PORSCHE MACAN TURBO (2015/5) 後編

  

運転席に座ると、従来の PORSCHE のイメージである地表近くに座っているような低い姿勢とは異なり並の乗用車よりも高い着座位置と、スペック ( 全幅 1,925o ) から想像するよりも遥かに狭く感じる幅方向により、特別なクルマという感じはしない。TURBO モデルはスポーツシートが標準装備されていることもあって、硬いが体の凹凸はシッカリと吸収するしサイドサポートも良さそうで、これは流石に PORSCHE ブランドだけの事はある。

エンジンの始動はインテリジェントキーを使用するのは最近の常識だが、もう一つの常識である丸いプッシュスイッチがどこを捜しても見当たらない。実はインパネ右端にある一見イグニッションキーが刺さっているようなレバーを、これまたキーのようの右に撚ることでエンジンは目覚めた (写真32) 。そしてATセレクターはセンターコンソール上の直線パターンを持つ PORSCHE 各車に共通のものでこれをD に入れるが、このパターンの表示はポルシェの例に漏れずクロームメッキのパネルにプレスで文字を絞ったものであり、写真では殆ど写っていないが現物では‥‥やっぱり見辛い (写真31) 。ただし正面の回転計内の下部にあるパターン表示インジケーターが現在位置を点灯により表示しているから、実用上は全く問題ない (写真33) 。このパターン表示インジケーターは以前からPORSCHE 各車に使用されているが、小さい表示にもかかわらず極めて見やすいのはそれなりにコストを掛けているからであり、この辺が国産の安物とは大いに違うところだ。えっ、いくら高品質でも老眼でよく見えない、って? こりゃまた失礼いたしました。おっと、そう言う自分自身も最近近くが見づらくなってきたのだった。最後にパーキングブレーキを解除するには、フロアコンソール上のAT セレクターの手前にある電気式スイッチを押すことで解除される。

走りだして最初に狭い一方通行路をゆっくり走りだすと、DCT (PDK) としては発進は充分スムースで速度のコントロールもやり易いことを感じる。次に地方道に出て最初に加速した瞬間に、おおっ、このトルク感は只者ではないぞ、と感じるのは最廉価の SUV シリーズとはいえそこはポルシェであり、しかもラインナップ中のトップモデルであるターボだから、まあ当然でもあると再認識する。それに安いというのはポルシェのターボとしてはという注釈が必要であり、何故なら試乗車の価格は1千万円を超えているのだった。そういえばポルシェの価格は最近軒並み値上げとなっているのは、円が安いのだから当然でもある。円が安くなれば当然ドル建て価格が上がるから価格も上がり、逆に円が高くなれば販売価格も安くなる‥‥という訳ではない。



写真31
最近のPORSCHE 各車に共通の PDK のセレクトレバー。 ポジションの表示はプレートにプレスで型押ししているが、かなり見辛い。


写真32
インエリジェントキーを使用するが、エンジンの始動はボタンではなくあくまでキーを撚る感覚となっている。


写真33
セレクトレバーの位置は正面の回転計下部に表示される。

その後片側2車線の速い流れに乗って巡航しながら回転計を見ると1,500rpmくらいを指している。ここで走行モードを切り替えるためにコンソール上に並んだスイッチを見て "SPORT" と書いてあるものを見つけてこれを押すと、正面のメーター内には小さくSPORTの文字が現れると同時に、同じくコンソール上のスイッチのダンパーらしき画の表示されたスイッチのインジケーターも点灯し、SPORTではダンパーもハードになるのが判る (写真34) 。これは他のモデルでも同様だから最近のポルシェの経験があれば極普通に理解できる。

SPORT モードでは当然ながら常用回転数は上がるしアクセルもステアリングもレスポンスは良くなり、SUV というジャンルのクルマとしては驚異的な性能となる。今回は高速道路の走行などは行っていないが、メーカーの発表では 0 - 100 km/h が4.8秒というから、これはちょっと前の 911 並だし、5秒を切るというのは立派に高性能車の証でもある。小型とはいえ全幅は1.9m を超え、車両重量は限りなく2トンに近く (どこが小型だ!?) 、そんな SUV のスロットルをベタ踏みすれば上体はバックレストに押し付けられるから、これは立派なポルシェの一員だと言っても良さそうだ。

写真34
コンソール両端にあるスイッチ郡には走行モード切り替えやダンパー特性、車高ダウン、そしてトラクションコントリースのオフスイッチなどが並んでいる。

パーキングブレーキは電気スイッチによる方式となっている。


写真35
マニュアルシフト操作用にはパドルスイッチが付いている。


写真36
サイドミラーの端部にはウィンカーと連動してオレンジに点滅する小さな LED インジケーターがある。

ところで、数秒掛からずに100 km/h に達してしまうということは、一般道では例え国道バイパスなどでさえ3秒程度でもう上限の速度に達してしまうわけで、これじゃあ宝の持ち腐れということも言えるが、一瞬でもその加速感を味わうと中毒になるような性能をデッカいSUVで味わえるのは、これはこれで魅力満点だ。

MACAN のもう一つの魅力はトランスミッションが911等の本格スポーツと同じデュアルクラッチ (DCT) 方式の PDK を装備していることで、このミッションは極めてレスポンスが良く、他社のDCT とくらべてもダントツのフィーリングで、一瞬のシフトはまるで F1 やルマンカーのコクピット内画像のようだ。ただし、911などと比べると気のせいか多少レスポンスが劣るようにも感じるが、それでも他社のものと比べると次元が違うと言いたくなるくらいにハイレスポンスだ。実は、この後に乗った CAYENNE はPDK ではなくトルコン式のAT だったこともあり、このMACAN に比べるとチョッと苛々してしまうくらいに反応が悪く感じたが、それとて世間のAT では良い部類な訳で、人間の欲求には限りないものだと偉そうなことを言ってしまおう。

ここでドライバーの正面にあるメーターについて触れておくと、MACAN はBOXSTERなどポルシェの廉価版の特徴である3眼メーターとなっていて、これが CAYENNE だと911同様に5眼メーターとなる。配置は正面の大径メーターが回転計で、左の少し小さいのが速度計、そして右はカラー液晶ディスプレイを使用した多機能メーターとなっている。

写真37
メーターはポルシェの低価格モデルに共通の3眼式で、これが CAYENNE だたと5眼式となる。

写真38
V6 3.6Lターボエンジンは400ps / 6,000rpm の最高出力と450Nm / 1,360-4,500rpmの最大トルクを発生する。

トップスポーツ級の動力性能であることは判ったが、それでは操舵感や旋回性能はどうだろうか? 最近のクルマ (だだしある程度上級クラス) では操舵性は走行モードで大きく変るのは常識だが先ずは NORMAL モードで流れに沿って巡航してみると、中心付近のステアリングのフィーリングはSUV としては十分にダイレクトで不感帯も少なめだが、PORSCHE というブランドを考えればちょっと物足りない。そこで今度はSPORT へと切り替えると行き成り大分シャキっとして、これならまあ合格範囲だろうか、という状況になった。今回は特別なワインディングコースというものは走っていないが、それでも途中に何箇所かのコーナーがあるので、SPORT モードのままで先ずは適度な速度でコーナーに侵入してみると、多少のアンダーステアは感じるものの極々素直な特性で曲がってゆく。そこで次は更に速度を上げてみるが、高い重心のSUV によくある大きなロールなどもなく、SUV としては十分にスポーティーだし、同じポルシェ一家の SUV としては兄貴分に当たる CAYENNE よりも上手だから、SUV としては立派なものだ。まあ、これで不満があるならばそもそも背の高い、すなわち重心が高くてコーナーリング性能からすればどう考えても不利なSUV なんてものを買わないことだ。
実を言えば、このMACAN TORBO の試乗を終えた数分後にはCAYENNE HYBRID のハンドルを握っていたのだが、直前のMACAN TORBO の感覚が残っていた1時間位は、何ともトロいレスポンスにがっかりしたのだった。ただし、その後はMACAN TORBO にはない高級サルーン的な走行フィーリングなど別の良さを発見していくのだが、この詳細は近日公開予定の CAYENNE HYBRID 試乗記にて。

ところで背の高いSUV と言ったが、センターコンソールの走行モード切り替えスイッチ郡の下に並んでいるのは、ダンパーの画が書いてあるものが可変ダンパーの硬さが変るは判るが、他に車高を下げるような画が書いてあるスイッチがある。要するに重心を下げる訳で、これにより少しでもコーナーリング性能をアップさせるということだ。ところでSPORT モードを選ぶとダンパーもスポーツになるのはPORSCHE の常だが、この車高ダウンも一緒にON になっているようだった (たぶん) 。

MACAN TURBO の特筆すべきは乗り心地の良さだ。走行モードがNORMAL 時は当然ながら、SPORT モードでも実に靭やかに路面の凹凸を吸収する。というとフワフワかと誤解されそうだが、基本的には固くシャキッとしたスポーティーなセッテイングだ。既述のようにこのクルマの直後にCAYENNE HYBRID にも乗っているが、最初の10分はCAYENNEの乗り心地が悪く感じるくらいだったから、MACAN TURBO の乗り心地の良さ、しなやかさは特筆に値する。

PORSCHE のブレーキは宇宙一と比喩されるくらいに優秀なのは周知の事実だが、それは車高が低く、結果的に重心位置も低いことで荷重の移動が少なく、更にはエンジンを後部に積むことでフロントの重量配分が少なく、よりフロントブレーキ負荷が少ない事など、車両の構成自体が他の車とは全く違うことが大きな理由となっているわけだ。そこで MACAN はとえば、SUV だから背は高いし、エンジンはフロントという具合にどう考えても宇宙一ころこか世界一も期待出来ない訳で、実際に急制動をしてみてもPORSCHE 独特の安定感や驚くほどの減速度は感じられないが、それでもこの手のSUV としては良い方だ。車両を降りてリアホイールのスポークの隙間を覗くと、PORSCHE 初の型押し式ブレーキキャリパーが見える。まあ前述のように車両の構成を考えれば片押しで十分なのだが、オーナーとしてはそう単純には割り切れないだろう。なんたって MACAN はPORSCHE のエンブレムを付けている訳だから。


写真39
標準タイヤはフロント 235/55R19、リア 255/50R19サイズで、SUVらしからぬ細いスポークのホイールを使用している。


写真40
リアブレーキキャリパーはPORSCHE としては異例の片押し式を使用している。

今回のMACAN TURBO は予想外の高評価となったが価格は一千万円超であり、これでは良くて当たり前で、こうなると639万円也のベーシックなMACAN の性能が知りたくなる。

何やらまた宿題を抱えてしまったようだ。

ここでえ特別編での比較をしてみたくなってきた。相手は何とスバオタ様御用達のフォレスターXTで、2.0L ターボにより 280ps 。何よりも価格が安い!

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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