レクサス IS250
※検索エンジン経由でノーフレームの場合はここをクリックしてください。

今から3年前、鳴り物入りで開店したレクサスチャンネルに少し遅れて登場したのがIS250&350だった。そのスペックや価格からして、世界のプレミアムサルーンの王者であるBMW3シリーズをターゲットにしたことは一目瞭然だった。3シリーズに比べて、6気筒2.5ℓが100万円程安いということで、欧州車ファンからの熱い期待もあったが、蓋を開けてみれば期待は見事に裏切られた。まあ、クルマのフィーリングなんていうのは人それぞれで感じ方が違うから、3シリーズよりもISに軍配を上げる人だっていて当然で、その後の各BBSでは恰好のネタになっていたようだ。その後のレクサスの業績は言うまでもないが、そのなかで辛うじて収入を支えているのは、一番廉価なIS250と高価なLSだとか。確かに街の中で偶に見かける レクサスはISとLSで、GSはといえば殆ど見ないのは事実だ。
そのISがマイナーチェンジを行った。と、いうよりもレクサスは欧州車のように毎年改良をしているようだから、今回のISも09モデルと言うべきなのだろう。事実、北米でのレスサスは毎年秋 頃から、次年のイヤーモデルに切り替わっている。今回はISの09モデルと初期モデルとの違いを主に紹介して、ベースグレードにチョイ乗りしたインプレッションを追加する形としてみた。



先ずはエクステリアの違いから。

フロント部分ではバンパーに開いたエアーインテークの形状が少し変わったのだが、良く見なければ判らない程度だ。
そして、サイドミラーにウィンカーが組み込まれたことで、これとて今では多くのメーカーが採用しているから、今更メルセデスのパクリだなんて言う気はないが。





リアから見るとテールランプのデザインが変わっているが、ボディのプレスは変えていないから外形や取り付けは同一なのだろう。フロント同様にバンパーも微妙に変わっているようだ。
ボディのプレスを全く変えていないのは、既に初期型を購入したオーナーのことを考えて、キープコンセプトを貫く為なのか、BMW3シリーズのように年間何十万台もの生産数がないので、プレス用の金型を償却できずに、仕方無く、手軽な前後バンパーとテールランプなどの樹脂部品の金型修正で乗り切ったのか??ハテ、どちらだろうか。



ISのベースグレードに使用されるシート表皮は、欧州車を髣髴させる荒い織目のファブリックで、これはクラウンアスリート も同様のものを使用していた。トヨタもやっと、世界標準の感覚になってきたのかと思ったのだが、新ISの表皮をみたら何とカローラの親分というか、クラウンロイヤルの親戚というか、短い毛足のスエード調という例の国産 車の代名詞的な表皮に変わっていた。ディーラーマンは評判の悪かった従来の表皮から、今度のヌバックに変わったので売り易いと喜んでいた。

バージョンLのシートはレクサス得意のセミアニリンのレザー表皮を使っていて、今回からはステッチ(縫い目の糸)がシルバーでハッキリと判るようになった。このような手法は最近の欧州車、とくにメルセデスが好んで採用している方法だ。そしてトリム(パネル)は独特の派手な色をしたウッド(勿論、”調”ではなく本物)を使用しているのも、 09モデルの特徴だ。バージョンLはベースグレードに対して45万円高の444万円。総支払い額は500万円コースとなる。
今回は現車がなかったが、他にバージョンSというスポーティーグレードがあり、価格はベースグレードよりも15万円高い414万円。大きな相違点はスポーツサスと18インチタイヤで、シートなどはベースグレードと大きくは違わない。従って、BMWのMスポーツのように派手なエアロパーツやエアインテイクを持ったものとは異なる。ところで、ISにはIS−Fというハイパフォーマンスモデルがあるのだから、IS250でも外観をIS−Fに似せたモデルを出せば、少しは人気が出るのではないかとも思う 。BMWの場合は320i Mスポーツがマニアの定番であるM3ソックリということから、庶民のM3的な人気もあるのだが、ISの場合はIS−F程の人気や憧れを持っている人が少ないから、商売としてのIS−Fモドキが成立しない 、と言うと、またまたレクサスファンの中傷を浴びそうだから、止めておこう。レクサスに関しては、商売の上手いトヨタとしては、全てに間が抜けているのが不思議だ。 ここで、IS250のライバルとスペックの比較をしてみよう。 先ず3シリーズでは同じ2.5ℓの325iの登場に異論は無いだろうし、そうなればメルセデスCクラスの2.5ℓ版であるC250も当然だ。そして、BMWとメルセデスとなればアウディだが、DセグメントのA4は1.8ターボと3.2のみで、2.5ℓはラインナップにないため、ライバルとはならない。まあ、価格的に1.8Tというのも有りだが趣旨と異なる ので、同じトヨタのクラウンアスリート2.5を取り上げてみる。

    レクサス BMW メルセデスベンツ トヨタ

IS250 325i C250 エレガンス クラウン 2.5アスリート

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.585 4.525 4.585 4.870

全幅(m)

  1.795 1.815 1.770 1.795

全高(m)

1.430 1.440 1.445 1.470

ホイールベース(m)

  2.730 2.760 2.780 2.850

最小回転半径(m)

5.1 5.3 5.1 5.2

車両重量(kg)

  1,570 1,510 1,550 1,600

乗車定員(

  5 5 5 5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  V6 DOHC 直6 DOHC V6 DOHC V6 DOHC

総排気量(cm3)

2,499 2,362 2,494 2,499

最高出力(ps/rpm)

  215/6,400 218/6,500 204/6,100 215/6,400

最大トルク(kg・m/rpm)

26.5/3,800 25.5/4,250 25.0/5,500 26.5/3,800

トランスミッション

  6AT 6AT 7AT 6AT

駆動方式

  FR FR FR FR

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ダブルウイッシュボーン ストラット 3リンク ダブルウイッシュボーン
  マルチリンク トーションビーム マルチリンク マルチリンク

タイヤ寸法

225/45R17 225/60R16 205/55R16 225/45R18
  245/45R17 225/60R16 205/55R16 225/45R18

価格

   
 

車両価格

  3,990,000  5,350,000 5,840,000 3,740,000

ナビゲーション

  標準装着 オプション 標準装着 オプション

こうして見ると、確かに325iやC250に比べてIS250は150万円程安い。だから、内容的に遜色が無ければ、誰が考えてもISが得だから、BMWやメルセデスオーナーが挙って飛び ついて、これらのクルマからの乗換えが新レクサスオーナーの50%以上、なんていう皮算用をしたのだが、結果は・・・・・。
さて、ではクラウンと比べるとどうなのかといえば、ナビ装着を考えれば寧ろISのほうが安い値付けなのが判るだろう。そこでクラウンのスペックと比較してみれば、幅は同じで全長はクラウンが285(ホイールベースは120)mm長く、全高もクラウンが40mm高い。エンジンは全く同じだし、サスペンションの形式も同じ。要するに同じプラットフォームを使用して、 クラウンは多少長さを伸ばしたストレッチ版(というよりもISがクラウンの短縮版)ということだ。だから、長いほうが少し高い。いや、3年間メンテ代が無償(ケアメン テナンスプログラム)だったり、緊急時のオペレーターサービス等、更には豪華なショールームや高級スーツの営業マンが膝まづいての対応や、美人の受付嬢などの”おもてなし料”が数十万円分は乗っかっていることを考えれば、何の事はない、ISよりクラウンのほうがワンランク上の車だったことになる。それにISはコンパクトな高級車と思っていたが、長さを除けばクラウンと同じ。小さく見えるのは居住性を犠牲にして高さを低くしたからだった。
あいつ、また最初からISの悪口を言ってやがる、なんて誹謗しているヤツの姿が目に浮かぶが、これは真実を比べてみた結果を述べているだけで、自分自身でも今回始めて気が付いた内容だった。

前置きが長くなってしまったが、早速試乗に出かけてみよう。先ずはシートに座って高さを調整するが、どうも頭上空間が少ないのでシートを下げると下限位置だった。よく見たら、試乗車にはサン (ムーン)ルーフがついているために天井の高さが大いに低くなっていた。シートの座り心地は国産車にしては良い部類だが、前述したようにシート表皮が欧州車のような荒く織ったものから、国産丸出しのスエード風になったので、如何にもトヨタ的 な湿っぽい感じがする。スタートボタンを押すと例によってメーターの針がフルスケールまで振れる儀式とともにエンジンが始動する。アイドリングは多少の振動を感じ、この点ではクラウンに軍配が挙がる。ブレーキを踏みながらセレクターをDに入れて、フートレスト上の左足に当たっていて邪魔臭いペダルを踏んでパーキングブレーキを解除する。
走りだして最初に感じるのは、初期型に比べて乗り心地が良くなったことだ。発売当時に乗ったIS250は、やたら硬い足回りで、しかもタイヤの走行ノイズが耳に付いたが、今度の新型は圧倒的に柔らかくて静かになった。言ってみればクラウンと何処が違うと いう感じでもある。初代ゼロクラウンに比べて乗り心地が柔らかくなったアスリートと新ISを比べても、多少はISの方が柔らかく感じるくらいだ。動力性能や加速時のフィーリングとしては、アスリート2.5と殆ど同じだったが、考えてみれば同じエンジンと駆動系で、しかも車両重量もISが30kg軽いだけだから、これは当たり前でもある。
今回はワインディング路でハンドリングを試すような時間も場所もなかったが、4車線の幹線道路で後続車がいなくなった事を確認して素早いレーンチェンジをしたり、交差点での左折時に速めに曲がったりしてみたが、柔らかいサスにも関らず大きくロールをしたり、フラついたりはしなかった。ただし、3シリーズに比べてどうかといえば、少なくとも勝ることは無さそうだし、3シリーズをライバル視してか、以前に比べて劇的にハンドリングも良くなったCクラスと 比べても、ISが勝ることは無さそうだ。と、いっても決して低レベルではないから、このクルマの主なウィークデーのドライバーである主婦や、偶の土日にステアリングを握る 、クルマが特に好きでも、運転に自身があるわけでもない平均的なホワイトカラーの会社員には充分だろう。

開業当時のレ クサスは殆どの車種に、BMWが3シリーズなどで使用していたのと同じ、ドイツのテーベス社製パッドを使っていたから、軽い踏力でガツンと効くという欧州車でお馴染みの効き味だった。ところが、強烈なダストでホイールが真っ黒になるという弱点も欧州車と同じだったから、オーナー達は大いに不満を 持ったようだった。今回のパッドが何処のメーカー製が装着されているかは不明だが、ブレーキの効き自体は悪くない。
ただし、IS、GS、LSというレクサスサルーンのラインナップで、唯一IS250のみがトヨタブランド車と同じ鋳物のフローティングキャリパーと、バキュームブースターによるマスターシリンダを持つ極普通のシステムを採用している(レ クサスの多くはアルミ対向ピストンキャリパーとブレーキバイワイヤーというフルエレキのブレーキシステムを持つ)。

発売当初はベンツ・ビーエムオーナーが挙ってレクサスへと流れるのではないか、なんていう戯言を言っていたマスコミも、半年もすれば不振だと騒ぎ立てる。元々、トヨタブランド時代のアルテッツア、アリストは、そのまんま米国ではレクサスISとGSだったわけだから、これを国内でもレクサスブラン ドにしたところで、メルセデスやBMWと張り合えるわけが無いのはチョット考えれば判るはずだ。何を言っているんだ、日本向けのアルテッツアやアリストは海外でのレクサスISやGSとは全く違うんだ・・・・何て言いたい国産車ファンも多いだろうが、それでは昔のテレビCFで「レクサスES、日本名ウィンダム」って言っていたのは、何なんだ。あの件はその後一切無かったことにしてしまったのだろうか。今や人気の清純派スーパースターが、実はデビュー前にアダルトビデオの女優をやっていたのを必死で隠し通している、何処かの芸能プロダクションみたいなものか。

今回、MCが実施されたIS250に3年ぶりに乗ってみたら、よりトヨタ色が濃くなっていた。 発売当初の3シリーズ等の欧州車を意識した硬いサスのセッティングは、悪い面ばかりが目立ってしまい、欧州車の硬い中にもしなやか感があったり、硬さを不快にしない強固なボディなど は真似しないで、表面だけ欧州車風にしたためのツケが回ってきて、欧州車オーナーには直ぐに内容がバレてしまった。それが今日の不調に繋がったのではないか。そういう意味では、下手に3シリーズを真似たりしないで、トヨタの得意とする手法で勝負したほうが結果的には成功に繋がることを自覚したようだ。
そして、今回新たに判明したクラウンアスリート2.5との価格の関係を知って、アスリートの方が乗り味も高級だったことを思い出した。 高級ブランド(といっている)レクサスのボトムであるISよりも、トヨタという大衆ブランドの上位にあるクラウン(マジェスタも含めて)の方が良いというのは、ブランドを取るか実質を取るか、かもしれない。
そういえば会社の新人採用なんかでも、やたらとブランド好きの人事部長に代わってから、一生懸命ブランド大学出を採ってみたら、これがマルで使えない。結局、MARCHの落ちこぼれなんかより、日○駒○の優秀なほうが余程使えるというのが身にしみて判ったりする。いや、判らないか。

注記:この試乗記は2008年9月現在の内容です。