BMW New(F10) 528i  (2010/6)前編 ⇒後編

   

前回は3ℓターボの535iのレポートをお届けしたが、今回は同じ3ℓでも自然吸気(NA)の528iに乗ってみた。528iは基本的な内装や装備は535iと同一で、価格は535iの835万円に対して715万円と、その差は120万円。まあ、それでもおいそれと買える価格ではないが、多少は現実的な価格でもある。
新型5シリーズ(F10)の内外装、その他の詳細については既に535i試乗記にて解説済みのため、今回は両グレードの相違点と528iの走行時のインプレッションを主とする。

外観上で最も大きな相違点はといえば、サイドから見た時のタイヤ&ホイール(後述する)とリアから見た時の排気管の位置(写真1)くらいだろうか。したがって、余程BMWに精通したマニアでもない限りは見ただけで 528iと535iの区別は付かないだろう。
 


写真1
リアから見た時の最大の相違点は、528iの排気管が左から2本出しに対して、535iは左右各1本出しとなる。

乗り込んで見れば、前回の535iと殆ど同じで、標準装備のレザーシートも先代E60に比べてシボが浅く座面の皺も全くなく、要するにより薄くなめした表皮をピッチリと張っていて、如何にもBMWのレザーシートらしさで という点では多少後退している(写真2〜4)。シートの座り心地がE60よりも多少硬めになっているのも535iと全く同じだ。早速走り出す為にエンジンをスタートして、正面のメーターを見れば、速度計のフルスケールも回転計のレッドゾーンも、勿論その他の小メーターやディスプレイの類も、全てが535iと同一な事に気が付く。

Dレンジに入れて走り出すと、535i程のトルクは感じないが、勿論必要充分なレスポンスと加速感はある。ただし、最近の車らしく環境を考慮したシフトスケジュールのATは早めにシフトアップして、巡航時の回転数 が1,500rpm以下となるように狙ってくる。 この時の巡航速度を60km/hとすると、計算上は7速1,330rpmとなるから、この状態から多少スロットルペダルを踏んだところで、反応は極々緩慢となる。まあ、これは排気ガスやら燃費やらに対応する必要がある最近の新型車に共通していることではあるが。
そこで、今度は2/3程までスロットルを踏み込んでみると、多少のタイムラグはあるが、チョッとそのまま我慢していれば2ステップ程シフトダウンされて、回転計の針は5速2,000rpm 程で、これなら何とかトルが立ち上がっている回転数だから、3ℓという排気量らしくマアマアの加速を始める。 そこで、今度は同じ状況からフルスロットルを踏んでみると更に1段ダウンして4速2,700rpm程になり、ここからは更に高トルク域のために即座に充分な加速に入る。この十分な加速という表現を具体的に表すと、335iには届かないのは当然としても、同じ3ℓNAの先代(E60)530iよりも多少遅く、525i よりは速いくらいと思えばよい。 だからぁ〜、3ℓでも530iでは無く528iって呼ぶんだよ!というBMWのエンジニアの叫びが聞こえてきそうだ。恐れ入りました。

フル加速中にはBMW6気筒のスポーティーなサウンドが適度に聞こえるのも、毎度お馴染みの演出で、高級感の中でもスポーティーを主張するのはBMWのポリシーだから、国産Eセグメント車、特にクラウンロイヤルが良いというユーザーには、 エンジン音にが耳障りに感じるかもしれない。 そして、5,000rpmくらいまで回してみてもスムースな回転上昇に衰えも無く、実に気持ち良く加速するのはシルキーシックスの常だし、これを求めてBMWを 選びたくなることも大いに有り得る。

今度はセレクターをDから左に押して、スポーツモードにしてみる。正面のメーター内のポジション表示は、一瞬でカチャっとDからDSに表示が変わる。 E60の時はDSにすると、わざとらしいオーバーレスポンスでギクシャクとした動きになってしまったし、先日乗った535iも多少その傾向を感じたが、今回の528iは結構自然なレスポンスで、寧ろ常用しても良いんじゃあないか、 と思うほどで、例えば60km/h巡航時にはDレンジより一段低い6速だから回転数も約1,600で、ここからなら少し踏めば適度に加速するし、少し強く踏めば4速2,700rpmまで回転は上がり、即座に充分な加速に入ることが出来る。

今度は高速テストをしてみる。日曜日の午後は適度に空いているとはいえ、追い越し車線を平気で80km/hで走るようなサンデードライバーも混じった 中では、合法的な100km/h巡航もままならない状況だが、528iの100km/h巡航なんて全く眠気がしそうに退屈だし、こういうクルマに乗っていると高速道路の制限速度を100km/hのままで放っておく役人は、日本の経済の足を大いに引っ張っていると腹が立つ。 いや、これはBMWなどの欧州車だけでなく、国産車でもクラウンやフーガなどのEセグメントは元より、スカイラインなどでも、100km/h程度の巡航だったら、その安定した挙動は100km/h制限がバカバカしくなるのは変わらない。そうは言っても混合交通の欠点で、高性能なクルマは良いとしても、圧倒的に遅いクルマの問題もある。 それでも大型トラックなどは動力性能は劣るが、あのデカいボディを取り回すだけの運転技能があるから、それ程には問題はないのだが、一番困るのはクルマはトロいし運転もトロいという最悪の輩だ。と、まあ、折角の5シリーズで気分が良くなっている時に、この話は止めておこう。
 


写真2-1
今回の試乗車の内装は一般的なブラックなので、前回のアイボリーとは雰囲気がマルで違って見えるが、基本的に535iと変わらないインテリア。

 


写真3-1
シート表皮は先代と違いピチッと張った皺のないレザーとなっている。

 


写真2-2
先代E60のリアースペースも新型と大きく変わらない。雰囲気は多少古臭く感じてします。

 


写真3-2
従来BMWに特徴的な皺の寄った緩く張られたシート表皮に比べて、新型のシート表皮には賛否両論あるだろう。

 


写真4-1
よ〜く、拡大してみてもシボは先代よりも浅い。

 


写真4-2
先代E60の分厚いレザーとハッキリしたシボはある面、魅力だったが・・・・・。

 

写真5
これまた基本的には535iと共通の、フロントダッシュボードからセンタークラスター、そしてコンソール上の各種操作部分。


写真6
コンソール先端の蓋を開けると、カップホルダーが出てくる。

 


写真7
ATセレクターやiDriveのコントロールスイッチ類も535iと同一。

 

BMW5シリーズといえばハンドリングが気になるだろう。
ということで、この続きは後編にて。

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