BMW 320i Sport (2012/7) 前編
     
BMWラインナップ中でも恐らく最も量販されているであろう3シリーズがFMCされ、E90系からF30系へと進化した。そして今年の初旬に328iのみが先行して発売され、主力である320iは少し遅れて春といわていたが、実際のデリバリーは連休後くらいだったようだ。このサイトの読者の中心層も320iクラスのオーナーもしくは購入検討者であるから、本来は最重要アイテムなのだが、逆に人気車種だけあって発売直後は混雑状態であろうから、ゆっくりと試乗もできないであろう、ということでチョッと遅くなってしまったが、乗ってみました320i。

既にご存知のように、新320iは328iと基本的にエンジンは同じでチューニングを変えているだけのようだ。そこで先ずはスペックの確認といこう。

  

技術の進歩はターボ過給とはいえ2Lエンジンから245ps、350Nmという、NAならば3L並みのパワーと、トルクに至っては3.5L並みであり、実際に試乗した結果も十分にパワフルで、これでは335iなんていらないんではないか、なんて思ったくらいだ。

この十分過ぎる程に速い328iと同じエンジンをデチューンして、というかターボの過給圧を落として性能ダウンさせることで320iとして売るという、最近のBMW得意の商法で発売された320iの一番の興味は、価格と内容の違い、そして実際の走行性能だろう。そこで、先ずは エクステリア比較、そして価格と装備の差という順番でみてみよう。 従来の3シリーズはボトムグレードの320i(年代によっては318i)の場合は、フロントのキドニーグリル内の縦桟がブラックアウトされていて、上位モデルのクロームメッキと差別化されていた。ただし、クロームメッキは6気筒を表すとも考えられたが、そう思えば新型では320iと328iの双方が4気筒エンジン搭載車だから桟がブラックというのは辻褄が合ってはいる(写真2)。

リアビューを比較すると、最大の相違点である排気管が目につく。320iは一本出しであるのに対して、328iは本出しであり、しかもクロームメッキされて見かけも良い (写真3)。いくらチューニングが違うとはいえ基本的には同じエンジンの車なのに何故に排気管の本数が違うのか?なんて野暮なことを言うのは止めよう。この手の差別化はBMWのみならず他社でも度々目にする訳で、ポルシェなどでも定番となっている。そういえば、E90系(91、92含む)でリアのトランクリッドにあるグレードのエンブレムを外して、そこに”M”のエンブレムを貼っているクルマを結構見かける。あれってなんちゃってM3の積りなのだろうが、ショボイ1本出しの排気管が全てを物語っているのが辛い。っと、特別編でも無いのに余計な事を言ってしまった。
 

写真1-1
この角度で見てもホイールを除けば、320iと328iかの区別は殆ど出来ない。


写真1-2
横からみても当然ながら328iと同じだ。

写真2
先代(E90)の325i以上はキドニーグリルの縦桟がクロームだったが、今回は328iもブラックアウトされている。



写真3-1
リアビューでの大きな違いは320iが一本出しの排気管という点にある。


写真3-2
328iはクロームメッキされた2本出しの排気管となり、差別化している。

写真4
エンジンルームの中は両車は全く同じ見えるが、これでもエンジンの差額が80万円近い!
320iには328iと同様にスタンダードに対して3つのグレード(デザインライン)が設定されていて、スタンダードとの価格差は20万円だから、それで見栄えが劇的に良くなるというのは結果的に買い得であり、何よりも多くのBMWディーラでは展示・試乗車にスタンダードモデルは置いていない。今回試乗した320iはSPORTだったので価格は470万円で、これは328i SPORTの586万円よりも116万円も安い。

  

ややっ 、BMWは過給圧を上げただけで100万円以上もボッタくっているのか? という訳でもなく、装備の差もあるようだ。そこで320iと328iの装備に違い をまとめたのが下の表だ。

  

320iと 328iの装備の違いをオプション価格で比較すると、その差は約40万円で、そうなると77万円がエンジンのパワーアップ分となるが、コントローラのROMデーターを変えただけで77万円もふんだくっていることになるか??

さて、それでは室内を見てみることにする。写真は320i Sportであるが、ドアを開けて目に入る光景は328iと全く同じだ 写真5)。シート表皮は赤いステッチの入ったファブリックで、これは328i Sportと同じもので、また調整もフルパワーと、これまた328iと同様だった(写真6)。
写真5
ブラック基調に赤いステッチやラインが入っているSportの室内は、基本的に320iも328iも同じ。



写真6
320iでも標準でパワーシートが付く。

写真7
”BMW Sport”と書かれたサイドスカットルプレート。
今回試乗した320i Sportは標準的なブラッシュド・アルミトリム/ハイグロス・ブラック・ハイライトというアルミシルバーの下端に黒いラインが入っているもの(写真8‐1)だが、前回試乗した328iはインテリアトリムがハイグロス・ブラック・トリム/マット・コーラル・レッド・ハイライトという光沢のあるブラックにレッドのラインを入れた、ちょっと目立つタイプ(写真8‐2)が付いていた。これは320iと328iの差ではなく、それぞれどちらも選択できるという点でも両車は共通している。
 
写真8-1
写真は320iだが、328iとともにSportのブラッシュド・アルミトリム/ハイグロス・ブラック・ハイライトというトリムで、要するにアルミシルバーの下端に黒いラインが入っているもの。
写真8-2
こちらは328iの写真だが、同じSportでもハイグロス・ブラック・トリム/マット・コーラル・レッド・ハイライトという光沢のあるブラックにレッドのラインを入れたものだ。もちろん、320iでこのトリムも選べる。
写真9
フロントドアのインナートリムも同じSport ならば320iと328iは同じとなる。

写真10
コンソール上のATセレクター、モードスイッチ、そして右手前のiDriveコマンドダイヤルのクルマ合わせは、328iと共通だし、1シリーズとも同じだ。

写真11
エアコンやオーディオのコントロールパネルも328iと共通となっている。
その他、ドアのインナートリムもエアコンやオーディオの操作パネルも全て同じだった。したがって、320iを買ったオーナーは328iとの差で惨めになることは全く無いことになり、これで走りに大きな差が無ければ100万円以上の差が馬鹿らしくなるが、さて・・・・・。

この続きは後編にて。

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