Nissan Skyline 350GT Hybrid (2014/5) 前編

  

初代スカイラインが発売されたのは1957年だから今から57年前であり、当時は富士精密工業(後のプリンス自動車)の製品だった。因みに初代クラウンはスカイラインより2年早い1955年発売だが、スカイラインもクラウンとともに日本の自動車の歴史を語るブランドであり、しかも両車共に今まで続いている貴重なブランドでもある。何しろ同時期から続いていたセドリック、グロリア、さらにはブルーバードやコロナ等など、既に消滅しているかサブネームとして辛うじて残っているものの事実上は消滅と同じとなっている状況だから、それだけでもスカイラインの価値は十分にある。

とはいうもののスカイラインのファンからすれば、スカイラインと呼べるのは10代目(1998〜2001年)のR34型までであり、それ以後のモデルはもはやスカイラインとは呼べない、というのが彼らの気持ちだろう。実際にR34の次のモデルはR35ではなくV35となっているから、日産としても別のモデルにスカイラインの名称を付けたのを白状しているようなものだが‥‥。


写真1
R34の次(11代目)のV35(2001-2006)スカイラインだが、型式でも判るようにR34とは別の系統のクルマだ。


写真2
先代(V36)スカイライン。V35に比べて大幅にマッチョになった。

ここで何時ものようにスペック比較を行うが、今回は比較対象として旧モデルであるV36 スカイラインとしては370GTを選んだが、今回の試乗車はハイブリッドであり直接に比較対象ではな。これはV36にはハイブリッドの設定が無かったことが原因であり、サイズなどを比較するのを目的とした。そして比較相手は当然ながら北米ではスカイライン(インフィニティ Q50 )のライバルであるレクサスから同じDセグメントのISを、そしてその中からハイブリッドモデルであるIS300hを選んでみた。ところで、スカイラインの北米向けインフィニティブランドといえば”G”だったが今回からはセダンは”Q50”に、そしてクーペは”Q60”に変更された。それに加えて、Dセグメントのプレミアムセダンの代名詞であるBMW 3シリーズの中から、試乗車の350GT HYBRIDと仕様の近いActiveHybrid 3を選んでみた。

旧モデル(V36)とアウターサイズを比べてみると、全幅は1,770→1,820oと50oも広くなったが、逆に全長は4,780→4,790oと僅かに短くなったが事実上は同等で、ホイールベースについては全く同じ(2,850o)だから、要するに幅広になったということだ。

さらにライバル2車と比べると、ISも3シリーズもスカイラインよりも全長とホイールベースが短く、上表には無いが同じクラスであるメルセデス C クラスが全長4,640o、ホイールベース2,760oと3シリーズなどに近く、元来ライバルよリ大きめと言われていたアウディ A4 でも全長4,720o、ホイールベース2,810oであり、言い換えればスカイラインがDセグメントでは特別に長いということになる。

それでは先代V36との外観上の比較を行ってみる。まずはリアビューを比べてみれば一見キープコンセプトのような気もするが、トランクの開口幅は明らかに広くなっており、その他ではテールランプのデザイン傾向も変わっている(写真3)。フロントはグリルが全く異なる形状となり、またセンターのエンブレムもNISSANからインフィニティマークになっている(写真4)。確かに北米ではインフィニティブランドで販売されているから間違いではないのだが、何やらポンコツのスカイラインにインフィニティマークを付けて悦に入るイカレた兄ちゃんみたいで、いい大人からすれば気恥ずかしいものもある。


写真3
V37のトランクの開口幅はV36よりも明らかに広くなっており、その他ではテールランプのデザイン傾向も変わっている。


写真4
フロントはグリルが全く異なる形状となり、またセンターのエンブレムもNISSANからインフィニティマークになっている。

写真5
サイドからみると、全長は4,780 → 4,790oと僅かに短くなったが事実上は同等で、ホイールベースについては全く同じ(2,850o)。

こうして比べるとサイドビューは結構キープコンセプトとなっているが、サイドのプレスラインはより強く、しつこくなっている。

実は新型スカイラインを屋外で見るのは今回が初めてだが、モーターショーやショールーム内で見る以上にマッチョに感じるし、特に斜め前からの眺めは結構低くて広くて中々スポーティーに見える(写真6)。また斜め後方から見るとボディは大きめのRを多用したり、強いサイドのプレスラインなど、これまた結構マッチョであり(写真7)、やっぱりこの車は北米向けインフィニティで日本ではついでに売っているというのが本音のようだ。まあ、販売数量が圧倒的に多い米国向けに特化するのは商売としては当然ではある。

350GT HYBRIDであることを見極めるにはリアエンドの”350GT”のエンブレム(写真8)とフロントフェンダー上の ”HYBRID” というエンブレムくらいだが、それでも試乗車は遠くから見ただけで350GT HYBRIDと判断できる。う〜んっ、俺って天才! という訳ではなく、今現在、それしか発売されていないからだ。

フロントヘッドランプといえば、つい最近のまではディスチャージランプが上級モデルの証だったが、時代の移り変わりは早いもので、今ではLEDタイプが先端装備となっている。そして350GT HYBRIDでは全グレードに ハイ/ロービーム、オートレベライザー付LEDヘッドランプが標準装備されている。考えてみれば先端技術であるハイブリッドモデルにハロゲンランプでは洒落にならないしディスチャージランプでも普通っぽいから、やはりここはLEDで正解だ。それにベースグレードとはいえ460万円という価格は非正規社員の年収の2年分くらいだから、LEDヘッドランプくらい標準装備してもバチは当たらないだろう。


写真6
この角度から見る眺めは、結構低くて広くて中々スポーティーに見える。


写真7
この角度ではボディは大きめのRを多少したり強いサイドのプレスラインなど、これまた結構マッチョであるのが判る。

写真8
フロントヘッドランプは全グレードにLEDタイプ(ハイ/ロービーム、オートレベライザー付)が標準装備される。

リアエンドには”350GT”のエンブレムがあるのは最近の仕来り通りだ。


写真9
ドアのアウターグリップはシッカリとした出来につや消しと光沢のクロームメッキを使い分けるなど、結構高級車っぽい。


写真10
エンブレム類はトランクリッドに ”SKYLINE” 、左右フロントフェンダーには”HYBRID"で、加えてリアエンドには写真8のように ’350GT” と表記されている。

HYBRID車は大型のバッテリーを搭載しているためにどうしてもトランクルームが狭くなる傾向にあるが、それでも最先端のモデル、たとえばBMW Active Hybrid 3のようにガソリンモデルと変わらないトランクスペースは元より、リアシートのバックレストを倒してトランクスルーまで出来る時代だから、それよりも新しいスカイラインの場合も当然ながらトランクスペースは十分にある‥‥だろう、と思っていたのだが、実際に目の前に現れたスペースは奥行きのみならず幅も狭いという、なんともハイブリッドの王道を行っていた(写真11)この狭さにブツブツと独り言を呟いていたら、それに気付いたディーラーマンが直ぐに寄って来て、トランクリッドの内側の塗装が外板と同じ仕上げをしている点を強調していた(写真12)。確かに普通はトランクリッドやボンネットフードの裏側というのは錆びなければ良いという程度の塗装であり、ちょっと古くなると薄汚くなって磨いても光らないのだが、スカイラインはピッカピカの仕上げだからオーナーになれば磨き甲斐があるだろう(写真12)。


写真11
リアシート背面にバッテリースペースを確保していることもあり、ラッゲージスペースは狭い。


写真12
写真のトランクリッド、そしてボンネットフードなどの裏面にも外板同様の塗装仕上げを施している。

いよいよドアを開けて室内を見回すと、試乗車は最上級グレードのType SPだったこともあり、レザーシートと同じくレザーを多用したインテリア(ただし、多くは多分?人工皮革)が目に入る。他のグレードではType Pが同じくレザーでベースグレードのみがソフトジャカード織物/ネオソフィール コンビシート、要するに布と人工皮革のコンビとなる。

そのシート表皮のレザーはといえばこれは日産車に共通した問題、というよりも日本車の多くに言えることだが、本皮の質は決して良くない。元々日本は米と野菜を食料としてきた歴史から、牛革については経験も素材も全く不足しているであろう事は容易に想像が付く。それでもレクサスのレザーは国産車としては中々良いのは、初代セルシオ(米国ではレスサスLS)の時に欧州の高級車と張り合うためには質の良いレザーシートが絶対に必要という事で、大変な苦労をしたという話を何処かで聞いた覚えがある。

シート調整はシート下端にあるベースの側面にシートの形をイメージしたスイッチを使うパワーシートで、これはBMWを始めとする欧州車でも標準的な方法だから、全く予備知識無しで乗ってもすぐさま操作できる。えっ? 俺はパワーシートのクルマなんて乗ったことないから、そんな事言われても解らねぇぞって、そんな事を自慢してる場合じゃあないでしょうに。

次にドアのインナートリムはといえば、これは中々高級車っぽい。ドアトリムというのはインパネなどと比べて走行中にドライバーの目に入ることが殆どない部分のために、インパネは結構金を掛けた仕上げをしているのに比べて結構チャチというかコストダウンというか手抜きというか、D セグメントくらいではよく見るとプラスチックキーだとか、如何にもフェイク丸出しのシボ目とかが多いのだが、少なくともType SPでは十分に高級っぽい(写真16)。

写真13
写真は最上級グレードのType SPということでシートはレザー表皮で、しかも室内のトリムにもレザーを多用している。


写真14
シート表皮のレザーは例によって硬くてしなやかさに欠け、イマイチ質感が良くない。


写真15
当然ながらパワーシートが装着されていていて、操作はオーソドックスなシート側面下部のスイッチを使用する。


写真16
ドアのインナートリムは人工皮革とは思えるものの中々の高級な仕上げで、DセグメントというよりもEセグメント的な質感だ。

写真17
ドアインナートリムを拡大してみるとレザー仕上げは中にパッドの入ったものだったり、ドアノブのメッキも高級感のある半つや消しクロームメッキであり、インテリアトリムは欧州のスポーツグレードようなアルミにボツボツ仕上げのモノを使用している。

インパネはセンタークラスター上部にディスプレイを配置し、その両端に縦長のエアアウトレットを置くなど基本的な構成は先代(V36)とも共通だが一見すると大いに違っていて、センタークラスター最上部のディスプレイ下端を水平なパネルとして、ここにコマンドダイヤルを置くという少し前の日産の方式であるV36のスタイルは継承されていない。また、新型はパッセンジャーの正面のインパネ形状を半楕円形としてスペース確保と囲まれ感を両立している。

更にセンタークラスターを見てみれば、ディスプレイは最上部のナビ用に加えてその下にはコントロール用のディスプレイ(タッチパネル)が配置されているのは、最近他社でもボチボチ見かける方式だ。また中央ディスプレイの両端にはエアコンのスイッチが並んでいる等、よく見れば結構ユニークな配置となっている。ただし一見してセンスの良さがあるかといえば、まあ個人の好みのにもよるが決してお洒落ではない、というかハッキリ言ってダサい! あっ、あくまで個人の好みっすから‥‥

今度は後席に目を移すと、シートやドアトリムなどは前席と同様であり、今回のType SPは十分に高級感を持っているが、それでもこのクルマは前席が特等席であるオーナーカーだから後席の快適装備、すなわちエアコンのアウトレットやセンターアームレストは実用一点張りで、この点ではショーファードリブンを想定したグレードを持つフーガとは全く異なっている(写真21、23)。

写真18
センタークラスターの配置は先代V36と似ているものの、一見すると全く違って見えるインパネ。

写真19
センタークラスターディスプレイ下端を水平なパネルとして、ここにコマンドダイヤルを置くという少し前の日産の方式であるV36のスタイルは継承さていない。

またアナログ時計を配置するなどレトロ系だった先代とは打って変って、新型V37はよりデジタルっぽくなった。

写真20
ディスプレイは最上部のナビ用に加えて、その下にはコントロール用のタッチパネル式ディスプレイが配置されている。またその両端にはエアコンのスイッチが並んでいる。


写真21
リア用のエアアウトレットはフロントコンソールの後端にあるのは他の多くの車と同じだ。


写真22
前席のルーフのセンターにあるオーバーヘッドコンソールはチョイとプラスチッキーだ。


写真23
リアのセンターアームレストも決して豪華ではなく、やはりこのクルマは後席よりも前席を重視するオーナーカーである。

ここまで見てきた範囲では新型は正常に進化しているようだが、前述のように個人的にはインパネ周りはチョイと趣味ではないし、この面ではライバルのレクサスISに軍配を挙げたい。

あっ、あくまで個人の趣味で‥‥

何やら前半が終わったとところで、スカイライン vs レクサスISなんていう特別編のネタが真実味を帯びて来たが、これは米国市場でいえばInfinity Q50 vs Lexus IS でもあるから、良きライバルであることは当然といえば当然だ。

ということで、この続きは後編にて。

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