SUBARU BRZ S 6MT (2012/4) 前編

 

トヨタ 86のスバル版であるBRZのバリエーションは、最低限の装備とした競技車用ベース車両のRA(205.8万円)、事実上のベースグレードであるR(6MT:247.8万円、6AT:254.6万円)、そして上級装備のS(6MT:279.3万円、6AT:287.2万円)の3グレードとなる。

これをトヨタ 86のグレードおよび価格と比較すると

  

86のグレードはBRZのRAに相当する競技用ベースがRC(199万円)で、これはバンパーが無塗装だったりとRA以上にチープな外観となっている。BRZのベースグレードであるRに相当するのはG、Sに相当するのはGTとなるが、86には最上位にアルカンターラ/レザーシートなどを標準装備したGT"Limited"という如何にもトヨタらしいグレードがある。なお、BRZの場合はSにパッケージオプションを装着することで、GT"Limited"相当となる。また、86 Gではリアベンチレーテッドディスクや17インチホイールが装着できないが、BRZではRにオプション設定で装着できる。これにより、例えばR(MT)に17インチパフォーマンスパッケージとスポーツインテリアパッケージを装備するとS(287.2万円)と同じでもインテリアのステッチ、6スピーカー、オートエアコンなどの走りには関係ない装備を省いたモデルが260.4万円(約27万円安い)で購入可能となる。今回の試乗車はBRZ S 6MTでオプションはエアロパッケージ(リアスポイラーとアンダーカバー)が装着されていたので価格は284.55万円で、更にナビを装着していたから、車両価格で300万円超、総額では三百数十万円と決して安くない価格となる。

実は86&BRZを屋外で見るのはこれが初めてだった。ディーラーの駐車場に見慣れない真っ赤はクルマがあったが、それが一目で「おっ、BRZだっ!」と判らなくて、他 車より低い全高から、もしかしてあれがBRZか?という程度だった。エクステリアの雰囲気は最新鋭のスポーツカーというよりも、何故か懐かしい 気がするので考えてみると、スープラやRX−7など一昔前に絶滅した走り屋御用達の国産高性能車のような雰囲気を発していたのだった。 フロントはバンパー内のエアインテイクと両端の補助ランプの形状が兄弟分の86と少し異なり、この部分で両車のイメージが異なっている(写真1)。他に86と明らかに違う部分は フロントフェンダーの後方上部にあるエアインレット(実は標準はダミーだが)の形状に違いがある ことだ(写真3)。このエアインレット部分は別部品となっているので、レース仕様ではエアダクトと接続する部品を用意することで、本物のインレットとして機能させることもできる。

なお、リアのトランクスペース、リアエンブレム、フロントヘッドライト、そしてフロントエアインテイクないの拡大写真などは写真4〜7を参照願いたい。
 


写真1-1
兄弟の86と異なるフロントのエアインテイクと上部先端にある六連星がBRZであるとを主張しているフロント部分。
リアは太い2本出の排気管が迫力を増すが、実際にはマフラーカッターによる見かけだけで中はそんなに太くは無い。
 


写真1-2
BRZの逆台形エアインレットに対して、86の場合は台形となる。また補助ランプの形状も異なっている。
 


写真2
斜め後方から見ると意外に特徴が無く、結局太いマフラーだけで迫力を出しているみたいだ。リアスポイラーはオプションだが、結構地味なのでオヤジが乗っても恥ずかしくなさそうだ。
 


写真3-1
エアインレットはダミーだが、別部品のために今後レース用のパーツなどを付けることが出来る。

 

 


写真3-2
86の場合にはこの部分に例のボクサーエンジンのピストンと86の文字をモチーフにしたエンブレムが付く。
 

 


写真4
トランクスペースは奥行きは意外とあるが幅と高さ方向に狭い。
 

 


写真5
BRZのエンブレムはリアのみで、グレードの表示は無い。テールランプは写真でもLEDであることが判る。
 

 


写真6
BRZは全グレードにディスチャージランプが標準装備されている。

 


写真7
フロント・エアインテイクを覗くと、ラジエターのコアは丸見えとなっているからスポーティーてカッコは良いが、石跳ねなどで損傷しないのだろうか。
 

 

BRZの室内は全グレードでブラックを基調としていて、トヨタ86のように部分的にレッドを使った派手な内装は設定が無い。試乗車は上級のSであるために、シートやドアのインナートリムなどに赤いステッチが入っているがシート表皮はファブリックで、オプションのアルカンターラ/本皮シート (写真11)は装着されていなかった。

もう既に何度か紹介済みだが、BRZ(86)のリアシートのスペース、特に足元は非常に狭い(写真8)。フロントシートに175cm級のドライバーが座るとリアパッセンジャーは足 を置くスペースすらない。これはポルシェ911(997)よりも確実に狭いから、BRZで後席に人を乗せる場合は、運転する訳ではないので少し足を縮めても問題にならない助手席側のフロントシートを充分に前に出して、その後ろに乗る3人乗りしかない。まあ、それでも2シーターに比べれば格段に便利なのは言うまでも無い が。
 


写真8
リアシートは運転席に175cm級のドライバーが乗ると、足を置くスペースすらない。助手席を前方にずらして後席の左側のみ使えば何とか3人は乗れる。
 

 


写真9
BRZは全グレードにスポーツシートが標準装着されている。
 

 


写真10
試乗車のシート表皮はSに標準のレッドステッチの入ったファブリックだった。なお、RとRAの場合はステッチが無い。
 

 


写真11
この表皮はオプションのアルカンターラ/本皮コンビで86の場合はGT "Limited"に標準となる。

 

BRZのインパネは当然ながら86と共通だが、それでも細部を多少変更することで両車の印象は随分とは異なっている(写真12)。といっても、クルマの内装部品の中でも大物であるインパネ自体は、樹脂の成型に巨大な金型を必要とするから、別形状にするなんてことは設備費用からも有り得ない。そこで、後付の部品を少し変えるという少ない投資で大きな効果を上げるべく考えた結果が、幅の広い(高さの高い)水平のトリムを、86のカーボン調に対してシルバー塗装とし て差別化することだ(写真13)。 ドアのインナートリムは86 GTと同様に部分的といはいえレザー(人口皮革?)に赤いステッチを使ったりと、結構凝っている(写真14)。そして、ドアアームレスト先端付近のパワーウィンドウスイッチは ベースパネルに何故かここだけは86 GTと共通のTメッシュ模様となっている(写真15)。 このTメッシュというのはトヨタのTをモチーフにしたメッシュ形状で、86ではフロントエアインテイクやカーボン調インテリアトリム等に使われているのだが、スバルでも一部のインテリア部品で流用しているようだ。

エアコンはフルオートタイプであり、これも86 GTと同じものが使用されている(写真16)。一応左右独立で温度調整が出来る2ゾーンタイプだが、見た感じの質感はそれ程良くない。またずらり並んだトグルスイッチも何となくMINIを彷彿させるが、これも斬新性は感じられないし、まあ大した事は無い。そしてインパネ自体の質感はといえばシボ自体はレザーと見紛う 程に出来 が良い訳でないが、国産のCセグメント車としては悪くない出来だ(写真17)。この部分は指で押してみたらば辛うじて柔らかさを感じたし、叩いてみてもカンカンと硬い訳ではないから、一応は弾性樹脂を使っているようだが、86のカタログでのソフトパッドという表現ほどには”ソフト”ではない。
 

写真12
インパネは86と共通だが、インテリアトリムの色と質感を変えることで違う印象を持たせている。


 

 


写真13-1
86と違いBRZのインテリアトリムはシルバー塗装となっている。

 


写真13-2
BRZ Sに相当する86 GTのインテリアトリムはカーボン調となる。
 

 


写真14
ドアインナートリムの質感は赤いステッチも入っていて悪くない。ただし、これはグレードがSだからで、ベーシックなRならば見た目も違うだろう。
 

 


写真15-1
パワーウィンドウのスイッチパネルは何故か86と同じトヨタのTをモチーフにしたTメッシュパターンとなっている。
 

 


写真16‐1
Sには2ゾーンのオートエアコンが標準装備されている。操作パネルはMINIを髣髴させるトグルスイッチが並んでいるが、パネル全体が安っぽい。
なお、中間グレードのRの場合はマニュアルエアコンとなる。この部分はそれぞれ86 GTおよびGと同じ。
 

 


写真15-2
PWスイッチパネルのTメッシュパターン。スバルにも”T”が。

 


写真16-2
エアコンパネルにもTメッシュパターンが使われている(写真はBRZ)。

 


写真17
インパネのシボ目はプラスチック丸出しというほど悪くは無いが、レザーと見紛う出来ではない。 まあ、Cセグメントの標準的質感だ。この部分を指で押してみると”一応”弾性樹脂を使っていた。
 

 

シートに座ってみると確かにトヨタが強調する低い着座姿勢は並の乗用車とは違うのは判るが、異次元のオーラを感じる程かといえば、それ程でもない。BRZの全高は1,300mmで、これはポルシェ ケイマンの1,305mmとほぼ同じだが、実際に座って一杯にシートを下げた(下ろした)場合の比較では、やはりケイマンの方が着座位置が低い気がする。そしてシートの座り心地はといえば、新しく86のために開発したシートは流石に国産車の標準的なシート に比べれば格段にしっかりと体全体を支えてくれるし、左右の張り出しも見掛け倒しではなくしっかりと機能していて、左右のサポートも優秀だ。まあ、それでも気に入らないという走り屋はいるだろうが、そういうタイプのユーザーのための社外品が多くのショップなどから発売されるだろう。

1,775mmという全幅寸法は近頃のクルマとしては決して幅が広い部類ではないが、それにしても印象としては室内が狭い!ということだ。まあ、これはタイトなコクピットというスポーツカーらしさを演出していると思えば文句も言えないが、それではシフトレバーが絶妙な位置にあるかといえば、う〜ん、悪くは無いがトヨタが言う程か 、といえばチョッと考えてしまう。そして、ドライビングの姿勢も車両の全高の低さの割には、ベストポジションを探したら 意外にバックレストを立て気味で、腕も多少曲げた位置になってしまった。これがケイマンだったら、バックレストを寝かして腕を真直ぐに伸ばしたスタイルになるのだが・・・・・。この件についてはまたの機会に詳細に検討してみようと思っている。

スバルといえば性能では国産のトップを走っているのに、内装のセンスの悪さと10分で腰が痛くなるようなシートが全てをぶち壊していたという残念さがあったが、トヨタとの共同開発となったBRZはその面では大 きく改善されているのが嬉しい。と、室内も見回したところで、いよいよ走ってみる事にする。 クルマというのは走ってナンボのものだが、取り分けスポーツカーであることを誇示している86&BRZだから、これこそ走ってみなければ評価は出来ない。

ということで、この続きは後編にて。  

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