Abarth 124 Spider (2017/2) 中編 (AT車試乗編)


  

今回は AT と MT を連続的に試乗したので、この中編では AT 車の試乗記をお送りする。

最初にドアを開けて狭い空間に潜り込むとセダンベースでは味わえない低い着座位置と遠いペダル類に足を伸ばして操作するドライビングポジションはまさに "スポーツカー" でサッスガはアバルト!って、いやこれはベースのマツダ ロードスターと同じだから、要するにロードスターの設計が典型的なスポーツカーというだけだが‥‥。

ダッシュボードはロードスターと全く同じなのだが、まっ正面に見えるメータ―クラスターのセンターにある大径メーターのパネルが赤を基調としているために、これがアバルトだ、これこそイタリアンだと思えばそれなりに納得できるし、何も知らないパッセンジャーならばイタリアンスポーツカーって流石だ、と思ってくれるだろう (写真31) 。更には速度計のフルスケールもロードスターの 200q/h から 270q/h にアップしてオーナーに「マツダとは違うと」と納得させている。そしてシートの座り心地はといえば、実は前述のように表皮以外はどうみてもロードスターと同じで、実際のクッションの具合などもロードスターなのだが、元々マツダのシートは国産車としてはマトモだったし、更にスポーツカーであるロードスターにはそれなりのシートを標準装備していたから、これを赤いレザーでアバルトでっせぇーと言っても異論も違和感も全く無い。

写真31
メーターの金物は同じだが回転計のパネルが赤く、速度計のフルスケールは 200 → 270q/h とすることで、イタリアンスポーツに変身している。

ペダル類は数少ないロードスターとの相違点で、ロードスターの安っぽいウレタンパッドと異なり 124 は立派なアルミスポーツペダル (写真32 ただし形状は全く同じだが) のブレーキを踏んで、ロードスターと全く同じスタートボタン (写真33) を押すと、ヴォンっという如何にもスポーツカーらしい音と共にエンジンは目覚めた。アイドリングはブルブルとボディを揺すぶる振動をハッキリと感じさせるような演出で、これこそスポーツカー!と思うユーザーをターゲットにしている訳で「なんだこれっ? 今時こんな振動があるなんて」なあんて思うようなユーザーは、このクルマの事は最初から考えないほうが良い。そしてエンジンだけは敢えてマツダ製ではなくフィアット製を日本まで輸送しているが、その甲斐もあって「このクルマはマツダとは違うぞ」という印象を決定的にしている。

そしてこれまたロードスターと全く同じセンターコンソールの、これまた同じ AT セレクター (写真35、ただしノブは少し違う) をDレンジに入れて、またまた同じレバー式のパーキングブレーキ (写真34) をリリースし、ブレーキペダルを離すとクルマは極々弱いクリープでゆっくり前進するので、後方に後続車がいないことを確認してハーフスロットル程度で発進&加速する。発進から低速時のトルク感はターボエンジンとは言っても最近の低回転域から最大トルクを発生するタイプのようなトルク感は無いが、排気量は僅か 1.4Lのエンジンだから絶大なトルクとは言い難いのは仕方ないし別に苛々する事も無いが、アバルトブランドということでもっと大排気量の、場合によっては超が付く高性能車のオーナーがセカンド (サード、フォースかも)カーとして乗る場合などは物足りなさ、というよりも低速からの絶大なトルク感に乏しいと思うだろうが、世間のクルマからすればこれでも充分にパワフルな部類だ。聞くところによるとスポーツテイストを強調するためにワザと低速トルクを減らして高回転型の自然吸気的なフィーリングを出しているそうだ。


写真32
ペダルは形状こそ同じだがロードスターのウレタンパッドからアルミのスポーツタイプに変更されている。


写真33
エンジンのスタートボタンはマルっきり同じ。


写真34
パーキングブレーキも同じものだがよく見れは解除ボタンの色が違う!


写真35
AT セレクターもブーツのステッチとノブの形状で違いを出しているが、事実上は全く同じモノだ。

さてロードスターとの比較で一番気になるのは動力性能の違いだろう。アイドリング時のフィーリングについては前述のようにマツダ製エンジンよりもワイルドでよりスポーツカーらしい味付けとなっているが、さて動力性能はといえばスペックを見ても判るようにマツダのNA 2.0L 131ps に対して 124 は 1.4L ターボ 170ps と30%アップで車両重量も 124の方が重いとは言えその差は 120kg (AT) で、更には最大とトルクが其々 150N-m および 250N-m と 124 の方が 67% も大きいから、実際のトルク感はロードスターを確実に上回ってはいる。

次に走行モードをスポーツに切り替えてみる。スイッチはコンソール上のAT セレクター手前にあり、形状も場所もロードスターと全く同じで (写真38) 、これを手前に引いてスポーツモードとなる。ただしこのスイッチはチョいと引いたくらいでは反応せず、確実に引いてその状態を1秒くらい維持する必要があったが、まあこれは慣れれば問題無いだろう。スポーツモードにすると AT では多くの場合1段シフトダウンするが、速度とアクセル開度によってはそのままのギア位置となる。それと共にこれまた当然だがアクセルやステアリングのレスポンスも向上するが、ステアリング特性については後ほどの項目に譲る事にする。

スポーツモードにしたところで、今度はマニュアルシフトを試してみる。AT セレクターをDレンジから右に押して、ここからセレクターを前(ダウン)・後(アップ) に操作しても良いが、折角ステアリングにパドルスイッチ (写真39) が付いているので、この左側を引いてシフトダウンさせてみると、最近はDCT の普及で迅速なレスポンス MT モードが多い今日このごろ、やはりチョイと遅く感じるし、これを積極的に使う意義は無さそうだ。

ところで、このミッションはマツダ ロードスターからの流用となっていて、米国向けのカタログには AISIN の文字がハッキリと書かれているように、これはトヨタ系のアイシンAW製ということだ。欧州、取り分けラテン系の国では2ペダルと言えばフィアット傘下の部品メーカーであるマレリ製の時代遅れののセミオートミッションが定番だから、これに比べればアイシンAW製の6速AT はレスポンスを除けば充分な信頼性とともに日本人には馴染みが深いものだ。言い換えれば使いづらさや故障も含めてアバルト的、イタ車的なフィーリングは無いということになる。

それでは操舵性・旋回性、そしてブレーキはどうかと言えば、これについては MT 編にて纏めることにする。

写真36
両車の最大の相違点はエンジンであり、マツダ ロードスターの 4気筒 1.5L 自然吸気 150ps/7,000rpm 150N-m/ 4,800rpm に対して124 はフィアット製 4気筒 1.4L ターボ 170ps/5,500rpm 250N-m/2,500rpm であり、特にトルクは 67%も上回っている。


写真37
124 のエンジンには如何にもそれらしいカバーが付いているが、ロードスターはカバーは無くて
アルミ合金のエンジン上部が見える。


写真38
マツダロードスターと全く同じ走行モード切り替えスイッチ。


写真39
マニュアルシフト用のパドルスイッチもロードスターと同じモノに見える。

まあやはりRWD の2シータースポーツカーをそれらしく走らせるのはどう考えてもトルコンAT では無理があるから、やはり期待は MT という事になる。これについては 後編 にて‥‥

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