Porsche 911  

VWビートルをベースとしたスポーツカーであるポルシェ356が本格的に市販されたのは1949年からで、実際にドイツで量産を開始したのは1950年からだった。その後毎年の改良と共に1955年10月には 1956年モデルとして第2世代の356Aへと発展した。現在前年の10月に翌年のイヤーモデルが発売されるというポルシェ独特の販売方法は既にこの時から始まっていた事になる。

1959年に発表された356Bはボディを一新させ、356シリーズの中でも最も成功したモデルとなった。全長4,010mm×全幅1,670mm×全高1,306mmというボディ寸法に1.6Lエンジンが3種類、チューニングの違いによって60HP(1600)、75HP(スーパー750)そして90HP(スーパー90)の3モデルがラインナップされていた。車両重量は905kg(1600クーペ)〜940kg(スーパー90カブリオレ)と軽量で、4速MTと組み合わされる。356Bは1963年まで生産されて最終型の356Cへとバトンタッチされた。

1963年に発表されたプロトタイプのポルシェ901は356の次世代モデルで1964年から生産を開始した。しかし、901という名称はフランスのプジョーによって商標登録されていたため量産時の名称は911とされた。これこそ、現代まで40数年にも渡ってポルシェ 社の屋台骨を支えてきた看板車種である911シリーズの始まりだった。初期型の911は通称ナローポルシェと呼ばれていることは今更でもないが、初期の911は空冷水平対向6気筒1,991cc エンジンから 130HP/6,100rpmの最高出力と17.8kgm/4200rpmの最大トルクを発生した。ボディ寸法は全長4,163mm×全幅1,610mm×全高1,320mmと今考えると極めてコンパクトだった。車両重量は1095kgと軽量ではあるが、130HPということを考慮すれば決して絶大な動力性能のクルマではなかった。
911はその後1967年モデルから、ハイパワー版の911Sを追加した。これはバルブや圧縮比、キャブレターなどの変更でチューンナップされて出力は130→160HPとアップされたモデルで、いまでもハイパワー版はSが付く伝統が守られている。翌68年にはデチューン版のTも追加された。
ポルシェは当時から必ず市販車をチューニングしたレーシングモデルを製作してきた。911も1967年には911Rが23台製作された。ボディの多くをFRP化し、ウィンドシールド(フロント)を除く全てのウィンドウはアクリル化するなどの軽量化と(約800kg)、ミッドシップの純レーシングカーであった904や906と共通するエンジン(210HP)を搭載するなど、市販車とは全く異なる仕様だった。ただし、GTカテゴリーとしては ホモロゲートされなかったことから、サーキットでの活躍はなかったが、トヨタ2000GTの記録をあっさり抜いて、数多くの2Lクラス国際記録を樹立した。このモデルがその後の名作カレラRSへ発展となったことは間違いなく、 その後911レーシングモデルは現在まで続いている。

ポルシェ911は当時まだガキだったB_Otaku にとっては、フェラーリやランボルギーニのようなカッコ良さは無いし、動力性能だってスペック上は大したことないしで、何処が良いのか良く判らなかった。しかし、その後のレースでの活躍や911シリーズのパワーアップとターボ化で広げたトレッドやタイヤ幅をカバーするために極端なブリスターフェンダーを付けたり、強大なトルクによるトラクションを伝えるダウンフォースを得るために、これまた巨大なウィングをリヤに背負っていたりと、イタリアンスーパースポーツとは全く次元の違うスーパーカーとして発達していった。これについては機会があったら取り上げてみたいと思っている。