動力性能のインプレッションが終わったところで、いつものように少しスペック的に検証してみよう。今回はレクサスGSの2.5Lと3.5L、そして3.5Lと同じエンジンを搭載しているクラウン3.5(アスリート)と同クラスの欧州車の代表としてBMW535iのギア比を比較することにする。
この表を作っていて初めて気が付いたのは、GS350は同じエンジンを搭載したクラウン3.5が8ATであるのに、何とGSは6ATだったということだ。となれば、前述した変速動作による回転数の違いが大きいように感じたのは、8AT搭載のBMWなどに比べてギア比が粗いから当然の結果だった。それにしても、格下のクラウンが8ATなのに、プレミアムブランドのGSが6ATというのは、ちょっとレクサスの立場が無いではないか。まあ、次回のMCで8AT化されるではあろうが、普通はGSが先で後からクラウンが追従するのが本当だと思うが。そして、この事実にGS350はMCでの8速化までは待ちというしか無くなってしまった。
GS350の乗り心地は路面からの突き上げも極僅かでしかも一発で止まるから、可成り良い部類に入るだろうし、恐らくボディ剛性も充分なのだと想像する。それどころか、F SPORTというグレード名を考えれば、もう少し硬くでもいいのではないだろうか、とも感じる。ただし、だからといって急なレーンチェンジでフラついたりという事はない。そしてGS350のステアリングはというと、走行モードがNORMALの時は極々軽い操舵力が不安を感じるくらいで、しかも妙にクイックというか、わざとらしい反応をする。そこでモードをSPORTに切り替えると幾分操舵力が増して少しはマシになるが、基本的には軽すぎる傾向であり、もう少し重くてシャキっとしても良いのではないか。
というわけで、試乗車のステアリングはNORMALでは物凄く軽く、それでいて中間付近の不感帯は少ないから、軽く手首を動かすだけでノーズが反応し贔屓目に言えばかなりクイックといえるが、なんだか足が地に着いていないような操舵感がある。といっても、サスペンション自体の接地感は決して悪くない。ここでSPORT Sモードにすると、ステアリングは幾分軽さが減り少しシャキっとするし、SPORT S+なら更に操舵力が増すのだが、それでもBMW5シリーズよりは明らかに軽い。
と思って、試乗後に資料を見直したら、何とF SPORTにはLHD(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)という仕掛けが付いていて、これはギヤ比可変ステアリング(VGRS)と後輪の切れ角を制御するDRS(ダイナミック・リア・ステアリング)が装着されている、と書かれてあった。要するに4輪操舵とステアリングギア比の可変機構という、言ってみればBMWのアクティブ・ステアリングのようなものであり、そう考えてみると試乗車の妙な特性に納得がいく。BMWも初期のアクティブ・ステアリングは違和感大有りだったが、年を追う毎に素直になってきたから、BMWに比べて経験不足なレクサスも今後は改善されていくのだろう。
今回の試乗コースはGS250とほぼ同じだから一般道の途中に数カ所の一応ブラインドコーナーと言えるコーナーがある。先ずは最初のコーナーが見えてきたので、モードはSPORT Sにして、しかしセレクターはDレンジのままでコーナーに備えていると、コーナー入り口の数メートル手前からクルマのノーズが見えた。あれっ、と思った次の瞬間にヨレヨレと本道に出てくるではないか。慌ててブレーキを踏み減速して後ろに付くと30q/hくらいから加速する様子も無く、コーナーをフラフラと回っている。因みに前車の後端には”CAPELLA”というエンブレムが見える。ATENZAではなくカ・ペ・ラ! やがてコーナーを抜けるとフラフラと速度が上がっていき、60q/hを過ぎてもユックリと速度を上げている。これって、要するに速度をキープできないというか、速度計を見てないというか、まあ触らぬ神に祟りなし、ということで路肩が広い部分で停車して前のクルマが見えなく無くなるまで待ってから再出発をする。
貴重なコーナーを一つ損してしまったが、まあ気を取り直して次のコーナーに少し速いくらいで進入してみると安定性自体は充分であり、一般道ではマトモに走る限りは限界なんてお目にかかることは無さそうだ。そこで次はMTモードにして4速、2,000rpm弱、60q/h位で進入すると、安定性は良いのだがコーナー途中での操舵が例の異様にクイックな特性から、カクっ、カクっという多角形のコーナーリングになってしまった。まあ、慣れの問題もあるけれど、例のLDHというヤツが余計な事をしているようだ。その後も2箇所程でコーナーリングを試したが、傾向は同じだった。
レクサスのブレーキといえばIS250を除いて、要するに3.5L以上は前後にアルミ対向ピストンのキャリパーと、フルエレキのブレーキバイワイヤーシステムを採用していたが、今回の新型はアルミ対向ピストンキャリパーは装着しているものの、エンジンルーム内を見るとバキュームサーボ(真空倍力装置)が見える(写真27)。要するにバイワイヤーをやめてオーソドックスな方法に変更したのだった。まあ、バイワイヤーのメリットがあるかといえば微妙だし、今回のバキューム方式のフィーリングが特に悪いということも無いから、気にすることではないのだが、そう思ってあら探しをすれば、先代のように遊びが少なくストロークも短い特性ではなくなっていた。
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