BMW G20 320i (2019/3) 前編 その2

  

次に室内を比べる事にする。どちらも M Sport 同士で比べてみると、一見しての大きな違いは無いようにも見える (写真11) 。そしてシート表皮は M Sport の伝統でアルカンターラのコンビだが、従来はサイドにアルカンターラを使い、センターには専用のファブリックが使用されいた。しかし今回はセンターにアルカンターラを使用してサイドは人工皮革となり、使用場所が全く逆になっている (写真12) 。考えてみれば滑り難さを重視したいセンターには裏側であるアルカンターラを使用する方が理に適っているから、新型は本来の姿となったともいえる。ただし、アルカンターラという素材は決して耐久性の有るモノではなく、古くなるとケバ立ってきて見るも無残になるが、セーターなどに使う毛玉取りで結構解決出来る場合が多い。

シートに関してもう一つ大きな変更がある。それはパワーシートのポジションメモリーで、従来はシートベースの側面のポジション調整スイッチの付近に装備されていたが、新型はここには無い (写真13) 。ところで X2 の場合は M Sport のシートがマニュアル設定であり、これは以前からの BMW の仕来りだった。その理由は M Sport のスポーツシートはポジションが低い為に、シートベースに電動機構を組み込む事が出来なかったと言われていたが、何時の間にか3シリーズクラスでは M Sport もパワーシートになっていた。マニュアルシートの欠点は複数のドライバーが乗る時に一々ポジションを変更するのが大変で、折角ベストポジションを見付けたのに何時の間にやら相方が動かしてしまった、なんて事になる。

と言う事はメモリーの無いパワーシートは殆ど意味が無い訳で、更に3シリーズも含めて多くのクルマのメモリーは2ポジションが殆どだ。と言う事は夫婦もしくは親子での共有が前提なのだろうが、家族3人以上での共有は想定されていないのだろうか。もしもあなたがこのクルマの運転を愛人に任せた時、間違ってもその位置をメモリーしないように気を付ける必要がある。何故ならあなたの奥方が自分の位置をメモリーしたボタンを押したら違う位置にセットされた、何て事になると家庭争議の元になるからだ。こういう事は男より女の方が圧倒的に感が鋭いから、ご用心あれ!

写真11
M Sport 同士で比べてみると、一見しての大きな違いは無いようにも見える 。


写真12
従来はサイドにアルカンターラを使い、センターには専用のファブリックが使用されいたが、新型はセンターにアルカンターラを使用してサイドは人工皮革となり、使用場所が全く逆になっている。


写真13
パワーシートのポジションメモリーは、従来シートベースの側面にスイッチが装備されていたが、新型はここには無い。

次にドアインナートリムに目を移して、その質感はどちらも悪くない。この部分は運転中に目には入らないから国産車では結構手を抜く例があるが、そこは天下の BMW だから3シリーズでもシッカリとそれなりの高級感を持っている。尤も3シリーズもその昔の E30 (2代目3シリーズ、1982-1994) の頃は目一杯プラスチッキーだったから、3シリーズの高級化は時代と共に徐々に達成されていったのだった。因みにそのまた前の E21 (1975-1983) は結構売れたことで都心では結構見かけた事から通称「六本木カローラ」などと呼んで馬鹿にされいた。勿論そんな事を言うのは7シリーズやSクラスのオーナーである訳が無く、精々カローラ (と言ってもレビンだから速いぞっ!) クラスのオーナーだが。それで六本木カローラと並んでメルセデスCクラスは「こ(小)ベンツ」と呼ばれていたっけ。

さてそのドアトリムだが、デザインは大きく変わっていて、まあこれは趣味の問題もあるが一見した高級感は新型が勝っている (写真14) 。一つにはドアノブ両端にシートのメモリースイッチとドアロックを配置した事やドアハンドルをアームレストと一体化した事でより高級感が増している等が原因だろう (写真15) 。


写真14
ドアインナートリムの質感はどちらも悪くない。


写真15
ドアトリムのデザインは大きく変わって高級感は新型が勝っている。

ダッシュボードを中心とするフロントインテリアは、G20 ではセンタークラスタやステアリングホイールのスポーク等にシルバーのアクセントを使った事で印象が大いに変わっている (写真16) 。G20 のセンタークラスターは先代よりも更に上部に集中され、より運転中の視認性が重視されている。そして先代まではエアアウトレットが中間に挟まれる事で高さ方向に無駄が合ったが、今回は実に上手く融合させている (写真17) 。しかし艶消しとはいえクロームが目に入る事がチョイと気にはなる、と思ったが、実際に試乗した際には直ぐに慣れて特に気にはならなかった。

コンソールの後端がリア用のエアアウトレットとなっているのは今や定番だが、G20 ではリア用のエアコン調整スイッチが付いた事でリアの住人の権利が向上し、3シリーズでもリアを重視する時代になったのか、と感慨深いものがある (という程では無いが) 。

3シリーズは立派な高級車だ。ファミリーカーだなんて言わせないぞ (`ω´)キリッ

そして頭上にあるオーバーヘッドコンソールは、デザインこそ変わっているが無いように大した変更は無い。この部分は最近あまり重要視されていないようで、サンルーフが無ければルームライトとそのスイッチくらいしか無い。

写真16
ダッシュボードはG20 ではセンタークラスタやステアリングホイールのスポーク等にシルバーのアクセントを使った事で印象が大いに変わっている。



写真17
G20 のセンタークラスターは先代よりも更に上部に集中され、より運転中の視認性が重視されている。

写真18
コンソールの後端のリア用エアアウトレットは、G20ではリア用のエアコン調整スイッチが付いた。




写真19
オーバーヘッドコンソールは、デザインこそ変わっているが無いように大した変更は無い。


まあそんな訳で、今回の新型は大いに高級感を増して、今や充分にハイオーナークラスに匹敵する位になったが、そうなると前述のように先代のオーナーは面白くなく、取り分け未だ一年くらいだった場合のショックは大きいかもしれない。そんな状況だからディーラーへ行ってもしも買い代えたらどうなるかなんて知りたくなる。

F30 所有の客 (以下30客):いやぁ、今度の新型は良いなぁ。もう少し待っていれば良かった。失敗したなぁ。
BMW 営業マン (以下B営):A様の3シリーズは未だ1年ですよねぇ。それならアプルーブドカーとして良い値で売れますから下取りで頑張りますよ。追加金も殆ど無いくらいで買い換えできるようにお見積り致しましょう。
B客:えっ、本当にそんな事できるの?

てな訳でAさんは今と支払いが大きく変わらないからと納得して契約書に判を押したのだった。勿論借金の総額はより増えたのだが、Aさんはそんな事は気が付かないのだった。

さて下取りされた F30 はというと、同ディーラーの中古車センターにて

中古車の客 (以下中客):3シリーズがモデルチェンジされたって言うから、旧型の買い得車あるかと思って来たんだけれど。
中古車センターの営業マン(以下中営):流石にお客様は良くご存じで‥‥。そうなんですよ、未だ新品同様のタマが一杯ありますよ。
中客:でも試乗車上がりってえのも、どうもなあ。
中営:あっ、それならこちらはいかかでしょうか。1年前に個人オーナーが買って幾らも乗らずに新型に買い換えたものですよ。
中客:新型かぁ、良いなぁ。俺も予算があったらなー。
中営:いやいや、お客様。新型よりも生産実績のある方従来モデルが信頼性も作りも上ですから、逆に今では旧型をお探しになっているお客様は多いんですよ。このクルマは滅多に無い掘り出しモノですよ。

てな訳でまたまた BMW オーナーが1人増える事になる。まあ今時は BMW なんて郊外のコンビ二駐車場でも 1〜2台は止まっているが、成る程これは増える訳だ。

それで肝心な走りについては後編にて。

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