VOLVO V50 2.0e POWERSHIFT 結論編  ⇒試乗記へ戻る

結論編へようこそ。ここでは思いっきりボルボの真実に迫ってみようと思う。

先ずは本編ではあえて触れなかったがV50(S40とC30も)はベースがマツダアクセラでプラットフォームを共有しているという事について検証してみる。そこで、V50とアクセラを比較してみたのが下の表だ。

    ボルボ V50 マツダ アクセラ ボルボ V50 ボルボ V70
       2.0e パワーシフト スポーツ 20S 2.4i SE 2.5T LE
 

車両型式

  MB4204S BKEP MB5244 BB5254W

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.520 4.435 4.520 4.825

全幅(m)

1,770 1.745 1,770 1.890

全高(m)

1,450 1.465 1,480 1.545

ホイールベース(m)

2.640 2.815

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.2 5.3 5.5

車両重量(kg)

  1,430 1,280 1,470 1,750

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  B4204S LF-VE B5244 B5254

エンジン種類

  I4 DOHC I5 DOHC 5 DOHC TURBO

総排気量(cm3)

1,998 2,434 2,521

ボア×ストローク(mm)

87.5X83.1 83.0X90.0 83.0X93.2
 

最高出力(HP/rpm)

145/6,000 150/6,500 170/6,000 200/4,800

最大トルク(kg・m/rpm)

18.9/4,500 18.7/4,500 23.5/4,400 30.6/4,500

トランスミッション

  6AT(DCT) 5AT 5AT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

11.6 13.6 9.5 8.6

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

マルチリンク

タイヤ寸法

  205/55R16 205/505R17 205/605R16

ブレーキ方式

前/後 ディスク/ディスク

価格

車両価格(発売時)

299.0万円 207.0万円 399.0万円 499.0万円

備考

       

外寸は殆ど同じだが、ボディが異なるから多少は違う。しかし、ホイールベースは全く同じなのはプラットフォームが同一なことの証でもある。表には無いがトレッドもフロントは双方1530mmと全く同じだったりする。


図2-1


図2-2

ボルボV50のプラットフォームはマツダアクセラだという話をすれば必ず出るであろう反論は、今の技術はプラットフォームを流用しているといっても個別に補強や寸法を変えることは簡単だから、V50だってアクセラをベースにしたって実際には独自の改良がなされてい て、同じという表現は間違っている、となるだろう。成る程、認識不足でした。安全という面では世界一というボルボだから、アクセラを元にしたって安全面では大きく改良されているのも当然かもしれない。
そこで調べてみたらば、確かにV50はコンパクトなボディサイズながら、高度な衝突安全性を実現するボディ構造だそうで、とりわけフロントは外周の大きなクランブルゾーンで衝突エネルギーを吸収し・・・、とある。
図2−1を見れば明らかなように衝突に際して白↑の部分がエネルギーを吸収する構造のようだ。流石はボルボ。
さて、ベースとなったアクセラはといえば図2−2のように、あれっ?マツダ独自のトリプル構造でキャビンを堅固に守る高剛性・安全ボディ”MAGMA”に衝撃分散三叉構造を採用。前方からの衝撃を最適に分散させ・・・・。
これ同じじゃあないの?


写真2-3


図2-4

まあ、プラットフォームに関してはボルボとマツダの共同開発で、安全に対してはボルボがマツダに相当のアドバイスをしたとボルボが主張しているから、ボルボがマツダと同じなのではなく、マツダがボルボに合わせたという考えも成り立つ。
さて、プラットフォームは共通らしいとして、次に安全と関る重要なデバイスであるブレーキを見てみれば、写真2−3のようにボルボのキャリパーは、良く見ればBMW3シリーズ(の下位モデル)と同じドイツテーベス製のキャリパーを使用している。そーれ見ろ、やっぱりブレーキは欧州車だけあって、マツダとは違うよね。これに対してマツダ はといえば図2-4のように国産のショボいキャリパー・・・・・・・・ではなくて、ボルボV50と同じ形をしている?そう、最近のマツダのキャリパーはフォードによる世界共通部品化とグローバル調達のコンセプトから、結構欧州製の部品が使われている。そんな訳で、V50とアクセラはプラットフォームのみならずブレーキも同じ。いや良く見 れば5穴のバブボルトの間隔も同じに見える。一般に欧州車はホイールの取り付けに際してボルトで止めるのに対して、国産車の場合はハブからボルトが出ていて、そこにホイールの穴をゴリゴリっとボルトの山で擦りながら入れて、最後はナットで止めるのが普通だ。
ところで、V50の5つの6角のネジはボルトorナット。写真では判らないが、まさかナットじゃないよねぇ。


図2-5


図2-6

BMWに代表されるプレミアムブランドと呼ばれるクルマの大きな特徴としてリアのサイドウィンドウを全開にした時に ガラスが完全に下まで下がりきるという特徴がある。そこでレクサスISを調べてみたら、図2-5のように見事に完全に下がりきっている。
それではV50はといえば図2-6を見れば一目両全で、なんと1/3以上が残っている。この辺りはマツダ丸出しだが、まあ良いか。
次にクルマの要であるエンジンについて 検証してみよう。V50の2.0ℓエンジンは以前から欧州では販売されていたバリエーションを日本にも導入したもので、その欧州版のエンジンはマツダ製というのが既成の事実だった 。最初の表を見てみれば、ボルボのB4204Sエンジンのシリンダー径とストロークはマツダアクセラ用2ℓのLF−VEと全く同じ。勿論パワー もトルクも、ほぼ同じ。それならエンジン外観写真を探してみよう。V50のカタログは全編63ページの立派なもので、流石は高級ブランドのボルボだ。しかし、そのカタログにはエンジンの写真はもとより2ℓエンジンに対する記述は殆どない。
株式を店頭市場に上場しているけれど、その実態は自社建物もないような零細企業だったりすると、本社や事業所の写真なんて出しようが無い。まさか会社案内に貸しビルの一室を載せる訳にもいかないし・・・・・。あっ、いや、ボルボのエンジンの喩えではないので、誤解しなしで下さいねっ。

このように比較して見るとV50 2.0eは限りなくボディと内装に手を入れたアクセラ2.0といえそうだ。量産ブランドとプレミアムブランドのプラットフォームを共有しているというのは他にも例があるが、例えばトヨタマークXとレクサスISの場合はホイールベースが異なるから、同じプラットフォーム と言っても同一ではない。しかし、V50の場合は仕様を見ても明らかに、そんまんまアクセラだ。
では、100万円の差額が妥当かを考えてみると、V50では標準装備だがアクセラにはオプションである装備を抜き出して見ると
ESC(横滑り防止装置) op.価格6.3万円
サイドエアバック op.価格6.8万円
と、大したことはなく、V50のシートが安全機構をつけているとしても所詮はファブリック表皮の手動調整だから大きな差は無さそうだ。勿論内装自体はV50の方が金が掛かっていそうだが、それでも売値で20万もかけてはいないだろうから、上記のESCとサイドエアバックを追加しても精々30万程度か。ところがV70はミッションにゲトラグ製のDCTが搭載されている。同じゲトラグ製DCTを載せたランエボ]はMTとの価格差が25万円だから、V50とアクセラも20万円程度(ランエボよりはトルクが少ない)の違いを認めても良いだろう。更に、V50は輸入車であることから輸入経費を20万円程度として合計70万円くらい 。その程度は高くても、まあ納得するとして、残りは30万円程度がブランド料?
こうしてみると今回の2.0eの場合はそれ程にはボッタクリでもなさそうだ。例えば同じV50でも5気筒の2.4iSEは399万円だから、2.0eの299万円(パワーシフトの場合。アクティブは40万円高い339万円)に対して100円高い。これがターボのV50 T5 TE AWDになれば544万円と145万円高となる。そして、兄貴分のV70は2.5T LEが499万円。あれっ?何だか各グレード間の価格差がヤケに切りの良い数字じゃあないか?主力モデルは100万円づつの価格差とは・・・・・。

ボルボのワゴンと聞いて脳裏に浮かぶのは、ラッゲージルームに愛犬、それも大型犬を載せて休日の高速道路を別荘に向かう幸せそうな中産階級のファミリー だろうか。しかし、実際に大型犬を載せたボルボを見たことはない。ボルボの高級イメージを定着させたのは帝人ボルボ時代の販売戦略が上手かったことが、大きな原因となっているようだ。特にクルマに興味が無く、本当に金持ちでもない階層からは結構憧れのクルマだったりする。これは、ある面でレクサスとも似ているが、レクサスの場合は一番安いIS250のベースグレードでもV50 2.0eより100万円高い。本物のプレミアムブランドのメルセデスではAクラスなら買えそうだが、あれは見るからにプレミアムっぽく無い。BMW116iは小さくでカッコ悪いし、なにより排気量が たったの1.6Lだ。試乗記の本編冒頭で比較したように、V50 2.0eは机の上でスペックを比較する限りに於いてはBMW320iやMB C200と同等にすら感じでしまうから、人によっては物凄い買い得車と思うかもしれない。まあ、自分の金で 自分のクルマを買うのだから、本人が気に入った車種を買うのは当たり前で、他人がとやかく言うことは無い。V50でも何でも、好きにお買い求め下さい。見方によっては、確かに買い得という見方も否定できないし、BMW320iツーリングと同等のクルマを150万円安く買えるという買い得感に満足するのは、実に幸せな事には違いない。

分厚いカタログには自画自賛のオンパレードだが全てがイメージ主体で、エンジンや足回りの写真は出ていない。そして、環境だの安全だのという言葉が随所に出てくる。 VOLVOはフォードの旧PAG(プレミアム・オートモーディブ・グループ)の中では唯一買い手が付いていない。一時はBMWが買うんではないかという噂もあったが、BMWからみてVOLVOを買うメリットは全く無いだろう。VOLVOの解説には、世界で最初に3点式シートベルトを発明したという話が度々出てくる。確かにそれは立派な事だが、何やら大昔に”紅白”に出場した事を売りにして場末のクラブでライブショーをやっている歌手みたいな感じがするのだが。