BMW 120i Style & Sport (2011/10)
中編 ⇒前編 |
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エンジンの始動はメータークラスタの左側、ダッシュボードの端というBMWでは御馴染みの位置にある丸いボタン(写真31)を押すのは今までどおりで、エンジンが掛かるとアイドリングは殆ど振動がなく、音も僅かに聞こえるくらいだから
まるで高級車のようだ。それでも、僅かな音を残しているのは、むしろドライバーに対してエンジンがアイドリングしていることのインフォメーションであって、これはあえて残しているのだろう。
そしていよいよ走り出すために、ブレーキペダルに足を載せ、5シリーズみたいな電子式のATセレクター(写真33)を右側面のロック解除ボタンを押しながら手前に引くと、レバーの表示のDの傍にあるインジケーターがグリーンに点灯するのをみて「3シリーズにゃ付いてねえだろう、ざまあみろ」なんて呟いてみる。このタイプは、人によっては使い辛いという意見もあるが、これは慣れの問題だろうし、BMWは今後この方式となる
ことが予想され、次期3シリーズのオフィシャルフォットを見ても、当然ながら同様の方式となっていた。次に、パーキングブレーキを解除するために、電気式スイッチを探すが・・・・あれっ、何処だ?何の事は無い、オーソドックスなレバー式だった
(写真34)。ハイテクっぽいATセレクターなんだから、パーキングブレーキも電気式の方が釣り合うのにねぇ。これは、やっぱりコストダウンなのか、とも思ったが、もしかしてレバー式のメリットを考えているのかもしれない。即ち、走行中にレバーを引いてリアロックを誘う・・・・そう、ドリドリ用として!
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写真 31
ステアリングコラム左にあるスタート/ストップボタン。
周辺のシボ目はハッキリし過ぎて皮っぽくないのがイマイチ。
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写真 32
BMWらしく回転計と速度計が同じ大径メーターとなっているが、5シリーズのように単独の小径メーターが無く、燃料計や燃費計は大径メーター内に組み込まれている。
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写真 33
5シリーズと同様の電子式のATセレクター。 |
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写真 34
電子式ATセレクターの手前はオーソドックスなレバー式パーキングブレーキ。
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駐車場の出入り口の歩道上で一時停止して、クルマの流れが途切れたところで6車線国道に合流すると同時にハーフスロットルを踏んでみると、先代(E87)の120iよりも明らかに軽快に吹け上がるし、その加速もまた先代より明らかに勝っている
ことに気が付く。前車に追いつき50km/hとバイパス(法定速度60km/h制限)としては少し遅めの流れに乗っていると回転計の指針は1,500rpm前後を指している。
そのうち、更に流れが遅くなって40km/h、1,200rpmまで下がってしまったが、その後、直ぐに前車が加速を始めたようで、車間距離が開いていった。
そこでこちらも無意識にアクセルを踏んだのだが、1,200rpmから徐々に苦しそうに加速し始めた。これをキックダウンで強制的にシフトダウンさせようと挑戦したところでは、少し位では反応せずに、これでもかと踏み込むことでシフトダウンが起こった。
ただし、これはオーナーとなって学習モードを使って躾ればもっとレスポンスは上がるだろう。えっ?ウィークデーは奥方の買い物クルマなので、一番トロいモードを学習してしまう・・・・って。それは、それは。
1シリーズは寸法的にも国産Cセグメントハッチバック車と同等だから、初心者でも何の問題もなく運転できるだろうし、今時のクルマとしては珍しくボンネットの先端が確認できる
から、実に運転し易い(写真35)。後方視界も悪くないが、この手のハッチバックとしては当然ながら、リアウィンドウがクルマの後端部にあるあるために後続車が近づいているように見えるから、車間距離を目一杯詰めるアホなライトバンンなんかがいると、ルームミラー一杯に迫って見える
(写真36)。だから、これが大型トラックなんかだと結構な恐怖だ。そんなことを考ながら、6車線の国道を走行中に車線変更のために右にウィンカーを出したら、右サイドミラーの端が点滅するのに気が付いた
(写真37)。そういえば、新1シリーズは遂にサイドミラーにターニングシグナルを組み込んだのだった。「メルセデスが考えた方法なんて意地でもやらないぞ
」という固い決心も流石に10年以上も経てば、もう良いだろう。
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写真 35
小柄のボディに加えてボンネット先端が見えるから、初心者でも運転し易い。
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写真 36
リアトランクがないハッチバックのために、リアにピッタリ付かれると異常に迫っているように見える。 |
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写真 37-1
ウィンカー(ターニングシグナル)を出すとサイドミラーの右端(写真の←)が点滅する。
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写真 37-2
遂にBMWもサイドミラーにターニングシグナルを埋め込んだ。
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120iには5シリーズと同じような位置に同じようなスイッチで走行モード(BMWではドライビング・パフォーマンス・コントロールと呼ぶ)を切り替えることが出来る。モードは「COMFORT」「SPORT」「ECO PRO」の3つで、ATセレクター右上のスイッチで切り替える
(写真38)。スイッチの基本的な形状や切り替えるとメーターの中央下にあるディスプレイにモードが20秒ほど表示されるのは5シリーズと同様だから、BMWに精通しているドライバーなら何の違和感も無いし、国産車からの乗り換え(予定)のドライバーならば「お〜っ、流石は本物」と感動することになる(写真3
9)。なお、オプションのナビを装着しているとモードを切り替えた時にダッシュボード上のディスプレイに各モードに関する駆動系の画操が表示される(写真
40)。なお、ナビ装着車はスポーツ走行表示という表示モードにすれば、出力とトルクがアナログ風に表示されるというオマケも付いている(写真
41)。
今までの走行はデフォルトのCOMFORTだったが、今度はSPORTに切り替えてみる。
この時の走行速度は40km/hで、この場合回転数は1,300rpmから2,300rpmへと1,000rpmも上昇する。また、アクセルレスポンスも劇的に向上し、今までのもう「少しレスポンスが良ければなぁ〜」という希望が見事に適ってしまう。そして、このモードでこそ本来のBMWの良さが満喫できる
のだった。
SPORTモードに気を良くして、今度は信号待ちからのフルスロットル加速にチャレンジしてみる。上手い具合に、道路の渋滞も収まって前も広く空いているから、青信号とともにフル加速をすると、エンジンはこれが本当に4気筒か?と疑問に思うくらいに滑らかだ、といっても嘘にはならないくらいに軽やかに吹け上がりる。
まあ、一足先に発売されているメルセデスのC200も4気筒1.8Lターボとは思えない程にスムースに吹け上がるから、エンジン屋のBMWとしては、この位の出来で当然ともいえる。
そして、この時の加速感は現行3シリーズ(E90)の320iを遥かに凌いで、325iに近いフィーリングだった。後で調べたら欧州仕様の120i(恐らくMT)の0〜100km/h加速は7.5秒と発表されていたから、今回のAT仕様は少なくとも8.5秒以下であろうと推定できる。そして、先代3シリーズ(E46)の中間グレードである6気筒2.5Lの325i(前期型)が8.4秒くらいだったから、成る程同等の加速性能だった。
COMFORTとSPORTを試した後はECO PROの番だが、正直言ってこれはちょいと気が乗らない。まあ、そんなことも言っていられないので、一応切り替えてみた。その瞬間に、想像通りの酷いレスポンスで、巡航中に1,100rpmくらいまで回転が下がっても、シフトダウンする気配は無し。
そして加速しようとスロットルを踏んでも殆ど加速せずに、ノッキング寸前という感じで緩慢に回転数が上がり始める。ハッキリ言って、こんなものは使い物にならないし、緊急時に加速することで回避するような場面では、思った動作ができないから危険ですらある。このモードはBMWをブランド物のアクセサリーと思って乗っている小金持ちのオバンに任せておくことにして、我々は二度と使わなくても良さそうだ。
大体、エコを求めるならば、プリウスでも買えば良い。いや、ミラ イースで充分か。
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写真 38
走行モード切替(BMWではドライビング・パフォーマンス・コントロールと呼ぶ)のスイッチ。
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写真 39
走行モードのスイッチを切り替えるとモードの表示が20秒程点灯する。
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写真 40
オプションのナビが付いていると、走行モードのイメージをディスプレイ上に表示するが、あまり意味はない。
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写真 41
ナビ付きの場合は、表示モードにより出力やトルクをアナログメーター的に表示することも出来る。
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新1シリーズには5シリーズ(F10)と同様に8ATが搭載されている。そこでF10とのギア比を比較してみる。
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ギア比 |
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オーバーオール(ギア比×ファイナル) |
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BMW
116i/120i |
BMW
523i/528i |
BMW
535i |
BMW
550i |
BMW
116i/120i |
BMW
523i/528i |
BMW
535i |
BMW
550i |
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|
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
|
1 |
4.714 |
4.714 |
4.714 |
4.714 |
14.50 |
15.96 |
14.50 |
13.26 |
|
2 |
3.143 |
3.143 |
3.143 |
3.143 |
9.67 |
10.64 |
9.67 |
8.84 |
|
3 |
2.106 |
2.106 |
2.106 |
2.106 |
6.48 |
7.13 |
6.48 |
5.92 |
|
4 |
1.667 |
1.667 |
1.667 |
1.667 |
5.13 |
5.64 |
5.13 |
4.69 |
|
5 |
1.285 |
1.285 |
1.285 |
1.285 |
3.95 |
4.35 |
3.95 |
3.61 |
|
6 |
1.000 |
1.000 |
1.000 |
1.000 |
3.08 |
3.39 |
3.08 |
2.81 |
|
7 |
0.839 |
0.839 |
0.839 |
0.839 |
2.58 |
2.84 |
2.58 |
2.36 |
|
8 |
0.667 |
0.667 |
0.667 |
0.667 |
2.05 |
2.26 |
2.05 |
1.88 |
|
R |
3.295 |
3.295 |
3.295 |
3.317 |
10.14 |
11.15 |
10.14 |
9.33 |
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FINAL |
3.077 |
3.385 |
3.077 |
2.813 |
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**523iの最高出力は6300rpm |
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回転数と速度(km/h) |
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最高出力(rpm)時の速度(km/h) |
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1,300 |
rpm |
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6,450 |
6,600** |
5,800 |
5,500 |
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BMW
116i/120i |
BMW
523i/528i |
BMW
535i |
BMW
550i |
BMW
116i/120i |
BMW
523i/528i |
BMW
535i |
BMW
550i |
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8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
8AT |
|
1 |
10.7 |
10.4 |
11.4 |
12.5 |
52.9 |
52.9 |
51.1 |
52.9 |
|
2 |
16.0 |
15.6 |
17.2 |
18.8 |
79.4 |
79.4 |
76.6 |
79.4 |
|
3 |
23.9 |
23.3 |
25.6 |
28.0 |
118.5 |
118.5 |
114.3 |
118.4 |
|
4 |
30.2 |
29.5 |
32.4 |
35.4 |
149.7 |
149.7 |
144.4 |
149.6 |
|
5 |
39.1 |
38.2 |
42.0 |
45.9 |
194.2 |
194.2 |
187.3 |
194.1 |
|
6 |
50.3 |
49.2 |
53.9 |
59.0 |
249.5 |
249.5 |
240.7 |
249.5 |
|
7 |
59.9 |
58.6 |
64.3 |
70.3 |
297.4 |
297.4 |
286.9 |
297.3 |
|
8 |
75.4 |
73.7 |
80.9 |
88.4 |
374.1 |
374.1 |
360.8 |
374.0 |
|
タイヤ半径 |
0.316 |
0.340 |
0.339 |
0.339 |
0.316 |
0.340 |
0.339 |
0.339 |
結果を見ると、まず8速ATのギア比については、何と116iから550iまで全て同じだった。従って各車種への対応はファイナルギア比で調整している。ところが、本来低出力であるはずの116i(3.077)よりも523iおよび528i(3.385)の方が低いという事が判る。そこで、タイヤ半径を考慮して最終的な回転
数と速度の関係を見ると、同じ1,300rpmの時の速度ではほぼ等しいし、最高出力回転での速度は116iおよび120iと528iは全く同意一となっているのは偶然ではなく、それを狙って設定されているのだろう。
ここで考えるのは、116iと528iの8ATが果たして同じものなのか、それとも容量が違う別物なのかという疑問だが、次期3シリーズの場合は320iも328iも1シリーズと同じ4気筒ターボ(ただし排気量は2L)のチューニング違いで、パワー&トルクは以下のようになっている。
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モデル |
シリンダ配列 |
排気量
(cc) |
過給 |
最高出力
ps/rpm |
最大トルク
Nm/rpm |
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116i |
直列4気筒 |
1,598 |
ターボ |
136/4,400-6,450 |
220/1,350-4,300 |
|
120i |
|
|
|
170/4,800-6,450 |
250/1,500-4,500 |
|
320i |
直列4気筒 |
1,997 |
ターボ |
184/5,000 |
270/1,250-4,500 |
|
328i |
|
|
|
245/5,000-6,500 |
350/1,250-4,800 |
|
523i |
直列6気筒 |
2,496 |
なし |
204/6300 |
250/2,750-3,000 |
|
528i |
|
2,996 |
|
258/6600 |
310/2,600-3,000 |
今回の新型で特徴的なのは、120iと320iでエンジンが異なることで、1シリーズが1.6Lで3シリーズが2.0Lとなっている。これにより1シリーズは今のところ事実上は1種類となっていることで、生産効率は実に高いと思われる。同様に3シリーズも4気筒は事実上1種類となっている。ここで本題の8ATについて考えてみると、120i(250Nm)と320i(270Nm)が同等のトルクということは、ミッションも共通であることは充分に考えられる。そして、3シリーズの場合も
同一エンジンのシューニング違いである320iと328iの8ATは共通だろう。ということは、1シリーズと3シリーズも8ATは共通ということになる。
ところで、現行5シリーズは6気筒が使用されているが、これも近い将来のMCで4気筒ターボに変更されると推定する。となると523iと528iは、それぞれ320iと328iと共通、若しくは多少のチューニング違いとなるのではないか。という事は、直列エンジンの8ATは1、3、5全て共通のものではないか、と推定できる。まあ、当たるも八卦当たらぬも八卦
ということで。
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