スズキ スイフトスポーツ AT
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今回の試乗車は4ATのモデルで161.7万円。スイスポのイメージとATは釣合わないようにも思えるが、結構要望もあったらしい。 MTの場合は156.45万円となる。
外観上でノーマルのスイフトとの大きな違いはフロントのエアインレットの形状がアグレッシブというか如何にもスポーツモデルらしい形状をしている。

リアから見ると太い左右各1本の排気管が目に付き、それ以外はSportという赤いロゴのエンブレムが付く。試乗車はチャンピオンイエローというWRCマシンをイメージする黄色で、 スイスポにピッタリだが、オジサンが乗るには気恥ずかしい。



ドアを開けると、黒いインテリアに赤いシート座面が目に付く。先代は標準でレカロシートが付いてきたが、新型はセットオプションとなる。欧州車のような、荒い織り目のファブリックで座面が赤、サイドが黒の標準シートは、硬めでレカロ系のような座り心地で決して悪くはない。



リアシート は大人2人が何とか乗れるだけのスペースで、最近のハイトワゴン系の軽自動車の方が足元に余裕があるくらいだ。まあ、このクルマは2人乗りで、リヤは手荷物を置くところと割り切れば問題はない。




リアゲートを開けると出現するラッゲージスペースはハッキリ言って軽自動車並みだ。しかし、リアシートのバックレストが前に倒れることと、さらに座面を含めて前方に折り畳めるので、2人乗りのバン的な使い方をすれば、自転車でも積めそうだ。

新型スイスポのエンジンは1.6ℓ、125psと最近のスポーツエンジンとしては決してハイチューンでもない。しかも試乗車のミッションは4ATだから、果してどの程度のスポーツマインドを発揮するのだろうか?




そんな事を考えながら、座面が赤でサイドが黒の硬めのシートに座ってエンジンを掛ける。このクルマも最近流行のインテリジェントキーを採用しているので、キーを差し込まなくてもステアリングコラム右側面のダイヤルを捻ればエンジンは始動できる。



コールドスタート後のエンジンは1100rpm辺りを指しているが、スポーツエンジンとしては音も結構静かだし振動も少ない。正面の速度計は国産車には珍しくフルスケールが220km/hで、実際そんなには出ないにしても、これだけで気分が好くなるから不思議だ。 これとは反対でレクサスの180km/hフルスケールはかなりシラけるが、一体誰に気兼ねをしているのだろう。警察?いやいや、今や風前のともし火の革新政党や、その親派の偽善者あたりか?
3連メーターの真ん中と左を入れ替えれば、正面に回転計、左の少し小さいメーターを速度計、右水温計と燃料計となって、まるでポルシェボクスターのようになるのだが。
セレクターをDに入れて、アクセルをゆっくり踏んでみると、走り出した瞬間からグイッと飛び出す。まあ、これは味付けだろうが、このクルマの性格からすれべ決して悪くはない。さらに踏んでみると、ヴォーっいう如何にもスポーティな音を振りまきながら結構な加速をする。
1.6ℓ、125psとは言え、車重が1070kgと軽いためにATでも実にパワフルに感じる。

ATのセレクターはゲート式で、最近流行のティプトロタイプではない。したがって、 あえてマニアルで使う気にはなれない。それでも、ATのキックダウンは結構敏感だから、積極的に踏み込めば其れなりに楽しめるが、そうは言ってもスイスポの本来の姿はMTであることに代わりは無い。
 

スイスポの操舵性はVWゴルフなどの最近の良く出来たFFのように弱アンダーでスムースに回る・・・・ではなく、どちらかと言えば旧世代のFFで、センタリングも強いし、アンダーも強めだ。 中心付近のレスポンスは特に悪くは無いが、ステアリング系の剛性も大した事はなさそうなフィーリングだが、このクルマのキャラクターから言えば実に合っている。だから、スポーツ走行にNGという訳でもないし、これは此れなりの走り方をすれば、元気なエンジンと軽い車 重を上手く使って、結構スポーティな走りも可能だ。何より1070kgという軽さが、軽快な挙動をもたらすし、これが何とも心地良く、重量級の高級スポーツでは絶対に味わえない良さがある。

標準装着されるタイヤは前後共195/50R16で、標準のアルミホイールは15本スポークタイプが付く。 走り出して最初の5分程度は、路面の良い1級国道を走行したので気にはならなかったが、裏道に入ると行き成り路面の凸凹で大きく上下に震動が来る。最近はスポーツサスと言ってもしなやかなセッティングが多いが、スイスポのサスはガッチガチで一昔前の国産スポーツタイプ丸出しというフィーリングだ。 これは、余程好きでないと許容できないレベルだから、AT版があるのを良い事に、カッコに惚れてを試乗もせずに買ってしまった、お嬢ちゃんはアッと驚くこと間違い無しだ。
ここ1〜2年で、国産車のブレーキは随分良くなったが、このスイスポのブレーキも、結構良いフィーリングを持っている。踏力も適度に軽く食いつき感もあるし、ストロークも適度に短いから、スポーツ走行をするにも問題はない。
若い世代の嗜好がミニバンに向かってしまい、スポーツタイプが絶滅寸前の今、低価格のスポーツハッチという貴重なカテゴリーのスイスポは、オジサン世代としては、何とか成功して欲しいという期待がある。 更に低価格でレカロシートまで標準で装備していた先代(125万円)に比べれば多少割高になったが、その分は車体もシッカリしたから、未だ買い得感は十分にある。 MTで156.45万円という価格は、最近高価格化している軽自動車、例えば三菱アイのG(149.1万円)と同等だから買い得には違いない。荒い乗り心地や、FFのデメリットを未だ残している洗練されていない操舵特性など、言い出したら限は無いが、 軽の高級モデル並みの低価格を考えれば、若者の入門用は勿論、ベテランの玩具としても勧められる。
輸入車オーナーも騙されたと思って試乗してみては如何なもんだろう。でも、相手にしてもらえるかって?軽自動車のデーラーだからM5やカレラなんか乗って行くと無視される可能性もあるし、駐車場は狭く、しかも隣に置いてある錆びだらけの軽のオッサンやオバちゃんが、平気でドアをガバッと開けるから、結構心配はある。
スイフトのディーラーは敷居の高さでは、ある面コー○ズ並みかもしれない!


※この試乗記は2006年4月にブログ上で発表した内容を転載したものです。