BMW 120i Style & Sport (2011/10) 前編

   

BMWのボトムレンジを受け持つCセグメントハッチバックの1シリーズが初代E87から7年ぶりに全く新しいモデル(F20)へとFMCされた。今回発売されたのは116iと120iで、先代の自然吸気1.6Lおよび2.0Lから、何れも1.6Lターボでチューニング違いとなった。 特に120iは今流行の小排気量ターボ化の波に乗るもので、最近の欧州車の著しい傾向であることは今更言うまでもないだろう。

先ずは、新旧の違いを主要緒元で比較してみると
 
    BMW 新1シリーズ (F20) BMW 先代1シリーズ (E87)
      116i 120i 116i 120i
 

車両型式

  DBA-1A16 DBA-1A16 LBA-UE16 LBA-UD20

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.335 4.240

全幅(m)

1,765 1.750

全高(m)

1,440 1.400

ホイールベース(m)

2.690 2.660

駆動方式

FR
 

最小回転半径(m)

  5.1

車両重量(kg)

  1,400 1,420 1,390 1,410

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N13B16A N43B16A N43B20A

エンジン種類

  I4 DOHC Turbo I4 DOHC

総排気量(cm3)

1,598 1,599 1,995
 

最高出力(ps/rpm)

136/4,400-6,450 170/4,800-6,450 122/6,000 170/6,700

最大トルク(kg・m/rpm)

22.4/1,350-4,300 25.5/1,500-4,500 16.3/4,250 21.4/4,250

トランスミッション

8AT 6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード)

17.6/16.6

17.2/16.6

14.2/ NA

14.4/ NA

 

パワーウェイトレシ(kg/ps)

10.3 8.4 11.4 8.3

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

5リンク

タイヤ寸法

  205/55R16 195/55R16 205/55R16
 

ブレーキ

前/後

Vディスク/ディスク

価格

日本国内価格

308.0万円 367.0万円 299.0万円 364.0万円
 

備考

Style, Sport:
318万円
Style, Sport:
387万円
   

表を見て真っ先に感じるのは、116iが先代(E87)に対してパワー、トルクとも大幅にアップしたことだ。先代116iは遅い代表のように言われていたが、今回の新型はトルクで言えば2.2L級だから、動力性能の大幅な向上が期待できる。そして今回試乗した120iはといえば、パワーこそ 先代と変らないがトルクは2.5L級にアップされたから、これまた動力性能の向上に十分な期待がもてそうだ。

新型のスタイルは基本的にはキープコンセプトだが、実際に実車を見ると今まで感じた1シリーズ独特のカッコ悪さや安っぽさが、随分少なくなっているように感じる。今回の新型は先代に対して、全幅で15mm、全高で40mmの拡大となってい から背高感はむしろアップしそうなのに、その割には後姿をみれば先代よりも幅広く低く感じる。 その理由は大きく張り出したリアフェンダーによる幅広感の強調で、実際には15mmしか変わらない全幅が、格段に広がったように感じるのだろう(写真1〜4)。

新型の全長は先代E87の4,240mmよりも95mmも長い4,335mmで、ホイールベースも2,660mmから2,690mmへと30mm延長されたから、結果的には前後オーバーハングの合計は6 5mm長くなったことになる。 そこで側面から比べてみると、新型のフロントオーバーハングは寧ろ短くなり、逆にリアオーバーハングが長くなったことで、ステーションワゴン的な雰囲気を出している(写真5)。これなら、5ドアハッチなのにワゴン的に見えるライバルのアウディA3に対向できそうだ。


写真1-1 (F20)
新型は一見するとキープコンセプトで外観はそれ程変わっていないが、よく見れば安っぽさが消えている。
 

 


写真1-2 (E87)
数字以上にコロっとしてダルマっぽく、安物感があった先代。

 


写真2-1 (F20)
斜め後方からみても、より低く広く、車格上がったように見える。実はむしろ背が高くなったのだが・・。
 

 


写真2-2 (E87)
新型に比べるとやっぱり寸詰まり感がある。

 


写真3
低燃費という世界の兆候に合わせて、より空気抵抗を減らしたフロントの造形を見せる新型。
 

 


写真4
新型は幅が15mm広くなったが高さも40mm高くなっている。それでも、より広く、低く見えるのはデザインの上手さだろうか。 特に大きく 張り出したリアフェンダーが幅広感を増強している。
 

 

写真 5
新型の全長は4,335mmで先代の 4,240mmよりも95mm長く、ホイールベースは2,660から2,690mmへと30mm延長された。
新型はリアオーバーハングが長くなって、よりスマートになった。

前述のように今回の新型のグレード展開は標準のStandard 、高級嗜好のStyle、そしてその名のとおりのSportの3種類で価格は下記のようになっている。
 
  Standardrd Style Sport
116i 308万円 318万円 318万円
120i 367万円 387万円 387万円

Standardに対してStyleおよびSportの価格差は116iが+10万円で120iでは+20万円と、何故か116iの方が10万円安い。装備の主な違いはシート表皮や内装が異なることと、Sportはシート形状もよりタイトなスポーツシートとなり、また両車とも標準タイヤ&ホイールが120iではStandardの205/55R16から225/45R17へとアップされる。 更に外観上はスポイラーの色が違うなどがあるが、これは大した違いではない。なお、116iの場合はタイヤサイズは変わらず、ホイールのデザインのみ変更とな り、これが10万円安い理由だろうか。

今回試乗したのは120i Stlyeで、写真では試乗車を中心に120i Sport 展示車も比較紹介することで両モデルの違いを理解してもらうことにする。ところで、本当はStandardモデルも紹介したかったのだが、自宅から1時間程度のディーラーを全てあたってみたが、試乗車 どころが展示車すら全く見付けられなかった。一生のうちに何度も無い300万円以上の買い物で、20万円 (116iなら10万円)をケチると内装もホイールも見かけの悪いものになるのでは、誰も買わないということだろうか。ミラ イースのベースグレード”D” (79.5万円)は事実上オーナードライバーは誰も買わないし展示車も無い、みたいなものか。でもミラ イースDは銀行などの業務用としての用途があるが、1シリーズの場合は誰がStandardを買うのだろうか?

それにしても、この新しいグレード展開は、果たして上手くいくのだろうか?それに、他のシリーズでもこんなことをやるのだろうか?例えば5シリーズや7シリーズもStandard やStyleなんて・・・。

それで、StyleとSportの違いをエクステリアから比べてみれば、まあ、大した違いは無さそうだ(写真6、7)。
 


写真6
Styleはキドニーグリルのフレームがクローム(サイドはホワイト)でセンタースポイラーはシルバー。
Sportはグリルのフレームがブラックでセンタースポイラーもブラック。
 

 


写真7
リアもフロントに準じてバンパーの下部ラインが夫々シルバーとブラックで、排気管も同様に色分けされている。
 

 


写真8
Cセグメントハッチバックで、しかもFRだから多くは望めない。

 


写真9
BMW得意のリングタイプのポジションライト(通称イカリング)。
 

 

エクステリアを見た後は、新型エンジンを見ようとドライバー側のドアを開けAピラー下部を見ればボンネットが開いたイラストのあるレバーが目に入る。 世の中の常識から考えて、これに違いないと思いレバー(写真10-@)を引くと、車両の全端からボンっという音が聞こえボンネットの先端が少し持ち上がった(写真11-@)。その隙間を覗きながら 、これまた世の中の常識どおりに解除レバーを探すが見当たらない。もしやと思って、車内のレバーをよくよく見れば”×2”と表示されている。そこで、もう一度レバーを引くと、ボンネットの先端は更に持ち上がった(写真11-A)ので、恐る恐る持ち上げてみたらば難なく開ける事ができた。要するに2回引くことでロックを外す構造になっていたのだった。

New1シリーズのエンジンは116iも120iも1.6Lターボだから、ここで思い出すのはミニクーパーS用のエンジンだろう。これはプジョー207GTとも共用しているが、このエンジンと今回の1シリーズとの関係は如何なのだろう。Web上では、ミニ用を流用して縦置きFRにしただけ?と言っている記述を見たことがあるが、まさかそれは無いだろ。 そこで調べてみたらば、BMWのアナウンスではMINIクーパーSのエンジンとクランクシャフト、コンロッドを共有しているだけで、それ以外は完全な新設計だそうで、335iや535iの直6ツイン・スクロール・ターボエンジンのスモールバージョン、というか4気筒版とのことだ。 まあ、クランクシャフトとコンロッドを共有していれば、当然ながらストロークは同じになるし、排気量を同じにするにはボアだって必然的に同じになるから、スペックだけ見ると同じエンジンに見えるかもしれない (写真12)。

ターボユニットを見るとボディには ”GARRETT” の鋳出し文字が見えるように、このターボはギャレット製のツインスクロールターボを使用している。ここで、よく勘違いされやすいのは、ツインといっても2つのユニットを持つツインターボではなく、 エキゾーストマニホールドからタービンハウジングまで2系統としたもので、基本的にはシングルターボということだ(写真13)。
 


写真10
ボンネットのオープンはレバーを2回引く。
 

 

写真11
室内のレバーを1回引くと、ボンネットは少し開く@が、その状態では開けることが出来ない。再度レバーを引くともう一度引くと更に開いてA、後はそのまま開ける事ができる。

 

写真12
直4 1.6L ツインスクロールターボで170ps/4,800〜6,450rpm 25.5kg・m/1,500〜4,500rpmを発生する N13B16Aエンジン。

ミニクーパーSとは別物


写真13-1
正面から見たツインスクロールターボユニット。タービンのハウジングには
”GARRETT” のロゴが鋳出されている。
 

 


写真13-2
同じく側面から見たターボユニット。

 

 

エクステリアでは大きな相違点の無かったStyleとSportではあるが、インテリアは見た瞬間に違いが判る。その理由はStyleのシートは中央部のクロスが白/黒のチェックとなっていることで(写真14-1)、これに対してSportはブラックのみ(写真14-2)のためだ。なお、Styleのシート表皮はサイドにレザーを使用しており、その色は写真のパールグレー の他にブラックが選択できる。Sportの場合はブラックのファブリックにレッドライン(ステッチ)が施されていることと、形状がよりサポートを重視して左右の張り出しの強い、所謂スポーツシートとなっている。

120iのシートは全てポジションメモリー付きの電動式が採用されているが、Sportの場合にはサイドサポートも調整できる(写真16-2)。シートのポジションメモリーは複数のドライバーが使用する 場合、例えは亭主と奥さんが共用する場合など、ドライバーが代わる度に手動で調整し直すのは意外に面倒だし、ベストポジションが常に判らないような状態になるから、ファミリーユースでは 実は必須だったりする。
 

写真 14-1
Styleのシート表皮はセンターがブラック/シルバーのチェックのために、室内が明るく感じる。

写真 14-2
Sportのシートはサイドの張り出しの大きいスポーツシートとなり、明るいStyleに対して、こちらは座面もブラックとして精悍さを狙っているようだ。  


写真15-1
Styleのシート表皮は中央がブラック/シルバーのチェック(メトロクロス)でサイドはレザーを使用している。写真のサイドはパールグレーだがブラックも選べる。
 

 


写真15-2
Sportのシート表皮はブラック(アンソラジット)のトラッククロスにレッドハイライト(ステッチ)が入っている。
 

 


写真16-1
120i Styleにはメモリー付きの電動調整が標準装備されている。

 


写真16-2
120i SportはStyleのメモリー付き電動調整にサイドサポート調整が追加されているからで、サポートの強いスポーツシートに対する配慮は嬉しい。
 

 

インパネを比べてみると基本的には同一ながら、グローブボックス上部のトリムが、Styleのホワイト・アクリル・ガラス・トリムに対してSportはハイグロス・ブラック・トリムとなる(写真17)。オーディオやエアコンは共通で、現行車種で言えば5シリーズに近い薄型のデザインで、特にオーディオのパネルはCDのス リットと選曲(選局)用のボタンや音量調整など最小限の機能しかないのは、今回からiDriveが全グレードに標準装備されたために、パネル上には常用するスイッチ類のみ配置されているのだろう (写真18)。そして、これが今後のBMWの標準になるだろう、と思って次期3シリーズのオフィシャルフォットを調べてみたらば、成る程オーディオは全く同じようだが、 エアコンについては多少デザインが違った。それより不思議なのは、1シリーズよりも上級の3シリーズなのに、1シリーズが左右を別に温度調整できるのに対して、新3シリーズは温度調整ダイヤルが一つしかないのは何故だろう?
 

写真17-1
新1シリーズのインパネは、5シリーズや次期3シリーズ、そして先代1シリーズ(E87)が水平に伸びるダッシュボードデザインを採用しているのに対して、カーブを描きながらセンタークラスター側面を通ってコンソールへと続くラインを描いている。
Styleのトリムは樹脂の表面にガラス光沢の白い表面処理をしたホワイト・アクリル・ガラス・トリムを使用している。

写真17-2
Sportのインパネはトリムが異なり、ハイグロス・ブラック・トリムという、黒い表面処理をしたものになる。


写真18
iDriveを前提とした薄型のオーディオコントロールパネルは5シリーズの流れを汲んだ最新の方式だ。
 

 


写真19
BMW全車に共通の回転式ライトスイッチ。

 

 

今回の新1シリーズ(F20)の概要が伝わってきた時に、全車にiDriveが標準ということを聞いて 、全車にナビが標準 だと思ったのだが、新1シリーズのiDriveにはナビは付属せず、それ以外の設定がダイヤルとディスプレイで出来るということだった。 iDrive付きといえばナビが付いていると思っていたのだが、見事に解釈が変わってしまったようだ。そしてナビ付き(120iはオプションで25万円)のディスプレイが8.8インチであるのに対して、ナビの無い標準iDriveは6.5インチのディスプレイとなる(写真20)。また、コマンドダイヤルも周辺のスイッチの数やダイヤルの移動も左右のみなど、ナビ付きとは異なっている。ただし、この極端な円高で為替差益の還元が叫ばれて、他社が価格変更に踏み切ったりしたら、価格据置でナビ を標準化するなんていう予感もする。
 


写真20
iDriveといっても、標準はナビなしでディスプレイも6.5インチとなる。ナビはパッケージオプションで25万円(116iは27万円)。
 

 


写真21
iDriveのコマンドダイヤルはナビのあり/なしでボタン数とダイヤルの方向が異なる。

 

ドアインナートリムについてもSytleとSportの違いは、クロス部分がシート座面と同じでドアハンドル部分はインパネやコンソールのトリムと同じになっている(写真22)。また、ドア側のアームレストは触ってみると結構柔らかいパッドになっている。この部分の上面にはパワーウィンドウスイッチやドアミラーの調整スイッチなどがあるが、これは標準的なものだから操作に戸惑いは無い筈だ(写真23)。
そして、コンソールボックスの後端はリヤ用のエアコンアウトレットとなっているのはBMWではお馴染だが、Cセグメントのハッチバックとしては珍しいのではないか。
 


写真22-1
Styleのドアインナートリムはシート表皮と同一でブラック/シルバーチェックのメトロクロス、ドアグリップはインパネトリムと同じホワイト・アクリル・ガラス・トリムを使用している。
 

 

写真22-2
Sportも同様にブラック(アンソラジット)のトラッククロスにレッドハイライト(ステッチ)とハイグロス・ブラック・トリムを使用している。

 

 


写真23
ドア側面のアームレストはソフトパッドの役目をする柔らかい樹脂を使用している。パワーウィンドウやミラー調整のスイッチ配置などは、BMWのセオリー通りだから、初めてでも問題なく使用できる。
 

 

写真23
フロントコンソールボックスの後端にはエアコンのアウトレットがあるのは、Cセグハッチバックでは珍しい。

シートに座ってみると、国産のCセグメント車の常識からは一線を画す出来だが、 BMWのシートの常でチョッと柔らかいから、ドイツ車のシート=カチカチと思っていると何か変だぞ、と 思うかもしれない。以前から3シリーズ以下のシートはチョッと小さめの傾向があり、1シリーズのシートだと大柄なドライバーの場合に幅方向でギリギリとなるかもしれない。まあ、それでもカ○ーラなどと比べれば月と何とかの部類ではある。
そしていよいよエンジンを始動するのだが、この続きは中編にて。  

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