Porsche Cayman S & Carrera 特別編
987か997か(ケイマンS vs カレラ) その2

エンジンの始動はどちらも金属製のキーをキーホールに差し込んで右に捻るという、今となっては前近代的に感じる方法で、しかも操作はシフトレバーと逆の手で行うというのも、昔のルマン式スタートに対応しているというポルシェの伝統を頑なに守っている結果である。写真21では、両車の配置が対称となっているが、これはケイマンSがLHD(左ハンドル)、カレラがRHD(右ハンドル)のためで、このキーホールと隣のライトスイッチまで含めて、ケイマンSとカレラは完全に同一の部品を使っている。
 


写真21
キーホールもライトスイッチも全く同じ部品を使っている。写真で夫々左右対称なのはケイマンがLHDでカレラはRHDのため。
 

ポルシェのメーターに関しては、確固たるしきたりがある。中央にある一際大径のメーターは回転計で、これはポルシェがスポーツカーであり、一番大切な情報はエンジン回転 数であることを主張している。そして、ボクスター/ケイマン(987)系は左にアナログ速度計と右に水温、燃料計とシフトインジケータを組み込んだ集合メーターが配置される。これが911(997)系となると、987の3連に対して夫々左右に小径メーターを追加した5連メーターとなる (写真22)。なお、左右端のメーターは油圧および油温計で、それだけ911系はシビアな走りをするということなのだろうが、実際に公道で油圧や油温のチェックが必要な走りなんてしていたら、運転免許が何枚あっても足りなくなってしまうと思うのだが。

そして、もう一つのしきたりはメーターパネルの色で、ベース(素の)モデルは黒であり、”S”の場合はシルバーになる。ということは、今回の場合はケイマンSがシルバーでカレラは黒となる。そしてカレラSはシルバーなのだが、何故か更に高性能なGT3やGT2などはブラックとなる。
 


写真22
ケイマンSとカレラの大きな違いにメーターの数がある。987は3連メーターであるのに対して、997は左右に油圧と油温計が追加されて5連メーターとなる。
もう一つのお約束は、”素”のモデルはメーターパネルが黒に対して、”S”はシルバーとなる。
すなわちケイマンSは”S”だからシルバーで、カレラは黒となっている。
 

今回の比較はPDK搭載車両だが、PDKのミッションやファイナルギアは如何なのだろうか?
そこでギア比の一覧表を作ってみた。
 
  1 ギア比較              
      ギア       オーバーオール*
    Cayman CaymanS Carrera CarreraS Cayman CaymanS Carrera CarreraS
    7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD
  1 3.909 3.909 3.909 3.909 12.70 12.70 12.08 12.08
  2 2.292 2.292 2.292 2.292 7.45 7.45 7.08 7.08
  3 1.654 1.654 1.654 1.654 5.38 5.38 5.11 5.11
  4 1.303 1.303 1.303 1.303 4.23 4.23 4.03 4.03
  5 1.081 1.081 1.081 1.081 3.51 3.51 3.34 3.34
  6 0.881 0.881 0.881 0.881 2.86 2.86 2.72 2.72
  7 0.617 0.617 0.617 0.617 2.01 2.01 1.91 1.91
  R 3.545 3.545 3.545 3.545 11.52 11.52 10.96 10.96
  FINAL 3.250 3.250 3.091 3.091   *ギア比×ファイナル   
                 
  2 速度比較              
      回転数(rpm)-速度(km/h) 最大出力回転数(rpm)
      2500 rpm   6400 6400 6500 6500
    Cayman CaymanS Carrera CarreraS Cayman CaymanS Carrera CarreraS
    7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD 7PKD
  1 24.7 24.8 26.1 25.7 63.3 63.5 66.8 65.8
  2 42.2 42.3 44.5 43.9 107.9 108.3 113.9 112.3
  3 58.4 58.6 61.7 60.8 149.6 150.1 157.8 155.6
  4 74.2 74.4 78.3 77.1 189.9 190.5 200.3 197.5
  5 89.4 89.7 94.3 93.0 228.8 229.7 241.5 238.0
  6 109.7 110.1 115.7 114.1 280.8 281.8 296.3 292.1
  7 156.6 157.2 165.3 162.9 400.9 402.4 423.1 417.0
  タイヤ半径 0.333 0.335 0.335 0.330 0.333 0.335 0.335 0.330
       
  3 タイヤ寸法    
    タイヤサイズ

 タイヤ径〈mm〉

  Cayman 235/50ZR17 666.8
  CaymanS 265/40ZR18 669.2
  Carrera 265/40ZR18 669.2

その結果は、PDKの7速デュアル・クラッチ・トランスミッションのギア比は全く同じだった。恐らく987/997用PDKミッションは一種類なのだろう。それにしても、385ps 420NmのカレラSと共通のミッションを積んだケイマンは265ps 300Nmだから、駆動系の余裕は物凄く、言ってみれば相当なオーバークオリティということになる。それにしても、同じギア比で問題ないのかと思うだろうが、その分をファイナルギアで調整している。すなわち、ケイマン系の3.250に対してカレラ系は3.091とハイギアードに設定して大トルクを生かしている。

PDKはどうやらファイナル以外は全く同一品である事が判った訳だが、室内側のセレクターはどうかといえば、これまた全く同じものだ(写真23)。そして、マニュアル時のステアリングスイッチは本来、ポルシェ独特のスイッチがスポークに組み込まれるのだが、今回の2台の試乗車はオプションのパドルスイッチを装備していた。これは、右でUP、左でDOWNという世間の標準的なものだから、実に使いやすい。それでも、ポルシェは意地を張って使い辛い独自の方法を標準としているのだが、いい加減にギブアップしたほうが楽になるのにねぇ。

さて、それでは実際に乗ってみて、ケイマンSとカレラの動力性能の差はハッキリと認識できるのだろうか?という点に関しては、加速性能については実はそれ程の違いは感じられない場合が多い。場合が多いと表現したのは、ゼロスタートでフルスロットルを踏み100km/h以上までフル加速できる条件などなら、確かにカレラの方が少し速いかもしれないが、そんな状況は高速本線に料金所があり、その先が行き成り直線で本線と繋がっている、たとえば 東名の東京料金所や東北道の浦和料金所など、日本中に幾つも無いだろう。ただし、高速走行中の一瞬の加速などでは僅かに違いが出るかもしれないが、カタログデーターで0〜100km/hがケイマンSで5.1秒に対してカレラは4.7秒(いずれもPDK)だから、その差は0.4秒であり、まあ、人によっては、というか乗りかたによっては大きな差に感じるかもしれない。

実は両車は絶対的な動力性能よりも、そのフィーリングに違いがある。まずアイドリングでは、ケイマンSなら多少の振動はあるとはいえ結構大人しいが、カレラの場合は独特のエンジン振動がボディ全体から伝わってきて、そのボディが半端ではない剛性感の塊だから、ドライバーはシートを伝わってくる独特の振動に異様な高性能感を感じるのだ。そして、加速時にも耳を刺激する独特のメカ音がカレラの方が刺激的であり、如何にも精密機械が動いているという様子が伝わってくる。これに対してケイマンSは、カレラほどのメカメカしさがなく、比較的”普通”だし、ボディだって並のクルマよりは格段に剛性感は感じるが、カレラほどではない。ケイマンSに対して360万円ものエクストラコストを払う最大の理由は、このフィーリングの違いだと思う。
そして、これがカレラSになると、アイドリング時のブルブルも、加速時のメカメカしい音も、そしてボディの異様な剛性感も、全てがカレラより一枚上手に感じるように出来ている。そう、ケイマンSとカレラの差と同じように、カレラとカレラSの243万円の差を、シッカリと感じさせてくれる訳だ。
 

写真23
PDKのセレクターは両車とも全く同じものが使用されている。

次に操舵性の比較となるが、冒頭に記したように何故かカレラよりもカレラSの方が圧倒的に運転した経験が多く、対してカレラは今回久しぶりに2時間程乗った程度の為に、ハンドリング云々を言うレベルではない、と言うことで、先ずは同じフェイズ2のカレラSについて比較してみる。なお、ケイマンSは10日間くらい乗ったので、ある程度は色々な乗り方をしている。

その結果だが、カレラSのステアリングは中心付近からズッシリと重めで、しかも不感帯が殆どなく、この重い状態から少しでも力を入れると直ぐに反応する。これに対してケイマンSはカレラSよりも中心付近の不感帯も多く、切り始めの剛性感でも一歩を譲っている。この原因を考えてみると、フロントタイヤがケイマンSの235/35ZR18に対してカレラSは235/35ZR19とホイールがワンサイズ大きいが、それだけでは説明がつかない。やはりステアリング系が多少違うのではないだろうか。なお、カレラの場合はカレラSよりもケイマンSに近いフィーリングだった。
コーナーリングについては、ステアリングに対するクイックな反応という意味ではケイマンSが当然勝っているが、カレラSだって決して悪くない。ただし、カレラSは前述のようにセンターからの切り始めの遊びが殆ど無く、しかも多少重い操舵力でグイっと切り、しかも車両の動きは一瞬遅れるという独特の挙動を示す。これは、車両のほぼ中央部にエンジンを載せているケイマンが、回転方向のモーメントという面で圧倒的に小さく、逆に車両の最後端におもり(エンジン)をぶら下げているカレラSはモーメントという面では極めて大きくなる。つまり、ケイマンSは短い振り子の振れが速いのと同様に挙動も速いし、カレラSは長い振り子と同様に振れも遅いということだ。
それなら、コーナーリングはケイマンSの勝ちかといえば、そんなに単純ではない。実際のコーナーリング性能自体は明らかにカレラSが上で、コーナーリング中の安定感は抜群のものがあった。その為に、カレラSの場合は、その大きなモーメントを利用して長い振り子を振る時のように、尻が振り始めるまでの遅れ時間を考慮して、これにスロットルとブレーキによる前後の荷重移動を組み合わせると、驚くほどの速度と安定性でコーナーリングする。さて、この安定性の違いは何が原因かを考えてみれば、ケイマンSがリアサスにマルチリンクを使用しているのに対して、ケイマンSはストラットとなっていることが大きいのだろう。

そういうわけで、カレラS、取り分けフェイズ2の場合は抜群のコーナーリング特性だったが、それでは今回の主人公であるカレラはといえば、ステアリングのセンター付近の剛性感はカレラS程ではなく、ケイマンSと良い勝負だった。それでも、リアにマルチリンクを採用しているカレラは、やはりそれなりの安定感が感じられた。それならケイマンにカレラのリアマルチリンクサスを移植すれば更に高性能なクルマが出来るのではないかと思うだろうが・・・・・そのとおり!
しかし、それでは911>ケイマンというポルシェのヒエラルキーが崩れてしまう。911の欠点を補った究極のスポーツカーは半端なものでは許されない訳で、例えば以前限定生産されたカレラGTとか、近いうち市販されるであろう918など、超スーパー級のマシンでなければならないのだ。その辺もポルシェの経営戦略の見事さというしかない。

走ると曲がるの次は止まるだが、先ずはブレーキキャリパーをご覧願おう(写真25)。大きさからすればケイマンSとカレラは同等、というよりもリアなんか寧ろカレラの方が小さいくらいだ。実はフェイズ1ではケイマン、ケイマンS およびカレラは事実上同じキャリパーを使用していて、カレラS以上になるとピストン径もワンサイズ大きくなって、キャリパー自体も大きくなっていた。 しかし、今回のカレラのキャリパーを見ればピストンの形に沿ってボディの無駄肉を削いでいることから、明らかに軽量化を狙っているのだろう。この新しい(と思える)カレラのキャリパーは、もしかして991用を先行して装着しているのかもしれない、とうのは単なる想像ではあるが。

それでは実際にブレーキペダルを踏んだ時のケイマンSとカレラのフィーリングはといえば、どちらも似ていて、ペダルを踏んだ瞬間には極僅かではあるが遊びがある。ただし、BMWのサルーンのように完全な不感帯という訳ではなく、少しは効いているのだが、明らかに遊びストロークといえる部分がある。そして、その後は踏めば踏むだけ 効いてくるが、その時に意外なのは踏めば踏むほどペダルも奥に入っていくことで、慣れれば踏力と共にストロークでも効きの具合が予測できるけれども、世の中の多くのクルマのブレーキとはフィーリングが違うから、慣れないと効かないと勘違いする場合も多いだろう。ところで、カレラSはどうかといえば、ブレーキペダルは踏んでも殆ど遊びがなく、踏んだ瞬間からガッチガチであり、そこから踏力を増していってもペダルは極わずかに 奥に入っていくくらいで、事実上踏力での制動制御となる。

ただし、慣れればどちらも驚くほどのブレーキ能力を発揮し、正にポルシェのブレーキは宇宙一という例えのとおりであるが、これはブレーキメカのみならず、ボディや足回り、そして基本的な重量バランスなど基本設計が極めて優れている証拠だろう。
 


写真24
標準装着は
18インチ ケイマンSUホイール(Fr:8J×18 Rr:9J×18)+Fr:235/35ZR18 Rr:265/40ZR18タイヤ
18インチ カレラWホイール(Fr:8J×18 Rr:10.5J×18)+Fr:235/40ZR18 Rr:265/40ZR18タイヤ
 


写真25
ケイマンSは”S”だから赤い(赤色塗装)キャリパーで、カレラは”素”のモデルだから黒い(黒アルマイト)キャリパー。
キャリパー容量は同等で、フェイズ1の時は色以外はほぼ同じキャリパーだったが、今回の試乗車は形状が異なっている。
 

次にブレーキのロックとABS作動について考えてみる。 なお、この部分は以前発表したフェイズ1カレラSの長期試乗記で説明した内容を元にしているために、例題はカレラSとボクスターとなっているが、カレラとケイマンSでも基本は同じと思ってよい。

ABSが作動するとガーっという音と共に、ブレーキペダルには結構な振動を感じるから、ドライバーにとっては決して気持ちの良い物ではない。このABSの作動というのはどんな状態かといえば、タイヤがロックした、すなわちタイヤと路面との間で発生する摩擦力よりもがブレーキがタイヤを止めようとする力が上回った状態の時で、この限界は 軸に掛かる重量(軸重)と路面とタイヤの摩擦係数(路面μ)で決定される。実際にケイマンとカレラで急ブレーキを掛けると、ケイマンではガーっという音と共に強烈な振動をブレーキペダルに感じたのに、カレラSの時は普通に止まったという経験をしたユーザーの話をよく聞くが、それはどういうことかを考えてみよう。ブレーキを掛けると車自体は走って (動いて)いようとする慣性が働くから、全体に前のめりとなる。すなわち、前輪の荷重は通常より増えて、逆に後輪の荷重は減る事になる。その割合は簡単な計算式で求められる。これは、重心高を H、ホイールベースをL、フロントの静荷重をWsfとすると、車両重量W、減速度比αの時の荷重は

フロント動荷重Wdf=Wsf+α×W×(H/L)

となる。文系人間には何やら頭が痛くなるという場合もあるかもしれないが、話は簡単で重心高が高いほど、ホイールペースが短いほど制動時の前輪への荷重移動は大きいことになる。
この式によりライバルを比較計算したのが下表だ。
 
      Carrera S Boxster M3

軽積載車両重量W(kg)

1,560 1,420 1,690

フロント

Wsf(kg)

  590 660 845

静荷重

(%)

  38 46 50

ホイールベースL(m)

2.350 2.415 2.760

重心高 H(m)

  0.48 0.45 0.50

フロント

Wdf(kg)

0.5G

749 792 998

荷重

(%)

  48 56 59

フロント

Wdf(kg)

0.7G

829 858 1,075

荷重

(%)

  53 60 64

フロント

Wdf(kg)

1.0G

909 925 1,151
 

荷重

(%)

  58 65 68

軽積載というのはドライバー1人が乗った状況で、今回は体重を60kgと仮定したから、体重100kgのメタボ社長では条件が変わってしまうが、あくまで計算上の標準と思ってほしい。表を見て判るように、カレラSは0.6G程度の減速をした場合にフロントの動的重量配分が50%となる。 0.6Gというのは普通のドライバーが一般道で相当に強い減速を行っている状態と思えばよい。この時、カレラSは前後のブレーキをフルに生かして、タイヤのμ(路面との摩擦係数)も目一杯利用できる状態だから、ロックもなく、従ってABSも作動しない。 これが、ボクスターの場合は0.6Gではフロントが58%となり、動的荷重が42%に減ってしまったリアが先にロックを始めるのでABSが作動して、例のガッガッガッという音と振動が発生する。だから、やっぱりカレラは高いだけの事はあると思うのは間違いで、根本的にクルマの基本仕様の違いなのだ。 なお、どんなクルマでもブレーキペダルをドンドンと強く踏んでゆくと、やがては前後どちらかがロックを始めてABSが作動する。カレラはロックしないというドライバーがいたら、それは踏み込みが足りないだけのこと。ところで、M3の場合はどうかといえば、ボクスターよりも 更に条件が悪いのは当然だ。これはフロントヘビーのFR車の宿命と思えばよく、この点では2,000万円超のアストンマーチンも 3,000万円超のベントレーも皆同じとなる。911系が(特に耐久)レースで圧倒的な強さを見せるのも、この制動特性の有利さが効いているし、現代の本格的なレーシングカーにフロントエンジンが絶滅したのも、空気抵抗やハンドリング特性とともに、制動特性でも有利なことが原因となっている。 では、FFはといえば、急制動時のフロント荷重は概ね80%以上となるから、リアなんて殆ど効いていない状態となっている。だからFF車のリアなんてドラムブレーキで充分なのだが、 そうなるとアルミホイールから覗く無骨な黒いドラムがちょっと頂けない。

折角だからもう少し話を進めると、表で1.0Gの場合はカレラSと言えどもフロントの動的荷重が60%近くとなっている。1.0Gといえば、一般道の舗装とストリートタイヤの組み合わせに普通のドライバーが運転した場合の限界制動と思えば良い。 誤解されないうように補足すると、ここでいうストリートタイヤというのはPS2などのように、公道用としては最高クラスのタイヤと、1級国道のバイパスなどの整備された舗装の場合で、安物のタイヤと市町村道の舗装では0.7G程度と思ったほうが良い。 これがサーキットでのSタイヤ使用(と、それなりの腕と)では1.1Gを超えることになる。すなわち、リアエンジンの911系と言えどもサーキットの限界走行ではフロントの動的軸重はリアより大きくなるから、ブレーキもフロントを強化する必要がある。 これが911系の標準がフロント4ポットであるのに対して、セラミックコンポジット(PCCB)を付けると、6ポットになる理由で、PCCBは街乗りでは不可能なくらいの高度な減速をするドライバーを前提にしていることになる。
 


写真25
ドライブ中のフィーリングはポジションや眺めなど極めて共通したものがある。
まあ、前半分が事実上同じなのだから、当然でもあるが。それでも価格差は・・・・。
 

ポルシェというのは流石に奥が深いから、真の意味で2車を比較するには、どちらも所有して長期間使用してみるくらいでないと、本当の違いは判らないかもしれない。そういう意味では、今回の比較もあくまでも限られた状況で比較した個人的な意見だから、単なる参考としていただきたい。そして、この企画を準備している途中で、ポルシェより次期911(コードNo.991)が今年末に欧州で発売されるというニュースと、991の写真や概要が発表された。最善のポルシェは最新のポルシェだから、新型は確実に進歩しているだろう。 ただし、4WD系のカレラ4やターボは997が継続生産される。また、ボクスターについても、夏ごろに新型が発売される だろうが、ケイマンは更に1年後になるという。噂ではボクスター/ケイマンの廉価モデルには新開発のターボ過給4気筒水平対向エンジンが搭載されるとも言われている。まあ、話題は尽きないというわけだ。そういうタイミングだから、今後987/997を試乗記などで取り扱う事は なさそうで、これが最後のレポートとなるだろう。

ケイマンSはカレラに対して性能的には紙一重まで迫っているし、それで価格は360万円も安い。コストパフォーマンスという点では圧倒的にケイマンSの勝ちだろう。それでもケイマンSがカレラに対して絶対に勝てないのは、狭いとはいえ一応リアに二人分のシートがあることで、ここを手荷物置き場と割り切っても、実用的な 価値は十二分にある。しかし、360万円という価格差を利用して、ケイマンSに実用車を一台追加すれば良いという考えも浮かぶ。そして、ケイマンSが圧倒的に有利なのはミッドシップエンジンによるスポーツ性の高さであり、この性能でしかもミッドエンジンといえば、チョ ット前のスーパーカー並だし、それが総額でも一千万円以内で買えるというのは、マニアにとっても嬉しいことだ

とはいえ、クルマに一千万円近い金をかけるというのは、世間一般のサラリーマンにとっては可也厳しい金額でもある。ただし前述のように、987/997は来年にはFMCされるから、金持ちのポルシェオーナーで直ぐに新型に飛びつくケースも多々あるだろうから、程度の良い後期型が 市場に溢れて、予算内で何とかなるかもしれない。それを期待して今回の特別編を終わることにする。えっ?旧型の方が味がある、なんていって、返って高値を呼ぶことはないか、って?いや、それは何とも・・・・・。

おまけとして、今まで発表した987/997試乗記のバックナンバーを紹介しよう。
 

フェイズ2 試乗記

ケイマン PDK


ケイマンS PDK


カレラ PDK


カレラS PDK
フェイズ1 試乗記

ケイマン 6MT


ケイマンS 5AT


RS60(ボクスターS)6MT


カレラS 5AT 長期レポート