ニッサン ウイングロード 18RX
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今回は まずウイングロードの歴史について簡単に整理して見る。 実は初代ウイングロードが発売されたのは96年だから、その歴史は浅い。と言っても、その初代はサニーのバンであるADバンを基にしたADワゴンとサニーカリフォルニアを統合したものだから、歴史自体は結構あるのだが、何しろ商用車のサニーバンの内外装にチョッとお化粧を施してコンパクトワゴンとしたものだから、歴代ウイングロードの乗り味はと言えば決して良くは無かった。

2代目は99年発売だったが、これも言ってみれば商用ライトバンベースで、乗り味は期待できない代物だったが、コンパクトなサイズと広い荷室、それに低価格も受けて、ソコソコに売れていた。とは言っても、新設計のライバルとマトモに勝負するのは厳しく、それならと01年のMC(マイナーチェンジ)ではヤケッパチでスタイル命とばかりに、これでもかと低くてカッコ良いボディを載せたら、これが結構当たってしまったというのが本当のところのようだ。

今回の3代目はティーダ、ノートと同じ 、言ってみればマーチの派生車!要するに通称Bプラ(ットフォーム)と呼ばれるコンパクトカー用の車台を使って、バリエーションの一つとしてワゴンボディをでっちあげたという訳だ。試乗したのは1.8ℓの18RXというグレードで、他に1.5ℓの15RS(約150万円)から上級の1.8エアロ(約188万円)まで8種類のバリエーションがある。 この3代目の最大の欠点は、カッコが悪いことだ。なにしろ先代がスタイルで勝負とばかりに、低くてカッコ良かったのに比べて、最近のニッサンのトレンドでもある背高スタイルは、まるでミニバンの出来損ないのようだ。

リアゲートを開けて見れば、流石にライトバンの血を引くだけあって、この新型も十分なスペースを持っている。しかも、リアシートは荷室からレバーを引けば前に倒れるので、一々リアドアに回ってからリアシートを畳むなどという面倒なことから開放される。と、言う訳で早速レバーと引いて見たら、即座にバコッという音と共にリアのバックレストが前に倒れた。その倒れ方は、スプリングでビヨンッとばかりにブッ倒すので、幼児をリアリートに置き忘れてレバーを引いたりすれば、折角の楽しいバカンスを急遽中止して、救急病院のお世話になるから注意が必要だ。


ドアを開けて中を見れば、兄弟分のティーダがハイオーナーカーのティアナ並みの大きなシートを奢っているのに比べて、こちらは普通の国産車のシートが付いている。座ってみればコレマタ、グニャグニャウレタンのオモテナシを受けながら、ドアを閉めればバシャっという謙虚な音が聞こえる。


ダッシュボードは随所にクロームメッキの縁取りを使って、欧州のスポーツタイプを気取っているのだろうが、その質感がヤタラと安っぽい。ティーダはコンパクトカーとしては異例に高級感があったが、このウイングロードはコンパクトクラス成りのものを使用している。このクルマの主とするユーザーである若者には、この方が受けるのだろうか? 

走り出すと流石に1.8ℓだけあって、このクラスとしては低速から十分なトルク感がある。まるで、2ℓ級セダンのようだ。ミッションはCVTなので当然変速ショックもなくスムースだ。この1.8にはステアリングにあるパドルでマニ ュアル的に変速が出来る。まるでフェラーリモデナのF1シフトやBMW M5のSMGのようだ。使って見ると結構楽しめるが、間抜けな事にオートマモードとの切り替えスイッチはステアリングの陰に隠れて、とてもじゃないが走行中に切り替えられる代物ではない。 それに回転数が大きく上昇しないCVTでは気付かなかったが、MTとしてレッドゾーンまで引っ張ろうと思ったら、4000rpm過ぎからの振動と騒音が酷くて、事実上は使い物にはならなかった。やはり、このクルマは所詮こんなもんだろう。
操舵性はと言えば、Bセグメントのプラットフォームを流用したCセグサイズのワゴンというスペックから判るとうりに、多くを期待してはいけないが、ここでも、それなりにまとまっていたティーダに比べてハッキリ劣るのが判る。とは、言っても、普通の流れに乗っていれば大きな問題はないだろうし、これより不安定なクルマだって確かにある。しかし、緊急時の回避等を考えると、もうチョット何とかならないもんだろうか。リアタイヤの後ろをスッパリと切り落とされたティーダに比べて、ワゴンとしての荷台をぶら提げたウイングロードは、やはり無理があるのだろう か。

試乗車した18RXは185/65R16タイヤとスチールホイールの組み合わせが標準となる。65タイヤが標準というだけでこのクルマの性格が判る。写真は18RXエアロに装着される195/55R16とアルミホイール。ただし、ウイングロードのリアは全車種でドラムブレーキが装着されているから、性能云々は別としても、アルミホイールから覗く無粋なブレーキドラムがチ ョット痛い。

内容はとも角、カッコの良さから其れなりに売れていた先代をフルモデルチェンジ(FMC)するにあたって、中途半端に良心的に改良しようなんて思ったのかどうかは知らないが、結果的にはカッコは悪くなるし、走りだってイマイチで、何の為のFMCだったのか。 それに値段も高すぎる。今回試乗した1.8はナンだカンダで総額200万円コースとなる。200万円出せば少しはマシなクルマが結構あるんじゃないか。兄弟車のティーダは実に出来が良く、事実、一時期はカローラを追い落としそうな売れ行きだった。同じプラットフォームでも、上物の出来の良い悪いで、これほどまでにクルマとして出来が違ういう事実を目のあたりにして、改めてクルマという物の奥の深さを再認識してしまった。

※この試乗記は2005年12月にブログ上で発表した内容を転載したものです。