Mercedes Benz E350 BlueTEC Wagon(2010/10) 前編 ⇒中編

以前から何度か書いているが、B_Otaku が初めて運転したメルセデスは今から35年ほど前の300TD(S123)という3L 5気筒ディーゼルエンジンのワゴンだった。 その時の感動も、もう何度も書いたが、ワゴンとして、いやセダンと比べても国産では全く歯がたたない程に安定した走りに、日本車との圧倒的な実力差を知って、当分は抜け殻状態になってしまったものだった。 事実、ワゴンの最高峰といえばメルセデスのEクラスワゴンというのは、マニアの間では当たり前のことで、いつかはクラウン、ではなく、いつかはEクラスワゴンというユーザーも結構いるのではないか。そのEクラスがセダのFMC(W212)から少し遅れて、既に日本でも発売されている。 今回は、新型S212の中から一番人気のE350 BlueTEC ステーションワゴン アバンギャルド(以下E350 BlueTEC)という長〜い正式名のモデルに試乗してみた。

S212のラインナップは他に2番人気として4気筒1.8LターボのE250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン(以下E250) 、ガソリン3.5LNAのE350ステーションワゴン アバンギャルド(以下E350) と4WDの同4マチック、更には3ℓNAのE300ステーションワゴン、そしてV8、5.5LのE550 ステーションワゴンアバンギャルドという充実したラインナップを誇るが、実際に売れるのは多くがE350BlueTECであり、残りがE250で、それ以外は本当にチョボチョボだということだった。やはりメルセデスのワゴン=EクラスでディーゼルというS123からの思い入れがあるのだろうか?

そこで、この売れ筋2車種に出来れば性能的にはこのくらい欲しいというE350を加えた3車種、更にライバルとして先ごろ発表されて近日発売される5シリーズワゴンから、ライバルになりそうな2モデルと共に一覧表でスペック を比較をしてみる。

E250については既にセダンに試乗したが、スロットルもシフトも苛付くくらいにレスポンスが悪く、スペック的には確かに2.5ℓ並のパワーと3.2ℓ級のトルクなのだが、もうすこし改良が必要 だと思った。 まあメルセデスの事だから、モデル中期のMCで見事に改良してくるだろうとは思うが。それに対して、BMW523iセダンは、本当にこれが2.5L?というほどに機敏な動力性能で、その理由はE250とは正反対で極めてレスポンスの良い自然吸気エンジンときめ細かな制御をする8速ATのお陰だった。

EクラスのワゴンはW123に設定されて以来、FMCに従ってワゴンも1年程のタイムラグはあるが、常に新型が発売されてきた。なおワゴンの開発コードはW(Wagen)の代わりにS(Station wagon ?)となり、S123→S124→S210→S211と続き、現行はS212となっている。
 


写真1
W123からはワゴンが設定された(S123ワゴン、1978〜)。

 


写真2
名車といわれたW124のワゴンはS124(1986〜)。最善か無かの時代の頂点となったワゴンの最高傑作。

 


写真3
新時代のメルセデスであるW210のワゴンはS210(1996〜)。

 


写真4
電子制御ブレーキ(SBC)のトラブルで大いに評判を落としたW211。そのワゴンはS211(2003〜)。
 

 

EクラスはE250を除くとE300セダンに受注品としてベースグレードがあるが、その他は全てアバンギャルドとなる。ただし、エクステリアは大きな違いは無い。これが、AMGスポーツパッケージをオプション装着すると、バンパーのエアインテイクやドライビングライトの形状などが、よりスポーティでアグレッシブになる(写真5-2)。
なお、リアから見た場合は4気筒ターボのE250は排気管が左1本出し(写真7)、V6気筒のE300およびE350(ガソリン、ディーゼルとも)は左右各1本の2本出し(写真6)と、この部分のみ差を 付けている。
サイドから見たEクラスワゴンはライバルの5シリーズツーリングに比べてリアオーバーハングが圧倒的に長い(写真8)。 これは、5シリーズがスタイリッシュなワゴンタイプの乗用車を狙っているのに対して、Eクラスはあくまでリアに荷物を積むことを考えた実用ワゴンとして設計されているという違いが判る。 ただし、 同じメルセデスでも、CクラスワゴンはBMW的なスタイル重視の傾向がある。そして、Eクラスワゴンのリアには電子制御セルフレベリング付エアサスペンションが標準装着されているのも、 荷物を積むことを前提とした実用ステーションワゴンの機能を重視している証拠だ。

リアゲートを開けてみると、その広大はラッゲージスペースは驚くばかりで、特に前後方向の深さには圧倒される(写真9)。 そして、ゲートを閉めるには下端にあるスイッチ(写真10)を押すことで大きなリアゲートはスーっと下がってきて、閉まる寸前に停止して、そこからは静かに閉まっていく姿が実に高級感満点だ。 これに比べると、5シリーズツーリングの場合は、同じような位置にある 同じようなスイッチを押すと、リアゲートはウィーンっという安っぽいモーターの音と共に結構速い速度で降りてきて、そのままバタンと下品に閉まる。 その代わり、5シリーズのようにゲートを開けなくても上半分のガラスエリアが別に開く、というようなEクラスには出来ない 小技を持ってはいる。

というように、Eクラスと5シリーズはワゴンとしてのポリシーが全く異なるから、ユーザーはどちらのポリシーを取るかで選ばば 良く、ある面では決断し易いかもしれない。
 


写真5-1
フロントから見ればルーフレール以外はセダンと同一形状のステーションワゴン。E250とE350BlueTECの差も殆ど無い。
 

 


写真5-2
AMGスポーツパッケージを装着すると、バンバー内のエアインテイクがよりアグレッシブになり、LED式のドライビングランプが装着されている。(写真はセダンE250)
 

 


写真6
6気筒系の排気管は左右各1本の2本出し。それ以外にE250との違いは無い(勿論エンブレムは違うが)。

 


写真7
この写真はE250のため排気管は左1本出しと、6気筒モデルとは差別化されている。
 

 

写真8
ステーションワゴンらしくリアオーバーハングが長く積載性重視のデザインは、スタイル重視で荷室の狭い BMW5シリーズツーリングとは対称的だ。


写真9
リアラッゲージスペースは驚く程広く、ワゴンとしての実用性は抜群だ。スタイル重視の BMW5シリーズツーりグの狭さとは対称的だ。

 


写真10
赤いボタンは電動のテールゲートクローズ用で、これを押すとユックリと閉まっていき、閉じる直前で停止して、その後はスーッと閉まる。
 

 


写真11
リアラッゲージルームの底板を上げると、排気対策用の尿素水タンクがある。

 


写真12
尿素水タンクのキャップにはオイルや冷却水と間違わないように派手な警告が付いている。

 

BlueTECのディーゼルエンジンは排気対策として尿素SCR還元システムを採用している。これは一言で言えば尿素水を排気中に噴射することで高温下で加水分解させてアンモニアガスを発生させ、このアンモニアによりNOxを還元しN(窒素ガス)とHO(水蒸気)になる。 この尿素水はリアラッゲージルーム底面のタンクに貯蔵されて(写真11)、補給は2万キロで満タンにする必要があるそうだから、普段のメンテには気を使う事は無さそうだ。 ただし、間違ってオイルや冷却水を入れると大騒ぎになるので、タンクの蓋には派手な警告が書いてある(写真12)。もっとも、一般的なメルセデスオーナー、特にEクラス以上のオーナーが自らオイルや冷却水を補充する事は、まず無いだろうが。

ということで、インテリアについては中編にて。

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