トヨタ プリウス  S
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今年最大の話題であり、しかも最も売れているクルマといえば、ずばりプリウス以外は考えられない。正直言って個人的にはハイブリッド車というのはどうも感心しなかったが、今度の新型は38km/Lという燃費を見ただけでも乗ってみる価値はあるような気がして、急遽試乗 してみた。
外観はキープコンセプトで見るからにプリウスという形をしているが、よ〜くみれば確かに大きくなったようだ。 勿論プリウスに詳しい読者ならB_Otakuの奴、何とぼけた事を言ってやがる。先代プリウスに比べれば・・・・・・・、という事になるだろうが、まあ今回は取り上げただけでも前進と思って下さいな。 室内はといえば、シートは小ぶりで表皮のスエード調ファブリックと共に、これはトヨタ丸出しではある。カローラというかプレミオというか、まあ、その手の内装そのものだが、プリウスはトヨタを代表する車種だから下手に欧州調なんかにするよりも、これで良しとするか?それにしても、 欧州輸出用プリウスのシートもこんなのが付いているのだろうか?
後席の広さは意外と充分で、天井の高さとともに余裕という面ではインサイトより勝っているような気がする。



ボンネットを開けてみると、そこには横置きエンジンの姿とともに車輌の左側に(写真上右)は何やらオレンジの太い電線が繋がった装置があって、なるほどハイブリッドだわい、と感心する場面だ 。

リアゲートを開けてみると、 結構使い物になりそうなスペースが現れる。ハイブリッド車というとバッテリー置き場にトランクスペースが犠牲となるような場合もあるが、流石にハイブリッド専用車として開発されたプリウスは、そんな事はない。
前述したように、カローラ的な小ぶりのシートの座り心地は、やっぱりそのまんまカローラだったが、それでも数年前よりはサポートなども改良されてはいる・・・・・ とは思うので・・・・・まあ、良いか。




試乗車には純正のナビが装着されていた。ハイブリッドというハイテクで今風のクルマとなれば、まさか地図帳を見ながら道探しというのもサマにならないから、ナビが付いていて当然と いう気がするが、30万円強のエクストラコストが財布に響きそうだ。

イグニッションをONにしてもセルモーターは回らないしエンジンのアイドリング音も振動もない。 まあ、エンジンは停止しているのだから当たり前だが。
プリウスのセレクターは電子スイッチ式で、言ってみればBMW5シリーズ等と似た方式だが、5シリーズ程の質感や操作フィーリングは持ち合わせていない 、って比べる相手が違うだろう!レバーを●位置から右→下に動かしてDレンジに入れる。このレバーは手を離すと●位置に戻るので慣れないと奇異に感じる。ブレーキを離すと、ちゃあんとクリープで前に進み、更にアクセルを軽く踏むと音も無く速度を上げ始め 、いつの間にかエンジンも加わっての加速となる。プリウスには3つの走行モードがあるが、最初は通常走行モードで走ってみる。このモードでは特に違和感がないし、動力性能もカローラ1.5程度だから、普通の使用には全く支障がない。 次にエコドライブモードを試みるが、これは流石にトロくてイザという時の緊急加速が効かないこともあり、余程の燃費重視思想でも無い限りは使いたくはないモードだった。そして極めつけはパワーモードで、アクセルのレスポンスも良く加速性能は2ℓ級のプレミオ どころか、2.5LのマークX級の加速が体感される。いや、それどころが電気モーター独特のトルク特性のせいだろうか、 並の2.5ともまた違う加速感で上体がバックレストに押し付けられる感じすらある(まあ、バックレストの出来が悪いので体がめり込むとうのが正解だが)。実は走行モードにはもう一つEVドライブモードという、言ってみればモーターのみの電気自動車状態のモードがあるのだが、試乗車のバッテリーは大分放電していたらしく、このモードには入らなかった。



最初にディーラーの駐車場をユックリと走って、公道の手前で一時停止のために軽くブレーキペダルに足を載せると、クィーンという山手線( 最近は目蒲線でも!)のような音と共に意外な減速感を感じる。その後もある程度速度が落ちた時点での制動ではハッキリと回生制動が作動しているのが判る。電車の場合は制動のみならず加速時にも可変周波数&電圧(鉄っチャンの言うVVVF)制御の独特の共振音が聞こえるが、 プリウスは加速時にモーターの駆動制御の音は聞こえない。 巡航時のブレーキペダルのフィーリングはフルエレキ(ブレーキバイワイヤ)としては違和感は少なく、最初に多少の遊びがあってから効き始めるのも従来の油圧ブレーキ (バキュームサーボ)的だから、40±10km/h程度からの減速のための制動はハイブリッド車であることを意識しないでよい。今度は信号待ちで停車中に静的なブレーキぺダル特性を見ようと、遊びが終わったところから強く踏んでみた 。この時は多少ストロークしたと思ったらすぐに底突きしてガンっと止まり、それ以上はストロークしなかった。と同時に、この段階で黄色い警告灯が点灯した。どうも緊急ブレーキ状態と勘違いして横滑り防止装置が働いたらしい。この制御はクルマの完全停止をチェックしていないらしい。まあ、確かに4輪が止まっていてもフルロック状態かもしれないから、コントローラには判断がつかないのだろう。 こういう面では、やはり未だ人間の感覚の方が勝っているようだ。

試乗したプリウスはスポーツ志向のSだった事もあって、乗り心地はトヨタ車としては硬くタイヤの走行音も結構聞こえた。それでも欧州車に慣れていればそれ程には硬いとは感じないし、乗り心地だって決して悪いことはない。 新型プリウスの剛性感は今やBMW3シリーズに勝るとも劣らない・・・・という程ではないが、そんなに悪くはない。10年ほど前だったら、スポーツ仕様として足を固めた 国産車の乗り心地は酷い物だったが、今では随分改善されたから、 日本車この間に長足の進歩と遂げたのだろう。 そういう意味では相対的に欧州車のメリットが減ってきたわけだが、そうはいってもアチラだって進化しているのだがら、そう簡単には追いつかれないだろうが、差が縮まった事には間違いない。 そしてハンドリングはといえば、これも決して悪くない。勿論、このクルマの性格からいっても峠道を攻めるマニア向けではない事は言うまでも無いが、それでも途中チョッときつめのコーナーを速度を上げ目で通過してみたが、アンダーステアも少なくて良く出来たFF車という感じだった。途中の一箇所では左に自転車の女子高生を発見しコーナー手前で減速 し(勿論安全のためで、嫌らしい目でよ〜く観察するわけではない・・・・つもり)、 コーナーの手前から加速するような状況となってしまった。それまでに体験したPWDモードでの加速から、強力なトルクをフロントに駆けながらのコーナーリングを想像したが、プリウスの電子制御はそんな下品なコーナーリングを許してはくれず、速すぎず遅すぎず、コーナーリングに破綻を起こす以前で加速が抑えられてしまった。やはりプリウスでのファントゥドライブは無理な相談だった。

ベース価格205万円という価格を知ったとき、もしかしてトヨタはプリウスの原価を激安に抑える程の能力があって、先代プリウスなんて知らばっくれてボロ儲けしていたのではないか、なんていう憶測もあった。しかし、この新型プリウスを見る限り、本当に205万円で儲けがあるのだろうか?インサイトの値段が 本来目一杯ではないかなんて思ったりもする。だから、プリウスの価格設定について、世間では汚い手段でインサイト潰しに出たという意見もあるが、ホンダは元々スタート地点が違うのを覚悟の上で挑戦したのだから、今後はより頑張って差を縮めるしかないだろう。確かにトヨタは悪のヒーローという地位にいるようで、多くの庶民はホンダの 味方・・・・という世の中の雰囲気があるが、実際には元々トヨタユーザーが圧倒的多いのだから、インサイト擁護論は世の中全体から見たら決して多数派とは言えない人たちの感覚ではないか。ホンダだってハイブリッドでの挑戦は最初からスタートラインが大いに違っていることは百も承知で始めたのだろうが、それにしてもプリウスのベース価格は”想定外”だったに違いない。

09年6月時点で、プリウスを今注文しても納車は来年の一月以降だとか。インサイトも発売以来売れ行き好調だったが、プリウスの売れ方はインサイトよりも一桁多い。確かに、プリウスは他に比べるものが無いほどの独占状態だから、購入するユーザーだって長年カローラに乗っていたが減税などを考慮す ると、ちょっと追金すれば買えるからという人もいるし、正にクラスレスだしエコっぽいから知的に見えると思って一台買ってみるメルセデスユーザーだっているかも知れない。最大の問題は今後 街に溢れる事は間違いないから、全く目立たない点だろう。そんな意味では、近日中に発表されるであろうレスサスブランドのHS250には期待が持てる。何故なら、レクサスが不調なのは今までラインナップされているクルマが結局はドイツ車(というよりも、ベンツ・ビーエム)の代替品でその分価格は安めになっている、というコンセプトだったから、これらの欧州車ユーザーには見向きもされな くても当然だった。ところが、ハイブリッド専用車ならドイツ車には無い分野だし、トヨタブランドのプリウスよりはプレミアム性があるから、セレブの奥様のパーソナルカーには正に最適だ。それに Cや3から比べればイマイチとはいえ、レクサスの内装はカローラレベルのプリウスに比べれば満足感も多いだろう。しつこく何度も言うが、プリウスはBMWにもメルセデスにも、比べる 車種がないのだから。

注記:この試乗記は2009年6月現在の内容です。