BMW 523d (2017/3) 後編 その1


  

ドアを開ける為にグリップハンドルを握ると、何やら7シリーズのようなガッチリとした感触で、開いたドアも妙に分厚くて重量感がある‥‥ように感じる。今回の新型は大幅に軽量化されているというが、ドアひとつにしても見た目や触れて感じるのは7シリーズ並の重量感だ。試乗車はオプションのレザーシートが装着されていて、その表皮は例によって如何にも BMW らしいシボのはっきりした分厚いダコタレザーが目に入る。ドライバーズシートに座るとやはり座り心地の良さは3シリーズとは一線を画しているし、レザー表皮とはいえ滑ることも無くシッカリとグリップしている。ただし前編で記したが M Sport とはいえ先代に比べると左右のサポートが大人しいコンフォート志向の形状は、実際に座っても左右のサポート感に乏しいが、これは個人の感覚と体形にもよる。

エンジンを掛けるために先ずはブレーキペダルを踏むが、ややっ!Mモデルでさえ安っぽいウレタンパッドのペダルに確執してきた BMW だが、どうした事かアルミのスポーツペダル、それも世間の標準に比べて明らかに洒落たデザインのものが並んでいた (写真32) 。F10 と同じスタートボタン (写真31) を押してエンジンを始動させると、一昔前のディーゼルエンジンからは想像もつかないくらいに静かなアイドリングだが、よーく神経を集中すると僅かな振動が感じられるのは仕方の無い事だ。まあそれも走り出してしまえば問題無いし、その後に信号待ちで停車しても既に体が慣れたのか全く気にならない、とうよりも振動の事は忘れているというのが正しい。電子式の AT セレクターは従来と同じもので、右のボタンを押しながら手前に引いてDレンジを選択する (写真33) 。パーキングブレーキは電気式で操作スイッチはコンソール上のAT セレクター手前にあるが、自動解除となっているのでそのままユックリとアクセルを踏むと一瞬パーキングブレーキを引きずるような感覚があるが、その直後にカツンっという極弱いショックと共にブレーキが開放されたようで、ユックリと前進を始める。


写真31
スタートスイッチは形状、位置とも新旧ほとんど変わらない。


写真32
同じ M Sport でも新型ではアルミスポーツペダルが装着されている。


写真33
センターコンソール上面はデザイン自体は変更されているが機器類と配置に変更は無い。


写真34
ステアリングホールのスポーク上のスイッチやマニュアルシフト用パドルスイッチもデザインの変更はあるが機能に変わりは無い。

駐車場端の公道への入り口で一旦停止後、左にフルステアしながら公道に入りクルマが完全に路肩と並行になったところでハーフスロットルを踏むと、流石にディーゼルらしい太いトルク感で加速する。太い低域トルクという面では最近のガソリンターボでも結構感じるが、しかし 523d のようにディーゼルエンジンのトルク感はより力強く感じる。そこから流れに乗って巡航するが、片側2車線で一般道としては流れが速いとは言え精々60q/h強という程度の速度では、そのトルクフルなアクセルレスポンスは全く不満を感じさせない。

そうは言ってもやはりフル加速時の特性も知りたいので、先ずは走行モードを切り替えてみる。モード切替スイッチは先代5シリーズや他のシリーズでも共通の AT セレクターレバーの右側で、これの奥側のスイッチが SPORT であり、これは BMW に慣れているドライバーなら難なく操作出来る。スポーツモードを選択すると今までの BMW ではメーター内に "SPORT" という小さな表示が出たが、今度の新型は何と正面のメーターがオレンジ色になり、しかも目盛りのデザインも全く違うものとなった (写真36) 。因みにデフォルトの COMFORT モードでは一見従来のメカ式と変わらなく見えるが、実はカラー液晶ディスプレイによる CG でメカ的な指針は付いていなかった (写真35) 。次に ”ECO" モードにするとメーターの目盛りはブルーとなり、右側の回転計は燃費関係のメーターに変身する (写真37) 。

F10 以前では走行モードの表示はひと目で視認が難しいくらい小さい文字で、近くが見辛くなった年代には嬉しくない情況だったが、今回はパネル全体の色と配置が変わってしまうのだからこれで見間違えるようだったらば認知症と判断して運転免許の返納を薦めたいくらいだ。

写真35
一見すると新旧で同じコンセプトに見えるメーターだが、実は新型は全てカラー液晶ディスプレイでの CG 画像で、写真のコンフォードモードから変更するとメーターデザインも全く違うものに変身する。。

 


写真36
SPORT モードでは目盛りがオレンジとなり速度計もデジタル表示と併用で、シフトポジション表示も大きくなる。


写真37
ECO モードでは目盛がブルーとなり回転計ではなく燃費関係のメーターが表示される。

SPORT モードに切り替わると当然ながらスロットルレスポンスは向上するし常用する回転域も高回転側、要するに概ね1速分低いギアを選ぶようになるが、まあこれは特に目新しいモノも無く常識的だ。次に信号待ちでうまい具合に先頭になったのでフルスロットルを踏んでみると大きな車体は勢い良く加速して、回転計の針も一気にビューンと回ったかと思ったら 4,000rpm強でシフトアップされた。回転計の目盛りはフルスケールが6,000rpm でレッドゾーンは5,500rpm、ゼブラゾーンは5,000rpm からであり、想像ではゼブラゾーンの少し手前、せめて5,000rpm弱くらいでのシフトアップかと思ったが確かにディーゼルエンジンでは下手に引っ張るよりもシフトアップした方が結果的に加速が良い、なんてことも考えられる。

それはそうとしても回転計の針がビューンと回って、おおっ凄いと思いながら速度計を見ると、ムッ? 大した速度では無かったという情況で、常用回転域が低いディーゼルエンジンで、幾らファイナルギアがハイギアードになっているとは言えガゾリンエンジンなら6,000rpmまでは間違いなく引っ張るところが4,000rpm 程度なのだから当然ではある。まあこれはコントローラの学習機能の情況などにもよるから、走り屋系のドライバーがオーナーならばもっとギリギリまで引っ張るようになるとは思し、そうでは無くともキメ細かな変速が可能な 8AT により結構救われてはいる。それにしてもその昔、30年程前のAT といえば 5速だって大したものだったのだが、最近では車種によっては 9速まで実用化されている時代で、以前なら文句無しの 6速AT は今になってみると随分ギア比が離れているようにさえ感じ、事実前回の試乗記でのアバルト 124 、要するにマツダの6速は随分と荒い制御に感じてしまったくらいだ。

最近の欧州製ディーゼルエンジンは寧ろガソリンよりもメリットが多いくらいにまで進化しているが、唯一ガソリンに敵わないのはグィーンとどこまでも伸びる加速感で、特に自然吸気6気筒が主流だった一昔前の BMW の気持ちの良い加速感を思い出すと、チョイと寂しいものもある。

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