Subaru Levorg 2.0 GT-S 特別編 [Levorg 2.0 GT vs BMW 320d Touring 後編 その2] 特別編へようこそ。 前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。 今度はレヴォーグで20km/h くらいの低速からフルスロットルを踏んでみると、一瞬、いやもう少し長いタイミングで、すなわちハッキリと遅れを感じる頃に突然回転計の針が上がってエンジンが吹け上がり出す。まあ一度エンジンが臨戦態勢になればそれからは一応は 300ps の大出力だから十分な加速力を得られるのだが、やはり今時のクルマとしてはタイムラグは大き過ぎる。このフィーリングは何処かで覚えがあると思ってよ〜く考えてみたらば、例のベストセラーだったころの BH型レガシィ ツーリングワゴン GT-Bスペックのフィーリングに近い事だった。ただし BH の場合は、この遅れのタイミングをガマンすればそこからはグィーンと一気に加速し始めて、言ってみればジェット旅客機が離陸を開始するときにユックリと推力が増していって、あるところからグオーっという怒涛の加速で離陸するような感覚があったが、何故かレヴォーグはそれも感じられない。 それに比べると320d でのフルスロットルはやはり少し遅れてシフトダウンが起こるが、回転計の針は1,500rpmとなり、そこから加速を始めるとディーゼルエンジンによるガソリン3L車以上の加速は背中がバックレストに食い込むくらいの加速をする。しかしエンジンの回転数が4,000rpmくらいの時にシフトアップが起こり、これがガソリンだったならばそのまま5,000rpm以上まで簡単に吹け上がるのだが、何だかこれからというところでシフトアップしてしまう感じだ。この時のエンジン音はディーゼルらしい音だが決してうるさくはなく、むしろ出来の悪いガソリンエンジンよりも静かなくらいだ。 ということで、回転領域は狭いもののディーゼルの特性を上手く使えばガソリン 3.0L 並の加速感が得られる 320d は、ドッカンターボでしかも意外に伸びの無いレヴォーグ 2.0GT よりも体感ではより高性能に感じたりするのは、逆にレヴォーグのチューニングの悪さが原因だろうか。 最近のクルマの多くは走行モードの切り替えをスイッチを持っていて、普通はノーマルに加えてスポーツとエコのモードがある。レヴォーグのスイッチはステアリングホイールのスポーク上にあり、操作はし易いがこの場所にあるクルマは珍しいから初めて乗るとモードスイッチが無い?と大騒ぎする事になる。このスイッチをSモードに入れるとレスポンスの悪さは大分改善されるが、それでも遅れが大きいので大きく踏んで回転が上がりそうになったら一度アクセルを緩めないと、今度はドヒャーっと加速を始めて慌てることになる。このフル加速時は前述のように 4,500rpm くらいまでは一気に伸びてゆくのだが、それ以降の勢いがなくてレッドゾーンの6,500rpmまで引っ張る意味はあまりなさそうだ。 320d のモード切替はコンソール上のAT セレクター右上にあるBMW 車の多くで採用しているタイプで、これをSPORTに切り替えてみると当然ながらレスポンスはより良くなり、巡航時の回転数も2,000rpm 位を常用するようになる。これによりエンジンのレスポンスも向上したように感じるしディーゼルエンジン特有の太いトルクもより顕著になる。このモードでフルスロットルの発進を行なってみると、1速での強力な加速と共に回転計の針は一気に跳ね上がるが、やはり 4,500rpm強で2速にシフトアップされる。これがディーゼルの悲しさだが、高回転域まで引っ張るような運転をしなければ320dの動力性能は充分に満足できるくらい強力だ。 両車共 AT ではあるがこれらは最近の傾向としてマニュアルモードを持っている場合が多く、そのマニュアルシフトは両車共にAT セレクターのDレンジから横にシフトすることで、そこからは前後のシフト操作でマニュアル操作となるし、レヴォーグではステアリングホイールの裏側に装着されたパドルスイッチも使用できる。それでレヴォーグのマニュアル時のレスポンスはといえば、良く出来たトルコンAT と比べるとやっぱり遅い気がするが、CVT の擬似8速と考えれば十分に合格で、他車の一部にあるようなこんなトロイの誰が使うんじゃい! という程酷くは無いのが救いだった。 それでは 320d のマニュアル操作でのレスポンスはといえば上で記した ”良く出来たトルコンAT” だからレヴォーグよりレスポンスは良い。ただしそれでも本気のマニュアル操作をする気に成る程かといえば DCT のようにはいかず、結局このモードは降坂時に1速低いギアに入れる程度の使い道くらいのものだから、あまり気にする事も無い。なおBMW の場合はパドルスイッチはデザインモードにより標準装着されていて、要するにM Sport のようなスポーティーグレードなら当然付いている事になる。 ところで運転中に常に視界に入るメータークラスターについて両車を比較するとレヴォーグは日本車丸出しの自光式であり 320d はBMWの各モデルと同じものモノで、しかも写真の 320d は内装色がアイボリーということもありメーターの盤面もアイボリーとなっているなど欧州のセンスが満ち溢れている。まあ、どちらを好むかは個人の感性の問題でありどちらが良いとも言えない。これは例えば家を買うときに一戸建てかマンションか、みたいなものでユーザーの学歴と育ちが結構影響してくるかもしれない。えっ、戸建てとマンションではトッチが高学歴なんだ? 何て野暮は言いっこ無しですよ。 |
動力性能については実用的には 320d の勝ちと言ってもいい状況だったが、さて操舵性や旋回性能、要するに ”曲がる" についてはどうだろうか? レヴォーグ 2.0GT のステアリングは I モード(ノーマルモード) の場合市街地では異様に軽くて中心付近のセンタリングも弱くシャキッとしない。それでも高速道路で80 km/h くらいからは多少は重くなるしセンタリングも少しはしっかりする。Sモードでは市街地でもIモードとはハッキリ違いが出るくらいに変化するがそれでも未だ操舵力は軽めで、調度良くなるのは高速道路走行時だった。それではコーナーリングの特性はというと、出来の良い FWD モデルの代表であるフォルクスワーゲン ゴルフGTI 並とは言わないが、多少のアンダーステアは感じるものの結構素直に曲がって行く。しかしワインディングロードをガンガン攻めて楽しい、という部類ではない。 次に 320d ツーリングはといえばミッションをマニュアルモードにして、走行モードはSPORTを選択しコーナーが見えてきたところで3速に入れると、ちょうどトルクが安定している3,000rpmくらいとなり、この回転数ではレスポンスもトルクも充分で実にコントロールし易い。少し速度を上げてみるとツーリングということもあり一部のBMWサルーンのようにレールの上を走るが如くニュートラルという訳ではないが、この辺は流石にBMWでどう考えてもスポーティーさを期待できないワゴンボディとディーゼルエンジンの組み合わせという概念からすれば、充分に楽しめる。 ということで、ここはRWDで車両の設計自体が前後重量配分にも気を使った 320d がレヴォーグに圧勝するのは当然のことで、まあスペックを見た時から既に勝負はあったというところだが‥‥。 ただし、スバルファンの顔を立てることもあり一言付け加えると、レヴォーグでも1.6GT では弱アンダーの特性は同じにしても、もっと素直で楽しめるコーナーリング特性であり、何と軽快性では 2.0GT は1.6GT に負けているし、楽しさでも1.6GT が上回っている感さえあったことだ。 次にブレーキの比較を行うために、先ずはホイールから覗くブレーキユニットを眺めてみると、レヴォーグでは前後共片押しキャリパーとは言うものの、スバルの伝統であるフロントの2ピストンキャリパーが見える。対する 320d は伝統的にブレーキに金を掛けない BMW らしく、極普通のシングルピストンの片押しキャリパーであり、この点ではレヴォーグが優っている。ただしフロントの重量配分がレヴォーグよりも少ない 320d は、その分フロントのブレーキ不可も小さいから、ショボイブレーキで十分というのもまた事実だが「それにしても、見掛けってこともあるだろう」と言いたくなる。 そんな事もありレヴォーグのブレーキは適度な踏力で良く効くが、2ピストンの恩恵が判るのは箱根や碓氷峠などの降坂時くらいで、一般的な公道では即座に違いが判るという程でもない。そして 320d は例によって軽い踏力でガツン!と効くが、それでも以前程では無くなった。まあDセグメントで今時ブレーキの効きが悪いクルマなんていうのは有り得ないが‥‥。 以上、レヴォーグ 2.0GT-S と BMW 320d ツーリング ラグジュアリーを比較してきたが、価格を無視してどちらがクルマとしての魅力があるかと言われれば、これはもう誰 (除くスバヲタ) もが 320d と思うだろう。問題はその172万円という価格差であり、これは無理すれば出せそうで出せないという微妙な差だが、それなら3シリーズツーリングとしては最廉価モデルとなる "SE" なら 449万円だからレヴォーグとの差は 93万円ともうひと頑張りだし、セダンの 320i SE ならば427万円だからその差は70万円となり、これなら何とかなりそうだ。 そしてレヴォーグならば試乗記本編の結論でも述べたように 1.6GT (278万円) がお勧めで、これらなば例え 320i SE と比べたとしてもその差は未だ150万円もあり、320d ツーリングなら 250万円もの差になるから、これはもう比較対象外くらいの違いであり、それなら居直って1.6GT というのは良い選択だし、この価格としては内容も十分だ。因みにレヴォーグの場合2.0GT は最新のFA型エンジンを搭載しているが1.6GT はより古い FB 型となるのだが、そうしてみると新しい FA エンジンがイマイチということだろうか。実はこの FA 型はレヴォーグやフォレスターなどスバル車にはターボエンジンとして使用しているが、何を隠そう同じ FA 型でも自然吸気 (NA) のモデルも有り、それは86 (BRZ) に搭載されているものだ。まあイマイチのフィーリングは、この辺にも事情がありそうだ。 ところで以前からスバル車、取り分けレガシィツーリングワゴンを買うユーザーというのはそれ以前はBMWなどの欧州車に乗っていたが、子供の教育費も嵩み出すなどBMWに買い換えるのは当分無理そうなので、その間のツナギに手頃な価格と性能の国産車は無いだろうか、ということで選んだという例を結構知っている。その場合は良いも悪いも判っているから、スバル命のスバヲタとは違って悪い部分を指摘されても笑って受け流す、というか本人も重々承知の事だから全く問題にならない。またBMWの良いのは判っているから将来もう少し余裕が出来たら考えるが、それまでスバルを選ぶという前記の元BMWオーナーと似たような感覚で選ぶ場合もスバルの欠点を含めて自覚しているだろう。 それでは「輸入車なんて高いだけ、国産が一番。そしてスバルが一番」といういわゆるスバヲタの場合はといえば、これはスバル車を貶されれば湯気と立てて怒り出すタイプである。取り分け一世一代の買い替えとばかりにレヴォーグを買ったとか、いやそれ以上に高性能 SUV という何の用途か解らないフォレスターXT をやっと買ったユーザーなどは、このサイトの日記でハリアーを取り上げた際のライバル一覧表にフォレスターが無いと言ってメールでクレームを付けてきたりする訳だ。まあ考えてみれば個人の運営する無料サイトの日記で、ライバルとしての比較表に何を選ぼうが大きなお世話なのだが、その辺を完全に勘違いしているのもスバヲタならではで、こういう輩がいるから世間からスバルに乗っているというだけで変態扱いされる‥‥なんてこともある訳で、まあ実際オーナーどころかディーラーの営業マンでもこの手の変態は結構目にするから、この現状を何とかしないとスバルは何時まで経ってもマイナーな存在から抜け出せないだろう。 と色々書いてみたが、最後にレヴォーグ 2.0 GT-S を一言で表せば "回転寿司の本マグロ" というところだ。
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