Lexus IS-F (2008/3/8)
前編 ⇒後編
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標準のISに比べて迫力がマルで異なるIS−F。
フロントフェイスやブリスターフェンダーなど、
チョット見ただけでも違いが判る。ただし、800万円近い価格とは誰も思わないかもしれない。 |
2007年の秋、以前から噂のレクサスISベースの超高性能モデルがIS−Fとして発表された。3.5ℓでも十分に速すぎるISのボンネットに、何と5ℓ V8を押し込むというこのIS−Fは大いに話題になったのは、当然でもある。ところが運悪く、その少し後に散々もったいぶった末に発表されたニッサンGT−Rのスペックは、アッと驚くポルシェ911ターボ真っ青という性能で、可愛そうに
もIS−FはGT−Rの影に隠れて見向きもされない存在となってしまった。それはモーターショーでもハッキリと明暗が分かれ、GT−Rの前には
長蛇の列ができて、一時間待ちの挙句に一瞬拝むのがやっと、という超人気に対して、IS−Fは閑古鳥が鳴く始末だった。
そんなIS−Fではあるが、これだけで見れば十分な性能を持っているわけで、これはやはり乗ってみない訳にはいかない。ということで、インプレッサSTIに始まり、ランサーエボリューション]と続いた国産高性能試乗記の3回目としてレクサスIS−Fを取り上げることにする。
実はIS−Fの現車を見るのは今回が初めてだった。第一印象はベースのISに比べて、迫力が全く違うことで、全体に低く精悍な雰囲気に溢れている。と、いっても、400ps超のエンジンを搭載している超高性能車を予感させるオーラのようなものは感じる事は出来なかった。
しかし、良く見ればBBS製の鍛造ホイールを履いていたり、フロントサイドのエアインテイクを覗いてみれば、ちゃあ〜んとダクトになっていて、ホイール内のブレーキローター冷却用にエアを導いている。そういう面では、こけ脅しのインテイクの先はダミーだったりする、何処かの高性能セダンに比べて、真面目に作られているのは確かだ。
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写真1
上がIS−F、下がIS350。こうして比べると、普通の人には見分けがつかないかもしれない。
IS−Fのフェンダーとタイヤの隙間は、明らかに狭い。 |
写真2
この角度から見た現物は結構カッコが良い。 |
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写真3
IS−Fのエアインテイクはダミーではなくブレーキ冷却ダクトとなっている。↓の部分の穴からフェンダー内にエアーを導く。 |
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IS−Fのライバルといえば、やはり値段の近い国産高性能車ということで、ニッサンGT−Rは外せないとろこだろう。そして、価格は半分程だが、国産高性能セダンの代名詞としてランサーエボリューション]を、そして輸入車ではやはりBMW M3というところだろうか。
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LEXUS |
NISSAN |
LANCER |
BMW |
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IS−F |
GT-R |
EVOLUTION ] |
M3 Coupe |
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寸法・重量・乗車定員 |
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全長(m) |
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4.660 |
4.655 |
4.495 |
4.620 |
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全幅(m) |
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1.815 |
1.895 |
1.810 |
1.805 |
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全高(m) |
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1.415 |
1.370 |
1.480 |
1.425 |
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ホイールベース(m) |
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2.730 |
2.780 |
2.650 |
2.760 |
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最小回転半径(m) |
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5.1 |
5.7 |
5.9 |
5.9 |
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車両重量(kg) |
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1,540 |
1,740 |
1,540 |
1,630 |
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乗車定員(名) |
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4 |
4 |
5 |
4 |
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エンジン・トランスミッション |
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エンジン種類 |
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V8 DOHC |
V6 DOHC ターボ |
直4 DOHC ターボ |
V8 DOHC |
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総排気量(cm3) |
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4,968 |
3,799 |
1,998 |
3,999 |
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最高出力(ps/rpm) |
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423/6,600 |
480/6,400 |
280/6,500 |
420/8,300 |
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最大トルク(kg・m/rpm) |
51.5/5,200 |
60.0/3,200-5,200 |
43.0/3,500 |
40.8/3,900 |
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トランスミッション |
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8AT |
6 Dual-clutch |
6SST |
6MT |
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駆動方式 |
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RWD |
AWD |
AWD |
RWD |
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サスペンション・タイヤ |
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サスペンション方式 |
前 |
ダブルウィシュボーン |
ダブルウィシュボーン |
ストラット |
ストラット |
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後 |
マルチリンク |
マルチリンク |
マルチリンク |
5リンク |
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タイヤ寸法 |
前 |
225/40R19 |
255/40ZRF20 |
245/40R18 |
245/40ZR18 |
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後 |
255/35R19 |
285/35ZRF20 |
245/40R18 |
265/40ZR18 |
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価格 |
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車両価格 |
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7,660,000 |
7,770,000 |
4,240,000 |
10,300,000
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備考 |
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Premium Package |
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結果を見ると、一見コンセプトが似ているかのように思われているIS−FとM3だが、IS−Fのエンジンは排気量でトルクを稼ぐタイプなのに対して、M3は8300rpmで最大出力を発生するハイチューンエンジンと、その思想は大いに異なる。しかも、IS−Fはロックアップを多用するといっても、トルコン式のATのみの設定に対して、M3は3ペダルのMTのみと、これまた大きく異なっている。
GT−Rはスペック上はIS−Fとは全く次元が異なるのは明白で、IS−FがMやAMGを仮想敵としているのに対して、GT-Rは911ターボがターゲットであることは言うまでもない。ランエボ]は価格がIS−Fの約半分ということで、流石にスペックで比べると一ランク下となっている。ランエボの場合は実際の出力は300ps以上と囁かれているが、それにしても今回比較
した他社は400ps超えという、何やら世の中オカシイんじゃないかと疑いたくなるような現実でもある。 |
写真4
トランクスペースは決して広くない。 |
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写真5
IS−Fの特徴である、上下に並んだ2本出し排気管。 |
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写真6
リアのスペースは大人二人の長距離用としては、少し辛いのはベースのISと同様。 |
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写真7
標準のISに比べて着座位置が低く、相対的にコンソールが高く感じる。 |
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写真8
レザーシートが標準装備されている。座面は細かい通気穴が開いている。 |
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写真9
ドアの内張りはレザーくらい貼って欲しかった。
この価格ならば、アームレストはレザーのステッチが見えているくらいのセンスが欲しい。 |
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シートはレクサス得意のセミアニリンという十分になめしたレザーシートで、表皮は薄く柔らかい。
BMWを始めとする厚手でシボの深いレザーとは全く趣を異にする。シートに座ると、座面が柔らかく体が少し沈むが、表面だけが柔らかいので、適度に沈んだ後はちゃんと体を受け止めるから、シートとしての機能は十分で、昔のクラウンのようにフワフワの田舎キャバクラシートではないから、心配無用だ。カタログにはスポーツシートと表記されているし、形も成るほどソレらしい。このシートに
座って気が付くのはコンソールの位置が高い事で、それがまたスポーティー感を助長する演出なのか。実はコンソールの位置が高いのではなくて、シートが低いのだそうだ。と、何となくその気になったところで気が付くのは、どうもステアリングとシートの位置関係がシックリいかないことだ。角度の立ったステアリングホイールは12時位置でも背中がバックレストから離れないように調整すると、10時10分位置で肘を曲げる姿勢になると
いう、スポーティとは縁遠いことになり、実はこのクルマがファミリーセダンベースであることを思い知って行き成り白け
てしまう。あっ、そこの530iオーナーの旦那っ!顔がにやけてまっせぇ。
ここで室内を見渡すと、コンソールの上面やドア内張りに取り付けられたパワーウィンドウの操作パネルなどに、何と数年前にメルセデスのスポーツタイプで流行った趣味の悪い、アルミのエンボス(凸凹)模様のパネルが貼ってある(写真13)。当時これを見た時にパチンコ店の内装のようだと驚いたものだったが、何を好き好んで、このタイプを今時使うのかと理解に苦しむ。さらに、ドア内張りやアームレストは、質は良いといっても樹脂製だから、このクラスの高級スポーツサルーンとしては物足りない。ここは、やはりメルセデスの新型Cクラスアバンギャルドで採用しているような、レザー貼りでステッチがハッキリ見えるような演出が欲しい(写真9)。
エンジン始動はインテリジェントキーを身に付けて、ダッシュボード上のスタートボタンを押すという、今や中級以上の車では当たり前になった手順に従い、簡単にエンジンは目覚める。そして、レクサス得意の儀式である、メータの指針が回ったりと、まあこの辺は今更ケチを付けるというよりも、レクサスIS(GSも)とはこういうモノなのだと割り切るしかない。アイドリングはトヨタ製高級車のように回っているのかいないのか、回転計を見ないと判別できない程の無振動、無騒音という訳ではなく、多少の振動と音を伴っている。 |
写真10
ダッシュボードの眺めは基本的にISに共通している。800万円の雰囲気かと聞かれれば、ハテ?
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写真11
スピードメーターは300km/hまでとなった。正面上部のFマークはスポーツモード時に現れる。 |
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写真12
パドルシフトはステアリングと一緒に回るタイプ。右がアップ、左がダウンというオーソドックスな方法となっている。 |
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写真13
コンソール上面は一昔前の欧州製スポーツセダンに使用されて、評判最悪だったものと同じタイプ。 |
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写真14
センタークラスタも基本的にISそのもの。輸出を含めて月に100台程度の生産では、専用の金型を興すのは無理なのだろう。 |
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写真15
ステアリングの影で、走行中には操作し難いモード切替スイッチの位置は、誤操作防止が目的だろうか。
それにしても800万円にしてプッシュ/プッシュ式のパーキングブレーキは突っ込み処満点でもある。 |
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写真16
ペダルとフートレストはアルミ製で、スポーツムードを盛り上げてはいる。 |
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そしていよいよ走り出すが、この続きは後編にて。
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