B_otaku
の試乗記では今まで所謂ミニバンという分野のクルマは取り上げていなかった。唯一オデッセイの試乗記をアップしてことがあったが、結果はボロクソ。オデッセイはミニバンというよりも、背高ワゴンといってもよいクルマだったが、運転する楽しみは勿論、クルマとしての走る、曲がる、止まるも低次元だったから、これが背の高い本格的なミニバンだったら一体どうなるのだろうと考えれば、欧州車を主として走る楽しみを追求する、このサイトで取り扱うのは
適さないと判断したからだ。
しかし、衰えを見せないミニバンブームを見るにあたって、食わず嫌いとならないように、物は試しと試乗したのが折りしも最近FMCを実施したアルファードという訳で、さ〜て、どんな結果になるやら。Bオタの奴、そこまでしてアクセル増やしたいのか?なんて陰口叩く輩も居そうだが、このサイトの読者の主流を考えれば、不人気試乗記になる可能性は十分にある。
さて、今回取り上げるアルファードは世界のトヨタのミニバンラインナップ上でも最上級の車種で、幸せファミリーの憧れ的な存在だ。実はこの分野は天下のトヨタとしては決して安泰ではなく、極最近までは日産のエルグランドに王者を奪われていたカテゴリーだ。今ではトヨタの販売網の強みもあり、販売台数ではエルグランドに打ち勝ってもいるようだが、決して油断は出来ない分野でもある。
アルファードのエンジンは4気筒の2.4ℓと6気筒の3.5ℓがラインナップされているが、今回の試乗車は上級の350Sというグレードで、350Gがコンフォートモデルであるのに対して、”S”というくらいだから、勿論スポーツに振ったモデルだ(そうだ)。
しかも試乗したのはトップモデルの”Cパッケージ”(2WD、416万円)にHDDナビ(52.5万円)が付いていたから、車両価格は460万円を超え、総額は500万円に達する。Cパッケージの最大の売りはパワーオットマン付きのエグゼクティブパワーシートで、正に国際線のファーストクラスのようだ。『オイオイ、お前は本当にファーストクラスを利用した事なんてあるのか?!』とかいう、突っ込みは無しにしようね。
アルファードには4WDモデルもラインナップされているが、価格はFFに対して約20万円高い。
内装は正にトヨタ丸出しだが、”S”グレードの場合は幾らかはマシとも思うが、それでもコットンスエード風
のサイドの表皮は熱くるしく、チョッと古くなると禿げてきそうだ。
と思って左の写真を見たら、下ろしたての新車なのに、既にサイドサポートはヘタって表皮にしわが寄っていた!
この面ではクラウンアスリートの欧州車を髣髴させる荒い織目のファブリックは、トヨタとしては良いセンスだったのを思い出した。これはミニバンユーザーを舐めているのだろうか?しかし、トヨタの事だから、これも綿密なマーケッティングの結果として、アルファードのユーザーはこういうのを好むと判断しての事かもしれない。
多くのミニバンはシートに座ったときのスペースの余裕がセダンに比べて広大なのだが、その割りにはラッゲージルームは広くない。アルファードの場合も、シートを一杯に下げると殆ど荷物は詰めないが、乗用エリアを狭める事によって
如何にでもアレンジ出来る。
それにしても、この巨大なリアーゲートは開ける時にはダンパーでスーッと上がるが、ハテ下げる時はどうするのかと心配になったが、ゲート下端にあるスイッチを押すと、ゲートは
グィ〜ンっと自動的に閉まった。なぁる程、これなら小柄なオバちゃんでも(勿論お姉ちゃんでも)簡単に閉められる。ただし、この機構は最上級グレードのみしか装備されない
が。
ダッシュボードの眺めは典型的なトヨタ車で、お馴染みの”木目調”のトリムやメーターパネルの中で光輝くオプティトロンメーター等も健在だ。試乗した上級グレードではステアリングもレザーとウッド(風)のコンビなど、更に高級装備に溢れていた・・・・・・・
けれども、同じトヨタの高価格車であるクラウンと比べると、同じフェイクウッドでも、見た目の質感がマルで違う。クラウンはフェイクだらけの内装だと判っていても、その質感を見れば流石と唸る出来で、むしろ本物のウッドりょりもウッドらしかったりするのだが、ア
ルファードはフェイク丸出しで、どうもイマイチだった。
センタークラスターだって如何にもプラスチックにメッキしましたという質感だし・・・・。しかし、多くのミニバンユーザーの感性から言ったら、これが豪華なのかもしれない。
と、色々悪口を言いまくったが、シートに座った感想はといえば、期待を裏切らない柔らかさで、尻はお約束どおりに沈むし、背中は上半分が背もたれから浮いてしまう。そんなの、オマエの体系がおかしいんだろう。俺ならチャアンとフィットするぞ、というユーザーも居るかもしれないんで、まあ、このくらいにしておこうか。
エンジン始動は当然ながらインテリジェントキーの所持とスタートボタンによる。エンジンが始動すると、メーターに灯が灯り、青い指針がグルーンとフルスケールまで回るという儀式の後に、メーターとしての表示が始まる。これを子供騙しと見るか、素晴らしい眺めで、このクルマのオーナーになった幸せをヒシヒシと感じるかは、これまた個人の感性の問題だ。
V6 3.5ℓエンジンのアイドリングは当然静かで、エンジンが回っているのを確認するには回転計を見るしかない・・・・と、言いたいところだが、クラウン程には無音ではなかった。次に、シャキッとしないブレーキペダルを踏んで、ATセレクターレバーをDに入れ、セットもリリースも足踏み式のパーキングブレーキを踏んで解除・・・・・したつもりがメーターに赤い”おったまげマーク”が表れた。あれっ、パーキングは掛かってなかったのか。280psの最高出力と344N・mの最大トルクを発生する3.5ℓエンジンにより、低速域から充分なトルクを発生するが、何しろ車両重量が2000kgもあるから、フルスロットルを踏むのが怖いという程の加速ではない。逆にこのクルマには3.5ℓが本来で、2.4ℓでは役不足の気がするが、これはそのうち実際に乗って確かめてみたい。
アイシン製の6ATは欧州車にも採用されている世界的に評価の高いミッションだから、シフトショックもなく、踏み込んだ際のキックダウンのレスポンスも充分に満足できる。横置きV6と6ATの組み合わせは、基本的にブレイド、マークXジオと共通で、生産効率や開発費の回収は他社とのアドバンテージとなっていることは間違いない。このミッションには当然ながらMTモードもあり、セレクターレバーの前後で操作できるが、このクルマの性格からいっても、先ずは不要だろうが、付いていても不便は無いという程度か。
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アルファード |
アルファード |
マークXジオ |
ブレイド |
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350S |
240X |
350G |
マスター |
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寸法・重量・乗車定員 |
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全長(m) |
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4.865 |
4.850 |
4.695 |
4.260 |
|
全幅(m) |
|
1.840 |
1.830 |
1.785
|
1.760
|
|
全高(m) |
|
1.900
|
1.890 |
1.550 |
1.515 |
|
ホイールベース(m) |
|
2.950 |
2.950 |
2.780 |
2.600
|
|
最小回転半径(m) |
|
5.9 |
5.7 |
5.7 |
5.5 |
|
車両重量(kg) |
|
2,000
|
1,850 |
1,660
|
1,470 |
|
乗車定員(名) |
|
7
|
8
|
6
|
5
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エンジン・トランスミッション |
|
エンジン種類 |
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V6 DOHC |
直4 DOHC |
V6 DOHC |
V6 DOHC |
|
総排気量(cm3) |
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3,456 |
2,362 |
3,456 |
3,456 |
|
最高出力(ps/rpm) |
|
280/6,200 |
170/6,000 |
280/6,200 |
280/6,200 |
|
最大トルク(kg・m/rpm) |
35.1/4,7000 |
22.8/4,0800 |
35.1/4,7000 |
35.1/4,7000 |
|
トランスミッション |
|
6AT |
6AT |
6AT |
6AT |
|
駆動方式 |
|
FF |
CVT |
FF |
FF |
|
サスペンション・タイヤ |
|
サスペンション方式 |
前 |
ストラット |
ストラット |
ストラット |
ストラット |
|
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後 |
トーションビーム |
トーションビーム |
ダブルウイッシュボーン |
ダブルウイッシュボーン |
|
タイヤ寸法 |
前 |
235/50R18 |
215/65R16 |
225/45R18 |
225/45R17 |
|
|
後 |
235/50R18 |
215/65R16 |
225/45R18 |
225/45R17 |
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価格 |
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車両価格 |
|
4,160,000
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3,000,000
|
3,330,000
|
2,772,000
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備考 |
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Cパッケージ |
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アルファードの乗り心地はといえば、当然ながら良い部類にはいるだろう。自信を持って良いと言い切れないのは、でかいドンガラの箱は剛性感抜群とはいえないから、強い突き上げを喰らうと途端にボロを出すのは
ある程度想定はしていたから驚かないが、さらに上等なダンパーも付いていないようで、まあ、こんなものか。
この手のミニバンではどうでも良さそうで、逆にどんなに酷いんだろうなんて、ある面最も興味があるのが操舵性だったりする。重くて、デカくて、重心が高いボディに柔らかくて安物(リアはトーションビーム)のサスというアルファードは、誰が考えてもハンドリングを楽しむ余地なんて全然ないのは言うまでも無いが、それでも思った程にはロールが巨大ではないし、コーナーリング速度も出来の悪いセダンに近いくらいの安定性はあった。言ってみれば、首都高でカムリ等の後なら付いて行ける程度ではある。
こうなると、ステアリングに伝わる感覚なんて期待するほうが間違っているが、確かに路面のインフォメーションは全く伝わらないし、ダイレクト感覚なんて求めてはいけない。それでは操舵力はといえば、さあて、殆ど記憶に残らないほどに重くもなく軽くもなく、その点でも万人向けか。こういうクルマは家族全員が交代で運転するかもしれないから、最大公約数的な操作力にするのは的を得てはいる。
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