BMW (F10M) M5 (2012/9) 前編 | |
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BMWのMモデルといえばマニア憧れの高性能車であり、そのMモデルのイメージをBMWサルーンで実現した、いってみれば見かけだけのなんちゃってMであるMスポーツパッケ―ジは 、世間の批判をよそに大いなる人気を博して、ある時期の3シリーズなどは過半数がMスポーツだったくらいの勢いだった。 この成功を横目で見ていたメルセデスはついに我慢が出来なくなったようで、最近ではAMGスポーツというなんちゃってAMGをラインナップしていて、これまた一時期のBMWのようにC200の多くがラジエターグリルにデッカいベンツマークをくっ付けたAMGスポーツで、昔ながらのボンネットにスリーポインテッドスターの小さなマスコットを立てたエレガンスやクラシックは、殆ど見かけない(売れていない)ようだ。 今回取り上げるM5のベース車両である5シリーズサルーンが新型のF10となったのが2010年で、日本ではその年の春から発売された。そして2年強経過した今年の7月よりM5も発売されたが、流石にベース価格は1,495万円と、ベースとなる5シリーズのボトムグレードである523iの610万円に対して、何と約2.5倍の価格となっている。 ところで先代のM5は、5L V10というF1マシンをベースにしたハイチューンのNAを搭載するという、歴代Mの中でも最もマニアックな出で立ちに、当時の金持ちマニアたちは挙って購入に走ったものだった。しかし、NAのハイチューンエンジンというのは街中では実に乗りにくく、多くのドライバーにとっては550iの方がトルク感に富んでいると感じられただろう。結局、最初に飛びついた多くのオーナー達は、次の車検を待たすに手放したケースを随分聞いている。 そして今回の新型はといえば、先代とは全く方針を変えて、550iの4.4L V8を更にチューニングするという方法に転じている。そうなると、M5より1年程先に発売されたアルピナ B5との関係が微妙で、気になるところだ。 |
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そこで先ずは新型と先代(E60)の両M5に加え、アルピナB5とこの手の老舗であるメルセデス E63 AMGのスペックを比較して見る。 こうして比較すると現行3車種はスペック的にほぼ同じであり、何より驚くのは価格が揃いも揃って1,495万円だということだ。1,500万円以内ならば、山の神のお許しが出る・・・・なんていう環境の人も居ないだろうに。ただし、B5の場合はベースモデルでは523iにある装備すらオプションだったりするので、実際にはプラス100万円、アルピナらしい内装に、なんて思えばかる〜く200万円以上のオプションが必要だから、事実上はM5よりも100万円以上高いことになる。 そのアルピナB5は、昨年の試乗時には520psだったけれど、その後30psアップして550psとなり、M5の560psとは10ps差まで迫った。しかも、最大トルクにおいてはB5は74.4kg-mとM5の69.3kg-mを上回っている。まあ、日本の交通事情では520psが30psアップしたからって、実際には何も変わらないとは思うが。そして0〜100km/h加速はB5の4.5秒に対してM5は4.4秒であり、これまただからどうした、と言いたい程度の差だ。
そしてもう一つの大きな相違点はミッションで、B5がトルコン式の8速ATであるのに対して、M5は7速DCTを採用している。B5の性格から言ってもDCTよりも滑らかなトルコン式の採用は理に適っているから両車は上手く住み分けをしているようだ。 M5のエクステリアは基本的にベースとなる5シリーズと同じだが、太いタイヤやチョっと過激なエアロパーツなど何となく違う 。しかし5シリーズサルーンのサスを弄ったり、アフターマーケットのエアロを付けたりしたクルマでも、こんな風なのもあるから、一目で M5と判るかと言えば微妙なところだ。とはいえ、この独特の雰囲気はフェンダーの張り出しが微妙に違うなど、よくよく見ればボディのプレスも違うようだ。このような、判る人には判るというのが、オーナーの自尊心を擽る(くすぐる)のであり、こういう演出は実に上手い。まあ、これは以前からMでは当たり前の事だったのだが・・・・。 それでも明らかにM5と言える部分は、お馴染みのサイドフェンダーに開いたエアアウトレットと、左右各2本の太いエクゾーストパイプ という、お約束どおりとなっている。特にエクゾーストはごく自然に、しかも迫力物が装着されていて、これは街のショップのオリジナルのように如何にもとって付けたようなモノとはマルで違う。 |
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ドアを開けて目に入る光景は基本的には5シリーズセダンと同じであり、今更という気もするが、しかし何か雰囲気が違うのはシートの形状と材質が明らかに高級でカネが掛かっているのが肌で感じることが出来るからだ。M5のシート表皮は全て上質のレザーが標準装備されている。写真のクルマは少しグレーがかったアイボリーでプラチナと呼ばれるカラーだが、アイボリーより落ち着いていて、それでいて明るさもあるという中々良い色だった。シート調整は当然ながらフルパワーが標準装備されている。 |
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写真5 |
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インパネの眺めは基本的に5シリーズサルーンと同じで、この写真を見ただけではこれがM5であることは判らない。ドアインナートリムはシートとともに流石に高級素材を使っているから、見かけも実に高級そうだ。しかし、センタークラスターのオーディオとエアコンのコントロールパネル、そしてBMW自慢のiDriveのコマンドダイヤルも、これまた5シリーズセダンと同じものを使っている。 インナートリムはアルミのボチボチがついたアルミ・トレース・トリムと呼ばれる、ドイツの高級スポーツ車で好まれる素材が付いていたが、実はこれはオプションで、標準装備はアンソラジット・ウッド・トリムとなる。標準トリムがウッドというのが、新型M5 の性格を物語っている。 |
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写真8 |
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シートに座って感じるのは、見かけだけではなく座り心地も実に良いことで、まあ1,500万円もするのだから当然でもあるが。というよりも、悪く言えば運転席に座っていても610万円の523iとは全く次元の違うクルマだ、という感動は殆ど無い。これがアルピナ B5だと、異次元の感動があるのだが‥‥‥。 となれば、やっぱりM5は走りで勝負、ということで‥‥‥。
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