Porsche Cayenne S (2018/11) 後編 その2


  

走り出した第一印象は勿論充分過ぎるトルク感であり、この巨体が軽々と加速する。先ずは広〜いバイパスでこの巨体に身体を慣らすべく流れに乗って走るが、流石に幅の広さを感じる。信号で止まるとアイドリングストップが作動したが、車重が2トンを超えの 440ps のクルマに乗るのに燃費もヘチマの無いだろう、と言いたいところだ。それで前のクルマが発進したのに続いてこちらも軽くアクセルと踏むと、流石に一千万円を軽く超えるクルマだけあって、発進時のエンジンの再始動も極々スムースだった。と言う事でアイドリングストップの性能を確認したからには、もうこんなモノに用は無いとばかりにキャンセルスイッチを押す。

これにより次の交差点での停車中にはエンジンがアイドリングをしている訳だが、この時の V6 3.0L ターボエンジンは結構振動を感じる。え〜っ、こんな高級車で振動だってえ? 何て野暮な事を言っちゃあいけない。この振動はまさしく 911 を髣髴させ、ポルシェらしさを感じさせてくれる。そう、カイエンは SUV と言ったってそこはポルシェであり、背の高い高級サルーンみたいなのを要求するならば最初から選択肢に入れない事だ。

今まではデフォルトの走行モードで走っていたから恐らくノーマルモードだろう。そこで今度はスポーツモードを試して見る。あっ、勿論メルセデスのように試乗ではスポーツモードは危険だから使用禁止とか言って 136ps の A180 でスポーツモードを絶対に使わせない馬鹿説明員も居無いから、440psのスポーツモードを充分に堪能出来る。モード切り替えは‥‥あれっ、出発前に何のレクチャーも受けていなかったのを思い出した。でもまあ、こういうのは普通にセンターコンソール上にあるものだよね。ということで探すと‥‥無いっ! まあ探すと言ったって走行中に大きく視線を外す必要があるコンソール上を探すのは危険過ぎる。もしもこの2トンのクルマで軽自動車に追突したらば、下手すりゃ死亡事故をなってしまう。

そう言えばつい最近ポルシェがトラック (中型) に追突して、トラックドライバーが死亡したという事故が報道されていた。写真を見たらばパナメーラだったが、運転していたのは医師で法定速度を大きく超えていたようだ。この報道ではどれも皆「ポルシェが追突」と表現されていたが、「乗用車」とかではなくポルシェと書くところが庶民の反感を期待しているかのようだ。えっ?「俺もあのニュース聞いて、ざまぁ‥‥と思ったぞ」って、だっ、駄目ですよぉ、例え心の中で思っていても、そんな事を口に出して言っちゃあ。

となると次に考えられるのはステアリングコラムだが、その辺を見たら、おっ、あった、あった。小さな回転式スイッチに "S" とか "S+" とか書いてある (写真41) 。ほほう、今回は Aクラスの時と違って気持ちがのっているから感も冴えている。と言うのは冗談で、実はポルシェの走行モード切り替えスイッチは 991 カレラの後期型 (Phese2) からこの位置になっているので直ぐに見つけられただけだった。それにしてもここまで Aクラスネタで引っ張れるとは、我ながら感心、感心。

さてモード切り替えスイッチを右に回して "S" に合せるとノーマルでも充分過ぎる動力性能だったカイエン S は正直言って一般道では恐ろし過ぎるくらいのレスポンスと瞬発力を発揮する。成る程ねぇ、確かにこういうクルマなら試乗でスポーツモード禁止と言われても納得出来るなあ。とまたAクラスネタが出てきたが、ここは堪えて、折角のスポーツモードなので一旦前車との距離を取ってから加速してみるが、その挙動はチョイと前のカレラも真っ青という位だ。尤も 991 カレラの方も Phese2 からはやたらと攻撃的になったので、結果的には流石にカレラの方がカイエンに勝ってはいるが、いやいや如何してカイエンだって大したものですぞ。そしてこれならポルシェのマークを付けても許されるかな、という気持ちになった。

写真41
新型のモード切り替えスイッチはステアリングコラム上となった。

それにしても以前乗った先代カイエンターボは、確かにスペック上では上回っているのだが、その機敏な加速感では寧ろ今回のカイエンSの方が上を行っているようにさえ感じるくらいだ。

そこで今度は新旧のエンジンの違いを見てみよう。同じカイエンSとはいえ、先代は前期型では V8 NA 4,806cc 400ps/6,500rpm 500N-m/3,500rpm だったが、これが後期型になると V6 Turbo 3,604cc 420ps/6,000rpm 550N-m/1,350-4,500rpm となり、要するに4.8L NA ⇒ 3.6L Turobo へとダウンサイジング化が実施されたのだった。実はこのタイミングでは 911 もボクスター/ケイマンも同様にダウンサイジング化が実施されていた。

さてそれで今回の新型はというとV6 2,894cc Turobo 440ps/5,700rpm 440N-m/6,600rpm となり、更に排気量は縮小されて逆に出力は向上しているがトルクは同等で寧ろ発生回転数は高回転化している。と言う事は今回の変更では性能向上よりも排気量縮小による燃費低減等を狙ってきたのだろうか?

ここで NA だった先代初期型の V8 と新型 V6 ターボの出力およびトルク特性を比較してみる。

この結果を見ると、最近のターボエンジン独特のフラットで強大なトルク特性が理解でき、数字で見る以上に体感的に違いが出るだろう事も判る。

写真42
新型のエンジンはV6 2,894cc Turobo 440ps/5,700rpm 440N-m/6,600rpm 。

旧型では写真の前記型では V8 NA 4,806cc 400ps/6,500rpm 500N-m/3,500rpm だった。

さて動力性能は SUV としてはパワフル過ぎるくらいであるのが判ったが、操舵性や旋回性は如何だろうか? まずノーマルモードで走行すると操舵力は適度に軽く、レスポンスも全幅 2m の巨体にしては驚くほど良く、動力性能と同様に如何にも軽快な挙動が感じられる。後程車両重量を調べたらば何と新型は 130kg もの軽量化が成されていたのだった。ほほう、これはボディ自体の徹底的な軽量化も行っただろうが、エンジンも相当に軽くなっているのだろう。それではスポーツモードではといえば、何しろ動力性能の圧倒的なレスポンスに気を取られて、特に大きく変ったとは感じなかった。

そしてこの軽快な新型の旋回はというと‥‥残念ながらそれを試すような場所は無かった。何しろ車幅を考えれば、一般道のブラインドコーナー何て車線からはみ出さないように走るのが先決であり、コーナーリング速度云々という状況では無い。とは言え、特性自体は充分にニュートラルであり、その気になれば結構な戦闘力が有りそうだが、しかし幾らポルシェと言えどもそういう走りはケイマンにでも任せるのが本来だろう。

そしてブレーキは例によってカイエンお馴染みのフロント6ポット、リア4ポットの巨大なアルミ対向ピストンキャリパーが付いていて、踏力も昔のボルシェのイメージからすれば軽過ぎる位だが、まあこれは最近の傾向だから良しとしよう (写真43) 。何しろ嘆かわしい事に最近のポルシェは 911 でさえ女子供でも運転出来るようになってしまったのだから、と時代に取り残された爺さんが呟いておりまする!


写真43
例によってフロントには6ポット (写真左、リアは4ポット) という巨大な対向ピストンキャリパーを使ったブレキーキの踏力は充分に軽い。

さて今回のカイエンSの動力性能は一昔前のカレラ並みだから充分過ぎるくらいに速いのだが、体感的にはもっと強烈に感じていたのは、こんな馬鹿デカイのが強烈な加速をする迫力で実際以上に加速が良く感じたのだろう。しかしカイエンにはこの上にターボというグレードも存在する訳で、こちらはV8 4.0L Turobo 550ps 770N-m という凄まじさで、こりゃ一体どんな性能なんだい? 因みに価格は 1,855万円であり、なーんだ二千万円でお釣りが来るじゃねぇ、なんて言ってはみたが、実際には取得税だけも恐ろしい額になるのだった。