マツダ アテンザ 25Z
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今から8年ほど前、21世紀も目前の頃、マツダはモデル末期のカペラの次期モデルを開発中だったが、折りしも当時のマツダは業績が芳しくなく、フォード傘下に入ったこともあり、 次期カペラの開発自体も混沌としていた。それでも、ようやく フォードの許可がおりて、名前も新たにアテンザとして新発売されたのが、2002年のことだった。このアテンザは、思いのほか出来が良く、フォードにマツダの小型開発技術の高さを認めら させるきっかけとなり、その後のアクセラの成功へとつながった。アクセラはフォードフォーカスやボルボS40/V50という兄弟車種にも展開されるなど、今や業績不振のフォードグループにおいて、マツダは唯一の商売になる製品を開発できるグループ企業という重要なポストを手に入れたことになる。
アクセラ以降も最近では、デザインも乗り味も殆ど欧州小型車といっても良い程の新型デミオなど、正に絶好調といっても言い過ぎではないだろう。

そのマツダから、アテンザが6年ぶりのフルモデルチェンジを実施したのが今年の1月。チョット出遅れぎみだが、その新型アテンザに試乗した。アテンザには大きく分けて車体形状から、セダン、スポーツ(ハッチバック)、ワゴンの3種類 がある。また排気量は、それぞれに2ℓ(207万円から)と2.5ℓ。さらにバリエーションが各車体形状に対してセダン4種類、スポーツ5種類、ワゴン6種類という展開 をしている。

今回の試乗車はスポーツの2.5Zという 、アテンザシリーズでも最上級のスポーツグレードで、価格は267万円と結構なお値段でもある。 試乗車は更にナビが付いていたから車両価格で約300万円コースとなる。
2.5Zの外観上の主な装備は、フロントおよびサイドのエアロパーツにリアのウィング、18インチアルミホイールに45扁平のタイヤなど、スポーツモデルの定番的な外観を持っているから、オジサンが乗るのはチョット気恥ずかしいかも知れない。

シートはハーフレザー タイプが標準で装備されるが、レザーの質感は良くなく、一見して人工皮革(それも出来の悪い)かと思ったくらいだ。このシートはパワーシートで、成る程、これは最上級モデルなのだと再認識したところで、座り心地はといえば、まあまあ特に良くはないが文句も無いという程度か。左右のサポートも国産シートの常で見かけほどには良くないが、これもコンナものだろう。

試乗車はハッチバックの”スポーツ”だから、当然リアに大きなゲートを持つ。 このゲートを開けて見ると、アッと驚く、このクラスの標準を大きく上回る、広いラッゲージスペースが登場する。特に奥行きが深く、しかも左右のサスの張り出しも少ないから、とにかく広い。
ただしハッチバックボディといっても、リアのルーフラインはセダンに近いから、イザという時にはトノカバーを外しても、大した上下方向の空間はないのが惜しい。

ダッシュボードの質感は、200万円代中ごろのクルマと思えば、これまた標準的だ。2.5Zの内装は随所に弾性樹脂によるパッドも配していて、同じマツダでもデミオ辺りとは違い、少しは金が掛かっているという実感がある。とは言っても、特に関心する程でもないが、比較としてはミツビシのギャランフォルテス(とランエボ])と同程度というところだった。

メーターは光学式の、トヨタで言うところのオプティトロンメーターで、インテリジェントキーを所持してスタートボタンを押してエンジンが始動されると、文字が現れる。赤に近いオレンジの表示は決して高級感はないが、見易さに対しては不満はない。ステアリングホイールのスポークには何やらスイッチが組み込まれているが、これはダッシュボード中央上部のディスプレイと連動して、オ ーディオや空調をコントロールするシステムが組み込まれているそうだ。さらにステアリングにはMTモード用のスイッチもあり、これは押してダウン、裏から引いてアップで、左右とも同じ動作をする。最近の2ペダルのMTモード では右でアップ、左でダウンのパドル方式が主流なのだが、アテンザは全く異なる。もっとも、これを使うのは納車された直後くらいで、その後は使われることは無いのが普通だから、まあどうでも良いかもしれないが・・・・。

一般的なトルコン式の5速ATのセレクトレバーをDに入れて、やけに軽いスロットルをチョット踏むと、クルマはピョンと飛び出す。25Zのエンジンは170ps/6000rpmの最高出力と23.0kg-m/4000rpmの最大トルクを発生する 4気筒 2.5ℓで、これを1490kgのボディに積んでいるのだからトルクの余裕も十分で、アンダーパワーをアクセルの踏み始めで誤魔化す必要もないのだから、もう少し重く、踏み始めの特性もリニアにするべきと思うが・・・・・。だだし、最近の電子制御の常で、自己学習機能を持つとすると、偶々過激なモードを学習していたともいえるので、結論づけるのは危険だが。少し前までは乗用車で排気量が2.5ℓといえば、6気筒エンジンが常識だったが、技術の進歩は2.5ℓでも4気筒で十分な性能と快適性が確保できるようになり、他社でも徐々にこのクラスが4気筒化されている。アテンザのエンジンも決して不快な振動や耳に付くノイズ も無かったから、普通の用途に使うには何の問題もないだろう。

今回はいわゆる”チョイ乗り”だから、ワインディング路でのハンドリングテストなどは望むべくも無いが、一般道のちょっとしたコーナーを通過する分には、アンダーも少ないし、最近の良く出来たFF車その物のハンドリングで、このクルマの用途からすれば全く問題はない。試乗した2.5Zはエアロやリアウィングが標準装備されているし、エンジンも2.5ℓを搭載しているとはいえ、本格的なスポーツモデルというよりは、スポーティな雰囲気を味わうモデルと 表現すべきだ。

アテンザ25Zのブレーキペダルを踏むと、最初の遊びストロークが結構大きい事に気づく。最近は各社ともブレーキの剛性感が上がっているので、最初はチョッと戸惑う。それでも効き自体は決して悪くないから、このフィーリングに慣れれば 、これも問題はなさそうだ。

アテンザ25Zは標準で専用の18インチアルミホイールと225/45R18タイヤを装着しているが、45扁平とは思えないほどに乗り心地が良い。 路面の凹凸も上手く吸収するし、それでいて決してフワフワしたりはしないが、強いて言えば乗り心地重視のセッティングだ。このしなやかな乗り心地は、スバルマニアが絶賛する新型インプレッサに勝るとも劣らないと感じたが、元々アテンザはDセグメントに属するから、Cセグメントのインプレッサよりも 乗り心地では有利な点は考慮すべきでもある。
このアテンザのDセグメントセダン(ハッチバックのスポーツも含めて)の位置付けを考えてみるために主要なスペックをライバル車と共に表にまとめてみた。
 
    アテンザ マークX スカイライン パサート

スポーツ 25Z 250G 250GT TSI コンフォートライン

寸法重量乗車定員

全長(m)

  4.735 4.730 4.775 4.785

全幅(m)

  1.795 1.775 1.770 1.820

全高(m)

1.440 1.435 1.450 1.490

ホイールベース(m)

  2.725 2.850 2.850 2.710

最小回転半径(m)

5.6 5.2 5.4 5.3

車両重量(kg)

  1,490 1,510 1,560 1,440

乗車定員(

  5 5 5 5

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  4 DOHC V6 DOHC V6 DOHC 直4 DOHC ターボ

総排気量(cm3)

  2,488 2,499 2,495 1,798

最高出力(ps/rpm)

  170/6,000 215/6,400 225/6,800 160/6,200

最大トルク(kg・m/rpm)

23.0/4,000 26.5/3,800 26.8/4,800 25.5/4,200

トランスミッション

  5AT 6AT 5AT 6AT

駆動方式

  FF FR FR FF

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン ストラット
  マルチリンク マルチリンク マルチリンク 4リンク

タイヤ寸法

225/45R18 215/60R16 225/55R17 215/55R16
  225/45R18 215/60R16 225/55R17 215/55R16

価格

   
 

車両価格

  2,670,000  2,751,000 2,798,000 3,290,000

備考

         

こうして比べてみると、アテンザは全長でも5ナンバー枠の4.7mを超えていて、マークXやスカイライン、そしてパサートと同等のスリーサイズであるのが判る。 価格的には国産2車よりも買い得なのは一目瞭然だが、これらは同じ排気量でもV6を搭載していることもあり、やはり格上の感がある。パサートは1.8ℓにターボを搭載する事でアテンザの2.5ℓと同等のエンジン性能を得ているという点では個性が光るし、価格的にも国産各社に対して数十万円の違いだから、決して割高ではない。
そうは言っても、アテンザの場合は25Zという装備満点のグレードで比較しているので、それでもマークXやスカイラインのベースグレードよりも安いという点では買い得だし、何よりこれらライバルがオヤジセダン的なのに比べて、アテンザは若いユーザーも抵抗無く乗れる感がある。実際にアテンザの売れ筋はセダンではなく、ハッチバックのスポーツだそうで、これならマークXとの競合はなさそうだ。
十分な動力性能とスポーティーな外観。それに広いラッゲージルームなど、レジャーにも十分使えるアテンザスポーツなら、20代の独身貴族(古〜い表現!)や30代前半の ヤングファミリーにピッタリだ。はっ?ウチは30代前半ファミリーだけど、一流大学出て大企業に勤めるエリートだから、マツダなんかには乗れません!ですか?なるほど。それで、あたなのファミリーカーは?ほうほう、乗り出し400万円のボルボV50ですか。流石にエリートだけあって選ぶものが違いますねぇ。でも、V50のベースって・・・・・。

注記:この試乗記は2008年4月現在の内容です。