NISSAN SKYLINE 250GT vs BMW 320i (2010/7) 前編


”国産車vs輸入車”なんていうBBSチックな企画をすると、「また、やってんのか」とバカにされそうだが、遅い代表というか、ボッタクリの代名詞のように誹謗愁傷されていたBMW320iがMCによりエンジンとパワステ系が全く新しくなった。そのお陰で動力性能も大いに向上し、これなら遅過ぎるとバカにされることも無いだろ、という事実とともに、それならもう一度国産車と本気で比較してみようか、という気持ちなってきた。そして、今回は走る・曲がる・止まるという走行性能だけではなく、”エアコンの効き”と”オーディオの質”という快適機能についても比較してみようと思う。
そして、320iの相手として選んだのはスカイライン250GTで、折りしも 本年1月にMCされモデルライフとしては折り返し点に到達したこともあり、ベースグレードである250GTを選んでみた。スカイラインは先代V35から型式が”V”となり、それ以前の”R”とは別のクルマであることが判る。すなわちR34→V35となり、現行がV36となっている。なお、現行GT−RのみはR35という型式になっているのは、現行GT−Rからスカイラインという名が無くなったこととも一致している。
そのV36スカイラインは北米ではインフィニティGとして販売されており、ラインナップはG37のみで、今回の250GTは国内専用車となっている。なおG37セダンの米国価格は$33,250 - $37,000(国内価格409.5〜441万円) で、レクサスIS350の$37,595(国内価格496〜541万円)、BMW335iの$40,600 (国内価格686万円)に対して少し安い価格設定となっている。
なお、09年の米国販売台数ではインフィニティG:47,174台、レクサスIS:38,077台、BMW3:90,960台という結果だった。

そこでライバル車の諸元比較は今回比較する2車種と同じ3シリーズの上級モデルである325i、そして北米でのスカイラインのライバルであるレクサスISから250を、 さらにV6FRセダンとしては破格の買い得価格を掲げているマークX 250Gを取り上げてみた。
 
    BMW BMW NISSAN LEXUS TOYOTA
      320i (E90) 325i (E90) SLYLINE
 250GT
IS250 MARK X
250G
 

車両型式

  LBA-PG20 LBA-PH25 DBA-V36 DBA-GSE20 DBA-GRX130

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.540 4.780 4.585 4,730

全幅(m)

1.800 1.770 1.795 1,795

全高(m)

1.425 1.450 1.430 1.435

ホイールベース(m)

2.760 2.850 2,730 2,850

駆動方式

FR
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.4 5.1 5.2

車両重量(kg)

  1,500 1,540 1,580 1,570 1,510

乗車定員(

 

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N43B20A N53B30A VQ25HR 4GR-FSE

エンジン種類

  I4 DOHC I6 DOHC V6 DOHC

総排気量(cm3)

1,995 2,996 2,495 2,499
 

最高出力(ps/rpm)

170/6,700 218/6,100 225/6,400 215/6,400 203/6,400

最大トルク(kg・m/rpm)

21.4/4,250 27.5/4,200 26.3/4,800 26.5/3,800 24.8/4,800

トランスミッション

  6AT 7AT 6AT
 

 燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  15.2 12.6 12.2 11.8 13.0
 

パワーウェイトレシオ

(kg/ps) 8.8 7.1 7.0 7.3 7.4

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィシュボーン

セントラル・アーム マルチリンク

タイヤ寸法

  195/65R15 225/50R16 225/50R17 225/50R16 215/6016
 

ブレーキ

前/後 Vディスク/Vディスク Vディスク/ディスク

価格

車両価格

418.0万円 547.0万円 329.7万円 392.0万円 267.4万円

備考

    Aパッケージ
289.8万円
   

現行スカイライン(V36)の発売時点(2006年11月)では、ベースモデルの250GTは279.3万円であり、当時(X120)のマークX 250Gの275.1万円と良い勝負をしていたが、マークXは2009年10月のFMC(X130)で267.4万円という戦略的な価格を付けてきた。 このモデルは勿論ナビまで標準装着していて267.4万円という、今回のスカイラインの329.7万円という価格は全く勝負にはならなくなってしまった。まあ、スカイラインとマークXではユーザー層が違うので、直接競合はないだろうから、大きな問題では無いかもしれない。
BMW325iについては、今回から3リッターエンジン搭載となった。北米向けモデルでは以前から3リッターモデルのみで、2.5リッターエンジンは販売されていなかったが、今回のMCで6気筒の3シリーズは日本国内販売も3リッターに統一されたことになる。
そして、IS250については、ベースとなるマークXの超お買い得価格と比べれば、幾らブランドが違うとは言え同じメーカーのクルマとは思えないような価格戦略だが、それでも 不振を続ける国内レクサスブランドの中では、LSと共に売れ筋No1を争っているのがIS250であり、未だ未だ侮れないかもしれない。レクサスISの辛いところはプアーマンズ3シリーズ的な成り立ちであることで、次回のFMCに際しては、もう少し日本車のアイデンティティを発揮してもらいたいものだ。
 


写真1
Dセブメントとしては多少長いスカイラインだが、フロントオーバーハングは3シリーズ以上に切り詰められている。

 

スカイラインのデザインは主な販売先である北米のユーザー趣向に合わせているのは言うまでもなく、このバタ臭さが日本人には受けが悪いようだ。しかし、他の何物にも似ていないスタイルはパクリの多い日本車としては、立派なものだと思う。
寸法的にはスカイラインは3シリーズより全長で240mm、ホイールベースで90mm長いから、Dセグメントとしては大きめとなっている。この微妙に大きなサイズが北米で人気がある理由でもある。
しかし、スカイラインは全幅が30mm狭く、全高が25mm高いから、比べてみれば3シリーズよりも細長いことになるが、見た感じではそれ程でもない。


写真2
スカイラインは全幅が30mm狭く、全高が25mm高い。

 


写真3
独自のデザインが定評のスカイラインだが、リアデザインはBMWの影響を多少は受けているようだ。

 

それではインテリアの比較として、先ずはシートから。 どちらも標準で電動式で調整が出来るパワーシートが装着されていて、その操作方法もドライバー側は右側面の似たような形式のスイッチを使用する。ただし、250GTはパワーシートのメリットであるメモリー機能がない。複数で運転する場合には実に便利な機能なのだが、これが無いという事は、単にパワーシートが付いていますというだけで、初めて手動じゃあないシートのクルマを買うユーザーを騙すくらいしか脳が無さそうだ(写真3)。シート表皮は250GTには最近のニッサンが 多用している、本皮には見えない合成皮革(ネオソフィール)をサイドに、そして座面はソフトジャガード織りというもので、座ってみればマアマアで目くじら立てて文句をいう程には悪くない。
320iのファブリックシートは今更言うまでも無い欧州車の標準的な表皮で、座り心地はBMWらしく欧州車としては少し柔らかい。座り心地は250GTよりは上だと思うが、明らかなアドバンテージはあるかといえば、今やそれほどでも無い。と、言うよりも、3シリーズのノーマルシートは5シリーズに比べると大分モノが落ちるのは昔からで、絶賛する程よくな はい。現行のBMWでは5シリーズ(523iは除く)以上になると標準でレザーのインテリアやウッドトリムが付いてくるが、3シリーズ以下だとオプションのハイラインパッケージを装着しないと世間一般のBMWらしい高級感は得られない訳で、そうなると価格は更に数十万円もアップしてしまう。
 

写真 4
スカイラインは3シリーズに対して90mmも長いホイールベースを生かして、後席のスペースでは勝っている。
これが強みとなり、米国でソコソコの勝負をしている。

 
 


写真5-1
スカイラインの電動シートにはメモリーがないのが痛い。

 


写真5-2
御馴染みBMWのメモリー付き電動シート。

 


写真6-1
座面がファブリックでサイドはニッサン得意の合成皮革を使用したシート。

 


写真6-2
これも今更説明の必要が無い、BMWというより欧州車で御馴染みのファブリックシート。

 

室内の雰囲気は既に述べたように320iがもしもハイラインパッケージだったら、250GTはちょっと敵わないが、ノーマルだったら、ある面では良い勝負かもしれない。勿論250GTは日本的だし、320iは質素な中にもBMW独特の物はあるかが、まあこの程度ならば趣味の問題と片付けることが出来そうだ。

たとえば、ドアのインナーに付いている肘掛の質感はどちらも樹脂製で、ダッシュボードと同じようなシボ目の入ったパッドになっている が、比べてみれば250GTだって決して悪くは無い(写真9)。ただし、250GTの試乗車の内装がアイボリーだったことから、ブラックの320iと比較しても色自体のイメージに引きずられて、正確な判断は出来ないかもしれないのが、ちょいと残念だったが。

こうして細かく比較していくと、250GTだって決して引けをとらないのだが、クルマの内装として全体を見渡すと、どうした事か、320iの如何にもドイツ車、というかBMWらしさがあるのに対して、250GTは何やら垢抜けな く感じるのは気のせいだけではないようだ。
 

写真 7
3シリーズもハイラインならドイツの高級車らしくなるが、ベースグレードでは質素な内装で、スカイラインと比べても各部分は大した違いは無い。
なお、スカイラインの試乗車の内装色はアイボリーのためにイメージが良いが、実際に購入の際には多くのユーザーがブラックを選ぶのではないか。


写真8-1
シボのついた内装の質感も決して悪くは無い。アルミトリムはヘアライン。

 


写真8-1
スカイライン250GTとそれほどには違わないシボの入った樹脂製パッド。

 


写真9-1
パットのシボ目は320iと比べてもそれほど見劣りはしないが、スイッチやベースプレートのプラスチッキーなのが気になる。

 


写真9-2
よく見れば、250GTとそれほど変わらないのに、全体で見ると良い雰囲気なBMWの内装。

 

次はいよいよ走ってみるのだが、今回はその前にオーディオとエアコンという便利機能について2車を比較してみよう。

この先は中編にて。

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