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Porsche Cayenne Turbo (2011/1) 中編
⇒後編
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フロントシートに座って気が付くのは、幅方向の余裕がまるでFセグメントのプレスティジカーのように広いことで、ポルシェといえばタイトというイメージとは全く異なる。
ダッシュボードやコンソールのデザインは基本的にパナメーラーを踏襲しており、表面にレザーを貼ったパッド類と適度に燻した光を放つクロームメッキなど近代的かつ高級な雰囲気に満ち溢れている。
センターの頭上にはオーバーヘッドコンソール(写真32)があり、室内灯のスイッチなどが並んでいる。さらにスイッチパネルを取り囲むU字型のアンビエントライト
という補助照明がボアっと光る。
センタークラスターの上部にはクラリオン製のオーディオ一体型ナビが標準装着されている(写真34)。通常、高級車はナビとは連動するがオーディオ自体は単体となるのだが、ポルシェの場合は全車種でナビと一体のオーディオを使用している。音質については試す時間が無かったが、同様にナビ一体のパナメーラーに装着されたオーディオを聞いた限りでは、このタイプとしては最も良い音質だったから心配はいらないだろう。
センタークラスターの高い位置から斜めに降りてくるセンターコンソールもパナメーラ譲りであり、その部分にATセレクターを中心として各種のスイッチ類を左右に配置する
(写真33)のも、これまたパナメーラと同様だ。もっとも、高い位置から斜めに降りるコンソール自体は、既にカレラGTでも採用されていた
から、決して最近の話しではない。コンソール先端部にはエアコンのコントロールパネル(写真35)があり、これは温度以外にも噴出し口の選択なども左右別々調整できる。
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写真
31
幅方向は流石に余裕があるし、パナメーラとイメージが統一されたダッシュボードやセンタークラスター&コンソールはこれでもかの高級感を醸し出している。 |
写真32
ルーフ先端にあるオーバーヘッドコンソールには室内灯やスイッチ類が並んでいる。両端の白い部分はアンビエントライト(補助照明)で白い部分全体がボアっと光る。
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写真33
パナメーラーと同様にATセレクターを中心としたスイッチ群を配置したコンソールは慣れないと各種のスイッチの役目を覚えられない。
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写真34
オーディオ一体ナビには”clarion"のロゴが見える。
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写真35
エアコンは温度のみならず、噴出し方法まで左右独立で調整できる。写真のスイッチパネルは右側にも対象に配置されている。
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フロントのコンソールボックスの後部はアームレストとなっていて、その上部を開けると中にはチョッとした小物入れになっている(写真36)。そのコンソールボックスの後端は後席用のエアコンアウトレットとリアシートのヒーター調整ボタンが配置されている
(写真37)。
カイエンターボのドアはリアを含めてインナートリムがフルレザーとなっている
(写真40)。ただし、ショーファードリブンをも想定したパナメーラの上級モデルとは異なり、カイエンターボの場合はフロントがメインとなっていて、リアの装備は大したことは無い。
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写真36
フロントのセンターコンソールを上から見た状態。右側写真はトップのカバーを開けたところ。
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写真37
フロントのセンターコンソール後端にはリア用のエアコン用エアアウトレットと下部にはシートヒーターのスイッチがある。
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写真38
リアパッセンジャーの膝のスペースはそれ程広くは無い。カイエンはやはりパーソナルユースを目的としている。
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写真39
リアのセンターアームレストには2つ分のカップホルダーがある。しかし、使い勝手は? |
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写真40
リアドアのインナートリムもオールレザーが標準となっている。 |
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写真41
フロント同様にリアでも、ルーフもピラーも全て内装はアルカンターラが使用されている。
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カイエンターボはインテリジェントキーを採用しているが、エンジンの始動は流行のプッシュスイッチではなく、ダッシュボード左端にあるスロットに電子キー(写真42)を差し込んでから右に捻る(写真43)。
メータークラスターにはカレラとイメージが共通の5連メーターがズラッと並ぶが、内容はカレラというよりもパナメーラと同一となっている(写真44)。
なお、アクセルベダルはポルシェには珍しく吊り下げ式と採用している(写真45)。
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写真42
ポルシェも今ではインテリジェントキーを採用している。
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写真43
エンジン始動はインテリジェントキーをキーホールに差し込んで左に捻る。この動作は譲れないようだ。
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写真44
パナメーラと共通の5連メーターとパドルスイッチ付きのステアリングホール。
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写真45
アルミペダルはアクセルも吊り下げ式(パナメーラはオルガン式)。 |
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試乗記の前に今回はカイエンに装備されている4WD機構とハイトコントロールについて説明する。
カイエンの駆動方式はセンターデフ方式で、これは前後軸の回転差をデフで吸収することで、ステアリングに対する影響をなくしている。4WDで一番単純なのはパートタイム方式といわれる方法で、通常はRWDの2輪駆動で走行し、路面μ(摩擦係数)が小さい、すなわち滑りやすい路面では前後を直結して4WDとする。この場合のデメリットは前後の回転差が出ると吸収できないために、路面μが大きい舗装路等で使用すると操舵が出来なくなってしまい、無理にステアリングを切ると車が止まってしま
い、これをタイトコーナーブレーキング現象という。
パートタイム式は前後どちらかのタイヤが浮いても反対側に駆動力が伝わるために走破性が高いことから、一般にオフロードを主体としたヘビーディーティーなモデルに使用されており、国産ではトヨタのFJクルーザーがこの方式を採用している。これに対してセンターデフ式ならば前後に駆動力を供給するプロペラシャフトの結合部分にデファレンシャルギアを入れることで前後の回転差を吸収するために、舗装路でも4WDが使用できることになる。カイエンの駆動系を下図に示す。
ところがデフの機能には困った問題がある。それは一方が空転した場合に他方に駆動力が伝わらない事で、例えばフロントの1輪が浮いて空転した場合はリアに駆動力が伝わらずに脱出不可能になってしまうことだ。そこで、このような状況に至った場合には手動でセンターデフをロックして前後に駆動力を伝える装置
が必要で、これをデフロックと呼ぶ。図47のようにデフロックインジケーターの右側のレバースイッチを前方に押すとセンターデフがロックされる(図47@)。それでも前後輪が対角線方向に浮いてしまった
、いわゆる対角スタックの場合には、もう一回スイッチを押すとリアアクスルのデフもロックされる(図47A)。それでも、脱出不可能な場合は更にフロントアクスルのデフもロック
する(図47B)。
ただし、前後軸のデフをロックすると操舵は効かないか、地面の状況によっては思いもよらぬ方法へクルマが進むために、余程オフロードに慣れたベテランユーザーで無いと危険となる。トヨタがフロントデフロックを装着しないのは、危険防止のためだと思われ、逆にポルシェは限られたトップエンドのユーザーを想定しているのだろう。尤も、殆どのカイエンユーザーはデフロックの使い方どころか、その存在さえ知らないとは思うが。
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写真46
コンソール後端にあるスイッチ類は、左がデフロック、中央がPASMのモード切り替え、そして右がライドハイトコンロロールの操作スイッチと表示部分。
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写真47
デフロックは右側のレバーを押す毎に
@ センターデフロック
A センター+リアデフロック
B センター+リア+フロントデフロック
となり、レバーを手前に引くと一段階ずつ解除される。
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カイエンターボには最低地上高を切り替えることができる、ライドハイトコントロールが標準装着されている。
ハイトレベルはノーマルレベルに対して、ハイレベルT:+28mm、ハイレベルU:+58mm、ローレベルT:−22mm、ローレベルU:−32mmとなり、更にローディングレベル:−52mmとなる。
ハイトレベルの変更はコンソール後端にあるスイッチのデフロックとは対称に右側にあるスイッチを使用する(写真46)。
ノーマルレベルからレバーを一度前方へ押すとハイレベルTとなる。この時の動作は最初に後輪側がムクッと上がった後に前輪が上がるのが判る。従って、レバーを操作してから完全に車高がセットされるまでは10秒くらいは必要となった。そして設定が完了するとメータークラスターの中央寄り右のディスプレイに完了メッセージが表示される(写真48)。ハイレベルUを選択するためには、レベルTからもう一回レバースイッチを前方に押す。
今度はハイレベルTの状態からノーマルに戻してみる。その為にレバースイッチを手前に引くと、ノーマルまで車高が下がり終了メッセージがディスプレイされる(写真49)。なお、ローレベルTは手動設定、もしくは速度が138km/hを超えると自動的に選択される。そしてローレベルUは手動設定は出来ず、速度が210km/hを超えると自動的に設定されるから、要するに日本の高速道路でローレベルUで走っているクルマは・・・・ヤバイです。
またハイレベルTは80km/h以下、ハイレベルUは30km/h以下でないと選択できない。また、一番低いローディングレベルは荷物の積み下ろし用だから、停車中のみ選択できる。
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写真48
ノーマル位置で右のレバーを一度押すとハイレベルTに移行する。その結果はメータークラスタ中央寄り右のディスプレイに表示される。
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写真49
ハイレベルTから右のレバーを手前に引くと、ノーマルレベルに移行する。勿論結果はディスプレイに表示される。
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写真
50
ハイレベルTにセットしている状況。ノーマルレベルよりも28mm車高が上がっている。
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写真
51
ローレベルTにセットしている状況。ノーマルレベルよりも22mm車高が下っている。
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コンソール後端にあるスイッチで、左のデフロックと右のライドハイトコントロールに挟まれた中央はPASMのモード切り替えスイッチとなっている(写真52)。更にその手前にはPSM(VSCに相当する横滑り防止装置)のOFFやその制御のスポーツモード、アイドリングストップのOFFとパーキングブレーキスイッチがある。
それにしてもカイエンターボのコンソールには処狭しと多くのスイッチ類が並んでいて、慣れないと何が何処にあるのかサッパリ判らない。
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写真52
デフロックとハイトコントロールスイッチの中央にはPASMのモード切替スイッチがある。 |
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写真53
コンソールの一番手前にはアイドリングストップやPSMのOFFスイッチ、そしてパーキングブレーキとスポーツモードのスイッチが並んでいる。
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以上、新型カイエンの主要な機能について少し詳しく説明してきたが、実際にはとても説明
しきれないくらいに多くの機能を持つから、もっと詳細に知りたい方はここをクリックして、別枠での
ポルシェ公式サイトを参照して頂くことにする。
というところで、乗り味については後編にて。
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