VW GOLF GTI (2009/11) 前編 ⇒後編


基本的には既に発売されている1.4TSIと共通だが、フロントバンパー内のエアインテイクの形状と
フォグランプの形状が大きく異なる。
 

トヨタカローラと並び世界のベストセラーカーであるVWゴルフが新しくY型にFMCし、国内では4月から1.4ℓターボのTSIコンフォートラインとターボ+スーパーチャージャーのTSIハイラインが発売されていたが、いよいよ本命のGTIが追加発売された。 先代のゴルフX時代も、ゴルフ全体の販売台数に対して50%以上がGTIだったとの話もあるくらいの売れ筋グレードだから、さてどの程度の進歩があるのか非常に楽しみだ。

新型のゴルフGTIは6速DSG付きで366万円で、今のところMTの設定は無い。 先行して発売されている1.4TSIとの外観上の違いは、フロントバンパー内のエアインテイクの形状と、更にエアインテイク全体がブラックアウトされていることから 、より精悍さが増している。リアはルーフから伸びるさり気ないスポイラーと 、左右から各1本、合計2本の排気管が出ているのが如何にも高性能なGTIらしいが、その他は大きく違わない。サイドからみれば、ホイールが専用デザインのアルミホール(1.4Comfortlineは何と鉄っテンにホイールキャップ!)である事と、ホイールから除くブレーキキャリパーが赤く塗装されている点が大きな相違点となる。ガンダムルックで恥ずかしくて乗れないうような国産高性能モデルと違ってGTIは高性能版とはいってもさり気ない演出だから 、いい歳をしたおじさんが乗っても全く違和感がないし、若手のエリート層にも似合うセンスの良いエクステリアは魅力の一つだ。
 


写真1
リアから見ると左右各1本の排気管がGTIであることを示している。ルーフ延長のスポイラーは控えめだ。
 

 


写真2
リアのラッゲージスペースは1.4TSIと全く同じ。

 

室内の第一印象はGTIで御なじみのチェック柄のスポーツシートが目に付いて、如何にもGTIという雰囲気がある。フロントダッシュボードは1.4TSIと全く同じで、強いて言えば助手席側グローブボックス上の細いトリムがカーボン調であることくらいだろうか。ATセレクターのノブは1.4TSIが T型レバーなのに対して、MT車のシフトノブのような形状となっている。ダッシュボードを指で押してみれば、カチンカチンの硬質樹脂ではなく、当然ながらソフトパッドとなっているのもVWらしい。 とは言っても、国産車だってカローラはちゃあんとソフトパッドを使っているが・・・・・。

シートに座ってみれば、以前のVW程にはカチンカチンではなく適度に軟らかい座面は、体の凸部分は沈むが体全体はシッカリと保持する。左右のサポートもシッカリしているから長距離でも疲れないし、GTIらしくコーナーの横Gが発生するような走りをしてもシッカリと体をサポートする。このシートを国産車と比べただけでもGTIを買う価値があるし、この手のシートに慣れてしまったら一般的な国産車には乗る気がしなくなるのも当然だが、これを言うと国産車命(本当はそれっきゃ知らないのだが)の連中から恨みを 買うといけないので止めておこう。 そして、このシートは同じゴルフのTSI比べても、圧倒的に出来が良い。ただし、独特のチェック柄が人によっては気に入らない場合もあるかもしてないが、その場合にはオプションのレザーシートを装着する羽目になる。
 


写真3
リアシートもフロントと共通のチェック柄のファブリック表皮を使っている。

 


写真4
シートが歴代GTIでお馴染みのチェック柄となり、サイドサポートも1.4に比べてタイトで、形状も全く違うスポーツシートが付いている。
 

 

写真5
ATセレクトレバーは1.4TSIのT字型に比べてこちらはMTのようなシフトノブとなっている。ステアリングホイールもより高級でスポーティとなる。
それ以外は基本的にゴルフ全車に共通している。


写真5
チェック柄のシート表皮は欧州車ではお馴染みの折り目の粗いファブリックを使用している。このチェック柄が嫌いなユーザーはオプションのレザーシートを付けるしかない。

 

写真6
センタークラスターは1.4TSIと全く同じ。標準のオーディオやエアコンも同一の物が付いている。

出来の良いシートに座って、セレクターをDに入れてブレーキを離すと極自然なクリープで発進する。ここで少しスロットルを踏むと、これも極自然に加速を始めるから、何も知らなければトルコン式のATと の違いは気付かない。この点ではポルシェのPDKより明らかに洗練されている。まあ、あちらは40kg・m近い大トルクを扱うというハンディもあるので一概にはいえないが。

Dレンジで暫くの間国道パイパスを流してみると、いつの間にか7速までシフトアップされている。 シフトアップのショックも殆ど感じられなく、極々スムースだ。ここで加速に移る為にキックダウンしてみると、直ぐには反応せずに多少のタイムラグの後にシフトダウンが起こる。 ただし、一度低いギアに入ってしまえばターボラグも殆ど感じない強力なトルクで踏めばグングンと加速するし、この時には上体がバックレストにめり込むような加速Gも感じられるから、動力性能としては充分過ぎるし、同じゴルフでも1.4TSIコンフォートとは雲泥の差がある。これだけのトルクが瞬時に得られると、分岐点手前での車線変更や合流の多い首都高などを走るときは、減速 して後ろに入るのも良し、逆に加速に物を言わせて前に入るも良しと状況に応じて臨機応変な運転が出来るから、むしろアクティブセーフティの面では1.4TSIを遥かに上回る。まあ、これは標準以上のスキルのあるドライバーの場合で 、充分な動力性能が危険と思っているような無知で運転の下手なドライバーの場合は・・・・そもそもGTIを買う事は無い。あっ、その前にこのサイトを読んでいないだろう、たぶん。

今度はセレクターレバーを Dから更に手前に引いてWV系で御なじみのSレンジに入れてみると、今度は低めのギアを選ぶので一般道では4〜5速程度以上にはアップしないしキックダウンの反応も速くなるから、活発に走りたいドライバーはSレンジを多用する ことになるだろう。最近は国産車を含めて燃費対策のためと思われる、やたらとトロいモードが標準になっている場合が多く、それでは耐えられないとスポーツモードなどにすると今度は過激過ぎたりと、どうにも中途半端な場合もある。 そういう面ではGTIのSモードは、常用するにはやはりチョッと過激かもしれない。Sモードで巡航中に先の信号が赤になったのを見て減速を始めると、速度が落ちていくに従って一瞬のブリッピングを伴いながらシフトダウンをしていく。 このようなシフトダウンでのブリッピングは、少なくともDレンジでは起こらなかった。というよりも回転を合わせる事が必要な ほどのシフトダウンはDレンジでは行われなかったというのが正しい表現だ。 この減速時にシフトダウンをしていく動作は同じタイプのDCTを装着したランエボ]でも同様だったが、洗練度では流石にDCT経験の長いVW (DSGとよぶが)に軍配が上がる。
 
今度はセレクターをDから左に倒してマニュアルモードを試してみる。GTIのマニュアル操作はセレクターで行う場合は押してアップ、引いてダウンというストリートカーに多い方式だからBMWなどとは逆になる。ただし、ステアリングホイール裏のパドルスイッチは、右がアップ、左がダウンというオーソドックスな方式だから違和感無く使える。 例によって信号で止まって、セレクターをマニュアル側に倒して1速で待機。信号が青になったのを確認して一瞬待って隣の車が発進した後にフルスロットルを踏んでみると、タイヤのスリップやトルクステアは殆ど感じ ずにグングンと加速する。レッドゾーンは6,000rpmだが、5,000rpmを超えた辺りから急に頭打ちの感じがするので、シフトアップは5,000rpmくらいが無難なようだった。ここで素早く右のパドルを引いてシフトアップするが、この時の反応は非常に迅速だ。DCTタイプの場合、次に待機しているギアと希望するギアが一致すれば、既にスタンバイしている組み合わせのままでクラッチを切り替えるだけだから 殆どタイムラグが無いが、これがクルマが予想していたのと反対だった場合は一呼吸置いてしまうのはDCTタイプの機構からくる弱点だ。しかし、フル加速状態では次にシフトアップするのは当然だし、発進時のように1速の場合は、反対側は2速で待機するしかないの でタイムラグは常に最小となる。
 


写真7
フルスケール240km/hの速度計も、6000rpmからレッドゾーンの回転計も1.4と共通。

 

写真7
P→R→N→D→SというパターンもVWでは御なじみのもの。

ゴルフGTIといえばホットハッチの代表格だから、当然ながら動力性能と共にその操舵性にも関心があるだろう。と、いうことで、後編につづく。

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