BMW X1 sDrive18i & xDrive 25i (2010/5) 前編 ⇒後編

 

1994年に英国のローバーグループをBMWが買収したことにより、ローバー傘下のランドローバー社の誇る高級オフロードカーであるレンジローバーの次期モデルはBMWの技術を投入して開発されていた。 しかし、この新型レンジローバーが発売される以前の2000年に、BMWはローバーを売却してしまう。このため、BMWには開発途中の新型レンジローバーが残ってしまい、結局ローバーと共にBMWも自らSUVを発売することになった。 これが初代X5で2000年から発売された。ローバー売却と同時にX5(E53)が発売されたということは、BMWはかなり早い時点でローバーを手放す決断をしていたのか、それとも元々BMW版も出す予定だったのか?
その後にBMWは3シリーズベースでX5より一回り小さいX3(E83)を2003年に発表し、日本国内では2004年から発売され た。一方、X5は2007年に2代目(E70)にFMCされた。 今回発売されたX1の開発コードはE84。ということは、X1自体の開発はかなり以前から行われていたわけで、今回は満を持しての発売と考えられ、 このことは今こそチャンスという読みなのだろう。
 
    BMW BMW BMW BMW BMW
      X1 xDrive 25i X1 sDrive 18i X3 2.5si 320i Touring
Style Essence
325i Touring
 

車両型式

  VL25 VL18 PC25 VR20 VS25

寸法重量乗車定員

全長(m)

4,470 4.855 4.535

全幅(m)

1,800 1.855 1.800

全高(m)

1,545 1.675 1.450

ホイールベース(m)

2.760 2.795 2.760

駆動方式

4WD RWD 4WD RWD
 

最小回転半径(m)

  5.9 5.8 5.3

車両重量(kg)

  1,710 1,560 1,800 1,540 1,580

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N52B30A N46B20B N52B25A N46B20B N52B25A

エンジン種類

  I6 DOHC I4 DOHC I6 DOHC I4 DOHC I6 DOHC

総排気量(cm3)

2,996 1,995 2,496 1,995 2,496
 

最高出力(ps/rpm)

218/6,100 150/6,400 218/6,500 156/6,400 218/6,500

最大トルク(kg・m/rpm)

28.6/
2,500-3,500
20.4/3,600 25.5/4,250 20.4/3,600 25.5/6,500

トランスミッション

  6AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  9.9 11.4 9.5 11.4 9.9
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

7.8 10.4 8.3 9.9 7.2

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

5リンク セントラル・アーム 5リンク

タイヤ寸法

前/後 225/50R17 225/50R17 235/55R17 205/55R16 225/50R16

価格

車両価格

480.0万円 363.0万円 570.0万円 424.0万円 555.0万円

備考

ハイラインパッケージ
516万円
ハイラインパッケージ
399万円
Mスポーツパッケージ
609万円
Mスポーツパッケージ
467万円
Mスポーツパッケージ
594.5万円

そのX1の現物は、SUVとして見ると思いの外低くてカッコが良いことに気付く。これならX3を拒否するユーザーでも検討の価値があるかもしれない。寸法的に見れば3シリーズツーリングに対して全長は僅かに短いがホイールベース(WB)は全く同じ で、要するにX1は”1”とはいうものの、実際には3シリーズがベースということが判る。そして兄貴分のX3は全長、WB共に多少長く、全高は130mm高い。この 全高についてはX1は3シリーズ(1450mm)とX3(1675mm)の中間となっている。 この関係を写真で比べたのが写真9である。

X1のバリエーションは基本的に2種類で、2ℓ RWDのsDrive 1.8iと3ℓ 4WDのxDrive 2.5iでその 価格差は何と約120万円にもなる。 そして各グレードにハイラインパッケージが設定されているが、これはレザーシートが装着されているのが最も大きな特徴となる。今回の写真撮影は主としてsDrive 1.8iの標準グレードと xDrive 2.5iハイラインで行い、試乗車は1.8i、2.5iの何れもハイラインパッケージ装着車 を使用している。
 


写真1
BMW傘下の時代に開発されたレンジローバーはX5と共通点が多い。それ以前のレンジローバーといえば古臭いエンジンがネックだったが、BMW製となり欠点が一掃された。

 


写真2
初代X5(E53)はレンジローバーのBMW版として発売された。4WD技術はランドローバー社のノウハウが注入されている。

 


写真3
現行X5(E70)は2代目で2007年発売。

 


写真4
現行X3(E83)は2004年発売で、X5より一回り小さい。

 


写真5
こうして見るとワゴンのような、ハッチバックのようなプロポーションで、SUVとしては低めだと判る。
 

 


写真6
写真の25iの排気管は片側2本出し。4気筒の18iは1本出しとなるのは1シリーズや3シリーズ同様の差別化だ。

 


写真7
リアオーバーハングが短いX1のトランクスペースは決して広くない。
 

 


写真8
トランク床面の底板を持ち上げると、バッテリーとECU(電子制御ユニット)が見える。
 

 

写真9
長さ方向は3シリーズツーリングの前後オーバーハングを詰めたのがX1で、X3はWB、全長とも多少長い。
X5は一回りサイズが大きく、上記3車とはカテゴリーが違う。
高さは3シリーズ<X1<X3<X5で、概ね100mmずつ高くなる。
サイドから比較すれば、X1はワゴンとSUVの中間であることがはっきりと判る。

室内の雰囲気は1シリーズというよりも3シリーズに近い。そして見た目はBMWの常で。ファブリックシート装着の標準車は価格の割には質素、というかチャチいから、人によってはハイラインが 必須となるかもしれない。更には、写真の25iのようにアイボリーのインテリアカラーを選ぶと豪華さは更に増すが、アイボリーのレザーは汚れると結構薄汚くなるのは要注意だ し、標準在庫も殆どないだろう。 ダッシュボード下やコンソール上面に張ってあるトリムは標準がシルバーマットトリムという多少艶消し気味のもので、写真はこの標準(写真13-1)とウッドトリム(写真13-2)の双方を紹介してある。
レザー貼りのダッシュボードというオプションは無いから、全てのモデルのダッシュボードが金型成形の樹脂製となるが、表面のシボ目や質感は中々良い(写真17)。以前のBMWは革目とは似ても似つかないザラザラとした表面だったが、X1はオーソドックスな皮革風になった。まあ、 所詮偽物といえば言えるのだが、質感は良いに越したことはない。

BMWのシートはドイツ車にしては柔らかめでWVのような硬いシートを期待すると裏切られた気持ちになる。勿論、以前のシートだって柔かいといっても決して腰がないフニャフニャではないのだが、X1の場合は従来 の代表的BMWよりは硬めになっている。これは先日乗った新5シリーズも同様だったからBMWのシートに関するポリシーは少し変ったのかもしれない。なお、実際に試乗したクルマは2台とも ハイラインパッケージ装着車だった。この場合、シートポジションの調整はフル電動となる。そして、標準車のファブリックシートの場合は 、18iに限っては手動となるが、一人で乗る分には全く不便はない。しかし、夫婦で共用する場合などはドライバー交代の度にベストポジションが判らなくなって、いつも何やら少し違うという不満を持って乗ることに成りかねないから、できれば電動シートが欲しいが、そうなるとレザーパッケージ (若しくは6気筒の25i)が必要となり、予算オーバーになるかもしれない。
 


写真10-1
18iに標準のファブリックシートの調整は手動式となる。25iはファブリックでも右の電動式となる。

 


写真10-2
ハイラインパッケージのレザーシートは調整も電動となり、ポジションメモリーも2人分付いている。夫婦で交代で使用する場合には充分メリットがある。

 

写真 11
写真のようにアイボリーのインテリアを選べば、見た目の満足感は非常に高い。
が、しかし、汚れは目立つ。
しかも、標準在庫にある確立も低そうだ。
リアの足元は決して広くはない。

 


写真12-1
標準のファブリックシート。標準的な欧州車のタイプで実用上は充分だが、レザーのような華がない。

 


写真12-2
18iでも多くのユーザーが35万円も出す気持ちが良く判るレザーシート。確かに、高級車っぽい。

 

写真1 3-1
標準グレードの内装は質素だ。車輌価格を考えると首を捻るユーザーもいるだろう。
BMW=高級ブランドというのが、購入の第一理由ならば、迷うことなくハイラインパッケージを選ぶべきだ。

写真13-2
ハイラインパッケージ、しかもアイボリーの内装に別オプションのウッドトリムまで付けている左の写真は、確かに標準仕様とは別のクルマに見える程に高級感に満ち溢れている。


写真14
夜間のオレンジ色の照明は相変わらず雰囲気抜群だ。
写真はiDrive(ナビ)なしの場合。

 


写真15
iDrive装着車の場合は、オーディオとエアコンの配置が異なる。

 


写真16
ハイラインはドアのインナートリムもステッチが
入っている。



写真17
ダッシュボードのシボ(革目)の質感も高い。これならトヨタの上級車に太刀打ちできる。

エンジンの始動はスタート/ストップボタンによるが、先日乗った新5シリーズはインテリジェントキーを差し込むスロットが既に廃止 されていたが、X1はステアリングホイールの左側のダッシュボード上にスロットがあり、キーを差し込むことができる。

というところで、この先は後編にて。

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