容です。