クラウン 3.0 ロイヤルサルーンG 褒めゴロ試乗記

ご注意:この試乗記の内容は大きく偏っています。事実に反する事は書いてありませんが、誇張や想像は大いにあります。
 


既に完成されたクラウンのエクステリアは、これ以上弄りようが無いから、先代と殆ど変わらないデザインとなっている。
新旧の区別が付き難いのはポルシェなどと同じで、一見何処が変わったのか判らないが、それこそが一流の証だ。

日本のお父さん達の憧れであり、人生の最終目標たるクラウンが大幅に近代化され、ゼロクラウンと自ら名乗っての大々的なモデルチェンジが行われたのが、ついこの間のような気がするが、なんともうモデルチェンジのタイミングがやって来た。
今回の試乗車はクラウン 3.0 ロイヤルサルーンGというロイヤルシリーズの最上級車で、価格は528万円もする、正に日本の正しい高級車だ。外観上で先代との大きな相違を探したが、良く判らなかった。これ程のキープコンセプトが成り立つのは、世界広しと言えどクラウンを除いてはポルシェくらいだろう。
ドアを開けて見える眺めは、これぞ高級車の見本のようで、試乗車は標準の布シートが装着されていたが、この表皮(写真5)は見かけも肌触りも理想的で、あえてレザーは不用とも思えるが、それでもレザーシートを好むオーナーの為に、当然オプション設定がある。このレザーシートは座面に細かい通気穴が無数に開いている。レザーシートの座面に通気穴をあける手法は他社でも多く採用されているが、これほどの数は見たことがない(写真6)。
シート の座り心地は、これも如何にもクラウンという柔らかめの座り心地で、他車のようにドイツ車を真似たコチコチに硬いシートと違い、日本人の好みに合うべく、柔らかさの中にもシッカリした座り心地を確保している。 平均速度が遅く渋滞も多い日本の交通事情を考えれば、高速主体のドイツ車のシートなんか真似しても良いことは無い。
シートに座ってドアを閉めると、最高級車らしく分厚いドアは、これまた如何にも高級な音を発ててズシンと閉まる。だだし、このドアにはオートクローズ機構が標準で装着されている ために、半ドアにしても自動的に閉まるから、何もズンっと勢い良く閉めることは無いのだが。

ここで、気持ちを新たに周りを見回すと、如何にも質感の高そうなダッシュボードの表面は、当然ながらパッドの役目をする弾性樹脂となっている。木目とレザーのコンビであるステアリングホイールは、当然ながら各種の操作ボタンが組み込まれているのだが、このような高級車の経験がない B_Otaku は、ただただ面食らうばかりだった。 随所に貼られた木目パネルも実に高級感に溢れている。ご承知のようにクラウンのパネルは本物のウッドではないが、これはコストダウンを狙ったのではなく、森林資源の保護という観点からわざわざプラスチック製を使用しているようだ。 それにしてもトヨタの木目調パネルは本物のウッドよりも本物っぽいから、これを毎日見ているオーナーも十分な満足感と共に、長年所有しても決して飽きることは無さそうだ。


写真1
新型のリアスタイルも先代(右)と見分けが付かない。
しかし、良く見ると全く新たにプレスを起こしたのが判る。

 


写真2
先代のリアビュー。写真はアスリートなので、スポイラーが付いている。

 


写真3
クラウンはショーファードリブンとして大企業の役員車としても使われるから、リアスペースは当然ながら広いし、特に頭上の空間の広さはレクサスとは大いに異なる。

 


写真4
フロントシートは当然ながらフルパワー。国産最高級車の風格が滲み出ているインテリア。

 


写真5
標準の布シートは見かけだけの安物モケットとは異なり、表皮は高級感感に溢れている。

 


写真6
オプションのレザーシートは、座面に細かい空気穴があいていて、夏でも蒸れることはない。国産ライバル車どころか、欧州のプレミアムカーさえも寄せ付けない圧倒的な高級感のあるレザーを使っている。

 

エンジンは既に掛かっていたようだったが、全く音も振動も感じられない。しかし、回転計の針は600rpmを挿したままビクともしない。いつもながらクラウンの静粛性には驚かされる。 この静粛性に慣れると、BMW5シリーズやメルセデスEクラスは、まるでトラックのように騒々しく振動も感じる。ATセレクターのジグザグゲートをDに入れて、ステアリングコラムの左、ダッシュボード上にあるリリースレバーを引いてパーキングブレーキを解除する。国産車の多くが、プッシュ/プッシュ式を採用する中で、コストアップを物ともせずに、クラウンはひたすら伝統を守っているのは実に立派だ。
いよいよ走り出した第一印象は、少し過敏気味のアクセル特性だが、慣れればどうという事は無く、むしろこのほうがユーザーにとっては嬉しいのだろう。アクセルのチョイ踏みで過敏な特性の場合、それ以上踏んでも大したことは無いクルマが多いが、クラウンロイヤルの場合は流石に3ℓエンジンを搭載しているだけあり、踏めば踏むほどにグングンと加速する。この加速感は体感的にはライバルのBMW530iを凌いでいるし、排気量の割りに加速がトロイので有名なメルセデス E300と比べると、クラウンロイヤル3.0のほうが明らかに速い。

クラウンのミッションはトヨタ系のアイシンAW製6ATで、これはZFと並び世界的に評価されたATだ。アイシン製のATは、ZFのようなダイレクト感に欠けるなどというビーエムマンセイがいるが、BMW5シリーズの場合は、オーナーに高学歴(博士や修士課程終了 者で、一般の4年制大学卒業者を「学部出」と馬鹿にする)で、高級取りだと勘違いしている大手企業の雇われ人が多いため、一見ダイレクトなように見せかけた、故障率のやたら多いATを搭載しているのだが、あの連中には判らないようだ。それに比べて、クラウンのオーナーは実力で社会的な地位を獲得してきたので、学歴や勤務先、オマケにクルマまでブランド がすべての5シリーズオーナーのようには誤魔化せないのだ。


写真7
これぞクラウンとも言うべき、豪華な室内。運転席でこの光景を眺めるオーナーは、自分が人生の勝ち組であることを
改めて認識するだろう。


写真8
国産車が世界一の水準を誇っている光学式のメーターのなかでも、クラウンの出来はすこぶる良い。最近ではメルセデスSクラスも、これを真似ている。

 


写真9
ATセレクターの材質も最高で、コンソールの木目は言うことは無い出来だ。木目パネルは森林破壊を防ぐ為にあえてプラスチック製を使用している。

 


写真10
エアコンは当然ながらフルオートタイプ。センタークラスタの質感などは言う事なしの高品質。

 


写真11
ドアの取っ手は木目調や漆風のパネルが使用されていて、アームレストの側面はレザーにステッチ(縫い目の糸)が入っている。

 


写真12
都会の道は1車線の幅が狭いので、輸出先の事情のみを優先した他社とちがい、全幅1795mmと適度な幅に抑えたクラウンは、日本の都心での使いやすさは抜群だ。しかも、ボンネットが確認できることによる見切りの良さもあり、写真のような都心の幹線道路でも、実に運転し易い。

クラウンロイヤルの乗り心地の良さについては文句なしの100点満点で、ポルシェのブレーキが宇宙一という言葉を借りれば、「クラウンの乗り心地も宇宙一」となる。 とにかく圧倒的なしなやかさで、路面の凹凸をことごとく吸収する。これはもう魔法の絨毯に乗っているようだ(と、いっても、魔法の絨毯に乗った経験はないが)。
これだけ乗り心地が良いと、操舵性に難があるのではないかと疑うが、そんな兆しは一切無い。操舵力は軽いがフラフラではないし、中心付近の不感帯も適度で、その操舵性は最近のメルセデスEクラスと極めて似ている。いや、実際には世界のトヨタが誇るEセグメント車のクラウンをメルセデスがパクッたのではないか。
新型クラウン(GRS202)の全幅はカタログによると1795mmであり、先代(GRS182)の1780mmに対して15mmほど広くなった。モデルチェンジの度に全幅が広くなるのは最近の傾向だが、15mmなら許される範囲だし、実際に5シリーズの1845mmより50mmも狭いから、国内事情を良く考えられていると感心する。
今回はコースの関係で本格的なワインディング路はなかったが、ちょっとしたコーナーや、交差点での左折時の挙動などをみても、クラウンロイヤルの旋回性能は素直で、適度なアンダーステアを保つという、高級サルーンの見本のようだった。この面でもメルセデスEクラスに似ている、というよりも、これもまたメルセデスがトヨタの真似をしているに違いない。

   


写真13
V6 3.0ℓ 3GR-FSEエンジンは、256ps/6200rpm、314N-m/36800rpmを発生する。
これはメルセデスE300の231psを大きく上回っている。

クラウンロイヤルのブレーキはオーソドックスなピンスライド方式で、勿論効きも十分だし、全く問題は無い。世間では対向ピストン(オポーズド)のキャリパーがもてはやされているが、オポーズドなんてハッキリ言って見かけだけで、普通に街中で使用するには何のメリットも無い。伝統的なクラウンには、そんなミーハー的な装備は似合わないから、メーカーとして、このブレーキの選択は実に正しい。
最近の国産車のブレーキは軽い踏力でガッと効く欧州車的な特性が多くなっているが、クラウンのブレーキも当然軽い踏力だから、普通の街乗りの減速では、つま先でチョンと踏めば良い。クラウンのように、社会的地位が高いオーナードライバー が多いクルマは、仕事の疲れをクルマを運転する時間で癒すことが大切となる。だから、シートのバックレストを大きく倒したり、ドアに半身をもたれ掛けたりと、リラックスした運転が必要だから、軽いブレーキと軽いアクセルは必須となる。
こんなことを書くと、車は背筋を伸ばして、両手でステアリングをシッカリ握って運転するべきだ・・・・なんて、言っている暇な大企業のサラリーマンが 目に見えるようだ。えっ、しかも中央研究所勤務?それゃあ、まあ、さぞかし暇だろうねぇ。そんな気楽な稼業の連中には、クラウンの世界は理解できる筈がない と断言しよう。


写真14
ロイヤルの標準タイヤは前後共に215/55R17。写真はリア。


写真15
フロントもリアと同じタイヤを装着する。ブレーキはオーソドックスな鋳物のピンスライドタイプ。実際に、これで十分な性能を得られる。

 

クラウンのライバルである3ℓ級のEセグメント欧州車の仕様を比較して見ると、なんと、殆ど同じだった。と、いうと、例によって欧州車マンセイ組が「紙の上のスペックで比較するのは間違っている。欧州車はやっぱり乗ったフィーリングだ」と口から泡を吹いて 、わめいている姿が目に浮かぶようだ。そんな事は重々承知の上だよ。むしろこちらから聞きたいのは、アンタら、クラウンを運転した事があるの?と。まあ、それでも、百歩譲って5シリーズオーナーが偉そうな事をいうのは、ガマンしてやろう。同程度のクルマに二百数十万円も余計に払っている財力は一応認めなければならないだろう。しかし、3シリーズオーナーに言われなくはないよなぁ。 んッ、2世代前のマークU乗ってるくせに、3シリーズオーナーを妬むんじゃネエ、という320iオーナーのお言葉・・・・・・・。と、言う具合に、何やら掲示板的な展開になったりするので、ここらで止めておこう。でも、このネタやるとアクセス延びるんだよねぇ〜。



 
                 クラウン3.0ロイヤル   BMW 530i        メルセデスベンツ
                   サルーンG                          E300

寸法(全長×全幅×全高)mm  
4870×1795×1470  4855×1845×1470   4850×1820×1485
車両重量          1630kg     1650kg      1680kg
エンジン          
 総排気量ℓ        2.994        2.996      2.996
 
最高出力         256ps/6200rpm     272ps/6650rpm    231ps/6000rpm
 
最大トルク        32.0kg・m/3600rpm   30.6kg・m/2750rpm   30.6kg・m/5000rpm
 トランスミッション     6AT         6AT        5AT
  価格           528万円      764万円      672万円

4年ぶりのクラウンロイヤルは、やはり日本が誇る定番高級セダンだった。抜群の静粛性と乗り心地なのに、イザとなればスポーツカー顔負けの加速性能と操縦安定性を両立したクラウン 3.0ロイヤルは正に我々50代にとっては、いつかはオーナーになりたい夢のクルマに 間違いない。唯一の欠点は、今回の試乗車の場合で528万円という高価な販売価格だろう。しかし、それならもう少しグレードを落としてみたらどうだろうか。同じ3.0ロイヤルサルーン のベースグレードなら434.7万円だから、大分買いやすくなる。この価格はBMW320iの411万円よりも約25万円高いだけだから、実に買い得だ。何しろ、3.0ロイヤルサルーンのライバルは、BMWならば530iだから、それが5シリーズよりも下級の3シリーズ、しかも4気筒2ℓの320iに近い価格で手に入るのだ!

でも、まあ、これ程までに忠告しても、3シリーズの方が良いなんて思っているブランドオタクは、考えを変えることは無いだろうとは思うが。

 

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