Porsche 991 Carrera 4 (2013/3) 前編
  

ポルシェ911といえばリアエンジンでリア駆動という、今では殆ど他に例を見ない方式となってしまったが、それはファイナルオーバーステアという一般ドライバーにとっては限界を超えた時の急な特性から回避が難しいという致命的な弱点があることが原因だった。そんな911の中では4WDのカレラ4/4Sは普通のドライバーでも安全なコーナーリングが可能な一般向け911とも言える性格で、これにより独自のポジションを築いてきた。

そのカレラ4/4SがRWDモデルに1年ほど遅れて発売されたので、今回はベーシックグレードのカレラ4に試乗してみた。991は既にカレラSに試乗しているが、ベーシックなカレラがカレラSに対してどのくらい動力性能が劣る(!)のかも確認できるので、これは結構楽しみだ。

先ずは同じ991同士でRWDと4WDの主要緒元で比較してみると

   

外形寸法では全幅が1,810(RWD)→1,850mmと40mm拡大されているのは歴代カレラ4と同様で、これはリアのみ拡大されていて、フロントは共通となっている。そしてトレッドはやはり4WDのリアが30~40o広くなっている。なお、未だ新型にはなっていないが911ターボもこのワイドサイズとなるのは間違いないだろう。エンジンはカレラ、カレラSでそれぞれ全く同じで、4WDといってもエンジン特性は2WDと全く変わらない。

標準タイヤは特に4WDのリアがより幅広となっているのもリアフェンダー拡大→リアトレッド拡大の結果であるが、カレラ4Sの305というタイヤ幅には唖然とする。価格は2WDに対してホンの120万円程上昇して、素のカレラ4でもPDKならば1,350万円であり、ノーマルカレラ=一千万円チョイという感覚からは大きく外れている。

エクステリアではやはりもっこりと膨らんだセクシーなお尻には、スケベオヤジでなくてもゾクゾクするものがある。なお、試乗車は例によってオプションがてんこ盛りだったが、エクステリアではリアエンドにスポイラーが付いていることで、これだけでも後方から見た迫力は随分増して見えるものだ。また、リアから覗く排気管が左右各2本の合計4本出しなのはオプションを装着しているからであり、本来はSの付かないノーマルカレラだから、楕円形が左右で各1本となる。

代々の911はキャビンの高さが高く見えるために911独特の背高感があり、高性能スポーツカーとしては地べたにベターッと張り付くような極端な低さどころか、サルーンと比べても背が高いようにさえ感じられたが、今回はそのようなカッコ悪さは薄れている。


写真1
この角度では明らかに4WDモデルとは判らないが、良く見ればリアフェンダーの張り出しが大きい。


写真2
斜め後方からの眺めも何となくリアフェンダーの違いが感じられる。


写真3
真正面からRWDモデルと比べると、殆ど違いが判らない。


写真4
真後から見ると4WDモデルが40o幅広であることが判る。なお写真のカレラ4の4本出しマフラーはオプショウン装着のためで、標準は左右に楕円型が各1本となる。


写真5
試乗車にはリアスポイラーもオプションが付いていた。


写真6
この角度から見るのが最もカレラ4らしく見え、このセクシーなヒップラインはスケベオヤジにはちょっと毒だ!

写真7
サイドビューはカレラSと大きく変わらない991に共通するものだ。991はウエストラインが高めなことから、相対的にキャビンが小さく見えるために911独特の背高感は薄れている。

カレラ4の室内は基本的にカレラと同じであり、しかしポルシェの内装は豊富なオプションが選択できるし、本来オーダーシートに細かい仕様が用意されていて、いわば全車が注文生産だから単純に4WDがどうのとか、Sがどうのとかの比較は出来ない。それで、今回の試乗車も例によって高価なオプションが付いていて、例えばシートは標準のパーシャルレザーに対してオールレザーのスポーツプラス(8.1万円)にシートベンチレーション(18.7万円)が装着されていた。シートの各種オプションについてはカレラS試乗記で解説したので、ここではその時の一覧表を再掲載するにとどめておく。なお価格は12年モデルなので、今現在注文した場合は14年モデルとなるために、当然変更があると思われるので注意願いたい。

   

今度はフロントシートを前に倒すと現れるリアパッセンジャースペースに目を移すと何度見ても狭い911のリアシートが目に入るが、それでもこのスペースを荷物置場と考えただけでもケイマンとの実用性の差は圧倒的だ。

写真8
4WDモデルといっても、RWDと特に変わった部分はない。


写真9
相変わらず狭いリアシートだが、ここは荷物置場と割り切りが必要。それでも、これだけの空間でケイマンより圧倒的に実用性が増す。


写真10
レザーの座面に細かい通気穴が開いているのは、オプションのシートベンチレーション(18.7万円)装着のため。


写真11
サイドスカットルプレートは素直に”Carrera 4”となっていた。


写真12
標準およびスポーツシートは前後調整のみ手動調整となる。

カレラ4のインパネはRWDのカレラと、これまた別段変わりは無く、違いがあるとすればオプションの違いとなる。結局ここまで、カレラ4としての特徴的な部分は無かったこともあり、何とも新鮮味に欠ける内容となってしまったが、せめてもの罪滅ぼしにカレラ4の夜間照明を紹介することにする。

クルマの試乗というのは普通は昼間に実施するから、夜間の照明については解らない場合が多い。そこで今回は夜間の表示状況の写真を昼間の状況とともに比べて見る事にする。なお、メーター等の走行に関する部分は中編以降で紹介する。これを見ると流石にポルシェの夜間照明は質が高く、小さめで細いシンボルが白く輝くが解像度抜群の精密な表示が何とも良い雰囲気に浸らしてくれる。

写真13
カレラ4のインパネは、Panameraに始まる新世代ポルシェの流れに従っている991カレラと共通となっているのは当然だ。


写真14
エアコンの操作部は当然ならがRWDのカレラと同じ。下端の左右対象のスイッチはシートベンチレーション用。


写真15
991のドアインナートリムは991よりも大きく質感を上げた。勿論カレラ4も同様となっている。


写真16
ドア側のアームレストに組み込まれたサイドウィンドウやミラーの調整スイッチも夜間は精密なシンボルが白く輝く。


写真17
ヘッドアップコンソールはルームライトのスイッチくらいの最小限の装備しかない。勿論、こんなことろも夜間にはクッキリとシンボル表示が行われる。

新型911、すなわち991(ややこしい!)の内外装については、既にカレラS試乗記で詳細に紹介しているためもあって、今回のカレラ4Sではサラッと流したが、その代わりに夜間の照明についての紹介をしてみた。何でえ、偉そうこと言った割には夜間の写真が少ねぇじゃねえか、なんて言われそうだが、肝心の走行に関する部分は中編以降となるので、これまた大した事もない内容となってしまって。なお、今回はナビ一体オーディオ&DVDについても、少し詳しく紹介する予定にしている。

これらは中編にて。

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